巨大な虫眼鏡で人を見ている様子

マイクロマネジメントとは?部下や組織への影響、対策方法を解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

部下に指示を出し、進捗管理を行い、円滑な業務遂行と目標達成を目指すことは、管理職の基本的な役割です。しかし、必要以上に部下を管理しようとしたり、頻繁な連絡を求めたりする行動はマイクロマネジメントと呼ばれ、問題視されています。本記事では、マイクロマネジメントの特徴や具体例、人や組織に与える影響の他、適切なマネジメントを促すためのポイントなどについて解説します。

目次

マイクロマネジメントとは

説明する上司と頭を抱える部下

はじめに、マイクロマネジメントの特徴や具体例をご紹介します。

マイクロマネジメントの特徴

マイクロマネジメントとは、部下である従業員の業務や行動を必要以上に管理する、いわゆる「過干渉なマネジメント」のことを指します。一般的には、ネガティブなニュアンスを含んで使われる言葉です。

業務が順調に進んでいるか、状況を把握するために進捗報告を求めたり、部下をサポートするために助言や指摘をしたりすることは、管理職が果たすべき役割の一つでしょう。しかし、こうした管理が過度になると、部下や組織に悪影響を及ぼす可能性があるため、注意が必要です。自社の管理職がマイクロマネジメントに陥っていると感じた場合、早期の改善が望まれます。

マイクロマネジメントの具体例

マイクロマネジメントの例は以下の通りです。

<マイクロマネジメントの具体例>

  • 仕事の進め方について必要以上に細かく指示をする
  • 仕事の進捗を頻繁に報告するよう求める
  • 電話の掛け方、メールの書き方を細かく確認、指示する
  • メールやチャットを即座に返信するように求める
  • 企画書・提案書などを隅々までチェックし何度も修正させる
  • リモートワーク中、常にWebカメラをオンにするよう強要する
  • 部下が一人でできる内容に対しても指示を出す
  • 部下が会議で発言する内容を事前に決める
  • 部下のみが出席すればよい会議にも全て同席する
  • 長時間だらだらと叱る

マクロマネジメントとの違い

マクロマネジメントとは、部下に裁量を与えて過度なマネジメントを行わず、主体性を尊重するマネジメントスタイルのこと。マイクロマネジメントとは対照的な考え方です。

仕事のやり方は各々に任せますが、単なる放任主義とは異なります。管理職は目標や方向性を示し、部下の能力や状況に応じて適切なサポートを行います。

マイクロマネジメントが注目されるようになった背景

パソコンで仕事をする女性

マイクロマネジメントが話題となった背景には、ビジネス環境の変化があります。主な理由は以下の4つです。

  • 人材の多様化
  • リモートワークの浸透
  • 業務管理ツールなどの普及
  • 人手不足による業務負担の増加

人材の多様化

一つ目の理由は、人材の多様化です。現代は雇用の流動化が促進されており、転職は珍しいものではなくなりました。異なる分野でキャリアを積み、中途採用で入社する人や、子育てや介護をしながら働く人、定年後に再雇用で働くシニア、外国人従業員など、さまざまなバックグラウンドを持つ人が部下になることも少なくありません。

しかし、価値観や仕事の理解度、業務の進め方などは一人ひとり異なるため、管理職は部下の管理に難しさを感じることもあります。その結果、「きちんとマネジメントしなければ」という意識が強まり、状況を把握しようとするあまり、意図せず細かな確認や介入が起きてしまいます。

リモートワークの浸透

リモートワークや、オフィスワークとテレワークを組み合わせたハイブリッド勤務などが浸透している点も、マイクロマネジメントが注目される理由の一つです。オフィスでは、同じ空間で働いていることからいつでも部下に声をかけたり、状況を確認したりすることができましたが、リモートワークではそれが難しくなります。部下の働きぶりが見えにくくなったことで、管理職の中には、より細かく頻繁な管理が必要だと感じる人もいるでしょう。

