働き方の多様化、ダイバーシティの推進など、働きやすい職場づくりへの機運が高まっている今、職場ハラスメントに対して厳しい視線が注がれています。2020年には改正パワハラ防止法が施行され、2022年からは全ての企業がハラスメント防止のための適切な措置を講じるよう義務付けられました。一方で、ハラスメントの判断が個人に委ねられていること、種類が細分化傾向にあることから、ハラスメント対策が難しいと考える人事担当者もいるでしょう。本記事では、それぞれの種類や予防策をはじめ、職場ハラスメントの実態や発生背景、関連法律について解説します。
目次
ハラスメントの定義とは
ハラスメント(Harassment)とは、ある言動や行動によって、相手に不快な思いをさせたり、脅したり、人間としての尊厳を傷つけたりすることです。広い意味で「いじめ」や「嫌がらせ」と同義の言葉ですが、「相手を傷つける意思」や「悪意」がなくても、受け取る側が不快な感情を抱けばハラスメントとして成立します。
厚生労働省のハラスメント対策指針では、職場ハラスメントを「職場における労働者の就業環境を害する言動に起因する問題」と説明しています。すなわち、上司や同僚の発言・行動によって、従業員が身体的あるいは精神的な苦痛を受ける、能力を十分に発揮できなくなるなど、その従業員が働く上で無視できないレベルの支障が生じれば、ハラスメントと認められる可能性があります。
ハラスメントは職場で増加している?
厚生労働省が発表した「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によると、職場での「いじめ」や「嫌がらせ」の相談件数は増加傾向にあります。令和4年度の「いじめ」「嫌がらせ」に関する相談件数は69,932件と、「民事上の個別労働紛争」に関する相談等の中では最も多く、割合にして22.1%に上っています。
また、令和2年10月実施の厚生労働省による「職場のハラスメントに関する実態調査」では、労働者の約31%が「過去3年間にパワーハラスメントを受けたことがある」と回答しています。
しかし、同調査の企業に対する課題調査では、「ハラスメントかどうかの判断が難しい」という回答が約65%、「発生状況を把握することが困難」という回答も約31%ありました。職場ハラスメントは種類が多く、「法令上の定義はないが、通念上ハラスメントと認識されているもの」もあるため、人事担当者は、ハラスメントの認定・判断に困るケースも少なくないでしょう。
ハラスメントのレベル
ハラスメントは、内容や悪質性などによってレベルを4つに分けることができます。企業の規定に違反するものから、犯罪に値するものなど程度に幅があるため、理解しておくことが大切です。
ハラスメントのレベルと、ハラスメントが抵触する法律や処罰の例
刑法 | 暴行罪、傷害罪、名誉棄損害、侮辱罪、強制わいせつ罪 |
民法 | 賠償責任 |
行政法 | 行政処分や行政勧告 |
企業規定 | 懲戒処分 |
抵触する法律や規定によって、処分の重さなども変わってきます。なお、犯罪行為にあたるような上位レベル(刑法)のハラスメントは、それ以下のレベルの処罰も該当します。(例:上司が部下を殴って怪我を負わせた場合、傷害罪+損害賠償+懲戒処分が発生する)それぞれ細かくみていきましょう。
①刑法上の犯罪行為
ハラスメントの中でも、暴力性の高いハラスメントやきわめて悪質な行為などは刑法に抵触し犯罪となります。刑事罰を受けたり、逮捕・起訴される可能性もあります。
刑法上の犯罪に該当するハラスメントの例
暴行罪(刑法第208条) | 傷害には至らないが、他人に対して暴力を振るう行為 例:上司が部下を殴る |
傷害罪(刑法第204条) | 他人に対して暴力を振るい、傷害を負わせる行為 例:上司が部下を殴り、怪我を負わせる |
名誉毀損罪(刑法第230条) | 他人の名誉を毀損するような具体的な事実内容(真偽問わず)を不特定に対して示す行為 例:複数人がCCに入っている社内メールで上司が「営業の田中さんの獲得件数は今月〇件、一方鈴木さんは〇件。鈴木さんはやる気がないのであれば、今すぐ辞めるべきです。あなたの給料で何人の従業員が雇えるのかわかっていますか」などと送る |
侮辱罪(刑法第231条) | 公然の場で他人を侮辱する行為 例:周りに聞こえるような声で「お前はバカか」「そんなこともできないのか」など、業務上の必要かつ相当な範囲を超えて人格否定をする/侮辱する |
不同意わいせつ罪(刑法第176条) ※旧「強制わいせつ罪」 | 暴行・脅迫などの手段を用いて、被害者の反抗を著しく困難にした上で強制的にわいせつな行為に及ぶ行為 ※行為を強要するだけでも犯罪になります 例:上司が「誰かに話したらどうなるかわかってるな」などと脅迫し、部下に対しわいせつな行為に及ぶ |
