部下がメンタル不調に悩まされている場合、管理職は早期に発見し、部下に寄り添いながら適切な対応を取りたいものです。部下の勤務態度や業務内容などに変化がみられることも多いため、まずは、管理職はそのサインに気づくことが重要です。そこでメンタル不調の原因やサインを見抜く方法を解説します。

目次
メンタル不調とは

私たちが「仕事のストレスで気分が落ち込むな、何もやる気が起きないな」と感じるような不調は、“心の健康”の不調を意味する「メンタルヘルス不調」として各種サイトや啓発イベント等で発信されています。
厚生労働省では、「メンタルヘルス不調」について、”精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むもの”と定義しています。
参考:厚生労働省|職場における心の健康づくり
このようにメンタルヘルス不調は、仕事や生活の中で感じるさまざまなストレスや不安を感じることで、陥る可能性があるのです。
メンタル不調になりやすい人の特徴

メンタル不調を感じる人のなかでも、仕事に関する強い不安や悩み、ストレスを感じている労働者の割合は高くなってきました。実際に、職場における精神疾患の労災補償請求件数や、支給決定件数が増加しており、社会的な問題にもなっています。そこで本項目では、管理職として部下のメンタル不調のサインを見逃さないためにも、陥りやすい人の特徴と、早期対応の重要性について解説します。
メンタル不調になりやすい人の特徴
一般的に、メンタル不調になりやすいとされる人の特徴は次の通りです。
<メンタル不調になりやすい部下の特徴>
- 几帳面で物事を徹底的にやらないと気が済まない
- 真面目で責任感が強く、自分よりも他人を優先してしまう
- 他人の目や評価が気になり、人から頼まれると断れない
- 心配症で傷つきやすく、気持ちの切り替えが苦手
- 「オン」「オフ」の切り替えがができず、常に仕事のことを考えている
なお、メンタル不調は複数の要因が絡み合って起こることが多く、決してその人の性格の問題ではありません。誰でもなりうる症状であることを念頭に置き、上記の特徴に当てはまる部下がいるときには、普段から様子を見守り、ささいな変化や違和感にも早めに気づけるよう心がけましょう。
職場でのメンタル不調者への早期対応は必須
メンタル不調は、症状の軽いうちにケアすることが重要です。身体の不調と同様で、症状が悪化すると長期の休職につながる可能性もあり、本人にも会社にも大きな影響を与えてしまいますので、早期発見、早期対応を心がけましょう。
しかし、実際のメンタル不調は早期の段階では気づきにくいところが厄介です。例えばバーンアウトのように、バリバリと仕事をこなし意欲的に働いている従業員が無理を重ね、突然メンタル不調の症状が表れ就業できなくなってしまうケースも少なくありません。そのため、管理職にはメンタル不調者を早期発見するための知識と、部下の心身の状態に気を配る努力が必要となります。
さらに、部下のメンタル不調に気づいたら、迅速に適切な対応をとる実行力も必要です。もし、部下のメンタル不調に気づいていながら対応をせず、本人がより深刻な状態に陥った場合には、管理者責任を追及されうる時代だということを、管理職の共通認識として持つことが重要です。
職場でメンタル不調が発生してしまう原因

メンタル不調に陥る原因は一つとは限らず、複数の原因が重なって起こることもあります。
<メンタル不調の原因の一例>
- 職場の人間関係
- 長時間労働
- パワハラやモラハラなどのハラスメント
- 自分にとって適切とは思えない業務量や内容(極端に多い、または少ない)
- 仕事の成果に対する適切な評価がされていない
- 能力・スキル不足による不安
- 育児や介護などにより、ワークライフバランスが崩れている
管理職は部下がメンタル不調に陥らないためにも、部下に余計なストレスや不安を感じさせないように、しっかりとチームをマネジメントすることが大切です。
メンタル不調の原因をもっと詳しく知りたい方はこちらの記事も読んでみてください。
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仕事でのメンタル不調、どうすればいい?原因やセルフケア方法を解説
部下のメンタル不調を見抜く5つのサイン

