仕事のストレスで悩んでいる女性

ストレスコーピングとは。意味や種類、今すぐできる実践方法を解説

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ストレスコーピングとは、自身のストレスを理解し、上手に対処しようとするセルフケアの一種です。対処法には主に5種類あり、ストレスの内容に応じて実践する必要があります。そこでストレスコーピングの意味や種類を始め、具体的な実践方法や企業で取り入れられる施策などについて紹介します。

ストレスコーピングとは

仕事中に頭を抱えて休憩している人

企業内でのメンタルヘルスマネジメントの一環として注目されているストレスコーピング。細かい種類や具体的な方法の解説に入る前に、まずはストレスコーピングがどのようなものか、しっかり理解しておきましょう。

ストレスに対処するセルフケアの一つ

ストレスコーピングとは、ストレスに対してうまく対処しようと意図的に行うセルフケアの1つです。コーピング(coping)には、英語で「対処する・処理する」という意味があります。

ストレスコーピングを行うことでストレスを発散できたり、イライラしにくくなったりするのが特徴です。ストレスに対してうまく向き合えるようになるため、職場でのストレス対策として注目されています。

ストレスの構成要素

ストレスの構成要素としては、ストレッサー・認知・ストレス反応の3つが挙げられ、それぞれ以下のような意味や特徴があります。

心理学的ストレスモデルの概要

図1 心理学的ストレスモデルの概要(小杉ら,2002を一部改変)※1

①ストレッサー:ストレス反応を起こす外部環境からの刺激。以下の4つに分類される

<ストレッサーの種類>

  • 物理的ストレッサー(寒冷、騒音等)
  • 化学的ストレッサー(酸素、薬物等)
  • 生物的ストレッサー(炎症、感染等)
  • 心理的社会的ストレッサー(人間関係の葛藤や社会的行動に伴う責任、将来に対する不安等)

②認知:ものの捉え方。ストレッサーに対し、どのように捉えるかによってストレス状況が変わる

③ストレス反応:ストレスを感じた時の心や体の反応。大きなストレスを感じると心身が耐えきれず、さまざまな症状を引き起こす

ストレスコーピングを実施する際は、自分が何にストレスを感じるかを知ること、そして自分がストレスを感じたときにどのような対処をするのかを考えることが大切です。

適応規制やメンタルコーチングとの違い

ストレス反応に対処する方法には、ストレスコーピングの他にも適応規制やメンタルコーチングなどがあります。

<ストレスコーピング以外の対処方法>

  • 適応規制:辛い状況から精神を守るために無意識で行う本能的な反応
  • メンタルコーチング:メンタル面の問題に対して、対話をしながら相手の内面にある気づきや考えを引き出しアプローチする手法

それに対してストレスコーピングは、自分がストレスに対して行動する能動的なアプローチとなります。

ストレスコーピングの5つの種類

乱雑したデスクの下からパーをする人の手

ストレスコーピングは、アプローチ法によって5つにわけられます。ストレッサーの性質やストレスを感じるシチュエーションなどによって適切な対処法は異なります。

1.情動焦点型

情動焦点型は、ストレスに対して自分の考え方や捉え方を変えるアプローチ法です。例えば、上司から厳しく注意されたとしてもマイナスに捉えるのではなく、いったん冷静になって「次に活かそう」と自分の考え方を切り替える方法です。

ネガティブに思い込んでしまう癖のある人は、客観的に考えられる人に相談することで、自分では思いつかなかった考え方に気づける場合もあります。

2.認知的再評価型

認知的再評価型は、ストレスの原因に対し、見方を変えて前向きに捉える「ポジティブシンキング」でストレスを軽減させる情動焦点型の1つです。

例えば、厳しい目標にストレスを感じるのではなく、「企業から自分は期待されている」とポジティブに受け止めたり、「挑戦は自分を成長させるチャンス」と捉えたりすることでストレスを軽減します。

3.問題焦点型

問題焦点型は、問題となるストレッサーそのものを変化させたり、取り除いたりして解決を図る方法で、ストレスの元をなくしたい場合に有効です。問題焦点型の解決方法には、2パターンあります。

①接近型コーピング
接近型コーピングとは、職場の人間関係がうまくいっていない場合に、周りの人や人事に相談し、改善を目指して問題を解決します。
②回避型コーピング
回避型コーピングとは、問題から一度離れ、自分の趣味を楽しむ時間を持つといった方法で、なるべく思い出さないようにします。

周りの人間の思考や環境を変えて取り除くのが特徴です。接近型コーピングでうまく対処できない場合、疲弊してしまわないよう一時的に回避型コーピングを用いることも効果的です。

4.社会的支援探索型

社会的支援探索型は、1人で悩みを抱えて解決を目指すのではなく、周囲の人間に助けを求める方法です。例えば、仕事の棚卸しを行い、何かあったときに依頼や相談ができる環境を作ったり、トラブルが起きた際の対処法に関するマニュアルを作成したりなど、セーフティーネットを整え、ストレスの軽減を目指します。

