「これってハラスメント?」職場ハラスメントの種類や定義、企業に求められる対応が知りたい人事労務担当者・管理職の方へ、ハラスメントの種類一覧をはじめ、発生する原因や関連法令、防止対策までわかりやすく解説します。新たなハラスメントが注目される今こそ、正しい知識を身につけ、ハラスメント防止策を適切に講じていくことが重要です。自社の対策を見直すきっかけとしてご活用ください。
「ハラスメント防止社員研修プログラム」では、管理職・一般従業員・相談窓口担当者など、対象に合わせた研修プログラムを提供しています。アンコンシャス・バイアスやEQにも着目し、知識の習得だけでなく、ワークを通じた気づきと行動変容につなげます。

目次
ハラスメントは不法行為?

ハラスメントは単にモラルを乱す行為というだけではなく、内容や悪質性によっては法的責任を問われる行為です。社内の就業規則違反として懲戒処分の対象になる他、被害者に精神的・身体的な損害を与えた場合は、民法上の不法行為として損害賠償責任を負う可能性があります。また、悪質なケースでは刑法上の犯罪として刑事責任を問われることもあるでしょう。パワハラやセクハラなどは、関係法令に基づき企業に防止措置が義務付けられており、企業は、ハラスメントを未然に防ぐための適切な対策が求められます。
ハラスメントとは

次に、ハラスメントとは何か、ハラスメントを取り巻く現状についてみていきましょう。
ハラスメントとは
ハラスメントとは、ある発言や行為によって、相手に不快な感情を抱かせたり、脅したり、人としての尊厳を傷つけたりすることです。一般的には相手が不快に感じる言動を指しますが、職場におけるハラスメントかどうかは、行為の内容や頻度・継続性、就業環境への影響などを踏まえて総合的に判断されます。
代表的なハラスメントとしては、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、パワーハラスメント(パワハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)などが挙げられ、特に職場におけるこれらのハラスメントは社会問題となっています。
最近では、カスタマーハラスメント(カスハラ)が注目され、ニュースなどでも各企業の対応が取り上げられました。新たに生まれている「◯◯ハラ」という言葉も、すべてこの「ハラスメントの定義」に基づいているといえます。
ハラスメントの種類は多様化し社会問題化
近年、ハラスメントはパワハラやセクハラだけでなく、カスタマーハラスメントや就活ハラスメントなど、さまざまな種類が社会問題として注目されています。その背景には、働き方や価値観の多様化に加え、ハラスメントに対する社会全体の意識が高まり、被害者が声を上げやすい環境になったことも一因です。また、暴力や暴言のようなわかりやすい行為だけでなく、指導との境界が曖昧なケースも増えており、企業は判断が難しい中で対応を迫られています。
ハラスメントの種類一覧と構成要件

近年は、ハラスメントへの関心や問題意識の高まりを背景に、これまでは明確に「ハラスメント」とは呼ばれなかった「相手に苦痛を与える発言・行動」が言語化されるようになりました。結果として、「これもハラスメントにあたるのではないか」という提起がなされ、日々新しい「◯◯ハラ」が生まれることで、ハラスメントの種類が細分化されています。
ここでご紹介するハラスメントの一覧には、厚生労働省などが明確に定義付けているものの他、市民社会の声から顕在化し、名付けられたものも存在します。
<ハラスメントの種類>
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ)
- ケアハラスメント(ケアハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- ロジカルハラスメント(ロジハラ)
- 時短ハラスメント(ジタハラ)
- エイジハラスメント(エイハラ)
- ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)/SOGIハラスメント(SOGIハラ)
- 就活ハラスメント(就ハラ)
- 就活終われハラスメント(オワハラ)
- 求職者へのセクハラ
- アルコールハラスメント(アルハラ)
- テクノロジーハラスメント(テクハラ)
- リストラハラスメント(リスハラ)
- リモートハラスメント(リモハラ)
- ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
- スモークハラスメント(スモハラ)
- スメルハラスメント(スメハラ)/音ハラスメント(音ハラ)
- ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
- ホワイトハラスメント(ホワハラ)
- カスタマーハラスメント(カスハラ)
- 不機嫌ハラスメント(フキハラ)
- 時代遅れハラスメント
