無意識の偏見や思い込みを指す「アンコンシャス・バイアス」とは、先入観によってものの見方が偏ってしまうことをいいます。アンコンシャス・バイアスは日常の些細な言葉や行動に含まれるため、自分では気づかずに誰かにストレスを与えてしまうおそれがあります。
従業員の多様性を活かして業績向上を目指す「ダイバーシティ」が推奨される現代において、アンコンシャス・バイアスは重要課題のひとつです。この記事では、職場におけるアンコンシャス・バイアスの事例やその対策方法をご紹介します。
CONTENTS
◆アンコンシャス・バイアスとは何か?
アンコンシャス・バイアスとは、先入観や思い込みによって偏った見方をしてしまうことを指します。自分自身では気づかない無意識の偏見であり、特に女性や若者、マイノリティ(少数派)に対して現れやすい現象です。
●アンコンシャス・バイアスの具体例
・女性や若者に対して高圧的な態度をとる
・責任の大きな仕事は男性がやるものと考えている
・マイノリティを無視した言動をとる
・相手の性別や年齢で態度を変える
・血液型で相手の性格を想像する
アンコンシャス・バイアスは過去の習慣や経験から無意識に判断するものであり、それが悪いというわけではありません。問題視されているのは、知らず知らずのうちに相手に疎外感やストレスを与え、本人の評価や判断を著しく歪めてしまうおそれがあることです。
アンコンシャス・バイアスに意識を向けず放置してしまうと、人間関係に亀裂が生じたり、周囲のモチベーションを下げたりといった悪影響を及ぼす可能性があります。
ダイバーシティが推進され個性の尊重が重要視される現代社会においては、アンコンシャス・バイアスによって起こり得る悪影響を抑制する取り組みが必要です。
◆職場でのアンコンシャス・バイアスとは?
多様な属性や価値観を持つ人が集まる職場において、アンコンシャス・バイアスを意識することはダイバーシティの推進やハラスメントの防止に効果的です。従業員がストレスなく安心して能力を発揮できる職場は個々のモチベーションを高め、企業の業績向上や持続的な成長につながっていきます。
職場でのアンコンシャス・バイアスの代表的な事例は次のとおりです。
●アンコンシャス・バイアスの代表例
確証バイアス | 仮説や先入観に合致した情報ばかりを集める傾向があり、それに反証する情報は見ないようにすること 例:体育会系はコミュニケーション能力が高い |
ステレオタイプバイアス | 人の属性やグループに対し特定の特徴があると決めつけること 例:高齢者はパソコンが使えない |
アインシュテルング効果 | 過去の経験やなじみ深いものに固執し、ほかの選択肢や考え方を無視してしまうこと 例:過去に前例のないプロジェクトは認められない |
集団同調性バイアス | 所属する集団に合わせた行動をとってしまうこと 例:コンプライアンス違反 |
慈悲的差別(慈悲的性差別) | 女性や少数派に対する好意的な思い込みが差別につながること 例:女性に力仕事はさせない |
ハロー効果 | ひとつの目立つ特徴に引きずられてほかの特徴も同じように評価してしまうこと 例:有名大学や大企業の出身者は優秀である |
インポスター症候群 | 自分自身の能力や実績を過小評価し、可能性を閉ざしてしまうネガティブな心理傾向 例:自分の力ではなくまわりのサポートのおかげで成功した |
職場でのアンコンシャス・バイアスは、個人の孤立感や疎外感を強め、組織内のコミュニケーション不全やパフォーマンス低下、離職へとつながります。
アンコンシャス・バイアスの対策には、従業員一人ひとりが客観的に自分を見つめる機会を設けるなど、積極的な研修制度の導入が必要です。
◆研修を実施しダイバーシティを推進
アンコンシャス・バイアス研修では、自分自身が持っている「無意識の偏見」を自覚し、異なる価値観を受け入れる柔軟な視点を学びます。研修によって多様なものの見方や捉え方を認知し合うことで、自分の偏った価値観に気づき、他者を尊重する気持ちが養えます。
研修には、専門家であるファシリテーターによる講義、事例をもとにした動画研修、外部ツールを活用したオンライン研修などがあります。
まずはアンコンシャス・バイアスとは何なのか理解することから始まり、職場でのアンコンシャス・バイアスに対応する方法やコミュニケーションの取り方をさまざまなケーススタディから学んでいきます。
アンコンシャス・バイアス対策で重要なのは、自身や周囲が持つ偏見・思い込みに気づき、誰もが生き生きと活躍できるダイバーシティを実現させることです。また、職場に内在する多様性を認め合うことで、女性や若手社員、マイノリティに対するハラスメントの予防・防止にもつながります。
◆まとめ
誰もが活躍できるダイバーシティを実現するには、無意識の偏見・思い込みを意味するアンコンシャス・バイアスが周囲にどのような影響を与えるのか、従業員一人ひとりが深く理解することが大切です。
職場で起こり得る女性や若手社員、マイノリティへのアンコンシャス・バイアス対策には、専門家による講義や事例をもとにした研修、トレーニングが有効です。職場内のアンコンシャス・バイアスに意識を向けてダイバーシティを推進し、組織全体のパフォーマンスを向上させましょう。