ストレスチェックとは?|目的・義務・やり方・事後対応までわかりやすく解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

ストレスチェックとは、従業員のストレス状態を定期的に確認し、メンタルヘルス不調の予防や職場環境の改善につなげるための制度です。
厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、常用労働者10人以上の事業場のうち約63.2%がメンタルヘルス対策に取り組んでおり、そのうち65.8%がストレスチェックを実施しています。

とくに労働者数50人以上の事業場では、ストレスチェックの実施が義務化されていることもあり、多くの事業場がメンタルヘルス対策の一環としてストレスチェックを導入しています。

参考:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査)」

ただ、現場では、「やらないといけないから毎年実施しているものの、正直うまく活かせていない」「受検率や報告書だけがゴールになっている」という声も少なくありません。

本記事では、ストレスチェックの目的や義務の範囲といった基本から、実施方法、高ストレス者への対応、集団分析の進め方、よくあるトラブルとその防ぎ方、外部委託サービスの選び方までを一通り解説します。
制度の仕組みだけでなく、「個人情報の扱い」「同意の取り方」「申出があったときの動き方」など、担当者が実務で悩みやすいポイントも具体的に覚えておくと、後のトラブルを防ぐことにつながります。
年に一度のイベントで終わらせず、「メンタルヘルス不調の兆候に早めに気づき」、「不調の重症化を防ぐための早期対応」、「職場改善」につなげたい人事労務担当者・産業保健スタッフの方は、この記事を運用のヒントにしてください。

ストレスチェックの目的は、実施そのものではなくメンタルヘルス不調の予防と職場改善です。「アドバンテッジ タフネス」なら、結果の見える化や分析を起点に、施策の検討から改善までを可視化し、PDCAを継続的に回せる仕組みづくりを支援します。

目次

ストレスチェックとは「メンタルヘルス不調の未然防止」と「職場改善」のための仕組み|制度の全体像

この章では、ストレスチェックの目的や義務、効果など、制度の全体像についてくわしく解説します。

ストレスチェックの目的とは

ストレスチェックの目的は、従業員が自分自身のメンタルヘルス不調を早めに察知して重症化を防ぐことと、組織として職場のストレス要因を把握して改善を回すことにあります。

メンタルヘルス不調の未然防止

定期的にストレス状態を確かめることで、心や体の不調が重くなる前に気づき、早めに対応できるようにすることが目的です。ストレスチェックは、病院で行う診断ではなく、職場でできる予防の仕組みとして位置づけられています。

本人に気づきを促しセルフケアのきっかけをつくる

ストレスチェックで特に大事なのは、結果を本人に返し、自分の状態に気づいてもらうことです。会社が結果を一方的に集めて管理するのではなく、まずは本人が「最近ちょっと疲れが抜けていないかもしれない」「眠りが浅くなっているかもしれない」などと振り返るきっかけをつくる役割があります。

職場の課題を見える化する

ストレスチェックは、一人ひとりのためだけの仕組みではありません。結果を部署や年代、役職ごとなどのグループ単位で集計することで、「どの部署で負担感が強いのか」「仕事量や人間関係に偏りがないか」といった職場全体の傾向も見えてきます。こうした集団分析をもとに、業務量の調整やコミュニケーションの見直しなど、具体的な改善策を検討していくことが期待されています。

離職や休職のリスクを下げる

離職や休職が増えると、本人の負担はもちろん、職場の人員不足や引き継ぎによる負荷増大、採用コストの増加など、組織全体にも大きな影響が出ます。ストレスチェックだけで離職や休職が必ず減るとは言い切れませんが、ストレスチェックの結果、実施者が高ストレス者として選定した労働者について、本人が希望して事業者に面接指導の申出を行った場合には、医師の面接指導につながり、必要な配慮を受けられる流れがきちんと用意されていれば、状態が悪化して長期の休職や離職に至るリスクを下げる可能性があります。

安全配慮義務を実務に落とす

会社には、働く人の安全と健康に配慮する責任があります。ストレスチェック制度は、その責任を日々の運用の中で具体的な行動に落とし込むための仕組みという側面も持っていますが、それだけで安全配慮義務を果たしたことになるわけではなく、日常的な対応や改善とあわせて考える必要があります。

ストレスチェックの義務とは

ストレスチェックは、一定規模以上の職場に対して、事業者が実施することが法律で定められている制度です。常時50人以上の労働者がいる事業場では、1年に1回以上の実施が義務になります。常時使用する労働者が50人未満の事業場については、現時点では「努力義務」ですが、法改正により将来的に義務化される方向性が示されています。