業務管理ツールなどの普及

業務用のチャットツールやタスク管理ツールなど、さまざまなデジタルツールが普及したことも一因です。部下の働き方や進捗状況がより詳細に把握できるようになり、さらにリアルタイムでの情報共有も可能となりました。対面でなくても密なコミュニケーションができる点はメリットですが、常に部下の状況をモニタリングできるようになったために、必要以上に介入してしまうこともあります。

人手不足による業務負担の増加

労働人口の減少などから、慢性的に人材不足となっている企業も少なくありません。従業員の仕事量が多く、一人ひとりにかかる負担が大きい職場では、ミスなどで業務が滞ってしまうと、部署や職場全体の進行に深刻な影響を及ぼす可能性があります。また、特定のメンバーに仕事が偏りすぎないよう、業務量を常に確認しようとすることも、マイクロマネジメントを招く一因です。

人手不足の中では、業務の遅れやミスのリカバリーが大きな負担となるため、それらを未然に防ぎたいという意識が、過度なマネジメントにつながるケースもみられます。

マイクロマネジメントをする人の特徴

人差し指を立てているスーツの男性

マイクロマネジメントをしがちな管理職・マネージャーには、一定の傾向がみられます。

必要以上に細かく指示・把握する

ルールを細かく定め、自分のやり方に強いこだわりを持つ点は、マイクロマネジメントをする人に共通する特徴です。例えば、メールの体裁やチームメンバーとのチャットの文章にまで細かく口出しをしたり、業務日報の文字数を指定したりするなど、直接的な成果に結びつかない部分にまで干渉し、細かなルールを設けます。

些細なミスでも指摘する

わずかな失敗も許さない態度で、小さなミスを執拗に指摘・追及するケースもあります。改善や部下の成長のために指導を行うことは管理職の役割ですが、マイクロマネジメント傾向がある人の場合、重箱の隅をつつくような指摘になりがちです。

部下の意見や価値観を尊重しない

部下の考えや価値観を尊重せず、自分と異なる意見を頭ごなしに否定する傾向もみられます。仕事のやり方は人それぞれで、必ずしも自分のやり方が部下の性格や状況にマッチするとは限りません。それにもかかわらず、相手の事情を考慮せずに一方的にやり方を強要するケースもあります。

高圧的な態度を取る

自分の指示に従わせるため、部下に対して高圧的な態度で接することも一つの特徴です。ときには乱暴な言葉づかいをすることがあったり、自分の方が上の立場であると示すため、わざと人前で部下を叱責したりする人もいます。

マイクロマネジメントに陥る理由

木で作られた操り人形

では、なぜ管理職がマイクロマネジメントに陥ってしまうのでしょうか。管理職本人に要因があることも多いですが、組織そのものに問題が潜んでいることもあります。

完璧主義で責任感が強い

完璧主義で責任感が強い管理職の場合、部下がミスをしないようにという心理からマイクロマネジメントに陥ることがあります。部下のミスは上司の責任だという認識を持っている他、「部下のミスによって、マネジメントする立場の自分も評価が下がってしまうかもしれない」、「求められる成果を上げるためにはミスが許されない」など、不安やプレッシャーを抱えている場合もあるでしょう。

また、管理職自身が過去に大きな失敗をした経験があり、「同じ思いをさせないために」と過干渉になっているケースもみられます。

自己顕示欲が高い

過去に成功体験を持っているなど、自分自身に絶対的な自信があり、自己顕示欲が高いためにマイクロマネジメントをする人もいます。チームを成功に導いたことを手柄にしたい、部下から信頼・尊敬されたい、同僚などの周囲から高い評価を受けたいといった思いがあります。

マネジメントの知識が少ない、誤解している

マネジメント経験が少ない、あるいはマネジメント方法について誤解があると、マイクロマネジメントにつながりかねません。

新任の管理職の場合、「熱意を持って指導しよう」「しっかり成長させなければ」と、前向きな気持ちが空回りしていることもあります。また、適切なマネジメント方法を理解しておらず、「部下を管理する」ことが目的になっていると、部下の行動を監視して従わせることが「正しいマネジメントだ」と誤解している可能性もあるでしょう。