- マッチングハラスメント
パワーハラスメント(パワハラ)
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、役職や権力を持ち、優位な立場にある人が業務上の適正な範囲を超えた言動により、従業員の就業環境を損なう行為を指します。一般的に認識されやすいのは、上司から部下に対するパワハラですが、それだけではありません。
例えば、別部署から異動してきたばかりで、チームのルールや状況についての情報が少ない上司への攻撃など、組織の中で不利、あるいは弱い立場にある人への言動もパワハラとして認められます。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
職場内におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、性的な発言・行動により、従業員の労働条件が悪くなったり、就業環境が悪化したりすることです。
例えば、異性の身体に意味もなく触る、相手との信頼関係が築けていないにもかかわらず、恋愛や性に関する話題を持ちかける、社内や取引先などに対して性的な内容の噂を流すなどがセクハラにあたります。また、近年は同性間でのセクハラの他、女性から男性に対するセクハラも存在します。
マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠中や出産前後の女性に対する嫌がらせです。例としては、「産前休業(産休)の取得を上司に相談したら退職を促された」といった制度利用にまつわる嫌がらせや、「妊娠を報告したら、忙しい時期に妊娠しないでほしいと非難された」など、状態に対する嫌がらせがあります。なお、育児休業の申請によって男性が受ける嫌がらせは、パタニティハラスメント(パタハラ)に該当します。
マタハラ・パタハラの防止については法律面での整備も進んでおり、国をあげて対策が行われているのが現状です。育児介護休業法が改正されるなど、男性の育休も取りやすい環境になっていますが、依然として妊娠中、あるいは育児を行う従業員への風当たりは強いと言わざるを得ません。
【関連コンテンツ】
マタハラ(マタニティハラスメント)とは?具体例や関連法律を解説
ケアハラスメント(ケアハラ)
ケアハラスメント(ケアハラ)とは、家族の介護と仕事を両立する従業員に対して嫌がらせをしたり、介護に関する制度の利用を妨げたりする行為です。例えば、介護休業の取得を申し出た従業員に「周囲に迷惑がかかるから」と取り下げるよう求める、時短勤務や休暇の利用を「特別扱いを受けてサボっている」と非難する、介護を理由に昇進や重要な業務から不当に外す、などが当てはまります。
モラルハラスメント(モラハラ)
職場におけるモラルハラスメント(モラハラ)とは、従業員の人格や尊厳を傷つけ、精神的に苦痛を与えることを指します。他の従業員がいる前で過剰に叱責する、誹謗中傷や陰口、無視や舌打ちをするといった行為が当てはまりますが、物理的な暴力行為は含まれません。
【関連コンテンツ】
モラハラとパワハラの違いとは?定義や職場で発生する原因と対応方法を解説
ロジカルハラスメント(ロジハラ)
ロジカルハラスメント(ロジハラ)とは、正論によって相手を追い詰めて言い負かし、不愉快にする行為です。論理的に説明し、仕事を進めること自体は問題ありません。しかし、たとえ正論であっても、相手に対する敬意が欠けていたり、侮辱するような発言が含まれていたりすると、ロジハラに該当する可能性があります。
「自分が絶対に正しい、相手を説得しなければならない」という思い込みが強い人ほど、相手の気持ちに寄り添って発言することが難しいため、注意が必要です。
時短ハラスメント(ジタハラ)
時短ハラスメント(ジタハラ)とは、業務内容やフローを見直さないにもかかわらず、労働時間の短縮を強いて、従業員に負担をかけることです。働き方改革の推進に伴い、長時間労働を是正する企業が増えてきたことも一因ですが、具体的な施策がないまま労働時間だけを短縮されてしまうと、残った業務を終わらせるためにサービス残業をしたり、自宅に仕事を持ち帰ったりしなければなりません。
見かけ上の労働時間は短縮できていても、実際は従業員の心身に大きな負担がかかります。また、サービス残業となる場合、労働に対する賃金が見合わないことはもちろん、サービス残業そのものが違法行為でもあるため問題視されています。
エイジハラスメント(エイハラ)
エイジハラスメント(エイハラ)は、年齢に紐づけて個人を中傷したり、悪口を言ったりすることです。「若いからこれくらいできるだろう」と中高年の従業員が若手に仕事を強要する、あるいは、若手従業員が中高年の従業員を「その歳でこんなに簡単な仕事もできないなんて」と揶揄するような発言もエイハラに該当します。
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)/SOGIハラスメント(SOGIハラ)