義務の単位は事業場で判断することが多い

ストレスチェックの対象かどうかを考えるときは、「会社」という大きな単位ではなく、「事業場」ごとに見るのが基本です。例えば、本社・営業所・工場など、場所や組織が分かれている場合、それぞれの事業場で常時50人以上かどうかを確認する必要があります。
本社がまとめて一括で実施するケースもありますが、実施義務の有無や、労働基準監督署への報告は、事業場単位の考え方が前提になります。拠点が多い会社ほど「各事業場の窓口は誰か」を整理しておくことが、スムーズな運用につながります。

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常時使用する労働者の考え方で人数カウントがズレやすい

「常時50人以上かどうか」は、「常時使用する労働者」の人数で判断します。ここには正社員だけでなく、一定の条件を満たす契約社員やパート・アルバイトも含まれます。
ストレスチェックの対象になるのは、基本的に次の両方を満たす人です。

  • 契約期間が1年以上、または更新により1年以上働く見込みがある/すでに1年以上継続して働いている
  • 1週間の所定労働時間が、同じ職場の通常の労働者のおおむね4分の3以上である

この線引きを決めずに「なんとなく」で数えてしまうと、「実は50人を超えていたのにカウントから漏れていた」といったズレが起きやすくなります。誰を人数に含めるのかを最初に整理しておくことが、義務の有無を正しく判断するうえでも大切です。

50人未満は現時点で努力義務だが改正で義務化の方向が示されている

常時使用する労働者が50人に満たない事業場では、これまでストレスチェックは努力義務、つまり「できる限り実施することが望ましい」という位置づけでした。しかし、法改正により、こうした小規模な事業場にも実施義務を広げていく方向性が示されています。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律案の概要」

具体的な施行時期は、法律の公布から一定期間内に政令で決めることとされており、将来的に「うちは小さいから関係ない」とは言えなくなる状況です。

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ストレスチェックの効果とは

ストレスチェックは、実施さえすれば自動的に効果が出るものではありません。結果の伝え方、面接指導の申出ルート、医師面接後の対応、集団分析から職場改善までをひとつの流れとして設計できているかどうかで、見えてくる効果が変わります。

従業員側の効果|セルフケアと相談行動が増える

ストレスチェックの結果は、まず本人に通知される仕組みになっています。これによって、自分の状態を数字やグラフで客観的に見られるようになり、自分の体調や業務状況を振り返るきっかけになります。
そのうえで、生活リズムを整えようとしたり、必要に応じて産業保健スタッフや人事労務担当者、上司に相談したりと、早めの行動につながりやすくなります。

高ストレス者への面接指導の効果|不調の早期対応とリスク低減に向けて

ストレスチェックの結果、実施者が面接指導を受ける必要があると認めた者については、本人が希望し事業者に申出た場合、法令に基づき医師による面接指導を受けることができます。この流れがきちんと動いていると、早い段階で専門家の評価を受けられるため、「限界まで我慢してから突然休職・離職する」といったケースを減らしやすくなります。

組織側の効果|職場課題が可視化され改善が進む

集団分析では、個人が特定できない形に集計したうえで、部署や職種ごとの傾向を確認します。「この部署は仕事の量に関する負担感が高い」「この職種は人間関係のストレスが強い」など、感覚だけではわかりにくい職場の状態を可視化できるのが特徴です。

マネジメント改善の効果|管理職の関わり方が変わる

ストレスチェックの結果をもとに職場のストレス要因が見えてくると、管理職は「何となくチームが疲弊しているな」ではなく、根拠を持って部下への関わり方を変えやすくなります。業務量が偏っているメンバーの洗い出しや、コミュニケーションがうまくいっていないチームの把握がしやすくなり、面談のテーマや指示の出し方も具体的になります。
その結果、「忙しさの中で手一杯で見守るしかない」状態から、「どこを整えると部下が働きやすくなるか」を考えやすくなり、チーム全体のパフォーマンス向上にもつながっていきます。

採用と定着への効果|働きやすさが評価され離職が減る

ストレスチェックの結果をもとに職場の改善が進むと、「この会社は働き方をきちんと見てくれている」という安心感が生まれやすくなります。業務の偏りがならされたり、繁忙期のサポート体制が整ったり、相談しやすい窓口が示されることで、日々の働きやすさとして従業員が実感しやすくなります。
こうした積み重ねは、従業員の声や採用広報にも反映され、「長く働けそうな職場」という評価につながります。その結果として、応募者が集まりやすくなり、組織の活性化も期待できます。

