91万件のデータで見る職業性ストレス簡易調査票(57問)

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労働者のストレス状況を把握し、労働者自身の働き方や職場環境の改善に役立てることを目的として2015年12月から始まったストレスチェック制度は、施行からまもなく4年が経過します。

事業者も従業員もストレスチェック制度の運用に慣れ始め、ストレスチェックを実施することで定量的に可視化された職場の課題を改善させるため、手探りながらも職場環境改善活動を開始する事業場が増え始めたようです。

2019年4月からは残業時間の上限規制をはじめとした働き方改革関連法が順次施行され、誰もが働きやすい職場づくりは、事業者にとって喫緊の課題となっています。

本稿では、貴社・貴団体のより良い職場づくりに役立てられるよう、当社商品において職業性ストレス簡易調査票(57問)に回答した3年分の「高ストレス者割合」の推移と2018年集計結果(913,603件)*1を報告します。

3年分の高ストレス者割合の推移

「高ストレス者割合」は<全体>で16.4%(2016年15.4%、2017年15.5%)で、集計を開始した2016年から3年連続で上昇しています(図1)。

性別では、<男性>が15.6%(2016年14.7%、2017年14.8%)、<女性>が17.5%(2016年16.3%、2017年16.7%)で、男女ともに上昇しており、<女性>が<男性>を上回る傾向も継続しています。

年代別では、いずれの年代でも2017年から2018年にかけて「高ストレス者割合」が上昇しており、2017年時と同様に<26~30歳>(19.0%)、<31~40歳>(18.9%)の順で高く、他の年代と差をつけて<51歳以上>(13.3%)の割合が低い結果です(図2)。

業種別*2では、<医療・福祉>、<運輸・郵便>以外のすべての業種において、2017年から2018年にかけて割合が上昇しています。

2017年時に割合が高かった<医療・福祉>、<運輸・郵便>が低下したことにより、<サービス>が18.0%で最も高くなり、次いで<医療・福祉>(17.8%)、<卸売・商社・小売>(17.0%)の順となっています(図3)。

2018年(3年目)集計結果概況

2018年(3年目)の各尺度(因子)の結果に着目すると、業種によって異なる特徴が見られます(表1~3)。今回は、「高ストレス者割合」の高い<サービス><医療・福祉><卸売・商社・小売>を取り上げ、ストレスチェックの結果から推察されるポイントを解説します。

<サービス>

全業種の中で最も「高ストレス者割合」が高い結果です。全体傾向として、仕事そのものの過度な負担感などは少ない状況がうかがわれます。

しかし、<サービス>をさらに細かい分類*3で見ると、特に同業種内では<飲食>の「高ストレス者割合」が最も高く、全業種の<全体>と比較して「仕事の心理的な負担(量)」「自覚的な身体的負担度」「職場環境によるストレス」の値が低い結果を示しています。

その背景として、人手不足による過重労働や土日・祝日、深夜営業による不規則な勤務形態など、業務負荷が高まりやすい状況にあるほか、多様な雇用形態の従業員から構成されていることもあげられます。

そのため、職業観の異なる従業員の声やニーズを吸い上げ対応することによって、現場の声を反映した生産性向上施策の実現や従業員のやりがいの向上、さらに現在および将来必要となる人材の確保が急務と考えられます。

<医療・福祉>

全業種の中で2番目に「高ストレス者割合」が高い結果です。量的・質的・身体的な仕事の負担感が強く見られます。

慢性的な人手不足の中で、早朝や深夜勤務、救急対応など不規則な勤務形態にある上、責任の重さや緊張感の高さなどが心身への負担をより高めている可能性が考えられます。

一方、「技能の活用度」「働きがい」が比較的良好なことから、自身の専門知識や技能を活かして仕事を進めることができているほか、患者や利用者、その家族などからの感謝の言葉などを直接得る機会も多い状況などが考えられ、仕事に対するやりがいや意義、達成感・貢献感を見出しやすいものと推測されます。

<卸売・商社・小売>

全業種の中で3番目に「高ストレス者割合」が高い結果です。<全体>と比較して「心理的な仕事の負担(量)」「自覚的な身体的負担度」の値が低く、仕事そのものの量的・身体的な負担を感じているようです。

特に、このような傾向は、立ち仕事の多い<小売>*4に強く見られます。その背景のひとつとして、人手不足による各人の業務負荷の高まりや、不規則な勤務形態によるワークライフバランスの取りにくさなどがあげられます。

加えて、シフト勤務により物理的に上司と顔をあわせる機会が少なく、相談しづらいなど、心身ともに負担の高まりやすい状況も考えられます。

日々の業務における定期的なフィードバックで強みを認識させたり、目標に対して何を期待しているのかを伝えるといった機会を設けたりと、前向きな想いを持って取り組むことができるように支援することが大切です。

以上、「高ストレス者割合」の高い業種のポイントを述べましたが、貴社・貴団体の結果と比較していかがでしょうか。今回の結果を目安のひとつとしつつも、それぞれの実態に即した職場環境の把握と改善が必要といえます。

まとめ

本稿では3年分の「高ストレス者割合」の推移と2018年集計結果を報告しました。「高ストレス者割合」は3年連続で上昇しており、性別では<女性>、年代別では<26歳~40歳>で他よりも高い傾向が継続しています。

また、業種別では、今回から<サービス>が最も高い割合を示しており、特に<飲食>で心身への負荷が高い状況になっています。各尺度(因子)には業種ごとに異なる特徴が見られ、それぞれ業務の負荷を高めている要因や、「働きがい」を実感しやすい要因などが推測できます。

今回報告したストレスチェックの結果を目安のひとつとしつつも、貴社・貴団体の実態に即した職場環境改善を続けていくことが必要です。

脚注
*1 集計の詳細は以下のとおり
対象期間
2018年(ストレスチェック施行後3年目):2017年12月~2018年11月
2017年(ストレスチェック施行後2年目):2016年12月~2017年11月
2016年(ストレスチェック施行後1年目):2015年12月~2016年11月
高ストレス者の定義
以下のアまたはイに該当する者を高ストレス者とする
ア 「心身のストレス反応」(29項目)の合計点数が77点以上である者
イ 「心身のストレス反応」の合計点数が63点以上77点未満の者であって、
かつ「仕事のストレス要因」(17項目)と「周囲のサポート」(9項目)の合計点数が76点以上の者 なお、上記はストレスチェック制度実施マニュアル1)に示されている「評価基準の例(その1)」に準拠した。
尺度(因子)得点の算出方法
素点換算表による5段階評価の平均値
なお、上記は「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」(2019)に示されている素点換算表に準拠しており、評価点が低いほどストレスの程度が高いことを意味している。
*2業種分類は、総務省の日本標準産業分類に基づいている。
*3 <サービス>のさらに細かい分類として、<専門・技術サービス><生活関連・娯楽><飲食><宿泊><その他サービス>がある。本稿では、大分類のみの掲載にとどめているが、それぞれの業種には細かい分類を設けており、それらをベンチマークとして用いている企業も多い。
*4 <卸売・商社・小売>のさらに細かい分類として、<卸売・商社><小売>がある。

引用文献
1) 厚生労働省 2019 労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(改訂) 
https://www.mhlw.go.jp/content/000533925.pdf

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【筆者プロフィール】

戸澤杏奈
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 調査研究部 兼 組織ソリューション部
臨床心理士。2016年に立教大学大学院現代心理学研究科を修了後、新卒で当社に入社。主にデータ解析を担当しているほか、アクセプタンス&コミットメント・セラピーに関する研究や翻訳等も行う。 分担執筆『認知行動療法事典』(2019年刊行)

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