面談をしているビジネスパーソン

メンタルヘルスとマネジメント

Facebookでシェア ツイート
「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

企業、組織における管理者、リーダーは大きく2つの領域のマネジメントをその役割としています。一つは「タスクマネジメント」、もう一つが「ヒューマンマネジメント」。

前者は「仕事に関するマネジメント」、後者は「人に関するマネジメント」と表現できると思います。過去から2つのマネジメントは存在していますし、今もそれは変わりません。但し、最近は「ヒューマンマネジメント」の比重がより高くなっている印象を受けます。

その中でも「メンタルヘルスマネジメント(タイムマネジメント、コストマネジメントと同様の響き)」は管理者、リーダーが注目すべきテーマとなっています。

メンタルヘルスマネジメントの意義

マネジメントのゴールの一つは納期までに結果を出すこと。メンタルヘルスと言って、ストレスのない明るい職場、雰囲気の良い職場を作って業績が下がりました、結果が出ませんでは話になりません。

メンタルヘルスマネジメントは「生産性の維持、向上」に関係します。そしてもう一つの視点は「リスクマネジメント」です。過去のように何か事件、事故が起きても表に出なければ良いと言う考えが通用しない昨今です。

企業、組織においては労災、訴訟、風評等の影響を十分に理解し、従業員のメンタルヘルス(心の健康)向上に取り組むことが求められ、管理者、リーダーは現場でのその実行者としての意識、行動(ラインケア)が求められます。

管理者、リーダーの役割

管理者、リーダーがメンタルヘルスマネジメントに関わるにあたり大切なキーワードが2つあります。

一つは「役割」。それぞれの役割を理解することで「不調な部下を抱え込む」ことが無いようにしなければなりません。どちらかというと部下思いの上司が陥りやすい傾向がありますが、管理者、リーダーは医者や保健師ではありません。

仮に不調な部下が治療を必要とする場合、管理者、リーダーでは対応できないことは明らかです。

そして、もう一つのキーワードは「連携」です。適切にその役割を果たせる人に繋ぐことが求められます。人事、産業医、保健師、外部医療機関、カウンセラー等々。要は不調な部下の早期回復につながる適切な対応が求められます。

管理者、リーダーの基本的対応

① 観察/早期発見

観察は現場で部下に一番近いところにいるからこそ、機能すべき役割です。観察のポイントは「病気の部下」を探すのではなく「問題を抱えている部下」「行動が変化している部下」に気づくことです。

「問題」とは、仕事上のミス、納期遅れ等の業務障害と呼ばれる状況です。そして「行動の変化」とは、今まで出来ていたことができなくなる、今までやらなかったことをやるようになる、つまりは現場で部下を見ていて「何か今までと違うな」と感じる場面です。

前述の「役割」とも関係しますが、医者でもない管理者、リーダーが「病気の部下」を探し始めると現場で何が起きるか・・・。多分、判断がつかずに時間だけが過ぎる状況に陥ってしまうと考えられます。

② 記録/事実確認

メンタルヘルスマネジメントの対応で、重要な要素の一つは事実確認です。その為には、現場で起きている出来事(事例性)をメモに残して、正確に把握する習慣が大切と言われています。

例えば、勤怠の不安定な部下がいるとします。その部下に「最近、なんだか遅刻が多いようだけど」という表現ではなく、「今週の月曜日、遅刻したと把握しています」と明確に伝えることが求められます。

更に現場では不調な部下が発生した時、産業医や保健師が管理者、リーダーに「いつ頃から?」と尋ねるケースが多く、その時にメモの日付が正確な情報伝達に役立つという側面もあります。

③ 対処/声掛けと連携

現場での管理者、リーダーの具体的な対処の第一歩は「声掛け」と「連携」です。

まずは「声掛け」。管理者、リーダーからの気づいているという意思表示ですが、その為には日頃から部下の言動に関心を持ち、観察することが重要です。更に「誰も気づいてくれない」「相談しようか、どうしようか」と迷っていた部下が、声掛けされたことによって前向きな気持ちや安心感に繋がる効果もあります。

そして「連携」です。管理者、リーダーが一人で抱え込むことなく、適切な連携先に繋ぐことが、不調な部下の早期回復に有効です。

上記、基本的対応は管理者、リーダーのなすべき対応の流れです。メンタルヘルスの問題が発生した時、その対応方法、解決方法の正解は一つとは限りません。メンタルヘルスマネジメントは企業、組織全体で対応・対策すべきものであることを理解しておくべきでしょう。

最後に、最近のメンタルヘルスの問題の特徴かと思いますが、「職場での不調者の発生」と併せて、「復職者の再発(再休職の繰り返し)」の問題が組織の生産性に影響している状況を目にすることが多くなっています。

メンタルヘルスマネジメントに関して、かつては「復職」がゴールでしたが、今は「元の生産性に戻るまで」をゴールとし、復職後の対応の重要性も増しています。メンタルヘルスマネジメントは時代背景、世の中が求めるもの、働く人の年代、意識によって変化するものであることの認識も重要と考えます。 

【筆者】 株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 研修講師

(Visited 1,841 times, 1 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

この著者の記事一覧

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>