メンタル不調に陥っている場合、いつもとは違う兆候が現れることが多くなります。そのため、部下のメンタル不調を見抜くには、その変化に気づくことが大切です。そこで、管理職が意識しておきたい、具体的なサインについて紹介します。
1.欠勤や遅刻、早退が増えるなど勤務態度の変化
メンタル不調の初期には、欠勤や遅刻、早退が増えるなど、勤務態度の変化が見受けられることがあります。また、無断欠勤や、勤務中に無断で長時間退席する行為が頻繁にみられるといった行動もあります。
2.ミスの増加や残業時間の増加など仕事の変化
仕事に集中していない、落ち着きがないのもサインの一つです。例えば、仕事のミスが増えたり、報連相がなくなったりするなどが挙げられます。他にも、業務量は変わっていないのに残業が増えてくる、普段より対応に時間がかかっていることも変化として見受けられます。
3.仕事に対する意欲の低下などモチベーションの変化
以前に比べて会議などでの発言が減ったり、参加態度が消極的になったり、仕事に対するネガティブな発言が増えたりする場合も注意が必要です。仕事への意欲の低下は仕事だけに関わらず、プライベートがきっかけで、モチベーションに変化が起きている場合も考えられます。
4.髪型や服装の乱れなど外見の変化
これまで身だしなみに気を配っていた人が、寝癖のまま出社する、髪を整えない、服がヨレている・汚れている、同じ服を続けて着るなど、外見に変化が表れている場合は要注意です。メンタルの不調によって日常の手入れが億劫になっている恐れがあります。
5.態度が変わる、感情の起伏が激しくなるなど情緒の不安定
業務中に急に涙ぐんだり、些細な一言で強い怒りを見せたりと、感情の波が大きくなる場合もメンタル不調のサインです。以前に比べて挨拶をしなくなった、呼びかけへの反応が悪い、否定的な発言が増えるなどの変化も併せて確認しましょう。乱暴な言動や態度を取るケースは自暴自棄になっている恐れがあるため、早急な対応が必要です。
部下のメンタル不調時の対応方法

部下のメンタル不調のサインに気づいたら、放置せず早期に対応することが重要です。面談で状況を把握し、業務調整や配慮、専門家との連携、必要に応じて専門家への相談を提案と、部下の支援を進めましょう。本項目では、上司が取るべき具体的な対応方法を解説します。
面談の場を設け、部下の話を聞く
部下の不調に気づいた際は、まずは個別の面談機会をつくりましょう。「最近遅刻が続いているけれど大丈夫?」など、具体的な事実をもとに声をかけ、忙しくない時間に静かな会議室や個室で話せる環境を整えます。聞くときは否定や批判をせず共感的に受け止め、自由に話せる問いかけを意識してください。「頑張って」などの安易な励ましは避け、内容は不用意に周囲へ共有しない配慮も重要です。面談後は次回の面談や産業医相談など、次の一手を示します。
職場環境を改善する
部下のメンタル不調が職場環境と関係している場合は、本人への支援と並行して環境改善に取り組むことが重要です。コミュニケーション不足、業務過多、役割分担の曖昧さなどの課題を洗い出し、タスクを整理して優先順位を付け、負荷が一部の人に集中しないようチームで分担を見直します。
残業時間の把握・削減、業務量と裁量のバランス調整も基本です。ストレスチェックの集団分析を活用すれば、部署や職種ごとのストレス傾向から対策すべきポイントを特定しやすくなります。必要に応じて産業医・保健師の助言も得ながら、組織として働きやすい状態を整えましょう。
専門家と連携する
部下のメンタル不調が疑われる際は、上司だけで抱え込まずに専門家と連携することも必要です。安易な助言は負担になり、かえって悪化を招くこともあるため、産業医・保健師・カウンセラー、必要に応じて医療機関の受診を提案しましょう。
相談は「特別なこと」ではなく、「けがの治療と同じく回復のために必要だ」と伝えると抵抗感が下がります。忙しくて通院が難しい人には、オンライン相談を提案するのも有効です。社内に産業保健スタッフがいない場合は、公的な相談窓口につなげ、早期の悪化防止と回復を支えます。
休職について説明する
メンタルの不調が続く状態で無理に働き続けると、症状の悪化や退職につながる恐れがあります。産業医や主治医の判断も踏まえた上で、休職という選択肢もあることを部下に伝えるのも一つの方法です。休職の手続きは、診断書の提出や就業規則に沿った申請が基本となります。休職期間や賃金、手当など、内容は書面で分かりやすく案内しましょう。
メンタル不調による休職、そして復職までのポイントについては、こちらの記事も参考にしてください。
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メンタルヘルス不調による休職から職場復帰までの対応のポイントとは?
部下のメンタル不調を見つける/未然に防止する方法

