オフィスでリラックスしているビジネスパーソン

オフィスで出来る!リラクセーション法(呼吸法)~ 心体パフォーマンスを高めよう ~

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AIやIOTに伴う新たな働き方や職場内コミュニケーションのあり方、世代間の価値観の違い、先行き不透明の未来への不安、頻繁に記録が更新されるほどの天災・・・・・・など、ストレス要因となるものを挙げたらきりがありません。

不安や焦り、苛立ちなどのネガティブな感情を感じ(続け)てもおかしくないと思います。そこで、今回は日常生活でも職場でも、気軽に簡単に活用いただけるリラクセーション法を紹介いたします。

不安や緊張を和らげるだけでなく、集中力向上やあがり防止などの効果報告も挙がっており、パフォーマンスを発揮する土台を整えてくれることでしょう。

リラクセーションとは何か

リラクセーション[relaxation]は、ゆるみ、弛緩、緩和、軽減などを意味し、心理学では、ストレスや不安、緊張に相対する言葉として使われることがあります。

身も心もゆったりと安心しているような時には、呼吸は深くゆっくりとなり、筋肉は緩み、血圧や脈拍は安定している状態になります。逆に、不安や緊張などが高まれば、呼吸は浅く速くなり、筋肉は緊張し、血圧は上昇し、脈拍は増加します。このように心と体は繋がっているのです。

日常的に不安や緊張などの状態が続いて休息や睡眠の時間が取れない状態が続けば、健康障害を引き起こすことがあります。また、リラクセーションは、ただゆったりとした状態だけではなく、ちょっとやそっとのストレス負荷には負けない(凹んでもすぐに元の状態に戻るような)状態も意味します。

そこで、時や場所をほとんど選ばず、費用もかからず、自分でコントロールしやすい呼吸を整えることで、健康の回復や維持・向上に役立つリラクセーション法をご紹介いたします。

リラクセーション法には、今回お伝えする方法の他にも、香りや音楽、色彩など様々なものが存在します。また、人によって合う・合わないはあるものです。従って、自分にしっくりくるリラクセーション法のレパートリーを探したり、増やしておくことをおススメいたします。

リラクセーションの効果

活用する種類や方法、個人差などで相違はあるものの、医療や教育、スポーツなどで使われるだけあって主な効果として挙がっているのは以下の通りです。

・緊張感の緩和
・集中力の向上
・気分の安定
・感情コントロールの向上
・前向きな思考
・疲労の回復
・頭痛、肩こり、腰痛の解消
・胃腸器官の改善
・高血圧、糖尿病、ぜんそくの改善
・ストレス耐性の向上
・不眠症の改善、睡眠の質の向上、など

試した結果、少しでも効果を実感できた方は、歯を磨くことと同じように習慣にされると、一生の財産になると思います。

どうして呼吸法?

どうして普段自然に行っている呼吸がリラクセーション法になり得るの?そんな疑問が湧いても不思議ではありません。

先にお伝えしましたが、私達は不安や緊張の時には自然と呼吸が浅くなり、リラックスしている時には自然と呼吸が深くゆっくりになります。このように心の状態と呼吸は影響し合っています。

ストレス社会に生きている私達は、仕事や人間関係をはじめとしたストレス等から呼吸が浅くなりがちで、それが習慣化していると言われています。その浅い呼吸は「胸式呼吸」と言われるもので、楽に呼吸はできますが、新鮮な空気を取り込みにくく、肺のガス交換も十分ではありません。

一方、深い呼吸は「腹式呼吸」で、主にリラックスしている時や寝ている時に行っている呼吸です。この腹式呼吸は一回の呼吸で出し入れする空気の量が、胸式呼吸の3倍以上と言われています。

つまり、少ない呼吸数で多くの酸素を体内に取り入れることができるため、肺や心臓の負担が減り、血圧も高くならないメリットがあるのです。さらに、腹式呼吸は横隔膜を上下に動かすため、胃腸や肝臓などの内臓がマッサージされ、生体機能の低下を防いだり、血液の循環を高める血行促進の効果があります。

では、深い呼吸は心の状態にどう働くのでしょうか?国内外からいくつも科学的研究データが挙がっています。

●ゆっくりした呼吸・・・・・・不安の軽減、リラックス状態
●吐く息を長くする・・・・・・怒りや時間の切迫感、焦燥感の改善

従って、リラクセーションには、速い呼吸よりもゆっくりした呼吸、吸う息よりも吐く息を長くした呼吸が良いと言えるでしょう。それらを兼ね備えているのが腹式呼吸になります。

不安や怒りなどの軽減・改善は、本来の自分の能力ひいてはパフォーマンスが発揮しやすい状態に繋がります。例えば、緊張を強いる商談やプレゼン、あるいは試験やスポーツなどで行う方も珍しくはないのです。

いざ実践!

