育児・介護休業法の改正・施行が段階的に進められており、男性の育児休暇取得に関する制度の整備が進んでいます。ところが、「いつから」「何が」「義務化」されたのか、すべてを把握するのが難しいと不安を感じているご担当者様もいるのではないでしょうか。今回は、男性の育児休暇に関する義務化の内容と、企業に求められる対応を解説します。
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目次
男性の育児休暇の義務化はいつから?

2022年、育児・介護休業法が大きく改正されました。そこで注目されたのが「男性の育児休暇」と「義務化」のキーワードです。どのような法改正が行われたのかを整理しておきましょう。
男性の育児休暇の義務化はいつから?
2025年4月より、従業員数300人超の企業を対象に、男性の育児休暇などの取得状況公表が義務化されています。従来は1,000人超の企業が対象だったため、拡大した形です。
2022年の育児・介護休業法改正では、男性の育児休業取得を後押しするための制度が定められました。「男性育休の義務化」というキーワードで取り上げられるため、しばしば誤解が生じることもあります。
法律が定めているのは「男性従業員本人に対する育休取得の義務化」ではなく、「企業による取得促進の義務化」です。育児休暇の取得そのものは個人の自由であり、従業員に強制する仕組みではありません。これまでの改正内容は以下の通りです。
【育児休業にまつわる法改正の流れ】
2022年4月
- 企業による育児休業制度の案内・意向確認の義務化
- 有期雇用労働者の育休取得要件を緩和
2022年10月
- 「出生時育児休業(産後パパ育休)」制度の創設
- 通常の育児休業を2回に分けて取得可能に
2023年4月
- 大企業(従業員数1,000人超)を対象に、男性の育休などの取得状況公表を義務化
2025年4月
- 従業員数300人超の企業を対象に、男性の育休などの取得状況公表を義務化
- 次世代育成支援対策推進法に基づく数値目標設定の義務化
育児休業制度とは?誰でも取れる?
男性の育児休業制度は、大きく「出生時育児休業(産後パパ育休)」と「育児休業」の2つがあります。
【出生時育児休業(産後パパ育休)】
出産直後のパートナーのケアや新生児の育児を目的とし、子どもの出生後8週間以内に、最大4週間まで取得できる休業制度。従業員本人が出産する場合は、産後休暇(産休)があるため、出産しない親(男性)を取得対象として想定しています。次に紹介する育児休業とは別の制度であり、男性は育児休業と併用して取得が可能です。条件付きで一部就労も認められています。
【通常の育児休業】
より長期的な育児に対応するための制度で、男女問わず、原則として子どもが1歳になる前日まで取得できます。事情がある場合は最長で2歳まで延長することも可能です。原則として育児休業中の就労は不可です。
厚生労働省の「令和6年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は40.5%でした。男性の取得率は近年上昇しつつあるものの、女性の86.6%に比べると大きな差があります。また、育児休暇の取得期間も、約4割が2週間未満と、女性に比べて短期間のケースが多くみられます。法改正により男性の育児休業の仕組みは整えられつつあるものの、職場風土・業務体制・管理職を含む現場の理解不足など、実際の取得を阻む要因も多いです。
参考:厚生労働省「パパ・ママ育休プラス」
参考:厚生労働省「育児・介護休業法等の改正の背景」
2025年4月・10月に施行された男性の育休に関する法改正の内容とは

次に、2025年4月と10月に施行された育児休業制度に関する法律を解説します。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」
【2025年4月の施行内容】既存制度の拡充と情報公開義務の拡大
2025年4月の改正では、主に既存制度の拡充と情報公開義務の拡大が図られました。
①子の看護休暇の拡充
対象拡大:対象となる子どもの年齢を「小学校3年生修了まで」に拡大