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、性別を理由とする差別や嫌がらせです。セクハラは、身体的な特徴による性的嫌がらせですが、ジェンハラは「男らしさ」「女らしさ」のような社会的な性差によるハラスメントで、特定の業務を男女どちらかのみに対応させるような行為が該当します。
LGBTQなど、性的指向や性自認を理由とした嫌がらせは、「SOGI(ソジ/ソギ)ハラスメント(SOGIハラ)」として区別されることもあります。例えば、差別的な言動、本人の同意なく性的指向・性自認を他人に伝える「アウティング」などです。ジェンハラと重なる部分もありますが、SOGIハラは性別だけでなく、誰を好きになるか、性別をどう認識しているかといった性的指向・性自認に関する嫌がらせを指します。
就活ハラスメント(就ハラ)
就活ハラスメント(就ハラ)とは、就職活動中やインターンシップに参加している学生らに対するセクハラ、パワハラのことです。企業の採用面接担当者やインターンシップを通して知り合った従業員、リクルーターなどが、その優越的な立場を利用して学生に行うハラスメント行為が該当します。
具体的には、面接で特定の性別の学生に対し、恋人の有無や結婚の希望などを尋ねる、インターンシップ中の学生を執拗に食事に誘う、採用の見返りとして不適切な関係を迫るなどの例があります。
就活終われハラスメント(オワハラ)
就活終われハラスメント(オワハラ)とは、就職活動をしている学生などに対し、企業が内定/内々定を出すことと引き換えに、他の企業の選考や内定を辞退し、就活を終えるよう強要することです。
選考の場で他社の内定を断る電話を入れるように求める、入社承諾書にサインさせるといった行為の他、内定者研修で長時間拘束して他社の選考に行きづらくする、懇親会などで過剰な接待をして内定を断りづらくする、といったケースが挙げられます。
求職者へのセクハラ
求職者へのセクハラとは、採用面接や企業説明会、インターンシップなどの採用活動において、応募者や就職活動中の学生に対して性的な言動を行い、不快感や苦痛を与えることです。例えば、性的な質問や身体への接触、執拗に食事に誘うことなどが該当します。
アルコールハラスメント(アルハラ)
アルコールハラスメント(アルハラ)とは、お酒の場で行われるハラスメント行為です。上下関係や伝統と称して飲酒を強要する、一気飲みを煽るなどの他、お酒が飲めない人をからかうような言動、お酒に酔った状態でのセクハラ行為や暴言、暴力などもアルハラとされます。
テクノロジーハラスメント(テクハラ)
テクノロジーハラスメント(テクハラ)とは、パソコンやスマートフォンなどのデジタル機器の取り扱いに慣れていない人や、苦手とする人に対して行われる嫌がらせのことです。テクハラは、ITリテラシーの高い若い世代から中高年層に対して、あるいは同僚間でハラスメント行為が行われることもあり、誰もが加害者、被害者になり得ます。
例えば、新しいITツールの使い方を説明しないまま「こんなこともできないんですか?」と非難する、「残業してもいいので今日中に覚えてください」と過度な強要をするなどの行為です。一方、デジタル機器の操作を苦手とする人が、得意とする人に仕事を押し付ける「逆テクハラ」のケースもみられます。
リストラハラスメント(リスハラ)
リストラハラスメント(リスハラ)とは、リストラの対象となっている、あるいはパフォーマンスが高くない従業員に対し、自主退職するよう追い込む行為のことです。仕事をわざと割り振らない、頻繁に配置転換を行って周囲から孤立させるなどして企業にとどまりにくい環境を作ります。
明らかなパワハラ、モラハラではなく、ハラスメントと認められにくいラインを見極めて陰湿な嫌がらせをしているケースも少なくありません。企業が退職勧奨・退職勧告を行うことそのものは違法ではありませんが、過度な勧奨はハラスメントとみなされる可能性があるため要注意です。
リモートハラスメント(リモハラ)
リモートハラスメント(リモハラ)とは、リモートワークの中で生じるハラスメントです。例えば、「進捗状況の報告を過度に求める」「たまたま連絡が取れなかったことをサボっていると断じて叱責する」など、行き過ぎた監視や一方的な思い込みによる叱責などが該当します。
【関連コンテンツ】
「リモートパワハラ」に、普通の上司が陥りやすい理由
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)は、SNSを通して行われる、比較的新しい形のハラスメントです。SNSでつながった従業員間で生じたフォローの強要やリアクションの過度な要求、執拗な個別メッセージの送信などのトラブルが該当します。
また、SNS上の投稿やSNSでの私的なやり取りを職場で共有する、話題に上げるようなことも、プライバシーの侵害としてソーハラと認められる場合があります。
スモークハラスメント(スモハラ)