それでは、腹式呼吸によるリラクセーションを体験してみましょう。腹式呼吸は、下腹がへこんだり膨らんだりするように呼吸をします。様々なやり方がありますが、ここではどなたでも行いやすいと思える方法を紹介いたします。

■はじめに(留意点など)

・呼吸器系の疾患をお持ちの方や心配な方は、医師に相談してから行ってください。
・苦しいのに我慢をして行うなど、無理はしないでください。
 自分のペースで楽に、ゆっくり行うことが大切です。
(腹式や胸式など気にせずにまずは気楽に試すことを優先してください)
・服装などはそのままで大丈夫です。
 気になる方は、眼鏡や体を締めつけているもの(アクセサリーや時計、ベルトやネクタイ等)を
 外しましょう。
・軽く背筋を伸ばして、呼吸の通り道を作ります。
・できれば目を閉じて呼吸に意識を向けましょう。
(立って行う場合や目を閉じることが落ち着かない場合などは除く)

■ポイントは次の3点のみ

1. 息を吐く時は口から(鼻がやりやすい方は鼻でも構いません)
2. 息を吸う時は鼻(のフィルター)を使いましょう
3. 吐く息を長めに意識します

■やり方は次の2点のみ

1.口を小さくつぼめ、5~10秒程度、細く遠くに、下腹をへこます感じで息を吐きだします。
2.3秒程度、下腹を膨らます感じで、鼻から息を吸います。
※秒数は目安です。自分のペースで無理なく行いましょう。
※1回につき3分間を目安に、慣れたら5分間にチャレンジしてみてください。
気分が沈んでいる時には、15~20分を目安に、時間を少し増やしてみてください。

■実施後は・・・

中には、深いリラックス状態を得られ、頭がボーっとしたり、体がフラつくことがあるかもしれません。
そのような時には終了時に次の動作を行うことで、リラックス状態から解除することができます。

<解除動作>

1.両手を軽く握り、肘を曲げて後ろに引く
2.両手を開くと同時に、腕を前に伸ばす(1.と2.をセットで2~3回行う)
3.腕を上にあげ、伸びをして深呼吸をする

上記解除動作を行うことが難しいシチュエーションの時は、手をグー、パー、グー、パーと2~3回握ったり開いたりを繰り返し、最後は深呼吸をしましょう。

深いリラックス感までは得られなくても、心や体に何かしらの変化を感じられたのではないでしょうか?1分間の呼吸数は安静時で平均12~15回と言われます。あまりに回数が多い場合は、もしかしたら緊張や不安な状態にあるのかもしれません。

自分の心や体の状態に目を向けるクセをつけておくと変化に気づきやすく、タイミングよく適切な対処ができることに繋がります。呼吸法を行い続けると、安静時の呼吸数が平均を下回りやすくなります。

呼吸法による実感が湧きにくい方は特に、自身の呼吸数を把握されることをお勧めいたします。数値で把握できると実感が湧いてくるものです。

1日に3~4回行うことができたらベストです。隙間時間でできる機会は探せばあるかもしれません。例えば、ちょっとした待ち時間やスマホの閲覧すらままならない通勤ラッシュ時は、呼吸法を行う絶好のチャンスです。

イライラしながら過ごすのと、リラックス状態で過ごすのとでは、その後の過ごし方や人との関係性も違ってくるかもしれません。

■最後に

呼吸法を行う時間がない、だけど緊張をほぐしたり気持ちを静めたい・・・・・・そんな時は「深呼吸」がお勧めです。深呼吸は、ゆっくり息を吐きだし、大きく息を吸い込む呼吸です。数回繰り返しても、時間は数十秒程度しかかかりません。

また、緊張は決して悪いものではないことを補足しておきます。実力を発揮したり成長するためには適度な緊張は必要で、ここでお伝えしているのは、過度な緊張を和らげる場合を想定しての内容になります。

自分の心体に目を向ける時間を取れない方も多いと思いますが、今日明日の健康は誰も保障されてはいません。自分の心と体のオーナーは自分自身です。今日行ったことや選択したことの積み重ねが、未来の自分の心と体の健康を作っていくと言っても過言ではありません。

自身に合ったリラクセーション法を安全に活用し、心や体の回復や維持・増進、さらには能力やパフォーマンスの発揮に繋げ、よりイキイキとした日常・職業生活を送ってみませんか?

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【筆者プロフィール】

竹内理恵
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント シニアコンサルタント
人材/組織開発系のコンサルティングや産業保健分野の現場経験にて、人と組織に関する経営課題の解決や企業の持続的成長の実現には、従業員の心身の健康とより良い職場環境づくりが必要だと実感。現在は従業員の能力を充分に発揮するための心身の健康と、より働きやすい職場・組織の実現等により、生産性・業績の向上や人材の定着・確保に繋がる価値貢献をすべく活動している。分担執筆『研究者・技術者の「うつ病」対策~不調者を出さない 仕組みづくりと日常の注意点~』、『ストレスチェックフォローに最適! こころの健康づくり社内 研修ツール』など。

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