コーピングリストを記入する人

コーピングリストとは?作り方や種類、具体例を解説【ストレス対策】

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

ストレスの原因となる「ストレッサー」にうまく対処しようとすることを、心理学では「コーピング」または「ストレスコーピング」といいます。「コーピングリスト」とは、コーピングを実践するための行動をまとめたものを指します。今回はコーピングについて深掘りした上で、コーピングリストの作り方や具体的な事例、実践時のポイントについて解説します。

コーピングリストとは

コーピングリスト

まずは、コーピングの意味を踏まえた上で、コーピングリストの概要や注目されている理由について掘り下げます。

そもそも「コーピング」とは?

コーピングとは、ストレスへ対処するために行うセルフケアの行動のことで、ストレスコーピングとも呼ばれます。アメリカの心理学者ラザルスによって提唱された理論で、英語では「対処」を意味する「coping」と表記されます。コーピングは、ストレス要因の解決あるいは負担軽減を目的に、問題に対して何らかの行動を起こすことで、単に気晴らしやストレス発散だけの行為ではありません。ストレスを解消するだけでなく、どのように向き合うかという「認知」などのプロセスを経て、ストレスへの対処を考えます。コーピングを実践し、自身のストレスを管理できると、仕事のパフォーマンスやモチベーションの向上に役立つとされています。

ストレスに対処するための「コーピングリスト」とは

コーピングリストとは、ストレスを感じた際の自分なりの対処法や工夫をリスト化し、まとめたものです。ストレスを感じたとき、すぐにコーピングを実践し効果を得るためには、事前にコーピングリストを作っておくことが重要です。実行して合わないと思ったものでも残しておき、なぜ合わなかったのかを分析しましょう。

コーピングが注目を集める理由

PCの前で思い悩む男性

コーピングリストが注目を集めている背景には、仕事上のストレスを抱える人が増加していることが挙げられます。厚生労働省が実施した「令和4年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、『現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレス(以下「ストレス」という) となっていると感じる事柄がある』と答えた人の割合は、82.2%に上りました。

過度なストレスは、仕事のパフォーマンスを下げるだけでなく、メンタルの不調、身体の不調を引き起こす可能性があります。近年では、従業員が抱える仕事のストレスや問題を解決するため、コーピングを活用した施策を推進する企業も増えています。

コーピングの種類

笑顔マークと困ったマーク

コーピングには、大きく分けて3つの種類があります(研究者によって分類が異なるケースがあります)。続いては、それぞれのコーピングの特徴についてご紹介します。

問題焦点型

問題焦点型コーピングは、ストレッサー(ストレスの原因となる刺激)に働きかけ、根本的な解決やストレス反応の解消を図る方法です。問題焦点型の中には、周囲に具体的なアドバイスを求めるなどして、ストレッサーとなっている問題の解決を試みる「社会的探索支援型」があります。

【問題焦点型の例】
仕事が忙しいので、自分の仕事のやり方を見直して効率化を図る。

【社会的探索支援型の例】
仕事量が多いので、業務の割り振りについて調整してもらえないか、上司に相談する。

情動焦点型

情動焦点型コーピングは、自分自身の感じ方や受け取り方を変えることでストレス軽減を図る方法です。ストレッサーによって生じた不快な感情を、他者に聞いてもらうことで整理する「情動処理型」と、問題の捉え方を見直し、意識を変えることでストレスの軽減を図る「認知的再評価型」に分類されます。

【情動処理型の例】
仕事のプレッシャーが強くかかってストレスを感じたため、友人に愚痴を聞いてもらう。

【認知的再評価型の例】
仕事を多く任されて大変だと感じていたが、「自分はチームから期待されているのだ」と意識を変える。

ストレス解消型

ストレス解消型コーピングは、ストレスを感じた後に、ストレスを発散する方法です。ストレスを感じたときに無意識的に行っているケースも多いでしょう。自分の趣味・好きなことをして気分転換を行う「気晴らし型」、アロマテラピーやマッサージなどでストレスを解消する「リラクゼーション型」があります。

