新型コロナウイルス流行による心理的不安にマインドフルに対処する

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に伴い、外出自粛や在宅勤務などこれまでと違う生活スタイルを余儀なくされる状況が続いています。現段階では、このような状況は当面収束が見えず、疲れやストレスが溜まり、様々な心理的不安を感じている方も少なくないでしょう。

こうした状況を受け、ストレスの対処法について様々な解説が各所から出されています。たとえば、WHO(世界保健機関)による「流行下におけるストレス対処」のパンフレット*では、誰かと話す、生活習慣を整える、といった対処に加え、自分の抱える心理的不安について次のような推奨がされています。
*新型コロナウイルス感染症(COVID-19)一般向け特設ページ

・逆境を乗り越えた時に役立ったスキルの活用
・困難な状況の中で自分の感情とうまく付き合っていくためにそれらのスキルを使う

しかし、過去に役立ったスキルなんて思い当たらない、忘れてしまった、うまく体系化できていないという方もいると思います。

そこで本記事では、近年話題になっているマインドフルネスの考え方を用いて、心理的不安とうまく付き合うための方法を一歩踏み込んで解説します。外出が減り家で過ごす時間が増えた今こそ、マインドフルネス・スキルの練習を始めてみるチャンスです。

マインドフルネスとは

ごく簡単に要約すると、特定の「注意の払い方」のことです。

よく「今」という瞬間に気づくことと説明されますが、「今」というのは一瞬一瞬の現在進行中の時間のことであり、そこで生じ続けている刺激(五感で感じる音や光、においや味覚、触覚に加え、自分の考えや感情、身体の感覚も含まれる)をありのままに、ただ注意を向けて気づくようにするということになります。

たとえば、部屋の照明に手をかざしてみたり、窓の外からの光に目を向けたりすることで、その光の具合を感じることができるでしょう。また、周りに人がいたら話し声が聞こえるかもしれないし、1人でも時計や空調の音に気づくことができるかもしれません。

本記事を読もうと思った方なら、「この先どうなるか不安でたまらない」という考えを浮かべているかもしれませんし、なんとなくゆううつ感を持っているかもしれません。それらのすべてにただ気づくだけで止めておいて、不安やゆううつなどの思考や感情に巻き込まれないようにするのがマインドフルネスの特徴です。

ここで重要なのは、それらの刺激について自動的に判断をしないようにすることです。自動的な判断とは、つまり自然にぐるぐる考え続けてしまう流れに入り込んでしまう状態を指します。

人にとって日常的な反応ですが、それが行き過ぎるとつらくなってしまいます。具体的には、以下のような例が当てはまるでしょう。

・新型コロナウイルスに関するニュースを見て、今後の生活や周りの大事な人の悲観的なストーリーを次々に想像してしまうこと

・外出時に、知らない人が近くで咳をしたときに、「この人は実は新型コロナウイルス感染者で、今の咳で自分にうつってしまったのでは?」「感染したらもうおしまいだ…」と考えてしまうこと

とはいえ、自動的な判断をしないというのは非常に難しいので練習が必要になってきます。筋トレと同じように、練習を続けている間は鍛えられていますが、怠るとおとろえる類のものです。

なぜマインドフルネスが不安の対処に役立ちうるか?

アメリカで感染被害が特に大きいニューヨーク州の衛生局が、市民向けに出しているパンフレットでは、息切れといった身体症状が、不安症状、パニック発作、新型コロナウイルス感染症で共通した体験になるため、その区別法が解説されています。
※突然理由もなく起こる動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作。(厚生労働省『みんなのメンタルヘルス総合サイト』

その中で、息切れが不安やパニック発作によるものならば、深呼吸やマインドフルネスの実践で一般的には改善するということが説明され、不安への対処法としてマインドフルネスが推奨される方法の一つになっています。

マインドフルネスを体験するための方法は、主に瞑想やヨガなど、数千年前から人々が実践してきた自分自身との向き合い方が元になっています。またマインドフルネスの実践は、ストレス対処をはじめとした心や体の様々な問題への対処や予防などに有用なことが、近年の科学的な研究によって実証されてきています*1

あるマインドフルネスのプログラムを受けた人たちは何もしない場合と比べて、かぜやインフルエンザなどの急性呼吸器感染症に一定期間にかかった回数が少なくなるなどの効果も見られています*2

これらのことから、マインドフルネスの実践により、不安とのうまい付き合い方や、心や体の健康を総合的に良くすることも可能になるでしょう。

マインドフルネスを体験してみよう

最も有名なマインドフルネスのプログラムは8週間かけて行う集団でのトレーニングですが、外出を避けなければならない状況であることや、そもそも日本で受けられる場所があまりないことから、その参加はあまり現実的ではないでしょう。