取得事由の拡大:学校行事への参加などの理由でも取得が可能に
適用除外規定の撤廃:「勤続6ヵ月未満の従業員は労使協定により対象外にできる」制度が撤廃
②所定外労働(残業)制限の対象拡大
対象拡大:所定外労働の制限(残業免除)の対象を、「小学校就学前」の子どもを持つ従業員まで拡大
③育児のための柔軟な働き方の推進
努力義務化:「3歳まで」の子がいる従業員を対象に、育児のためのテレワーク等の導入を事業主の努力義務に
短時間勤務の代替措置の追加:労使協定で短時間勤務の適用除外とする場合の代替措置として、新たにテレワークが追加
④育休取得状況等の公表義務の拡大
男性従業員の育児休業取得率などの公表義務の対象が、「従業員数300人超の企業」に拡大
⑤次世代育成支援対策推進法に基づく数値目標設定の義務化
従業員数100人超の企業を対象に、一般事業主行動計画における目標設定項目に、以下の数値目標の設定が義務化。(100人以下は努力義務)
- 育児休業の取得状況、労働時間の状況
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律 及び次世代育成支援対策推進法の一部を改正する法律の概要
【2025年10月の施行内容】柔軟な働き方を実現する措置の義務化と個別の意向聴取・配慮の義務化
2025年10月1日からは、主に柔軟な働き方を実現する措置の義務化と個別の意向聴取・配慮の義務化について改正が行われました。
①柔軟な働き方を実現するための措置等の実施義務化
対象:3歳~小学校就学前の子どもを育てる従業員
義務化の内容:事業主に対し、以下の5つの措置の中から2つ以上を選択し実施することを義務化。選択には、過半数労働組合等の意見聴取が必要。
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等(1ヵ月につき10日以上)
- 保育施設の設置運営等
- 養育両立支援休暇の付与(年間10日以上)
- 短時間勤務制度
【周知の実施時期】
- 子どもが3歳の誕生日を迎える1か月前までの1年間
【周知事項】
- 事業主が選択した対象措置(2つ以上)の内容
- 措置の申し出先
- 所定外労働(残業免除)・時間外労働・深夜業の制限に関する制度について
②仕事と育児の両立に関する個別の意向聴取・配慮の義務化
本人またはパートナーが出産予定、育児中の従業員に対し、子育てとキャリアの両立について、事業主が個別に聞き取り、配慮を行うことが義務化。
【聴取の実施時期】
- 従業員またはそのパートナーの妊娠、出産等を申し出た時
- 子どもが3歳の誕生日を迎える1ヵ月前までの1年間
【聴取内容】
- 勤務時間帯
- 勤務地
- 両立支援制度の利用期間
- 業務量
- 労働条件の見直し など
配慮の例:始業/終業時刻や就業場所、業務量、労働条件の見直し等の調整
障害のある子やひとり親家庭の場合、支援内容について配慮することが望ましいです。
男性の育児休暇取得に関連して企業に義務化されている内容

男性の育児休業取得に関して、企業に求められる具体的な義務を解説します。
育児休業を取りやすい環境の整備
従業員が育児休業や産後パパ育休を利用しやすいよう、雇用環境の整備を行わなければなりません。以下の措置の中のいずれかを講じる必要がありますが、複数実施できることが望ましいです。
①育児休業や産後パパ育休の制度内容などに関する研修の実施
②制度の確認や取得に関する相談を受けつける窓口の設置
③社内における実際の取得事例の収集・紹介
④育休取得を推進する企業姿勢の明確化・周知
就業規則などの見直しや改定
最新の改正内容を正確に把握した上で、自社の就業規則や労使協定が要件を満たしているかを確認し、改定しましょう。なお、労働基準法により、常時10人以上の従業員が働く事業所で就業規則を作成、または変更した場合は、所轄の労働基準監督署長への届け出が必要です。
| 変更箇所 | 詳細 |
| 名称 | 子の看護等休暇(法改正により取得事由が拡大したため) |
| 子の看護休暇 | ・対象となる子どもを小学校3年生修了までに拡大 ・感染症に伴う学級閉鎖等、入園(入学)式、卒園式でも取得可能に ・継続雇用期間6ヵ月未満の従業員も利用可能に |