スモークハラスメント(スモハラ)とは、非喫煙者に対して健康被害を与える、不快な思いをさせる嫌がらせ行為です。非喫煙者の近くで勝手にたばこを吸う、非喫煙者に喫煙を強要するような行為が該当します。
スメルハラスメント(スメハラ)/音ハラスメント(音ハラ)
スメルハラスメント(スメハラ)とは、ニオイに関するハラスメントです。口臭や体臭、香水、柔軟剤などのニオイが強いことで、相手に不快感を与えるような場合、スメハラに当てはまる可能性があります。
一方、音ハラスメント(音ハラ)は、周囲が不快な思いをするような音を生じさせるハラスメントです。大声で雑談する、引き出しやドアを思いきり閉めて大きな音を出す、などが当てはまります。音を出している当事者は、無自覚であることがほとんどです。
ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
ハラスメントハラスメント(ハラハラ)とは、業務上適切な指導であるにもかかわらず、一方的にハラスメントと騒ぎ立てる行為です。本人の被害者意識が強い場合もあれば、単純に指導とハラスメントの区別がついていないケースもあります。「なんでもハラスメント」と呼ばれることもあります。
ハラハラは管理職にとって心配の種となる事象です。「必要以上に厳しいことを言うとハラスメントになる」「良かれと思って助言したのに逆恨みされる」となると、コミュニケーション不全に陥る可能性があります。企業として、適切な部下指導やアドバイスの範囲を明確にしておくことが推奨されます。
ホワイトハラスメント(ホワハラ)
ホワイトハラスメント(ホワハラ)とは、上司や先輩が「負担をかけないように」と過剰な配慮をすることで、部下や後輩の成長機会を奪う行為を指します。本人の意思に反して仕事を任せなかったり、適切な指導を避けたりすることで、結果的に精神的な負担やプレッシャーを与えてしまうことが問題視されています。
多くの若手従業員は成長できる環境や上司からの適切な指導を求めていますが、ハラスメントを警戒するあまり、上司が距離を置くケースも少なくありません。ホワハラを防ぐには、過度な配慮を避け、適切なコミュニケーションとフィードバックを心がけることが重要です。
【関連コンテンツ】
【ホワイト離職とは】何故若手が辞めるのか?原因と企業ができる対策
カスタマーハラスメント(カスハラ)
カスタマーハラスメント(カスハラ)とは、顧客や消費者からのクレームのうち、肉体的あるいは精神的に追い詰めるような攻撃、威圧的な言動、執拗な謝罪の要求など、社会通念上の妥当性を欠いた行為のことです。BtoCだけではなく、BtoB企業でも発生する可能性があり、消費社会の中では誰しもが加害者となり得ます。
商品の不具合や欠陥、サービスの不手際などについて、適切な対応や改善を求めることは正当なクレームですが、購入価格以上の補償を要求する、従業員に暴力や侮辱的な言動をするなどはカスハラに当たります。
【関連コンテンツ】
カスタマーハラスメントとは?定義や企業の対策方法、関連法令を解説
不機嫌ハラスメント(フキハラ)
不機嫌ハラスメント(フキハラ)とは、態度や口調、ため息、無視などによって不機嫌さを表し、周囲に威圧感や精神的な負担を与える行為です。暴言のような直接的な攻撃ではなく、言葉を多く使わずに相手へ圧力をかけることから、「サイレントモラハラ」とも呼ばれます。
時代遅れハラスメント
時代遅れハラスメントとは、古い/新しい価値観や働き方を一方的に押し付けるハラスメントです。「若いうちは残業して当たり前」「昔はもっと厳しかった」など、昔の価値観や自分の経験を基準に指導したり、「最近の若者は根性がない」と世代全体を決めつけたりするような言動です。
また、若手が年長者世代を「時代遅れ」「ITに弱い」と決めつけることも該当します。なお、「時代遅れハラスメント」は法令上の明確な定義がある言葉ではなく、社会通念上、こうした行為に対して使われる言葉です。
マッチングハラスメント(マチハラ)
マッチングハラスメント(マチハラ)は、マッチングアプリや婚活サービスの利用状況を勝手に話題にするなどして相手に不快感を与えることです。「○○さんマッチングアプリやってるんだって」と本人の許可なく第三者へ共有したり、「誰と会ったの?」などと、執拗に詮索したりすることが該当します。
恋愛や結婚といったプライベートな話題について、本人の意思を尊重せず踏み込む言動は、ハラスメントに当たる可能性があります。なお、「マチハラ」は、法令上の明確な定義がある言葉ではなく、社会通念上、こうした行為に対して使われる言葉です。
企業が対策を求められる職場ハラスメントとは

企業として対策が求められている職場ハラスメントとその現状、代表的な種類について解説します。
職場ハラスメントとは
職場ハラスメントとは、職場での優位な立場や人間関係を背景に、相手に精神的・身体的な苦痛を与えたり、働く環境を悪化させたりする行為のことです。特にパワーハラスメントについては、厚生労働省が以下のように3つの要素をすべて満たすものを、パワハラの考え方として提示しています。
<パワハラの3要素>