②民法上の不法行為
他人の権利を侵害し、損害を与えた場合には民法上の不法行為に該当します。被害者が訴えた場合は不法行為として民法で裁かれ、民事上の賠償責任を追求されることになります。これは民法第709条で定められており、故意または過失どちらの場合も請求が可能です。
民法上の不法行為に該当するハラスメントの例
・過度な侮辱により被害者がうつ病になる ・部下を殴り、全治1週間の入院が必要になるほどの怪我を負わせる →いずれも通院による治療費や、会社を休むことによる金銭的損害が発生。 被害者は加害者に対し、損害賠償請求を行うことができる。 →刑法の侮辱罪や暴行罪などにも該当する。 |
なお、企業側も、使用者責任(民法第715条1項)や安全配慮義務違反(労働契約法第5条)に基づき、被害者に対して損害賠償責任を負う可能性があります。
③行政法上のハラスメント該当行為
さまざまなハラスメントのうち、セクハラ、パワハラ、マタハラ(パタハラ)、ケアハらは行政法によって規制がされています。行政法とは、行政に関する法令の総称で、行政の組織のあり方や行政が持つ権限などを定めた法令のことを指します。刑法上の犯罪や民法上の不法行為に該当しない場合でも、これに違反する行為があります。行政法上の違反に対しても刑罰はありませんが、何らかの勧告や処分が行われる可能性があります。
行政法による規制が該当するハラスメントの例
・パワハラ:改正労働施策総合推進法(パワハラ防止法) ・セクハラ:男女雇用機会均等法 ・マタハラ/パタハラ:改正育児・介護休業法 ・ケアハラ:改正育児・介護休業法 |
行政法では、各ハラスメントの定義を明確化しているとともに、企業に対してこれらのハラスメントが発生しないように適切な措置を講じるよう義務付けています。万が一、ハラスメントの防止や対応に関する措置を講じる義務を怠った場合は、行政処分の対象になることもあります。
④企業内での規約・秩序違反にあたるレベルの行為
法律上の明文化はなくとも、社内規定など独自に定めたハラスメントの基準に該当する場合は、懲戒処分のような罰則を受けることになるでしょう。
企業内での規約・秩序違反行為を設定すれば、ハラスメントの抑止力が高まります。必ずしも設定する必要はありませんが、ハラスメントの悪影響を考慮し、企業内で独自に基準を定めた方が良いでしょう。
ハラスメントの種類一覧
近年は、ハラスメントへの関心や問題意識の高まりを背景に、これまでは明確に「ハラスメント」とは呼ばれなかった「相手に苦痛を与える発言・行動」が言語化されるようになりました。結果として、「これもハラスメントに当たるのではないか」という提起がなされ、ハラスメントの種類が細分化されています。
ここでは、ハラスメントの種類と特徴をご紹介します。
<ハラスメントの種類>
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシュアルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- ロジカルハラスメント(ロジハラ)
- 時短ハラスメント(ジタハラ)
- エイジハラスメント(エイハラ)
- ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
- リモートハラスメント(リモハラ)
- ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
- スモークハラスメント(スモハラ)
- スメルハラスメント(スメハラ)/音ハラスメント(音ハラ)
- ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、役職や権力を持ち、優位な立場にある人が、業務上の適正な範囲を超えた言動により、従業員の就業環境を損なう行為を指します。一般的に認識されやすいのは、上司から部下に対するパワハラですが、それだけではありません。
例えば、別部署から異動してきたばかりで、チームのルールや状況についての情報が少ない上司への攻撃など、組織の中で不利、あるいは弱い立場にある人への言動もパワハラとして認められます。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)
職場内におけるセクシュアルハラスメント(セクハラ)とは、性的な発言・行動により、従業員の労働条件が悪くなったり、就業環境が悪化したりすることです。
