アンコンシャスバイアスの概念イメージ

アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)とは?職場での事例と対策方法をご紹介

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「アンコンシャス・バイアス」とは、無意識の偏見や思い込みを指す言葉で、その人の先入観によりものの見方が偏ってしまうことを表します。アンコンシャス・バイアスは、日常のちょっとした言葉や行動に含まれるため、無意識のうちに誰かにストレスを与えてしまったり、ハラスメント行為に繋がったりするおそれがあります。

また、従業員の多様性を活かしながら業績アップを目指す「ダイバーシティ」が推奨される現代において、アンコンシャス・バイアスは重要な課題の一つです。本記事では、アンコンシャス・バイアスが生じる背景や、職場における偏見の事例、改善方法などについて、分かりやすく解説します。

アンコンシャス・バイアスとは?

バイアスを表した積み木を持つビジネスマン

アンコンシャス・バイアスとは、「先入観や思い込みによって偏った見方をしてしまうこと」です。特に女性や若年者・マイノリティに対して現れやすく、自分自身では気づくことができない“無意識の偏見”であるのが特徴です。

アンコンシャス・バイアスは、過去の習慣や経験をもとに無意識に判断するものであり、その全てが悪い判断だというわけではありません。問題は、知らず知らずのうちに相手にストレスや疎外感を与え、本人の評価や判断を大きく歪めてしまうおそれがある点です。

<アンコンシャス・バイアスの具体例>

  • 女性や若者に対して高圧的な態度をとる
  • 大きな責任を伴う仕事は男性がやるものと考えている
  • マイノリティを無視した言動をとる
  • 血液型で相手の性格を想像する

アンコンシャス・バイアスが注目される理由

近年の日本企業では、リモートワークや時短勤務、高齢者の再雇用、性別に左右されないキャリア形成やワークライフバランスの実現など、働き方や属性の多様化が進んでいます。

また、時代の流れとともに、人々の価値観や考え方も大きく変化していることから、これまでの経験をそのまま判断に当てはめることが合理的ではないケースもあるでしょう。

そのため、各企業においても、アンコンシャス・バイアスによって起こり得る悪影響を抑制する取り組みが求められています。さらに、アンコンシャス・バイアスの適切なコントロールは、ダイバーシティの推進にも役立ちます。

アンコンシャス・バイアスが企業に与える悪影響

ネガティブな表情の赤いカードを持つ手

アンコンシャス・バイアスは、企業経営にもマイナスの影響を与える可能性があります。経営面・組織面でどのようなデメリットが生じるかをチェックしましょう。

経営への影響

赤いチェックマークを囲む積み木の人形

アンコンシャス・バイアスを放置し続けると、管理職・リーダーの意見や、マジョリティの意見のみが重視される可能性が高くなってしまいます。経営層の意思決定が「アンコンシャス・バイアス」によって左右される可能性も否定できません。

価値観の多様性が軽視された状態では、イノベーションの創出が期待できなくなり、企業の革新的な成長に悪影響を及ぼすおそれがあります。

さらに、価値観の多様性が認められない環境は、「パワハラ」を始め、各種ハラスメントの温床となる可能性もあります。ハラスメントは従業員の離職要因となるだけではなく、ハラスメントの実態が明るみに出れば、企業価値の低下にも繋がりかねません。結果として、経営への悪影響をもたらすことにも繋がります。

組織への影響

ビジネスマンの繋がりを示す組織図

アンコンシャス・バイアスによる悪影響は、従業員のモチベーション低下や組織全体の生産性低下にも繋がる可能性があります。

組織への長期的な問題としては、離職率の悪化や人材育成が上手く進まないなどが挙げられます。採用してもすぐに辞めてしまう、人材育成がうまくいかない、などの課題を抱える組織は、アンコンシャス・バイアスによる悪影響がないかの見極めが必要かもしれません。

例えば、希望と異なる働き方を求められたことで従業員のモチベーションが低下し、離職を選択するケースもあります。具体的には、「育休復帰後も営業職で働きたかったのに、“育児中に外勤は大変だろうから”という配慮で、内勤の部署への異動を命じられた」などの事例が挙げられます。

職場におけるアンコンシャス・バイアス事例

モチベーションが下がる様子を表した積み木

続いて、代表的なアンコンシャス・バイアスの例と、職場における具体的な事例を紹介します。全てが誤った判断ではないものの、本人の意思を汲み取らない決定は、従業員のモチベーション低下を招いてしまうことがあります。

代表的なアンコンシャス・バイアス

確証バイアス仮説や先入観に合致した情報ばかりを集める傾向があり、それに反証する情報は見ないようにすること
 
例:「大手企業に入れば安心」と考えて、大手企業に就職すべき理由についてのみ情報収集する
ステレオタイプバイアス人の属性やグループに対し、特定の特徴があると決めつけること
 
例:高齢者はITリテラシーが高くない
アインシュテルング効果過去の経験やなじみの深いものに固執し、ほかの選択肢や考え方を無視してしまうこと
 
例:過去に前例のないプロジェクトは認められない
集団同調性バイアス所属する集団に合わせた行動をとってしまうこと
 
例:「皆がそう言っているから」と、多数決の際に票の多い案を自分も選択してしまう
慈悲的差別
(慈悲的性差別)
女性や少数派に対する好意的な思い込みが差別に繋がること
 