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
職場ではパワハラ以外にもさまざまなハラスメントが発生しています。法律の改正などに伴い、企業が対策を講じるべきハラスメントの範囲も広がっています。
出典:雇用環境・均等局「パワーハラスメントの定義について」
職場におけるハラスメントは高止まり傾向
職場ハラスメントの相談件数は依然として多く、厚生労働省の「令和5年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、令和5年度の職場における「いじめ」や「嫌がらせ」の相談、あっせんの申請件数は60,125件でした。民事上の個別労働紛争の中で12年連続最多となりました。一方で、同調査では、企業の約6割が「ハラスメントかどうかの判断が難しい」と回答しています。
近年はパワハラやセクハラに加え、カスタマーハラスメントや就活ハラスメントなど、新たなハラスメント課題への対応も求められています。特にカスハラについては、令和5年度、厚生労働省「職場のハラスメントに関する実態調査」において、「件数が増加している」と答えた企業の割合のほうが「減少している」と回答した企業よりも高いと報告されました。ハラスメントが多様化し、判断基準の複雑になっていることからも、正しい知識を踏まえた対応体制の整備が重要となっています。
参考:厚生労働省 「令和5年度 厚生労働省 委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書(概要版)」
職場ハラスメントの代表例
企業が重点的に対策すべき、代表的な職場ハラスメントは以下の通りです。
- パワーハラスメント
- セクシュアルハラスメント
- 妊娠・出産等に関するハラスメント(マタハラ)
- 育児・介護休業等に関するハラスメント(パタハラ・ケアハラ)
- カスタマーハラスメント(令和8年10月から対策を義務化)
- 求職者等に対するセクシュアルハラスメント(令和8年10月から対策を義務化)
これらは企業に防止措置や相談体制の整備などが求められるハラスメントです。従業員だけでなく、顧客や求職者を含めた対応範囲へと広がっていることから、法改正を踏まえた継続的な見直しと実効性のある対策が不可欠です。
職場ハラスメントが発生する原因・背景

続いては、職場ハラスメントが発生する原因や背景についてみていきましょう。
ハラスメントへの関心・認識が薄い
まず挙げられるのは、ハラスメントに対する従業員の関心・認識の薄さです。そもそも、「どのような行為がハラスメントになるのか」を知らなければ、ハラスメントと認められる言動を無意識のうちにする可能性があります。
こうした、本人にハラスメントをしている自覚がないまま行われる「無自覚ハラスメント」にも注意が必要です。仮にハラスメントの定義や事例を知っていても、「自分の部下なのだから厳しく指導してもついてくるだろう」「新人は早く出社するべきだ」などという思い込みによって、ハラスメントを発生・継続させてしまうケースもあるでしょう。ハラスメントの定義に基づき、相手がどう感じるかを理解し、想像することが重要です。
アンコンシャス・バイアスがある
自覚のないハラスメントが起きる要因の一つに、「アンコンシャス・バイアス」があります。「アンコンシャス・バイアス」は、自身の先入観や思い込みによって生じる無自覚の偏見です。相手にとって「良かれ」と思って発言したことであっても、その相手が不快に感じると「ハラスメント」と受け取られる可能性があります。誰もが「アンコンシャス・バイアス」の存在を認識することが大切です。
【関連コンテンツ】
アンコンシャス・バイアスの事例とは?~ハラスメント行為者のカウンセリング現場から~
管理職への教育が不十分
管理職としての役割や、部下への適切な指導方法を十分に学ぶ機会がないことも、ハラスメントにつながる要因です。マネジメントに不慣れなまま、曖昧な指示や一方的な目標設定を続けると、部下との認識のずれが生じやすくなります。思うように業務が進まない状況で、感情的に叱責したり、必要なコミュニケーションを避けたりするケースもあるでしょう。
権限が集中した組織風土
特定の責任者に権限が集中し、周囲から業務の実態を把握しにくい環境も、ハラスメントを招く要因の一つです。例えば、事業所の責任者が大きな裁量を持ち、本社や他部署との情報共有が十分でない場合、不適切な言動があっても外部から把握・是正ができず、誰も注意できない状態になってしまうことがあります。責任者という立場が、部下への過度な要求や、自分の感情をぶつけることを正当化する理由になる場合もあるでしょう。
心理的安全性の低い環境
心理的安全性とは、「人間関係においてリスクのある行動をとっても安全なチームだという信念が共有されていること」(エイミー・エドモンソンによる定義)です。心理的安全性が高い職場は、「上司や先輩の反応を気にせずミスを報告できる」「わからないことを気兼ねなく質問できる」といった特徴があります。