コーピングリストの作り方とポイント

黄色い背景にした電球

次に、コーピングリストの作り方と、作成時のポイントについてみていきましょう。

ポジティブな状態でストレス解消法を書き出す

自分がポジティブな状態でいるときに、ストレスの解消方法や、リフレッシュ方法を思いつくままに書き出してみましょう。些細なことでも構いませんので、質より量を重視して、できるだけ多くコーピングを挙げます。
いつでもすぐできるもの、落ち着いた状況でできるものなど、さまざまなシーンを想定してコーピングを準備するとよいでしょう。

ワンポイント
ストレスを感じているときは、マイナス思考に陥りやすく、つい自分を責めてしまいがちです。
このような状態でコーピングリストを作成したとしても、十分に書き出せない可能性がありますので、自分のコーピングについて考えるべきではないとされています。

対処法を実践する

実際にストレスを感じたら、リストの対処法を実践しましょう。ストレスは我慢して耐えるものではなく、感じたときになるべく早く対処することが重要です。

ワンポイント
リストの中から状況に合ったものをピックアップし、ストレスを解消する方法やリフレッシュのアイデアを試してみましょう。
なるべく手軽にできるものを、多くリストアップしておくとよいでしょう。

効果を検証する

実践した後、ストレスがどの程度緩和されたかを検証します。10点満点の採点方式をとるなど、行動ごとに点数をつけて数値化すると、それぞれを比較検討しやすくなります。

ワンポイント
コーピングリストは、自分に合うものを考えることで継続していくことができますので、適宜新しいコーピングを加えてアップデートを図りましょう。
一方で、たとえそのときに効果が得られなかったとしても、違うタイミングでは効果が得られることもあります。
一度書き込んだものは消さずに残しておくとよいでしょう。

コーピングの具体事例

毛布にくるまって暖かい飲み物を飲む女性

続いては、コーピングの具体的な事例を、シーン別にご紹介します。ポイントは、時間やお金のかかるコーピングだけでなく、場所を問わずいつでもすぐにできるコーピングも用意しておくことです。時間やお金がかかったり、場所に制約があったりすると、ストレスを感じたとき瞬時に対処できない可能性もあるため、十分に考慮しましょう。

今すぐ実践できる手軽なコーピング

深呼吸する、部屋の空気を入れ替える、遠くの空をぼーっと眺める、目薬をさす、好きな飲み物を飲む、チョコを一粒食べる、休日の予定を考える、最近楽しかったことを思い出す、夢を書き出す、やりたいことリストを作る など

社内で実践できるコーピングは、以下の記事でもご紹介しています。

休日・時間があるときに自宅でできるコーピング

【ほっと一息いれる】
お気に入りのお菓子を食べる、丁寧にコーヒーを淹れる、お気に入りのマグカップで飲み物を飲む、テレビを観る、横になってゴロゴロする、昼寝する、瞑想をする など

【趣味や好きなことをする】
音楽を聴く、ゲームをする、本や漫画を読む、楽器を弾く、絵を描く、旅行したい場所について調べる、筋トレをする、ネイルをする、ヨガをする など

【リラックスできる時間を設ける】
お香を焚く、マッサージをする、足湯をする、スキンケアをする、リラックスウェアに着替える、ペットとふれあう、友人・家族に電話する など

【集中する時間を設ける】
お菓子作りをする、DIYをする、家庭菜園をする、部屋の模様替えをする、持ち物の断捨離をする、靴のお手入れをする、財布やカバンの中身の整理をする、勉強する、写経をする、手紙を書く など

お出かけや、特別な予定を過ごすコーピング

【お出かけ】
ドライブをする、ピクニックに行く、釣りをする、サイクリングをする、スポーツ観戦する、銭湯に行く、海を見に行く、登山する、お寺・神社巡りをする、キャンプをする、映画館に行く、カフェに行く など