ストレスチェックに関わる人々|実施者と実施事務従事者の役割を整理

ストレスチェックは、人事労務部門だけで完結する業務ではありません。実施者と実施事務従事者、そして社内の担当者が役割分担し、個人情報の取り扱いと運用手順を守りながら回す必要があります。なお、実施者と実施事務従事者の要件や守るべき義務は、労働安全衛生規則(第52条の10)で定められています。

実施者

実施者は、ストレスチェックを専門的な立場からまとめる中心的な役割です。医師や保健師などが担うことが多く、制度の趣旨やプライバシーの考え方を理解したうえで、どの質問票を使うか、高ストレスの判定基準をどうするか、面接指導につなぐまでの流れをどうするかを決めていきます。自社の働き方や職場環境をよく把握している産業医がいる場合は、実施者としてストレスチェックに関わってもらうと、結果の解釈やその後の配慮・改善にもつなげやすく、より望ましいと言えます。

実施事務従事者

実施事務従事者は、実施者の指示を受けてストレスチェックの事務を動かす役割で、一般的に職場の事務職員や産業保健スタッフなどが選任されます。具体的には、受検案内の送付・未受検者へのリマインド・結果通知の配信・面接指導の申出受付の取りまとめなど、日々の運用に関わる業務を担当します。その一方で、個人情報を扱う立場でもあるため、「誰がどの情報にアクセスできるか」「結果データをどこにどう保管するか」といったルールを明確にし、例外を作らないことが重要です。
なお、労働者の人事を決定する権限を持つ人や、人事評価について一定の判断権限を持つ人は、実施事務従事者になることはできません。労働安全衛生規則(第52条の10)では、解雇・昇進・異動に関する権限を有する監督的地位にある者は、ストレスチェックに関する事務に従事できないことが定められています。また、労働安全衛生法(第105条)により、ストレスチェックの実施に関して知り得た労働者の秘密については守秘義務が課されており、公平性とプライバシーの確保が求められています。

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ストレスチェック担当者

ストレスチェック担当者は、会社の中で制度全体を動かすまとめ役です。人事労務担当者が担うことが多く、実施者や委託先と連携しながら、社内の体制づくり・従業員への周知・相談窓口の整備・結果や記録の保管方法の決定・高ストレス者への就業上の配慮の場づくり・集団分析の結果を踏まえた職場改善の推進などを引き受けます。

ストレスチェックのやり方|実施手順を5ステップで解説

ストレスチェックは、準備から従業員への受検案内、結果返却、その後の面接や職場改善につなげるまでを一連の流れとして考える必要があります。どこか一つでもあいまいな部分があると、受検率の低下や、プライバシー保護への不信感、「受けても何も変わらない」という不満につながりやすくなります。この章では、人事労務担当者が全体像をつかみやすいように、実務でのやることを5つのステップに分けて解説します。

ステップ1:導入準備・実施計画を立てる|時期・質問票の作成

最初のステップは、いつ・誰が・どのような体制で実施するかを決めることです。具体的には、実施時期、対象となる事業場と人数、実施者と実施事務従事者、面接指導を行う医師に誰を選任するか、集団分析の単位、結果をどこに保存するか、といった点をあらかじめ整理します。
ストレスチェックは、本人の同意なしに会社が個人の結果を閲覧できない仕組みになっているため、「誰がどの情報を取り扱うのか」「問い合わせ窓口はどこか」といったルールも、この段階で決めておくことが重要です。

また、複数拠点がある会社では、どの事業場が義務の対象か、常時使用する労働者をどう数えるかもここで確定させておくと、毎年の運用がぶれにくくなります。調査票については、厚生労働省が示している標準的な項目「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」をベースに、自社の実情に合わせて使うかどうかを検討します。

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ステップ2:従業員に周知する|安心して受けてもらう説明が鍵

準備が整ったら、従業員への説明を行います。ここで伝えるべきポイントとして、外せないものがいくつかあります。たとえば「ストレスチェックは、自身のメンタルヘルス不調に早めに気づきセルフケアに繋げるとともに、職場の環境もよくしていくためのものだということ」「結果はまず本人に通知されること」「会社は、本人の同意がない限り、個人の結果を把握できないこと」などです。

また、「ストレスチェックの結果を受け、医師等の実施者から面接指導の対象となり得るとされた場合には、本人が希望すれば医師による面接指導を受けることができること」、「その際は事業者への申出が必要となり、申出を行った時点で、限られた担当者(人事労務担当者・産業保健スタッフなど)がその事実を把握すること」もあわせて説明しておく必要があります。