組織風土の影響

中央集権的で上意下達の組織文化を持つ企業・部署の場合、ミスを叱責される、自分の意見を述べられないなど「心理的安全性」が低く、マイクロマネジメントが発生しやすい環境となっている可能性があります。

また、過度な成果主義を掲げる組織では、部下の成長といった長期的なメリットよりも、目の前の結果や短期的な評価を重視するあまり、マイクロマネジメントに陥るケースもあるでしょう。

マイクロマネジメントがもたらす部下への影響・デメリット

暗い部屋で悩む人

マイクロマネジメントは、人と組織にネガティブな影響を及ぼしかねません。ここでは部下への影響・デメリットをみていきましょう。

モチベーションが下がる

マイクロマネジメントの大きなデメリットとして挙げられるのが、部下のモチベーション低下です。自分の意見を聞き入れてもらうことができず、上司の指示に従い、全て確認を取ってからでなければ行動できないような環境では、部下は仕事に対してやりがいを持てなくなってしまうでしょう。主体的な働き方や創意工夫が許されない状況を苦痛に感じることも考えられます。

自律性が養われず成長できない

部下の成長が妨げられてしまう点も問題です。上司に従わざるを得ず、指示を待つだけでは、自律性や自主性が育ちません。自分で考え、判断し、行動できる人材を育てるためには、上司からの適切な助言とフィードバックが不可欠ですが、マイクロマネジメントによってその機会が失われてしまうと、部下は成長することができず、キャリア形成にも悪影響を及ぼします。

メンタル不調に陥る

常に監視されているような状態で、上司の顔色をうかがい、小さなミスでも強く叱責される恐怖を感じて働き続けることで、部下が大きなストレスを抱えてしまうことも懸念されます。過度なストレスは心身の不調を引き起こし、適応障害やうつ病などのストレス関連疾患の発症につながるおそれもあります。

マイクロマネジメントがもたらす組織への影響・デメリット

働く人を示した白のブロック

続いて、マイクロマネジメントがもたらす組織への影響、デメリットを解説します。

生産性が低下する

仕事に対するモチベーションが失われたり、ストレスなどによって心身の不調(プレゼンティーイズム)を抱えたまま仕事をしていたりすると、生産性が低下します。

強い叱責や追及が常態化していると、「責められるから言わないでおこう」と、ミスが発生しても報告しなくなります。万が一大きなミスがあっても発覚が遅れてしまうため、深刻な損失を招く可能性も高いでしょう。また、メンタル不調から休職する従業員が発生することでも、組織のパフォーマンスが下がってしまいます。

離職リスクが高まる

マイクロマネジメントが改善されない場合、従業員が離職を選択する可能性があります。主体的に仕事ができないことでモチベーションが低下し、ここでキャリアを積んでいくことは難しいと判断した部下は、会社に見切りをつけて去っていくでしょう。

組織の発展が妨げられる

マイクロマネジメントは、会社組織の発展にも悪影響があります。管理職が現場の業務に過度に干渉することで、目標管理や業務方針を考える管理職としての役割を十分に果たせなくなることが懸念されます。

適切なマネジメントを学ぶ機会がないまま、マイクロマネジメントが継続されると組織のリーダーシップの質が低下するおそれもあるでしょう。また、自律的な人材が育ちにくいことは、組織を牽引していく「将来の管理職層」の育成が困難になり、長期的な視点での組織発展が妨げられてしまいます。

ハラスメント発生につながる

上意下達の意識が強く、上司の指示に従わなければならないという風土は、職場ハラスメントを招きやすい環境です。また、マイクロマネジメントによる過度な叱責は、パワハラやモラハラに該当する可能性があります。

部下である従業員がハラスメントを理由にメンタル不調に陥り、休職を余儀なくされた場合、企業は使用者責任や安全配慮義務違反を問われ、被害者から訴訟を起こされるリスクを伴います。