【買い物】
好きな洋服を買う、植物やお花を買う、好きな食べ物をテイクアウトする、家電を買う、デパ地下のスイーツを買う など

【特別な予定】
友達に会う、美容院に行く、好きなアイドルのコンサートに行く、海外旅行に行く、一人カラオケをする、焼き肉を食べに行く、スイーツ巡りをする など

職場におけるコーピング支援の取り組み

会議で発言する女性

最後に、企業が従業員のコーピングを支援するための取り組みについてご紹介します。

ストレスケアに関する研修の実施

ストレスコーピングを支援するために、研修などで従業員がコーピングについて学べる機会を設けることが有効です。研修を通して、人がストレスを感じやすい行動などを知り、自分なりの対処方法を習得します。役職によってストレスの要因が異なる点を踏まえ、管理職向け、若手社員向け、新入社員向けのように、内容を分けて行うのも効果的です。

心理的なトレーニングは、内容を意識することで身につくため、繰り返し学べるよう定期的実施するのもよいでしょう。「会社全体としてストレスに適切に対処する」というメッセージにもなるため、従業員が安心して働ける環境が整います。

社員研修プログラム

アドバンテッジリスクマネジメントでは、ストレスについての知識や、ストレスに自ら対処するための具体的な方法の習得を目指す「ストレスマネジメント研修(セルフケア)」を実施しています。研修全体の60%がワークのアウトプット重視・体感型の内容で受講者の気づきを促進。すぐに使えるリラクゼーションなども取り入れた実践的な内容です。

メンター制度や1on1の導入

メンター制度や1on1を導入することも一つの方法です。メンター制度とは、若手の従業員が上司以外の先輩従業員から助言や指導をもらう教育制度です。気兼ねなく相談できる相手がいると、不安や不満を解消しやすくなり、問題へ適切に対処できるようになります。

一方1on1は、上司と部下が1対1で対話をする場を設けることです。1on1を通して、部下が感情や問題の整理をすることで、ポジティブな意識への転換やストレスの軽減が可能となります。

1on1面談力向上研修

部下を持つ従業員に向けて、マネジメント力を向上させる研修を行うことも効果的です。「1on1」の実践ノウハウを身につける研修や、EQI®(行動特性検査)の結果を元に能力開発を行い、適切なリーダーシップの発揮を目指す、リーダーシップ特化型プログラムをご用意しています。

サーベイの導入

サーベイを導入すると、従業員自身が状態を把握し気づきにつなげられるとともに、企業は組織のストレスの程度や満足度を把握したり、社内で起きている課題をすくいあげたりすることも可能です。サーベイのデータを利用して、改善対応を行いましょう。

アドバンテッジタフネス×pdca(ピディカ)

アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「TOUGHNESS」×「pdCa」は、自社の課題把握と解決にお役立ていただける、サーベイを起点とするワンストップサービスです。従業員のメンタルヘルスやエンゲージメント状況をセンサスで定点観測し、ストレス状態やストレスへの対処行動状態を可視化します。高精度な現状把握を可能とするパルスサーベイとの組み合わせにより、優先的にアプローチするべき部署やチームの把握も可能です。
「pdCa」は、当社が有する総合サーベイ「アドバンテッジ タフネス」の指標や基準に合わせて構築しているため、比較が容易となり、前後の変化も捉えやすくなります。

気軽に相談できる窓口の設置・産業医の活用

従業員が気軽に相談できるカウンセリング窓口を設置しましょう。専門家への相談は、新たな気づきを得られやすく、問題に対する認識の変容につながる可能性があります。従業員と直接対話し、専門家の観点からストレスの原因究明や対処を図ります。

ストレスチェックで高ストレスと判断された従業員は、医師面接を希望することも可能ですが、申請のハードルを高く感じてしまうこともあるでしょう。最初のステップとして、匿名でも利用できるカウンセリング窓口という受け皿を用意しておくことが大切です。

従業員のコーピングをサポートする制度構築を

空に向け両手を広げてすがすがしい気持ちの女性

ストレスの多い現代社会において、上手にストレスに対処するスキルを身につけることは非常に重要です。従業員がコーピングを習得すると、ストレスを適切に管理できるようになり、モチベーションアップに貢献します。

また、企業にとっても生産性の向上や離職率の低下、人材確保が期待できます。従業員の状態を把握するストレスチェックの活用、ストレスケアの研修実施などが効果的でしょう。
自社の現状を考慮し、どのような取り組みを進めていくべきかを検討してみましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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