これらが曖昧なままだと、「会社に全部見られそうだから受けたくない」と感じる人が出てきて、受検率が下がりやすくなります。説明はメールや社内掲示だけでなく、朝礼やオンライン説明会など複数の手段を組み合わせると伝わりやすくなります。
なお、医師による面接指導を申出たことを理由として、配置や昇進・評価などで不利益な取り扱いをしてはならないことは、労働安全衛生法上も明確に定められています。

ステップ3:実施する|受検率が落ちる原因と対策

実施の場面では、まず「いつからいつまで」「どのツールで」受けてもらうかを具体的に決めておくことが大事です。実施期間・ログイン方法・回答手順・問い合わせ窓口をそろえたうえで、案内メールや社内ポータルから一斉にスタートし、管理職からも部下に声をかけてもらう流れをつくりましょう。紙で行う場合は、配布と回収の責任者を決めておくとスムーズです。

受検率が落ちやすい理由としては、忙しくて後回しになる・回答方法がわかりにくい・所要時間が見えない・上司からの後押しがないなどが挙げられます。対策として、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットからも回答しやすくし、回答にかかる目安時間を事前に伝えて実施期間に余裕を持たせることが有効です。特に工場や店舗など、パソコンが一人一台ない環境の場合は配慮が必要です。

ステップ4:結果を本人へ通知する|個人結果の扱いで信頼が決まる

ストレスチェックの結果は、まず本人にだけ通知されるのが基本です。会社が個人の結果を確認するのは、本人から面接指導の申出があり、その調整や就業上の配慮が必要なときなど、限られた場面にとどまり、その場合も本人の同意を得たうえで、必要な範囲に絞って扱うことが前提になります。「同意しないと評価に影響するのでは」といった不安が生まれないよう、同意の有無によって不利益が生じないことをはっきり伝えておくことが大切です。

通知の際には、点数だけを示すのではなく、結果の見方の説明やセルフケアのヒント、産業医や相談窓口の連絡先などをあわせて案内すると、次に何をすればよいかがわかりやすくなります。また、医師による面接指導を希望する場合の申出方法についても併せて示しておくと、必要な支援につながりやすくなります。このとき、面接指導や就業上の配慮に必要な情報を、本人の同意を得たうえで、どのような範囲・経路で会社が把握するのかをあらかじめ説明しておくと、情報の扱いに対する安心感が高まりやすくなります。

ステップ5:実施後の対応をする|労働基準監督署への報告を行い、面接指導・集団分析・改善につなげる

ストレスチェックを実施したあとは、「面接指導や個別フォローが必要となる場合の対応」と「集団分析と職場改善」の2つを軸に動きます。実施状況は労働基準監督署への報告が必要になるため、報告書の作成や、結果・面接指導記録の保存期間なども事前に整理しておくと、毎年の運用が慌ただしくなりにくくなります。

ストレスチェック実施後の対応|申出後の対応フローと面接後フォロー

ストレスチェックで高ストレスの傾向が示されても、申出がなければ何もできず、申出があっても動き方がわからない、面接後の配慮が曖昧なまま終わってしまうなど、つまずきやすいのは実施後のタイミングです。「申出が来る→医師が面接する→企業側が就業上の配慮の決定、面接結果の記録・保存、フォロー」という一連の流れをあらかじめ決めておくことが、担当者の負担を減らす近道です。

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高ストレス者対応の全体像|選定→申出→面接→就業上の措置

流れそのものはシンプルで、「実施者が、ストレスチェックの結果から面接指導が必要な対象者を選定する」「本人が希望する場合に、事業者へ面接指導の申出を行う」「医師が面接指導を行い、その意見をもとに就業上の措置を検討する」という流れです。

従業員から面接指導の申出があったら、まず担当者は、当該従業員が実施者により「面接指導が必要な対象者」として選定されていることを確認したうえで、面接を行う医師と調整し、日程・場所を案内します。その際に、実施者や産業医など、面接を行う医師とも連絡を取り、事前に共有すべき情報を最低限まとめます。

大切なのは、就業上の措置に必要な範囲に情報を絞り、不要な個人情報まで広げないことです。あわせて、面接後に医師からの意見聴取を行い、対応に関わるメンバーや決裁者をあらかじめ決めておくと、「誰に話を通すか」で止まりにくくなります。