例えば、異性の身体に意味もなく触る、相手との信頼関係が築けていないにもかかわらず、恋愛や性に関する話題を持ちかける、社内や取引先などに対して性的な内容の噂を流すなどがセクハラにあたります。また、近年は同性間でのセクハラのほか、女性から男性に対するセクハラも存在します。
マタニティハラスメント(マタハラ)/パタニティハラスメント(パタハラ)
マタニティハラスメント(マタハラ)とは、妊娠中や出産前後の女性に対する嫌がらせです。例としては、「産前休業(産休)の取得を上司に相談したら退職を促された」など、制度利用にまつわる嫌がらせや、「妊娠を報告したら、忙しい時期に妊娠しないでほしいと非難された」など、状態に対する嫌がらせがあります。
また、育児休業の申請によって男性が受けた嫌がらせは、パタニティハラスメント(パタハラ)に該当します。
マタハラ・パタハラの防止については法律面での整備も進んでおり、国をあげて対策が行われています。育児介護休業法が改正されるなど、男性の育休も取りやすい環境になっていますが、依然として妊娠中、あるいは育児を行う従業員への風当たりは強いと言わざるを得ません。
モラルハラスメント(モラハラ)
職場におけるモラルハラスメント(モラハラ)とは、従業員の人格や尊厳を傷つけ、精神的に苦痛を与えることを指します。他の従業員がいる前で過剰に叱責する、誹謗中傷や陰口、無視や舌打ちをするといった行為が当てはまりますが、物理的な暴力行為は含まれません。
ロジカルハラスメント(ロジハラ)
ロジカルハラスメント(ロジハラ)とは、正論によって相手を追い詰め、言い負かし、不愉快にする行為です。論理的に説明し、仕事を進めること自体は問題ありません。
しかし、たとえ正論であっても、相手に対する敬意が欠けていたり、侮辱するような発言が含まれていたりすると、ロジハラに該当する可能性があります。「自分が絶対に正しい、相手を説得しなければならない」という思い込みが強い人ほど、相手の気持ちに寄り添って発言することが難しいため、注意が必要です。
時短ハラスメント(ジタハラ)
時短ハラスメント(ジタハラ)とは、業務内容やフローを見直さないにもかかわらず、労働時間の短縮を強いて、従業員に負担をかけることです。働き方改革の推進に伴い、長時間労働を是正する企業が増えてきたことも一因ですが、具体的な施策がないまま労働時間だけを短縮されてしまうと、残った業務を終わらせるためにサービス残業をしたり、自宅に仕事を持ち帰ったりしなければなりません。見かけ上の労働時間は短縮できていても、実際は従業員の心身に大きな負担がかかります。
また、サービス残業となる場合、労働に対する賃金が見合わないことはもちろん、サービス残業そのものが違法行為でもあるため問題視されています。
エイジハラスメント(エイハラ)
エイジハラスメント(エイハラ)は、年齢に紐づけて個人を中傷したり、悪口を言ったりすることです。「若いからこれくらいできるだろう」と中高年の社員が若手に仕事を強要する、あるいは、若手社員が中高年の社員を「その歳でこんなに簡単な仕事もできないなんて」と揶揄するような発言もエイハラに該当します。
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、性別を理由にした差別や嫌がらせをする行為です。セクハラは、身体的な特徴による性的嫌がらせですが、ジェンハラは「男らしさ」「女らしさ」のような、社会的な性差によるハラスメントです。特定の業務を男女どちらかのみに対応させるような行為が該当します。また、LGBTQなどに関する差別もジェンハラに含まれます。
リモートハラスメント(リモハラ)
リモートハラスメント(リモハラ)とは、リモートワークの中で生じるハラスメントです。例えば、「進捗状況の報告を過度に求める」「たまたま連絡が取れなかったことをサボっていると断じて叱責する」など、行き過ぎた監視や一方的な思い込みによる叱責などが該当します。
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)
ソーシャルハラスメント(ソーハラ)は、SNSを通して行われる、比較的新しい形のハラスメントです。SNSでつながった従業員間で生じた、フォローの強要やリアクションの過度な要求、執拗な個別メッセージの送信などのトラブルが該当します。
また、SNS上の投稿や、SNSでの私的なやり取りを職場で共有する、話題に上げるようなことも、プライバシーの侵害としてソーハラと認められる場合があります。
スモークハラスメント(スモハラ)