例:女性に力仕事はさせない
ハロー効果ひとつの目立つ特徴に引きずられてほかの特徴も同じように評価してしまうこと
 
例:有名大学や大企業の出身者は優秀である
インポスター症候群自分自身の能力や実績を過小評価し、可能性を閉ざしてしまうネガティブな心理傾向
 
例:自分の力ではなくまわりのサポートのおかげで成功した

業務全般における事例

次に、業務全般におけるアンコンシャス・バイアスの例をみていきましょう。

<業務全般におけるアンコンシャス・バイアス例>

  • 定時で帰る従業員は怠けていて、残業する従業員は頑張っている
  • お茶出しや電話対応、事務仕事などは、女性がやるものだ
  • 体育会系の部活に入っていたから、根性があるだろう
  • プライベートを重視する部下を昇進対象から外す
  • テレワーク勤務よりオフィス勤務をする部下を評価すべき

偏った見方だけではなく、自分が良かれと思ってした行動が、実は本人にとってそうではなかった、というケースもあるかもしれません。「自分にもアンコンシャス・バイアスがある」ということを意識し、行動することが大切です。

人事評価での事例

チョークを使って5つ星評価をつける手

人事評価においてアンコンシャス・バイアスが顕著に見られると、従業員は評価の公正性に疑問を抱くようになります。

<人事評価におけるアンコンシャス・バイアス例>

  • 仕事に直接関係しない「性別」や「年齢」「国籍」といった属性に基づいて評価する
  • 「自分と気の合う部下」は、たとえ成績がいまいちでも高く評価する
  • 残業や休日出勤の多い者を「仕事熱心だ」と評価する

採用活動・人材育成での事例

デスクで履歴書を見比べる

採用活動・人材育成の場面においても、アンコンシャス・バイアスが生じている可能性があります。中には、相手の出自・現状などから能力や性格を断定し、採用・非採用が決められてしまうケースもみられます。

<採用活動・人事育成におけるアンコンシャス・バイアス例>

  • 前に勤めていた会社は規模が小さいので大して期待できない
  • 大企業からの転職者なので仕事ができるはず
  • 自分と同じ大学の出身者を優遇して採用する
  • 女性は総合職よりも一般職の方が向いていると思い込み、総合職に採用しない
  • 過去に経験のある業務しか任せない
  • 介護や育児があって大変だろうからと、時短社員をキャリアアップ研修に呼ばない

異動・昇進場面での事例

階段を登ってキャリアアップを目指す紙人形

異動や昇進などの場面でアンコンシャス・バイアスが働くと、従業員は「キャリア観を尊重してもらえない」「働き続けても、自分の成長に繋がらない」と感じる可能性があります。

<異動や昇進などにおけるアンコンシャス・バイアス例>

  • まだ20代だからこのポジションを任せるには早すぎる
  • 本人の意思や能力を無視し、性別のみに基づいた配置転換や昇進を行う
  • 外国人社員に、英語を使う業務のみを任せ、日本語を使う業務をさせない

アンコンシャス・バイアスへの対策

改善の継続と成長を表す積み木

多様な価値観や属性を持つ人が集まる職場で、アンコンシャス・バイアスを意識することは、ダイバーシティの推進・ハラスメントの防止に効果的です。従業員がストレスを感じることなく、安心して能力を発揮できれば、個々のモチベーションも高まり、企業の業績アップや持続的な成長に繋がっていきます。ここでは、アンコンシャス・バイアスの是正・改善が期待できる取り組みをご紹介します。

実態を把握するためのアンケート・テストの実施

パソコンでテストを受ける概念図

まずは、チームや組織全体に、どのようなアンコンシャス・バイアスが存在しているのかを認識し、どんな影響・問題が生じているのか、その実態を把握することが大切です。さまざまな認知テスト・アンケートを活用し、アンコンシャス・バイアスについての気づきを得ましょう。

研修を実施しダイバーシティを推進・ハラスメント防止へ

アンコンシャス・バイアス研修では、多様なものの見方や捉え方を認知し合うことで、自分自身が持っている「無意識の偏見」に気づき、異なる価値観を受け入れる柔軟な視点を学びます。

自分の偏った価値観を自覚し、他者を尊重する気持ちが養われると、その後の行動変容に繋がります。これは、ダイバーシティの推進だけでなく、パワハラなどのハラスメント防止にも効果的です。

研修には、専門家であるファシリテーターによる講義、事例をもとにした動画研修、外部ツールを活用したオンライン研修などがあります。

価値観をアップデートしダイバーシティの実現・ハラスメント防止を

輪になって手を繋いだカラフルな紙人形を持つ

誰もが活躍できるダイバーシティや、ハラスメントの発生・再発防止を実現するには、無意識の偏見・思い込みを意味するアンコンシャス・バイアスが周囲にどのような影響を与えるのか、従業員一人ひとりが深く理解することが大切です。

職場で起こり得る女性や若手社員、マイノリティへのアンコンシャス・バイアス対策には、専門家による講義や事例をもとにした研修、トレーニングが有効です。職場内のアンコンシャス・バイアスに意識を向けてダイバーシティを推進し、組織全体のパフォーマンスを向上させましょう。

アドバンテッジリスクマネジメント社員研修プログラム

アドバンテッジリスクマネジメントの社員研修プログラム

アドバンテッジリスクマネジメントでは、様々な社内研修のサポートを行っています。アンコンシャス・バイアスに関する理解を深める研修も対応可能。「無自覚ハラスメント防止(トレーニング研修)」では、誰もが持つ無自覚の偏見(アンコンシャス・バイアス)について解説し、全体の60%を占めるワークを通し、無自覚ハラスメント防止の具体策を体感的に習得します。https://www.armg.jp/business/training/

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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