面接後のフォロー|就業上の措置と再発防止の進め方

面接後は、医師の意見を踏まえた就業上の措置を検討し、その必要があると認めるときは、当該労働者の実情を考慮して、現場に無理のない形で実行します。具体例としては、業務量の調整、配置や役割の見直し、労働時間への配慮などが挙げられますが、いずれも本人のプライバシーに配慮しつつ、現場が運用できるレベルまで落とし込むことが大切です。

ストレスチェックの結果を受け、実施者から面接指導の対象となり得る旨が示されたうえで、本人が医師面接を希望する場合、申出の時点で「面接指導を希望していること※」は、会社(人事労務担当者・産業保健スタッフなどの限られた担当者)に共有されることになります。
本人は、不利益への不安や迷いを抱えながらも、勇気を出して事業者に助けを求めている状態だと受け止めるべきでしょう。それにもかかわらず、面接指導が実施された後も、医師の意見を踏まえた就業上の措置が検討されない、あるいは実行されないまま放置されてしまうと、制度への信頼を大きく損なうおそれがあります。さらに、安全配慮義務の観点からも、事業者の対応姿勢が問われかねません。
※高ストレス者の選定自体は実施者が行うため、事業者が把握できるのは、あくまで面接指導の申出があった事実に限られます。

実際には、医師面接の申出をする人は決して多くありません。だからこそ、ストレスチェックとは別に、社内外で相談できる窓口を用意し、「いきなり会社に申出るのはハードルが高い」という人でも早めに相談できる経路を整えておくことも有効です。
再発防止は、本人への配慮だけでなく、企業側のストレス要因の見直しとセットで考えるのが現実的です。個別対応で終わらせず、可能な範囲で集団分析の改善テーマにも結びつけていくことで、同じ問題が繰り返し起こるリスクを減らしやすくなります。

集団分析とは?「傾向を見える化」して職場課題を特定するには

集団分析は、ストレスチェックの結果を部署や職種ごとにまとめて、職場のストレス傾向を見える形にするものです。個人を特定するのではなく、「どの職場で負担が大きいのか」「どんな要因がストレスになりやすいのか」をつかみ、改善の優先順位を決めるために使います。この章では、集団分析で見えることや集計単位、分析結果を改善につなげる方法などについて解説します。

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集団分析で見えること

集団分析でわかるのは、ある部署でストレス反応が高い人が多いか、仕事量や裁量、上司や同僚の支援などに偏りがあるかといった「傾向」です。誰が原因かを特定したり、特定の人を責める材料として使われないようにするためです。
結果を評価や責任追及に使うのではなく、「どう良くするか」を考える前提で扱うことが、受検率や信頼を保つうえでも重要です。

集計単位の考え方

労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアルでは、個人が特定されるリスクを避けるため、集団分析の単位は原則として10人以上とすることが示されています。
一定の条件を満たせばそれより少ない人数で集計することも可能ですが、「どのくらいの人数を一つの集計単位とするか」という社内ルールをあらかじめ決めておくと、匿名性への配慮を説明しやすくなります。

参考:厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」

分析結果を「改善テーマ」に変換するための考え方

集団分析の数値は、眺めて終わりにせず、具体的な改善テーマに落とし込むことが大切です。例えば「負担感が高い部署」なら業務量や役割分担の見直し、「上司の支援が少ない部署」なら面談や目標設定の運用見直し、といった形で、現場の仕事のやり方に結びつけます
その際は、全部を一度に変えようとせず、取り組むテーマの優先順位を決め、担当者と期限を決めて進めることで、翌年の結果との比較もしやすくなります。

ストレスチェックを実施するうえで担当者が最初にやること|体制づくりで9割決まる

ストレスチェックは、実施すること自体よりも、従業員が安心して受けられる体制と、実施後に改善へと動ける体制を作れるかで成否が決まります。受検率が上がらない・プライバシーに関する疑念が出る・高ストレスの結果が出ても医師面接につながらない・集団分析が形骸化するといった問題の多くは、実施前のルール不足が原因です。この章では担当者が最初にやるべきことについて解説します。

同意の得方・閲覧権限・問い合わせ窓口・保管方法など事前にルールを決める

最初に決めておきたいのは「個人結果をどう扱うか」です。ストレスチェックでは、本人の同意なしに会社が結果を見ることはできないため、権限をはっきり決めておく必要があります。
あわせて、問い合わせ窓口を一つにまとめておき、よくある質問への回答文も用意しておくと、周知後の混乱が減ります。記録や結果の保存期間や保管場所も事前に決め、アクセス権限とログの残し方まで含めてルール化しておくと、情報管理のリスクを抑えやすくなります。なお、ストレスチェックや面接指導に関する記録の保存期間は、労働安全衛生法上原則5年間とされています。