スモークハラスメント(スモハラ)とは、非喫煙者に対して健康被害を与える、不快な思いをさせるような嫌がらせ行為です。非喫煙者の近くで勝手にたばこを吸う、非喫煙者に喫煙を強要するような行為が該当します。
スメルハラスメント(スメハラ)/音ハラスメント(音ハラ)
スメルハラスメント(スメハラ)とは、ニオイに関するハラスメントです。口臭や体臭、香水、柔軟剤などのニオイが強いことで、相手に不快感を与えるような場合、スメハラに当てはまる可能性があります。
一方、音ハラスメント(音ハラ)は、周囲が不快な思いをするような音を生じさせるハラスメントです。大声で雑談する、引き出しやドアを思いきり閉めて大きな音を出す、などが当てはまりますが、音を出している当事者は無自覚であることも多いです。
ハラスメントハラスメント(ハラハラ)
ハラスメントハラスメント(ハラハラ)とは、業務上適切な指導であるにもかかわらず、ハラスメントと騒ぎ立てる行為です。本人の被害者意識が強い場合もあれば、単純に指導とハラスメントの区別がついていないケースもあります。
ハラハラは管理職にとって心配の種となる事象です。「必要以上に厳しいことを言うとハラスメントになる」「良かれと思って助言したのに逆恨みされる」となると、コミュニケーション不全に陥る可能性があります。企業として、適切な部下指導やアドバイスの範囲を明確にしておくことが推奨されます。
企業の責任と、関連する法律をチェック
職場ハラスメントの実態を認識していながら、適切な対応を行わないことは、企業にとっても悪影響です。従業員のメンタルヘルスの悪化、離職による生産性の低下、職場秩序の悪化だけでなく、企業のイメージダウンや訴訟リスク、採用活動への支障など、さまざまな損失が発生する可能性があります。
また、企業はハラスメントに対し、男女雇用機会均等法、労働施策総合推進法(パワハラ防止法)、育児・介護休業法上の雇用管理における措置義務・不利益取扱いの禁止などの法的責任を負います。
最後に、職場ハラスメントの関連法律を抑えておきましょう。
「労働施策総合推進法」(通称「パワハラ防止法」「ハラスメント規制法」)
ハラスメント対策への取り組みは加速しており、「労働施策総合推進法」(通称「パワハラ防止法」「ハラスメント規制法」)におけるパワーハラスメント防止措置では、大企業に対しては2020年6月から施行、2022年4月からは中小企業を含むすべての事業主が義務化の対象となりました。適切な措置が講じられていない場合、是正指導の対象となり、悪質な対応を行う企業は企業名を公表する規定もあります。「個人間のトラブルだから会社には関係ない」というスタンスは認められないので、注意が必要です。
また、企業の使用者責任という文脈でも、従業員がハラスメントにより第三者に損害を与えた場合、その被害者に対する損害賠償責任を負わなければなりません。
「男女雇用機会均等法」
「男女雇用機会均等法」は、雇用のあらゆる場面において性別を理由に差別的な取扱いをしてはならないと定めた法律で、セクシュアルハラスメント(セクハラ)、マタニティハラスメント(マタハラ)の防止を定めています。2020年の法改正では、セクハラ防止のための努力義務が規定されました。
従業員のセクハラへの知識や理解を深めるため、事業主に対して「研修の実施その他の必要な配慮」を求めています。違反が認められた場合、事実確認の上で改善・指導が行われるほか、悪質な場合は過料や企業名公表の対象となるおそれがあります。
「育児・介護休業法」
「育児・介護休業法」は、育児や介護に伴う休業取得に関する法律です。2022年の改正では、産後パパ育休の創設に伴い、育児休業を取得する父親へのハラスメント(いわゆるパタハラ)の防止が明文化されました。企業は、単にハラスメントを防止するだけではなく、従業員が育児や介護について相談できる場や、各種休業について理解を深められる機会の提供など、制度を利用しやすい職場環境の構築が求められています。
特に件数が多い「パワハラ」。人事として押さえるべき知識
職場におけるパワーハラスメント(パワハラ)は、特に大きな社会問題となっています。実際、パワハラに関する労働相談は年々増加しており、2021年に実施された経団連の調査でも、44%の企業がパワハラの相談件数について「増えた」と回答しています。ここでは、人事としても特に留意したいパワハラについて掘り下げます。
パワハラの3つの要素
厚生労働省の雇用環境・均等局によるパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書においては、以下3つの要素を全て満たすものをパワハラの概念として整理しています。
- 優越的な関係に基づいて(優位性を背景に)行われること