もし、近くに相談できる人がいない場合は、自治体や相談センターなどに相談すると良いでしょう。

5.ストレス解消型(気晴らし型)

気晴らし型とも呼ばれるストレス解消型は、ストレスを感じてしまった後に行う対処法です。おいしい料理を食べたり、カラオケで思いっきり歌ったり、運動したり、趣味や買い物を楽しんだりなど、いろいろな方法が考えられます。気分転換を図り、気分をリセットすることによって、ストレス軽減につながります。

ストレスコーピングを実践する3つの方法

チェックリストに記入する人

効果的なストレスコーピングを行うためには、正しい実践方法を理解していなくてはいけません。ここでは、ストレスコーピングが向上する実践方法を3つ紹介します。

コーピングリストを作成し、ストレス内容に適した対策を考える

ストレスへの対策や解消方法をリスト化し、実際にストレスを感じた際に実践する方法です。自分にとって楽しくなることや相談できる人など、ボジティブなことを書き出したものをコーピングリストと呼び、内容が多ければ多いほど効果があがりやすいと言われています。

コーピングリストを作成し、実際に検証することによって、生じたストレスに適した対処法が考えられるようになるでしょう。

ストレス反応を自覚した際の気持ちをモニタリングする

ストレス反応が起きた際に、自分の気持ちをモニタリングする方法です。ストレスによる頭痛や手の震えなどの身体的反応や、辛さや苦しさといった精神的反応がどのくらいの強さで生じたかを冷静に考えます。

その際、客観的に把握するよう意識することが重要です。ストレスの度合いがわかることで、対処すべきストレッサーの優先順位を決められるようになるでしょう。

ストレス反応の結果を分析する

ストレス反応のモニタリングを行い、コーピングリストの対処法を試したら、ストレスがどうなったかを分析しましょう。

ストレスの軽減を実感できたらその対処法に効果があり、逆にあまり変化を感じられなかったら別の方法を試します。

ストレスコーピングを実践する際の2つのポイント

現状を分析する人

ストレスコーピングを実施する場合、意識しておきたいポイントがあります。より効果的にストレスコーピングを実践できるよう、以下のことを意識しておくと良いでしょう。

現状を把握すること

ストレスコーピングを行う際は、自分自身が置かれている状況を客観的にみて把握することが重要です。強いストレスを感じると、冷静かつ客観的に物事を見れなくなってしまいます。

家族や友人、同僚、医師などに相談して客観的な意見をもらったり、1日5分で良いので自分を見つめ直す時間を作ったりしてみると良いでしょう。また、従業員自身が自分の状態を把握したり、組織や個人の課題を把握したりするなら、パルスサーベイも有効です。

アドバンテッジpdca

アドバンテッジリスクマネジメントでは、組織の課題を見える化して解決まで導くパルスサーベイも取り扱っています。

解決に向けた強い意志を持つこと

ストレスコーピングは、主体的に解決しようとする気持ちが大切です。

ストレッサーにアプローチするのが難しい場合や、時間が経過しても何も変わらない場合も多くみられるため、本人が変わろうとすること、自主的に解決に向けて行動しようとする姿勢が必要になります。

企業内でできるストレスコーピング例

手を重ねるチームメンバーたち

ストレスコーピングの多くは個人が自分自身に対して行うものですが、企業としては従業員がストレスへの向き合い方やセルフケアの方法などを学ぶ機会を提供したり、相談しやすい環境を整備したりといったサポートを行えることもあります。従業員に対して、企業側ができることを2つ紹介します。

1on1でケア

1on1とは、上司と部下などが1対1で話し合うことです。1on1の目的は評価ではなく、部下が上司へ悩みや自身の状況などを伝える場であるため、対話によって部下が感じているストレス解消の手助けをできる可能性があります。

また、上司にとっても部下の状態や気持ちが把握できるため、お互いの相互理解からストレス要因の解消につながる場合もあります。

産業保健スタッフによるケア

社内で行うストレスチェックで、高ストレスだと判断された従業員がいる場合や、ストレス状態が悪くなっている従業員がいるようなら、産業医などの産業保健スタッフによるケアを受けられること、また外部相談窓口を設置している場合は第三者に相談できる機関があることを周知する方法もあります。

専門家の視点から、本人や周囲の人からだけではわからなかったことをケア・サポートしてもらうことで、自己理解などにつながるでしょう。また、うつ病などの精神疾患の予防にも効果的です。

ストレスコーピングをうまく取り入れてストレスに対処しよう

「STRESS」「WELLNESS」と書かれたブロック

同じストレッサーを経験したとしても、その認知の仕方は人によって異なり、それによるストレス反応もさまざま。自分に合ったストレスコーピングを知っておくことが大切です。また、企業が1on1ミーティングや産業保健スタッフによるケアを実施したりすることで、従業員のメンタルヘルスに対する意識も高まります。従業員がストレスコーピングを実積できる方法を検討・実践し、従業員のウェルビーイング向上につなげましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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