一方で、ハラスメントが発生している職場は、心理的安全性が低い傾向がみられます。実際に、「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、ハラスメント経験者が、ハラスメントがあった職場の特徴として最も回答が多かったのが「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」という項目です。
また、「残業が多い/休暇を取りづらい」「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」「業績が低下している」「ハラスメント防止規定が制定されていない」などの回答もありました。これらを踏まえると、良好な人間関係を築けていない職場は、ハラスメントの誘発、常態化を招く可能性が高いといえます。
【用語集】「心理的安全性」とは
【関連コンテンツ】
心理的安全性とは?心理的安全性のメリットや心理的安全性の高い職場のつくり方を解説
心理的安全性の高い職場とは?心理的安全性の高い職場の特徴や高める方法
職場ハラスメントの対策

職場ハラスメントを対策するには、職場環境の現状把握と個々の意識改革が必要不可欠です。具体的な取り組み事例を確認しておきましょう。
すべての従業員を対象とした研修の実施
全従業員を対象に研修を実施します。従業員の中には「これまでこのようにやってきたから」「若い頃、このように指導を受けたから」と自覚なくハラスメントをしている人も少なくありません。研修を通じて、どのような発言・行為がハラスメントになるのかを理解した上で、適切な指導方法やコミュニケーションを学び、自身の言動の見直し、改善につなげてもらいます。
また、ハラスメント防止の重要性を継続的に啓発すること、自らの振る舞いを客観的に振り返る場を設けることも大切です。すべての従業員が研修を受け、ハラスメントに対して共通の認識を持っていると、部署内やチームのメンバーがハラスメントを受けていないか注意を払えたり、ハラスメントの発生に気づきやすい環境になったりするなどの好影響も期待できます。
ハラスメントにつながる言動の対策として、研修で以下のような内容を伝えるのも良いでしょう。
<研修内容の例>
- 状況に合わせて自分の感情の状態を認識し、行動をコントロールする手法
- コミュニケーション能力をアップさせる方法
- マネジメントや指導についての研修 など
アドバンテッジリスクマネジメントでは、従業員向けのハラスメント研修プログラムも取り扱っています。
普段の同僚の状態を知っていることは、次にご紹介する「パルスサーベイ」を実施する上でも重要です。
パルスサーベイによるハラスメントの予兆把握
ハラスメントは、役職や権威のある人から立場の弱い人に対して行われることが多く、実態が顕在化しづらいことが課題です。パルスサーベイを活用することで、ハラスメント発生の予兆や早期発見につなげられます。個人の傾向が計れなくても、組織結果にハラスメントの傾向が現れている可能性もあるでしょう。
ハラスメント対策を目的にサーベイを活用する時は、匿名での実施が推奨されます。実名回答の場合、何か不利益があるのではないかと、従業員が正直な回答を躊躇う可能性もあるためです。ハラスメントの情報を広く集めるためにも、安心して回答できるような配慮が大切です。
<ハラスメント把握に役立つ質問例>
- 自分の意見やアイディアが周囲に受け入れられているか
- 仕事を行う上でストレスを感じていないか
- 部署内の人間関係は良好だと感じるか
- 上司や同僚から人格を否定される言動を受けたか
- 無視をされた、必要な連絡を共有されなかったことがあるか
- 残業を強要されたことはあるか
【関連コンテンツ】
パルスサーベイとは?メリットや運用時のポイント、質問例も紹介
ハラスメント相談窓口の設置
さまざまなハラスメント相談を一元的に対応する体制作りとして、社内にハラスメントに特化した専門窓口を設置しましょう。ポイントは、面談だけでなく電話やメールなど複数の手段で相談を受けられるようにしておくことです。また、安心して相談ができることをしっかりと周知しておきましょう。
<窓口設置時のポイント>
- 相談者のプライバシーを保護する
- 相談したことで不利益を被る恐れがないことを周知する
- 相談内容を誰が確認し、どう対処していくかを明確にする
【関連コンテンツ】
ハラスメント相談窓口とは?必要性や窓口の種類、企業事例を解説
ハラスメントに関する法律

従業員のハラスメント行為は、企業や被害者、加害者と、関係するすべての人物、組織に悪影響を及ぼすものです。被害者はメンタルヘルスの悪化やメンタルヘルス関連疾患の発症につながるリスクがある他、加害者も自分がはたらいた行為の結果とはいえ、社会的信用や地位を失い、刑法上の処罰や民事上の訴訟を受けるリスクを抱えています。