- 業務の適正な範囲を超えて行われること
- 身体的若しくは精神的な苦痛を与えること、又は就業環境を害すること
上司と部下といった職位上の関係性だけでなく、組織の中で不利、あるいは弱い立場にある人への言動もパワハラとして認められます。例えば、別部署から異動してきたばかりで、チームのルールや状況についての情報が少ない上司に対する攻撃などもパワハラにあたります。
パワハラ6類型
厚生労働省では、主なパワハラを6つに分類。「パワハラ6類型」としてまとめています。
パワハラの行為類型 | 具体的な言動例 | |
1 | 身体的な攻撃 | 叩く・殴る・蹴るなどの暴行を受ける、ケガをさせられる など |
2 | 精神的な攻撃 | 他の従業員の前で執拗に怒られる、侮辱される、悪口を言われる など |
3 | 人間関係からの切り離し | 職場の人間から無視される、自分だけ飲み会に誘われない など |
4 | 過大な要求 | 本人の能力以上のことを求められる など |
5 | 過小な要求 | 本人の能力と比べて明らかに簡単な仕事をさせられる など |
6 | 個の侵害 | プライベートについてしつこく聞かれる など |
職場ハラスメントが発生する原因・背景
続いては、職場ハラスメントが発生する原因や背景についてみていきましょう。
ハラスメントへの関心・認識が薄い
まず挙げられるのは、ハラスメントに対する社員の関心・認識の薄さです。そもそも、「どのような行為がハラスメントになるのか」を知らなければ、ハラスメントと認められる言動を無意識のうちにする可能性があります。仮にハラスメントの定義や事例を知っていても、「自分の部下なのだから厳しく指導してもついてくるだろう」「新人は早く出社するべきだ」などという思い込みによって、ハラスメントを発生・継続させてしまうケースもあるでしょう。
自覚のないハラスメントが起きる要因の一つに、「アンコンシャス・バイアス」があります。「アンコンシャス・バイアス」は、自身の先入観や思い込みによって生じる無自覚の偏見で、相手にとって「良かれ」と思って発言したことであっても、その相手が不快に感じると「ハラスメント」と受け取られる可能性があります。誰もが「アンコンシャス・バイアス」の存在を認識することが大切です。
心理的安全性の低い環境
心理的安全性とは、「人間関係においてリスクのある行動をとっても安全なチームだという信念が共有されていること」(エイミー・エドモンソンによる定義)です。心理的安全性が高い職場は、「上司や先輩の反応を気にせずミスを報告できる」「わからないことを気兼ねなく質問できる」といった特徴があります。一方で、ハラスメントが発生している職場は、心理的安全性が低い傾向がみられます。
実際に、「職場のハラスメントに関する実態調査」によると、ハラスメント経験者が、ハラスメントがあった職場の特徴としてもっとも回答が多かったのが「上司と部下のコミュニケーションが少ない/ない」という項目です。
また、「残業が多い/休暇を取りづらい」「失敗が許されない/失敗への許容度が低い」「業績が低下している」「ハラスメント防止規定が制定されていない」などの回答もありました。
これらを踏まえると、良好な人間関係を築けていない職場は、ハラスメントの誘発、常態化を招く可能性が高いと言えます。
【用語集】「心理的安全性」とは
職場ハラスメントの対策
職場ハラスメントを対策するには、職場環境の現状把握と個々の意識改革が必要不可欠です。具体的な取り組み事例を確認しておきましょう。
全ての従業員を対象とした研修の実施
ハラスメント防止には、全従業員を対象にした研修を実施するのも効果的です。従業員の中には「これまでこのようにやってきたから」「自分自身がこのような指導を受けたから」と自覚なくハラスメントをしている人も少なくありません。どのような行動、言動がハラスメントに当たるのかを、研修を通して理解した上で、適切なコミュニケーションや指導方法を学び、自身の言動・行動の見直し、改善につなげてもらいます。
また、ハラスメント防止について啓発し続けること、自分自身の振る舞いについて、客観的に振り返る機会を設けることも大切です。全ての従業員が共通の研修を受け、ハラスメントに対して同じ認識を持っていると、同僚がハラスメントを受けていないか気にかけられる、ハラスメントの発生に気づきやすい環境になる、というポジティブな効果も期待できます。普段の同僚の状態を知っているということは、次にご紹介する「パルスサーベイ」を実施する上でも重要です。
ハラスメントにつながる言動の対策として、研修で以下のような内容を伝えるのも有効です。
<研修内容の例>
