発達障害が疑われる部下にどう対応するか

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本記事では、昨今、問い合わせを頂くことがある「発達障害が疑われる社員に対する職場での対応方法」について考えていきます。まず発達障害とは何かを知った上で、その後、上司として部下にどう対応するか、ケースを通して考えていきたいと思います。

発達障害とは

発達障害の早期発見と支援を目的に制定された発達障害者支援法によると、発達障害とは「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義されています。

言い換えると、生まれつき脳の一部の発達で障害があるために、社会生活を営む上で困難が生じている状態といえます。

発達障害には、相互的な対人関係の障害や、興味や行動のこだわりに代表される自閉症スペクトラム障害(ASD)、不注意や衝動性による症状に代表される注意欠如/多動性障害(ADHD)、読む、書く、計算するなど特定の事柄のみが難しい状態である学習障害(LD)等の種類があります。

人数の総計として、ASDが約100人に1〜2人程度、ADHDが約30人に1人程度、学習障害が約50人に1人程度の割合で存在すると言われています。加えて、診断基準には該当しないけれども、ある程度そのような傾向が認められる方が相当数いると考えられるため、昨今、極めて身近な障害であるといえます。

そのような背景もあって、最近では管理職として、発達障害と診断がついた部下や、診断はついていなくとも、そうした特徴が疑われる部下をマネジメントする機会も増えています。

一方、発達障害という診断上の手がかりがあるからといって、直ちに対処・解決方法がわかるというものではありません。むしろ安易に管理職が発達障害というレッテルを使用して、仕事上のパフォーマンスの低さの言い訳として使用したり、異動の口実にしてしまうリスクが生じたりしかねません。

発達障害の特徴を有する方に対しての画一的な対応方法があるわけではありませんが、ここでは実際にそのような診断が明らかになった、あるいは診断がなくともそうした特徴が疑われる部下への業務における対応方法の例をいくつかご紹介します。

指示の出し方を工夫する

例として、丁寧に仕事を行う一方、期待するスピードで業務をこなすことができていない部下のケースを考えてみます。発達障害の特徴を有する方では、このようなケースが見られる場合があります。

背景として、業務の進め方へのこだわりが強く、自分が納得した進め方でないと業務をしない理由をつけて、業務自体の拒否やスピードの低下が見られることや、情報処理能力の低さから頻繁に注意が周囲に散ってしまうことで、目の前の仕事に集中できないこと等が考えられます。

職場のメンバーが作業を肩代わりする等して、そのような状況の対処に困っている場合であっても、ご本人は職場内での雰囲気を読み取ることが難しく、行動を改める機会を持てていない場合もあります。

上司としては、どのように応じれば良いのでしょうか。まずは、業務の指示の出し方に関して見直す必要が有ります。「何のために」、「何を」、「どのように」進めるのかを明確にして指示ができているかを確認します。

一度正しく伝えた場合であっても、その後に本人が適切に業務を進められているかを定期的に確認することも重要です。

当然ですが、作業を適切に進められていないことに関して本人自身も困り感を抱いているので、本人を叱りつけることや、作業が遅く残業が増えていることに言及して、残業を減らすように本人に伝えるだけでは有効ではありません。

かといって、特定の人だけを優遇しているように他の職場のメンバーに映ってしまっては、職場全体の士気の低下など悪影響も出てしまうので、業務量の削減等の配慮が必要な場合では、本人の同意のもと、メンバーに説明をして納得してもらう必要があります。

視覚情報を活用する

もう一つ別のケースとして、業務の指示を出したのに、本人が全く別の作業をしている、または出した指示をすっかり忘れてしまっている例を考えてみます。

上司としては業務の指示を出した時に、しっかりメモをするように指示をすれば良い、と考えてしまいがちですが、実はメモをとるという行為は発達障害の特徴を有する人にとっては、非常に困難なタスクである場合が想定されます。

メモをするという行為は、声を通じて聴覚的に処理された情報を保持しながら紙に書くというマルチタスクの要素が入っており、同時に何かを処理することが困難な人にとっては難易度が高いタスクの一つとなります。

視覚的情報を処理することが得意な人を「視覚優位」、聴覚的情報を「聴覚優位」といいますが、発達障害の特徴を有する場合、どちらかに偏りが有るケースがしばしば見られます。ご本人は一生懸命、メモをとろうと努力しているにもかかわらず、できない場合があるのです。

上司の対応上の工夫としては、会議で口頭によって説明する際にホワイトボードを活用しながら、視覚情報を活用することが考えられます。適宜、話を止めながら、理解をしているか確認します。

その際、本人の「わかりました」という発言をそのまま解釈しないようにします。ご本人は悪気なく、会議の進行を止めたくないために、理解が十分にできていなくともそうした発言をしている場合があるためです。

よって、会議での心理的安全性(従業員が安心して、自分の考えを自由に発言できる状態のこと)を確立できていることが前提として求められます。

また、メールを利用して指示を具体的に書き起こすことも上司の対応として考えられます。発達障害を有しているか否かに関わらず、会議上で示された指示をメールで改めて書き起こすことは業務連携のためにも有効です。指示の内容も先程のように、何のために、何を、どのようにやるか等、具体的に示します。

カウンセリングサービスを活用する

以上、2つのケースを見ながら、上司の対応例を紹介しました。実際の職場では、上記の例のように上司の立場から見ると発達障害の疑いがあるけれども、本人はその自覚が無いといった場合が想定されます。

そのような場合、ご本人の業務上の困り感が無いのであれば、上司からの医療機関への受診勧奨は難しく、現実的ではありません。

しかしながら、本人が発達障害であるという自覚はないにせよ、職場で起きているトラブルやそれによるストレス症状などを聞いた上でカウンセリングを促すことは一つの有効な施策となります。カウンセリングは医療受診とは異なり、ご本人の抱えている困り感を整理する場として紹介できます。

社内で健康管理に関わるメンバー(保健師や公認心理師)がいれば相談を促すことができますし、社内のメンバーに相談しづらいようでしたら、外部のカウンセリング窓口であるEAP(Employee Assistance Program=従業員支援プログラム)を活用することも有効です。

また、本人に限らず、上司自身がそうした発達障害の特徴を有する部下のマネジメントに関して相談することも非常に重要なアプローチです。部下本人が発達障害であるか否かに関わらず、マネジメントにおける困り感を自身だけで抱え込まずに相談できる体制を構築することが大切です。

アドバンテッジ相談センターでは、上司がどのようにマネジメントで工夫できるか、具体的なコンサルテーションも行っています。是非、積極的に活用することを推奨いたします。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 コンサルタント

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