「会社に見られる?」不安が出る理由と、説明テンプレの考え方

従業員が気にするのは、「結果が評価や配置に使われるのではないか」という点です。説明するときは、ストレスチェックの目的が一次予防と職場改善であること・結果はまず本人に通知されること・原則として会社は個人結果を見ないことを伝えると整理しやすくなります。

あわせて、誰が閲覧できるのか・どこに保管するのか・外部委託先はどこまで関わるのか・問い合わせ先はどこかを具体的に示すと安心感につながります。説明文は一度作って終わりではなく、毎年出てきた質問を反映して更新していきましょう。

データ保管・アクセス権・委託先との取り決めで事故を防ぐ

ストレスチェックの結果は5年間の保存が求められています。また、面接指導に関する記録の保存期間も労働安全衛生法上原則5年間とされています。あちこちにデータが分散していると、誰がアクセスできるのか把握しにくくなるため、保管場所と権限のルールを一本化しておくことが大切です。
外部委託をしている場合は、委託先がどこまでのデータに触れるのかを契約書などで明確にし、データの受け渡し方法や暗号化の有無・削除の手順・トラブルが起きた場合の連絡フローまで決めておくと、担当者が変わっても一定の水準で運用しやすくなります。

社内実施と外部委託、どちらが良いかを判断する

ストレスチェックを社内だけで回すか、外部の専門業者に任せるかは、「費用が安い」など、一点突破で決めると、運用面で想定外の負担が出ることがあります。ポイントになるのは、①実施者を確保できるかどうか、②個人情報を安全に扱える体制が社内にあるかどうか、③集団分析や職場改善まで外部のサポートが必要かどうかです。この3つを軸に、「自社だけでやり切れる部分」と「専門家の力を借りたい部分」を切り分けて考えると選びやすくなります。

社内実施のメリット・デメリット

メリットデメリット
自社の働き方や組織構造に合わせて柔軟に設計しやすい
集団分析の結果をそのまま社内の改善検討につなげやすい
実施者や面接指導をしてくれる医師の確保・個人情報の管理・問い合わせ対応などの負担が人事労務担当者に集中しやすい

外部委託のメリット・デメリット

メリットデメリット
受検のシステム提供や運用事務、結果帳票、集団分析のレポート作成などをまとめて任せられ、担当者の工数を下げやすい
ストレスチェック制度や労働安全衛生法に関する専門知識を持つ事業者のノウハウを活用できる
他社の実施状況や職場改善の事例を踏まえた助言を受けられるため、自社だけでは思いつきにくい改善案を検討しやすい
委託範囲が曖昧だと毎年の調整が増える
社内の改善アクションが置き去りになりやすい

ストレスチェックの注意点|運用事故を防ぐために覚えておきたいこと

この章では、ストレスチェックの実施において大きなトラブルを防ぐために、最低限押さえておきたいポイントを解説します。これまでの解説でも何度か触れてきた内容ですが、どれもミスをしてトラブルになると取り返しがつかないので、あらためて確認しておきましょう。

個人情報保護を徹底する

個人結果の保管場所やアクセス権限を決めないまま運用すると、本来は閲覧するべきでない人の目に入ったり、紙やファイルが放置されたりしやすくなります。ストレスチェックの個人結果は、個人の健康に関わる情報であり、本人同意がない限り、実施者から事業者へ個人結果は提供できない仕組みとなっています。そのため原則として、事業者が個人結果を把握することは想定されていませんが、ルールがあいまいなままでは、意図せず不適切な共有が起きるリスクがあります。

実施者や実施事務従事者には厳格な守秘義務が課されており、違反した場合は法令に基づく罰則の対象となり得ますが、こうした法的な位置づけや責任が十分に共有されていないと、従業員側に「自分の情報は本当に守られているのか」という不安を与えかねません。

その結果、とくに支援が必要な高ストレスの人ほど、ストレスチェックや医師面接から距離を置いてしまいがちです。早めに相談につながっていれば防げたはずの休職や離職、症状の悪化が起きるリスクも高まります。個人情報の扱いをあいまいにすることは、制度への信頼を下げるだけでなく、「サポートが必要な人ほど制度を使えない」という、いちばん避けたい状態を自ら招いてしまうことにつながります。