| 所定外労働の制限(残業免除) | 対象を小学校入学前の子どもを育てる従業員へ拡大 |
| 短時間勤務制度の代替措置 | テレワークを追加した場合 |
申し出があった従業員への個別周知と意向確認
妊娠・出産に関する申し出を行った従業員に対し、企業は制度内容を個別に説明し、育児休業の取得意向を確認しなければなりません。面談(オンライン可)、書面、従業員が希望した場合はメール・FAXも利用可能です。育休取得を控えさせるような形での周知は認められません。
【周知内容】
- 育児休業・産後パパ育休の制度内容
- 申し出先や申請手続き
- 育児休業給付に関する情報
- 休業期間中の社会保険料の取り扱い
育児休業取得状況の公表
従業員数300人超の企業は、男性の育児休業等の取得率、または育児休業等+育児目的休暇の取得率を公表しなければなりません。下記どちらかの方法で算出し、公表しましょう。
【育児休業等の取得割合】
育児休業等を取得した男性従業員の数÷配偶者が出産した男性従業員の数
【育児休業等と育児目的休暇の取得割合】
(育児休業等を取得した男性従業員の数+育児目的の休暇制度※を利用した男性従業員の数)÷配偶者が出産した男性従業員の数
※企業が独自に設けている制度を指します。制度がない場合は「育児休業等の取得割合」にて算出します。
自社または厚生労働省のウェブサイト「両立支援のひろば」など、インターネット上で広く公開しましょう。
参考:厚生労働省「2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます」
不利益な取り扱いの禁止
育児介護休業法第10条では、企業に対し、育児休業を申し出た、あるいは取得したことを理由に、従業員への不利益な扱いを禁じています。
<不利益な取り扱いとみなされる行為の例>
- 解雇・雇止め
- 役職の引き下げ、減給
- 不利益な人事評価、賞与算定
- 希望しない配置転換 など
ハラスメント防止
育児介護休業法第25条において、企業は、妊娠・出産・育児休業を理由としたハラスメント(マタハラ・パタハラ)を予防する措置を講じなければなりません。制度利用への理解が進んでいない、「男は育児をせず働くもの」など、無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)によって生じるハラスメントも多いです。具体的なNG行動の共有や研修など、ハラスメント防止への実践的な取り組みが求められます。
<企業が講じるべき措置>
- 事業主方針の明確化・周知
- ハラスメントに関する相談窓口の設置
- 事案発生時の迅速・適切な対応
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男性の育児休暇の取得促進や義務化推進が広がる背景

男性の育児休暇を推進する動きが強まっている背景には、現代社会を取り巻くさまざまな課題への対応が急務となっていることが挙げられます。
女性の離職防止・労働力確保のため
依然として多くの女性が出産・育児を機に離職しており、2021年の調査では年間14万人以上が職場を離れています。その理由の一つが「仕事と育児の両立の難しさ」です。
一方で、夫の家事・育児時間が長いほど妻の就労継続率が高く、第二子の出生割合が高い傾向にあります。こうした背景から、国も女性活躍推進法や男女共同参画政策を通じて、固定的な性別役割分担を見直し、育児や家事を女性に偏らせない社会づくりを進めています。
男性の育休取得を促すことは、女性の就労継続を支えると同時に、企業の労働力流出の抑制にも直結するものです。少子高齢化によって労働人口が減少し続ける中で、組織の生産性維持を目指す意味でも、男性の育児休業の推進は重要な取り組みです。
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男性の育休取得に関する構造的課題を解決するため
男性の育休取得割合が少ない要因として、当事者からは「収入が減る不安」「育児休暇を取りづらい雰囲気」「自分しかできない業務がある」などの声が上げられており、さまざまな事情から育休取得を諦めざるを得ない人がいるのも現状です。法改正によって育休取得に関する多様な対応が義務化された背景には、こうした実態を改善し、企業ごとの取り組みをある程度均質化する意図もあるといえます。