マイクロマネジメントの改善策

窓際で話す従業員たち

最後に、マイクロマネジメントの改善策をご紹介します。部下をもつ管理職の方や人事担当者は以下の考え方を参考に、管理職としての適切なマネジメントを理解しましょう。

部下に対する思い込みや決めつけをなくす

「入社して間もないから、これは難しいだろう」などと、管理職の思い込みで部下の能力やスキルを評価しないように注意しましょう。逆に、「この仕事くらいはできるだろう」と決めつけて放任するのも望ましくありません。一方的な主観に基づいて部下を管理するのではなく、個々の能力を最大限引き出しつつ、目標達成に導けるようなマネジメントを意識することがポイントです。

進捗確認・報告のルール・頻度を決める

進捗確認や報告のルール、頻度を見直すことも、マイクロマネジメントの改善に不可欠です。上司から頻繁に進捗報告を求められることは、部下にとってプレッシャーになる他、上司も確認に時間を取られるため望ましいとはいえません。

例えば、「始業前に業務予定を伝える」「終業時に進捗状況を報告する」など、部下にヒアリングをしながら、最適な回数や方法などについて決めましょう。決まったタイミングで「部下から上司へ」報告するという体制を整えることで、過干渉なマネジメントを回避できます。

ただし、トラブルや問題が発生した時はすぐに知らせてもらうようにし、管理職側もそれに対応できるようにしておきましょう。一度決めて終わりではなく、部下の負担になっていないか、意味のある運用ができているかを定期的に振り返ることが大切です。

部下に裁量権を与える

部下に一定の裁量を与えることも重要です。組織としての目標や業務の目的といった大枠を共有した上で、具体的な仕事の進め方やスケジュール管理、一部の判断は部下に任せ、自ら考え行動できるよう促します。 仕事を任されることで「上司から信頼されている」という意識が芽生え、より主体的に業務に関われるようになり、モチベーションの向上も期待できます。

また、工夫を加えられる環境を整えることで、部下は責任感を持って仕事に取り組み、成長を後押しできるでしょう。ただし、任せきりにせず、上司は適切なタイミングで進捗を確認し、必要に応じて軌道修正を図ることが大切です。

コミュニケーション方法を見直す

管理職には、部下と信頼関係を築き、意欲を引き出して成果につなげることが求められます。定期的に1on1ミーティングを実施するなど、フォローの機会を設け、適切な頻度と距離感でサポートすることが重要です。

相手の気持ちや考えを尊重したアサーティブなコミュニケーションを意識し、フィードバック時には否定から入らず、「こう考えているんだね」「それも一つの方法だけど」といった前置きを使って意見を受け止める姿勢を見せましょう。こうした対話を通じて相手の考え方を知ることは、過干渉なマネジメントを防ぐだけでなく、部下が自分で考える力を育むことにもつながります。

また、どのように部下と接するべきか、管理職としての姿勢や適切なコミュニケーション方法を学ぶことも大切です。例えば、部下が悩んでいる時や相談を受けた時には、「オープンクエスチョン」を用いて部下自身の考えを引き出す問いかけを心がけるとよいでしょう。

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管理職の役割は、企業が掲げる方針や戦略を理解し、目標達成のためにチームのパフォーマンスを高め、組織としての成果を最大化することです。部下を管理することは、あくまでもその手段の一つであることを理解しておきましょう。

アドバンテッジリスクマネジメントでは、自身のリーダーシップスタイルを可視化し、目指すべき方向性に向けて能力開発を行う「リーダーシップ開発研修」を提供しています。場面や相手に応じて適切なリーダーシップを発揮できるようになることを目指します。

適切なマネジメントで人と組織を育てる

高層ビルと木の隙間から見える光

マイクロマネジメントは、部下の成長の枷となってしまうだけでなく、組織全体の生産性、将来的な人材育成にも悪影響を及ぼしかねない深刻な問題です。企業の持続的な成長を目指すうえでも、自律的な人材の育成は欠かせません。研修などによって管理職の意識改革を図る他、報告のタイミングやコミュニケーション方法を見直し、部下が自ら考え、行動できる適切なマネジメントを実現しましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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