不利益な取扱いをしない

ストレスチェックや面接指導をきっかけに、配置転換や評価にマイナスの影響が出ているように見えると、「本当のことは書かない方がいい」「申出なんて絶対にしない」という雰囲気が広がるリスクがあります。
そもそも法律上、高ストレス者として判定されたことや、医師による面接指導を希望したことを理由に、解雇や降格・不利益な取扱いを行うことは禁止されています。制度の趣旨に反するだけでなく、法令違反となる可能性がある点を、会社側も十分に理解しておく必要があります。

実際に不利益を与えるつもりがなくても、説明不足や情報の出し方次第で、従業員はそう受け取ってしまいます。その結果、体調が悪くてもガマンして働き続ける人が増え、休職や離職が出てから初めて問題が表面化する、という悪循環に陥りやすくなります。「申出をしても守られる」「正直に回答しても大丈夫」という安心感をつくることが、制度を機能させる前提になります。

派遣労働者について

派遣労働者については、ストレスチェックの実施義務は派遣元事業者にあります。そのため、「誰がストレスチェックを実施するのか」「医師による面接指導が必要となった場合、どこにつなぐのか」「結果や医師の意見をどの範囲で派遣先に共有するのか」を、あらかじめ派遣元・派遣先の間で整理しておくことが大切です。
ここがあいまいなままだと、派遣元と派遣先の両方から似た案内が届いて混乱したり、逆に「誰もフォローしない状態」が生まれたりします。また、必要以上の情報を派遣先に共有してしまうと、本人のプライバシーを損ねるおそれもあります。

派遣労働者が安心して申出や相談ができるようにするためにも、「誰が実施するか」「面接指導後の就業上の措置は誰がどのように検討するか」「どの範囲まで情報共有するか」といった役割分担を、契約や取り決めの中で明確にしておくことが重要です。

ストレスチェック運用で起こりがちなトラブルとその防ぎ方

ストレスチェックのつまずきの多くは、制度そのものより「運用の設計不足」から起きます。毎年同じところで困らないように、この章ではよくあるトラブルと、その防ぎ方を解説します。

面接指導につながらない|本人が申出やすい環境をつくる

「申出ゼロ」が続くときは、やり方がわからないか・知られたくないか・損をしそうかのいずれかです。申出方法をシンプルにし、情報がどこまで共有されるか・面接後の対応を事前に伝えておくと、「申出ても大丈夫」と感じてもらいやすくなります。

集団分析をしても改善が進まない|課題設定と責任者決めで止めない

レポートを眺めて終わってしまうのは、結果の読み解き方がわからないからです。テーマを少数に絞り、担当者と期限を決めて、業務量や役割分担など具体的な施策まで落とし込むと、次年度の結果とも結びつけやすくなり、効果検証が可能になります。

現場管理職が協力しない|負担とメリットを言語化して巻き込む

管理職が動かないのは、「責められそう」「何をすればいいかわからない」という気持ちがあるからです。また、「人事労務担当者が現場任せ」であったり、前述のとおり「結果の読み解き方がわからない」というケースもあります。
個人結果は原則として見ないことや匿名性の前提を共有したうえで、「業務のムダが減る」「属人化が減って協力しやすくなる」など、現場にとってのメリットも言葉にして伝えると、協力を得やすくなります。

また、結果のレポートを解説し、管理職が自分ごととして捉えてもらえるようにしてもらうことが第一歩です。

委託先との役割分担が曖昧|範囲と成果物を事前に決める

自社と委託先との業務範囲に関する認識のズレが発生すると、そのたびに調整コストがかかります。どこまでが委託先の仕事で、どこからが会社側の仕事か、何が納品されるのかを契約前に書き出して共有しておくと、後々の揉め事を防げます。

記録保存やアクセス管理が整理されていない|保管ルールと権限を一本化する

結果や記録がメールや個人のパソコンにバラバラに残っていると、誰も全体を把握できなくなり、情報漏洩のリスクも高まります。一人一台のパソコンを所有しない事業場にはとくに配慮し、保存場所を一つに決め、アクセスできる人を限定し、保存期間と削除のルールをセットで決めておくと、担当者が変わっても管理しやすくなります。

報告や書類対応で毎年バタつく|スケジュールとテンプレを整備する
毎年ギリギリになるのは、スケジュールと書類の型が決まっていないからです。年間の大まかな流れを先に引き、周知文・よくある質問・申出フロー・委託先チェックリストなどをテンプレとして残しておくと、新任担当でも迷いにくくなり、本来の改善活動に時間を回しやすくなります。

ストレスチェック外部委託サービスの選び方|比較軸と失敗しない発注ポイント

ストレスチェックの外部委託は、担当者の負担を減らしやすい一方で、委託範囲や役割分担によっては、調整の手間が増えることもあります。特に同意や個人情報の扱いなどデリケートな要素が多いため、慎重に選ぶことが大切です。この章では、選ぶ前に押さえておきたいポイントを解説します。

まず決めるべき委託範囲とは?