部下のメンタル不調にいち早く気が付くためにも、管理職ができることに取り組んでいかなければなりません。また、リモートワークを取り入れている場合、業務量の負担が見えづらく、業務過多の状態に気が付かなかったり、部下が自分以外の人とどのようにコミュニケーションをとっているかが見えづらく、パワハラやモラハラに気づかないなど、メンタル不調に陥る原因を見逃してしまう場合もあり得ます。このような事態を起こさないためにも、パルスサーベイや1on1の実施でメンタル不調のサインを見逃さないようにしましょう。
パルスサーベイの活用
パルスサーベイとは、従業員自身や組織の状態に関して、短期的に繰り返し行う調査のことです。週1回や月1回など、定期的に従業員の状況や感情の変化を調査するため、部下が心身ともに健康な状態か否かといった変化に気が付きやすくなります。
パルスサーベイの部下個人の結果を閲覧できる場合には、必ずチェックしましょう。もしも前回と比べて数値が低い場合には、部下との面談を実施するなどして話を聞き、ボトルネックになっていることがないかヒアリングしなくてはいけません。
一方、パルスサーベイの個人結果が見られない場合には、自身のチーム全体の結果を確認します。その時メンタル不調の兆候が表れていた場合には、1on1で各部下と対話をしながら、心理状態が良くないと感じる部下がいた場合はメンタル不調の原因を取り除くなどのアクションをとると良いでしょう。
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パルスサーベイとは?メリットや運用時のポイント、質問例も紹介
1on1ミーティングの実施
部下と上司が面談を行う1on1ミーティングも効果的です。1on1ミーティングは部下を主役とし、上司が部下の話を傾聴する姿勢で行います。こうすることで、部下にとっては「相談しやすい」雰囲気が生まれ、自分の想いや状況を伝えやすくなります。1on1ミーティングでは現在の業務状況だけではなく、部下の体調や生活面のことも話しながら、メンタル不調のサインがないかを探ってみましょう。1on1ミーティングはオンラインでも行えるため、リモートワークを行う部下のフォローにも活用できます。
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1on1とは?ミーティングの進め方やオンラインでの注意点をご紹介
メンタルヘルスに関する研修を受ける
メンタルヘルスに関する正しい知識を持つことも大切です。管理職の場合、部下がメンタル不調に陥らないためのマネジメント方法など、適切なアプローチを知っておくことが求められます。会社でメンタルヘルスに関する研修がある場合には、積極的に参加することで、メンタル不調との正しい向き合い方を取得できます。

アドバンテッジリスクマネジメントでは、管理職・従業員双方がストレスやメンタル不調へ対処できるようになるための様々な研修プログラムを提供しています。お気軽にお問い合わせください。
上司が部下のメンタル不調に気付いたら

部下のメンタル不調を察知した場合、管理職自身で判断・解決するのは避けましょう。例えば、「業務内容を変えればメンタル不調が改善できるだろう」と思っていても、それがまた部下の負担になってしまう場合もあります。メンタル不調の部下への対応は、自分だけの考えや判断で対応せず、会社の人事や産業保健スタッフ・産業医などメンタルケアのプロフェッショナルに相談しながら、正しい知識をもとに、慎重に対応することが大切です。
部下のメンタル不調のサインを見抜き、適切な対応をしよう

メンタル不調を防止するためには、部下とのコミュニケーションをこまめにとり、メンタル不調のサインを見逃さないことが大切です。また、メンタル不調と思しきサインが見られる部下に対しても、話をよく聞き、適切な対応をとる必要があります。従業員の働き方が多様化してきた昨今では、一人ひとりの心身の健康に気を配らなければなりません。メンタル不調の正しい知識を身に付け、一人ひとりがウェルビーイングな状態で働ける環境を作りましょう。

アドバンテッジリスクマネジメントでは、管理職・従業員双方がストレスやメンタル不調へ対処できるようになるためのさまざまな研修プログラムを提供しています。お気軽にお問い合わせください。