- 状況に合わせて自分の感情の状態を認識し、行動をコントロールする手法
- コミュニケーション能力をアップさせる方法
- マネジメントや指導についての研修 など
アドバンテッジリスクマネジメントでは、従業員向けのハラスメント研修プログラムも取り扱っています。
パルスサーベイによるハラスメントの予兆把握
ハラスメントは、役職や権威のある人から立場の弱い人に対して行われることが多く、実態が顕在化しづらいことが課題です。パルスサーベイを活用し、ハラスメント発生の予兆や早期発見につなげましょう。個人の傾向が計れなくても、組織結果にハラスメントの傾向が現れている可能性もあります。
ハラスメント対策を目的にサーベイを活用する時は、匿名での実施が推奨されます。実名回答の場合、何か不利益があるのではないかと、従業員が正直な回答を躊躇う可能性もあるためです。ハラスメントの情報を広く集めるためにも、安心して回答できるような配慮が大切です。
<ハラスメント把握に役立つ質問例>
- 自分の意見やアイディアが周囲に受け入れられているか
- 仕事を行う上でストレスを感じていないか
- 部署内の人間関係は良好だと感じるか
- 上司や同僚から人格を否定される言動を受けたか
- 無視をされた、必要な連絡を共有されなかったことがあるか
- 残業を強要されたことはあるか
当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供するサーベイ起点のワンストップサービス「アドバンテッジタフネス」×「アドバンテッジpdCa」は、年に1回の大規模調査(センサス)と月に1回の定点調査(パルスサーベイ)の組み合わせで、ハラスメントをはじめ個と組織の課題解決に重要なPDCAサイクルをサポートします。
個・組織の課題解決に必要なPDCAサイクルを構築。メンタルヘルス業界シェアNo.1のアドバンテッジリスクマネジメントが提供する、センサス「アドバンテッジTOUGHNESS(タフネス)」とパルスサーベイ「アドバンテッジpdCa(ピディカ)」が、変わらなかった課題を解決します。
ハラスメント相談窓口の設置
さまざまなハラスメント相談に一元的に対応する体制作りとして、社内にハラスメントに特化した専門窓口を設置しましょう。ポイントは、面談だけでなく、電話やメールなど複数の手段で相談を受けられるようにしておくことです。
また、安心して相談ができることをしっかりと周知しておきましょう。
<窓口設置時のポイント>
- 相談者のプライバシーを保護する
- 相談したことで不利益を被る恐れがないことを周知する
- 相談内容を誰が確認し、どう対処していくかを明確にする
ハラスメントが発生したときの対応方法
ハラスメントは、企業が見逃してはならない重大な事案です。職場ハラスメントを生み出さない環境づくり、意識改革が大前提ではありますが、ハラスメントが発生した時の適切な対処についても理解しておくことが大切です。
ハラスメント対応の流れ
ハラスメント対応は、プライバシー保護の観点からも慎重な対応が求められます。
しかし、時間をかけて進めていては、事態がより深刻化してしまうおそれもあるため、正確かつスピード感を持って対応にあたることも重要です。ハラスメント被害の申告があった場合には、以下の手順で対応を進めましょう。
<ハラスメント対応の順序>
1.迅速かつ正確に事実関係を確認する
2.パワハラの有無について判断する
3.調査報告書を作成する
4.被害者への配慮の措置を行う
5.加害者に対する処分等の措置を行う
6.再発防止に向けた措置を講ずる
詳細については以下の記事をチェックしてみてください。
まとめ:多角的な対策により職場ハラスメントを予防
職場で起きるハラスメントにはさまざまな種類があり、年々増加傾向にあります。適切なハラスメント対応ができないと、従業員のメンタルヘルスの悪化や離職を招くだけでなく、最悪の場合訴訟に発展するリスクもはらみ、企業のイメージダウンにつながる可能性もあります。
職場でのハラスメントは、その性質上顕在化しづらいため、サーベイを活用してハラスメントの予兆や実態を把握することが効果的です。併せて、研修を通してハラスメントに対する正しい知識・認識を持ち、企業全体でハラスメント防止に取り組んでいくことが求められます。
当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「ハラスメント防止サービス」は、ハラスメントの未然防止から再発防止までを総合的にサポート。
コミュニケーション改善や相談窓口の強化、サーベイによる実態把握など、課題に応じてさまざまな方向からアプローチします。資料ダウンロードはこちらから。