また、企業も被害者の休職・離職による生産性の低下、職場のモラル低下、訴訟リスクなど、さまざまな損失が発生する可能性があるでしょう。昨今はSNSで企業の内情が拡散されるケースもみられ、事実と異なる情報の流布による風評被害なども、企業イメージへのリスクとなり得ます。
なお企業はハラスメントに対し、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)、育児・介護休業法上の雇用管理における措置義務・不利益取り扱いの禁止などの法的責任を負います。最後に、職場ハラスメントの関連法律を押さえておきましょう。
労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法・ハラスメント規制法)
ハラスメント対策への取り組みは加速しており、労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)におけるパワーハラスメント防止措置は、2022年4月から中小企業を含むすべての事業主が義務化の対象となりました。
適切な措置が講じられていない場合、是正指導の対象となり、悪質な対応を行う企業は企業名を公表する規定もあります。「個人間のトラブルだから企業には関係ない」というスタンスは認められないので、注意が必要です。また、企業の使用者責任という文脈でも、従業員がハラスメントにより第三者に損害を与えた場合、その被害者に対する損害賠償責任を負わなければなりません。
2026年10月からはカスタマーハラスメント対策が事業主に義務付けられ、企業が果たすべき責任はさらに拡大します。
参考:厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」
男女雇用機会均等法
男女雇用機会均等法は、雇用のあらゆる場面において性別を理由に差別的な取り扱いをしてはならないと定めた法律で、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)の防止を定めています。2020年の法改正では、セクハラ防止のための努力義務が規定されました。
従業員のセクハラへの知識や理解を深めるため、事業主に対して「研修の実施その他の必要な配慮」を求めています。違反が認められた場合、事実確認の上で改善・指導が行われる他、悪質な場合は過料や企業名公表の対象となる恐れもあるでしょう。
また、2026年10月からは求職者へのセクシュアルハラスメント防止措置も義務化され、採用活動におけるハラスメント対策も企業の責任となります。
参考:厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」
育児・介護休業法
育児・介護休業法は、育児や介護に伴う休業取得に関する法律です。2022年の改正では、産後パパ育休の創設に伴い、育児休業を取得する父親へのハラスメント(いわゆるパタハラ)の防止が明文化されました。企業は、単にハラスメントを防止するだけではなく、従業員が育児や介護について相談できる場や、各種休業について理解を深められる機会の提供など、制度を利用しやすい職場環境の構築が求められています。
制度利用を妨げる言動や不利益な取扱いがあった場合には、行政指導の対象となる可能性があります。また、行政指導を受けた際の報告を怠った場合などには、過料が科されることもあるでしょう。
労働契約法・労働安全衛生法
企業は、従業員への「安全配慮義務」を負っています。労働契約法第5条において、企業は従業員の生命、心身の安全を確保した上で働けるよう必要な配慮をしなければならないと定めており、職場ハラスメントの実態を認識していながら、適切な対応を行わないことはこれに違反します。
併せて、労働安全衛生法においても働きやすい職場環境の実現、労働条件の改善を通じて、従業員の安全と健康を確保するよう企業に求めている他、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力しなければなりません。労働契約法には罰則がありませんが、労働安全衛生法に違反した場合、6ヵ月以下の懲役又は50万円以下の罰金が課せられることがあります。
ハラスメントを放置すると、休職や労災認定、訴訟などの労務リスクにも発展しかねないため、早期の対応が重要です。
ハラスメントが発生した時の対応方法

ハラスメントは、企業が見逃してはならない重大な事案です。職場ハラスメントを生み出さない環境作り、意識改革が大前提ではありますが、ハラスメントが発生した時の適切な対処についても理解しておくことが求められます。プライバシー保護の観点からも慎重な対応が求められる一方で、事態がより深刻化してしまう前に、スピード感を持って対応にあたることも重要です。
<ハラスメント対応の順序>
- 迅速かつ正確に事実関係を確認する
- パワハラの有無について判断する
- 調査報告書を作成する
- 被害者への配慮の措置を行う
- 加害者に対する処分等の措置を行う
- 再発防止に向けた措置を講ずる
職場でハラスメントの相談をされたらどうする?