職場で提供されるマインドフルネスプログラムの研究では、期間を短縮したもの、映像講義の視聴のみのもの、完全な自習形式でのものでも効果が見られています。

したがって、特に何かの病気の状態にあるわけではない健康な大人であれば、まずはマインドフルネスの実践を始めることで、現在感じる不安の対応としては有用な可能性があります。

まずマインドフルネスの実践はどういうことに取り組めばよいのか詳しく知りたい方は、以前の記事「マインドフルネスとは?身につけるための方法を解説」を参照ください。以下では、その中から今すぐできそうなポイントをまとめて紹介します。


マインドフルネス瞑想を体験する

筆者が受けたインタビューが掲載されている記事(外部webサイト)へ行って、6分ほどの音声ファイルを聞いてみてそのとおりにやってみてください。


歩きながら瞑想する

歩きながら、足の感覚や体全体の動き、および自分の呼吸に注意を向けます。床に着いた足に徐々に体重がかかり、それと共にもう一方の足が上がり、前に動き、床に降りる、といった繰り返される動きに注意を向け続けます。

視線は周りの景色を眺めたりせず、前方に固定します。部屋の中をぐるぐる歩き回る、トイレへの行き帰り時などで実施できます。


食べる瞑想をする

何かを食べる際に生じる、一連の自分の感覚に注意を向けます。よく使われているのはレーズンですが、どんな食べ物でも可能です。実施はおやつの時間や毎回の食事中のどこかというタイミングでもよいでしょう。

目の前の食べ物を、初めて見るようなつもりで、色や表面の感じをながめ、においをかぎ、箸やスプーンなどで少しつぶしてみて音を聞き、なるべく五感を使って食べ物を観察します。

最後にその食べ物を口に入れたら、最初はかまずにその感覚を味わい、次にゆっくりかみしめ、自分の口やのどの感覚に注意を向けながら飲み込みます。


ヨガをやってみる

すでに実践をされている方も多いと思いますが、マインドフルネスのプログラムにはヨガも組み込まれています。

ヨガの特定の姿勢のことをポーズと呼びますが、そのポーズをとっているときに生じる感覚に注意を集中しながら、ゆっくりと体を伸ばしたり、強化したりするトレーニングです。最近は動画なども多く公開されているので、取り組みやすい方法です。


ボディスキャンをやってみる

身体の様々な部分に注意を向けながら、注意を向ける先を一定の順序で動かしていく練習です。布団に入って寝る前でもできるので、ほかの方法を練習する時間がなくても、こちらは確実に試すことができます。以下に流れを説明します。

まずあおむけになって目を閉じます。それから、左足の先に注意を集中し、ゆっくりと足の付け根(足の下から上の方)に注意の先を移動させます。

移動に伴って生じてくる感覚を感じながら、呼吸にも意識を向けます。腰のところまで注意を移動させたら、右足の先に注意を移動し、同じように足の上の方に注意を動かしていきます。

同じように、腰から首、左右の手の先から肩まで、首、のど、顔、後頭部、頭の先まで注意を移動させます。頭の先まで達したら、そこから空気が出て、また入ってきて、全身を通り足の先から空気が出て、またそこに空気が入って、全身を通り頭の先に戻る、というようにイメージしながら注意を動かします。

まとめ

本記事では、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に関する心理的不安への対処スキルとして、マインドフルネスの考え方と実践方法について紹介しました。日々の生活にマインドフルネスの実践を取り入れることにより、少しでも皆さまの心理的不安とうまく付き合うスキル向上に役立てていただければ幸いです。

文献
*1土屋政雄(2019)マインドフルネスと未病 未病対策に役立つマインドフルネス マインドフルにいきいきとした人生を送る.日本未病システム学会雑誌, 25, 65-70 (
https://researchmap.jp/multidatabases/multidatabase_contents/detail/230084/03ea7a69e791fd479184b41bb94bf05b?frame_id=565479)
*2 Barrett, B., Hayney, M. S., Muller, D., Rakel, D., Brown, R., Zgierska, A. E., … & Coe, C. L. (2018). Meditation or exercise for preventing acute respiratory infection (MEPARI-2): A randomized controlled trial. PloS one, 13(6).

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【筆者プロフィール】

土屋政雄
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 主任研究員
産業保健心理学を専門としてACT Japan:The Japanese Association for Contextual Behavioral Science 理事(2018年4月 - 現在)やマインドフルネスやアクセプタンス&コミットメント・セラピーの専門家として講演等を行う。著作物(監訳) 『マインドフルにいきいき働くためのトレーニングマニュアル 職場のためのACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)』 星和書店

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