最初に「どこまでを外に任せるか」を決めておきます。ストレスチェックの実施だけなのか、結果通知や集団分析のレポート作成までなのか、職場改善のサポートまで含めるのかで、選ぶべきサービスが変わります。会社として今年のゴールを明確にしてから、候補を絞るとミスマッチを防ぎやすくなります。

サービス比較で見るべき軸とは?

比較するときは、「実施体制」「分析の支援」「社内の手間」「セキュリティ」の4つに分けて見ると整理しやすくなります。たとえば実施体制では、実施者や面接指導について、委託先がどこまで関与・支援するのか、体制を確認します。分析の支援では、どの単位までレポートを出してもらえるのか、その際に匿名性への配慮がされているかがポイントです。

社内の手間の観点では、周知やリマインド、面接希望者の取りまとめについて、あくまで責任は会社側に残ることを前提に、どこまで実務を支援してもらえるかを確認するとよいでしょう。セキュリティについては、アクセス権限の設計やデータの保存方法、削除方法などが明確になっているかをチェックすることが大切です。

契約前にすり合わせるべきこととは?

契約の前に、「何が納品されるか」「いつまでに終わるか」「誰がどこまで担当するか」を具体的に話し合っておきましょう。たとえば、結果通知の形式や集団分析レポートの内容・粒度、データの受け渡し方法については、事前にイメージをそろえておくことが大切です。
あわせて、周知開始日や実施期間、集団分析レポートの納品時期など、年間スケジュールも共有しておきます。さらに、個人結果の同意取得や申出の受付、面接日程の調整、結果の保存やアクセス管理を会社と委託先のどちらが担うのかも明確にしておきましょう。ここが曖昧なままだと、外部に委託していても、毎年の運用でバタつきやすくなります。

よくある発注ミスとは?

よくあるのは、実施だけを外部に委託して職場改善が動かないケース、個人情報の扱いを委託先任せにしてしまうケースです。法令上、個人情報の管理責任は事業者に残るため、委託していても設計や管理方針を決める必要があります。外部に任せても、同意や権限の設計、申出の流れ、保存やアクセス管理といった土台は会社側の責任として残ります。ストレスチェックを「受けさせて終わり」にならないように、自社でやることと外部に頼むことを分けて考えるのが安全です。

外部委託を検討する際は、「実施後の活用まで支援できるか」も重要な比較ポイントです。
アドバンテッジ タフネスは、ストレスチェック結果の整理・分析から、施策検討や改善の継続までを一貫して支援します。

まとめ|ストレスチェックについて正しく知り、適切に実施しよう

ストレスチェックとは、従業員のストレス状況を定期的に確認し本人に知らせることで、メンタルヘルス不調の兆候に早めに気づき、職場環境の見直しにつなげるための制度です。常時50人以上の事業場では実施が義務であり、50人未満であったとしても今後義務化への準備が必要です。

大事なのは、検査そのものよりも運用の設計です。個人結果を会社が勝手に見ないこと・同意の取り方・誰がどの情報にアクセスできるか・申出があった場合の面接指導の流れ・集団分析の結果をどの単位で出し、どう改善に使うかなどを、あらかじめ決めておくことで制度への信頼と効果が大きく変わります。

受検率が上がらない・面接指導につながらない・集団分析をしても何も変わらないといった悩みは、多くの場合、ルール不足と役割分担の曖昧さから生まれます。毎年使える周知文やフローチャートの型・保存ルールなどをテンプレとして用意し、社内と外部委託先の役割を整理しておけば担当者が変わっても安定して回せます。

ストレスチェックを「やらないといけないこと」としてこなすのではなく、職場の負担や働きにくさを見直す入口として位置付けることができれば、メンタルヘルス不調の予防だけでなく離職の抑制や採用力の向上にもつながっていきます。

参考:
厚生労働省「ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等
厚生労働省「ストレスチェック制度に関するQ&A
厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査) 令和6年結果の概要
厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
厚生労働省「こころの耳|ストレスチェック制度について

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
アドバンテッジJOURNALは、働くすべての人へ「ウェルビーイングな働き方と組織づくり」のヒントを発信するメディアです。導入企業数3,200社/利用者数600万人を超えるサービス提供実績と、健康経営銘柄に4年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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