参考:厚生労働省「育児・介護休業法等の改正の背景」
男性の育児休暇取得がもたらすメリット

男性の育休取得は、従業員本人とその家庭だけでなく、企業にもメリットをもたらします。
従業員の育休取得のメリット
男性が育休を取得すると、日常的に育児へ参加できる時間が確保でき、子どもとの関わりが深まります。また、パートナーの負担を軽減することは、産後うつのリスク低減にも寄与します。
育児休業給付金の支給や社会保険料の免除などによって、経済的な不安を抱えることなく安心して育児休暇を選択できることは、復職後の働く意欲の向上にもつながるでしょう。
企業が従業員に育児休暇を与えるメリット
男性の育休取得が広がることで、従業員の満足度が高まり、エンゲージメントの向上、離職防止が期待できます。また、従業員の休業を機に業務の見直しや属人化の解消がなされると、業務の効率化が進みます。多様な働き方ができる企業として社内外から評価されると、企業のイメージアップ、採用力の向上にも貢献するでしょう。
男性の育児休暇の取得に向けて企業が取り組むべきこと

最後に、男性の育児休業取得を推進するために、企業が行うべき取り組みをご紹介します。
申請や届け出を行いやすい工夫
従業員から育児休業に関する申請や相談をしやすい工夫が必要です。産前産後休業・育児休業制度の概要や申請の流れ、届け出フォームなどをイントラネットに掲載し、いつでも確認できる形を整えておくのも一つの方法です。経過が順調であれば、妊娠中期ごろなどの早めの段階でパートナーの妊娠を申し出てもらうよう促すことで、企業側も誕生までに余裕をもって制度の案内ができます。
制度内容の正しい周知
男性の育休取得を妨げる要因の一つが「収入減への不安」です。給付金などがあるため、実際には手取りの減少が小さいことも多いですが、その情報が正しく伝わっていないケースもみられます。給付金の仕組みや支給額の目安を丁寧に共有することが大切です。正確な情報が浸透すれば、従業員は安心して育休を取得できます。
男性の育休取得を後押しする環境づくり
育児休業制度があっても、職場に「取りにくい雰囲気」が残っていると取得は進みません。その背景には、管理職の理解不足の他、「周囲に迷惑をかけるかもしれない」「キャリアに影響するかもしれない」という本人の不安もあります。近年は慢性的な人手不足により、一人ひとりの業務負担が重く、誰かが抜けること自体に強い抵抗感が生まれやすい状況も、育休取得を難しくしている要因といえます。
まずは経営層が男性の育休取得を後押しするメッセージを発信しましょう。また、職場全体が育児休業制度の意義や職場・組織にもたらすメリットを正しく理解していることも必要です。研修などを実施し、意識改革を行い、「安心して育休に入れる」「気持ちよく送り出せる」風土を目指します。
実際の取り組み事例は、こちらでご確認いただけます。
【導入事例】三菱食品株式会社
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助成金の活用
男性の育児休業取得を後押しする中小企業は、「両立支援等助成金」が利用できます。従業員が育休を取りやすい環境整備に取り組み、実際に従業員が育休を取得した場合、助成金が支給されるものです。助成金を活用することで、企業は負担を抑えつつ取得推進の取り組みを加速できます。
参考:両立支援等助成金のご案内
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法改正によって企業には多くの義務が課されますが、従業員の働きやすさ向上や、離職防止・採用力強化など、企業側にもたらされるメリットも大きいでしょう。男性従業員が育休取得を当たり前に選択できる職場を実現するためには、法律への対応だけでなく、当事者への正しい情報提供、現場の理解と意識改革を促す取り組みも欠かせません。これを機に自社の体制を見直し、従業員と企業双方にとって有意義な育児休業制度の運用を目指しましょう。