ハラスメントの相談を受けた際の初期対応は、その後の解決や職場への影響を左右する可能性があります。相談を受けたら、冷静かつ適切に対応しましょう。
話を最後まで聞く
相談者の話を途中で遮らず、最後まで丁寧に聞くことが大切です。「気にしすぎではないか」「あなたにも原因があるのでは」といった発言や、個人的な意見を挟むことは避けましょう。相談の秘密は守られること、相談したことを理由に不利益な扱いを受けないことを伝え、安心して相談できるよう配慮します。
【関連コンテンツ】
パワハラを相談されたらどうする? NG対応&人事がとるべき流れを解説
セカンドハラスメントとは?種類や原因、対策について解説
事実確認を急がない
相談を受けた段階で、ハラスメントの有無を決めつけることは避けます。「あの人ならやりそうだ」「そんなことをする人ではない」といった先入観は、公正な対応を妨げる一因となりかねません。相談内容を正確に把握することに専念し、事実関係は関係者への聞き取りや記録などをもとに客観的に確認します。相談者の気持ちに寄り添いつつも、冷静に、中立的な立場で対応にあたりましょう。
一人で判断せず相談窓口へつなぐ
ハラスメント相談への対応は、管理職や担当者だけで抱え込まず、社内の相談窓口や人事部門、コンプライアンス担当などと連携して進めます。必要に応じて産業医や弁護士など外部の専門家へ相談することも検討しましょう。相談者に心身の不調がみられる場合は、加害者と距離を置くなど安全を確保した上で、医療機関の受診を勧めるなどの配慮も必要です。
2026年注目される最新のハラスメント

最後に、近年のハラスメントの捉え方と、最新の注目すべきハラスメントについてご紹介します。
近年のハラスメントの捉え方の変化
近年は、従来のパワハラやセクハラだけでは捉えきれないほど、ハラスメントの種類は多様化しています。中には、相手を慮ったはずの悪意のない言動が精神的苦痛を与え、ハラスメントと判断されることもあるでしょう。
一方で、業務上必要かつ適切な指導も「ハラスメントだ」と誤解するケースや、ハラスメントと指摘されることを恐れて指導ができないといった問題も生じています。個人の感覚に基づいたものではなく、法令などに基づいた適切な判断と、従業員への教育・啓発がより重要となっています。
求職者へのセクハラ
2026年10月に、改正男女雇用機会均等法が施行されます。企業には求職者等に対するセクシュアルハラスメント防止措置が義務付けられます。相談窓口の設置や従業員への周知・啓発、発生時の迅速な事実確認と再発防止などの体制整備が必要です。
カスタマーハラスメント(カスハラ)
2026年10月施行の改正労働施策総合推進法により、企業にはカスタマーハラスメント(カスハラ)への防止措置が義務付けられます。企業は相談窓口の整備や対応方針の明確化、従業員への周知・教育、悪質な事案への対応体制の構築などを進める必要があります。また、自社の従業員が取引先にカスハラを行った場合には協力に応じるよう努めなければなりません。今回の改正によって、採用活動や顧客対応など、自社の従業員が広く関わる場面でのハラスメント対策が企業に求められるようになりました。
参考:厚生労働省「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」
参考:厚生労働省「令和8年10月1日から、カスタマーハラスメント対策、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されます!」
多角的な対策により職場ハラスメントを予防

職場で起きるハラスメントにはさまざまな種類があり、相談件数は依然として高水準です。適切なハラスメント対応ができないと、従業員のメンタルヘルスの悪化や離職を招くだけではなく、最悪の場合訴訟に発展するリスクもはらみ、企業のイメージダウンにつながる可能性もあります。
職場でのハラスメントは、その性質上顕在化しづらいため、サーベイを活用してハラスメントの予兆や実態を把握することが効果的です。併せて、研修を通してハラスメントに対する正しい知識・認識を持ち、企業全体でハラスメント防止に取り組んでいくことが求められます。

当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「ハラスメント防止サービス」は、ハラスメントの未然防止から再発防止までを総合的にサポート。
コミュニケーション改善や相談窓口の強化、サーベイによる実態把握など、課題に応じてさまざまな方向からアプローチします。資料ダウンロードはこちらから。

