子育てにも役立つ! コミュニケーションの根源的能力“EQ”活用のヒントと、広がる可能性

子育てにも役立つ! コミュニケーションの根源的能力“EQ”活用のヒントと、広がる可能性

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自分の感情を正しく認識し、状況に応じた行動を取ることができる能力、EQ。「感情の知能指数」とも呼ばれています。自分と相手の気持ちをつかみ、適切なアプローチを選択するその技法は、ビジネスシーンにとどまらず、人と人との関わりが生じるあらゆる領域で活用できる、実は汎用性の高いスキルです。

EQの技法をビジネス以外の分野で当てはめてみたら、どんないいことがあるだろう? EQというものを多くの人に知ってもらい、一度活用してみてほしい。――その思いから、今回、アドバンテッジリスクマネジメント(ARM)では「子育て×EQ」をテーマに出前研修を開催しました。

日ごろの子どもとのコミュニケーションや接し方に、EQの技法はどう活かせるのか? その研修の一部をご紹介しながら「EQの可能性」を考えてみました。

子育てにも役立つ! コミュニケーションの根源的能力“EQ”活用のヒントと、広がる可能性

EQを使って、「子育て」をレベルアップ!

東京・世田谷区の幼稚園「あおぞらえん」。集まっている保護者たちは、熱心に講師の話に聞き入り、メモをとっています。この日は、同園の保護者を対象に「子育て×EQ出前研修」が開催されました。
研修講師は、ARMで研修コンテンツ開発を担当する米田 久美子。「私自身、仕事で学んできたEQが、子育てにも活かされたと実感しているんです」と話す彼女もまた、2人の子どもを持つ現役ママです。

EQ研修 アドバンテッジリスクマネジメント 講師の米田久美子

「子どもと接する時に、うまく気持ちを切り替えられないことって、ありませんか?」
冒頭、そう切り出した米田講師。その「気持ちが切り替えられない原因」として、次の4つを挙げました。

<気持ちが切り替えられない原因>
➀目的がはっきりしない
 (なんとなくこんな子になってほしい…/なんとなくこんな親でありたい…)
➁目的が混ざっている
 (自己主張できる子になってほしいけど、ワガママを言ってほしくない/集中できる子になってほしいけど、幅広く興味を持ってほしい)
➂感情マネジメントができる余裕がない
 (疲れてしまって常にイライラ…/やらなければならないことをこなすので精一杯…)
➃感情マネジメントのやりかたがわからない

「気持ちがうまく切り替えられずに子どもに当たってしまうと、自分を責めてしまうんですよね。だからこそ、EQの知識を身につけることで、より納得のいく子育てにつなげることができるんです。今日は子育てを通して子どもの心と自分の心を育むアプローチを学びましょう!」

そして、研修の本題に移ります。
まず、米田講師がスライドに映したのは、EQの基礎理論である「サロベイ・メイヤーのEQ4ブランチモデル」です。

<EQの基礎理論:サロベイ・メイヤーのEQ4ブランチモデル>

  • ブランチ1.感情の識別(自分自身や、子どもの気持ちをつかむ能力)
  • ブランチ2.感情の利用(感情を使って自分に行動をとらせる能力)
  • ブランチ3.感情の理解(感情を言語化し、由来や行く末を理解する能力)
  • ブランチ4.感情の調整(目的を果たすために感情を調整する能力)

「この1~4の能力を使って、自分と相手の感情を理解し、適切なアプローチをとっていくのが、EQの基本的な能力です」

研修では、「EQを使って子育てをレベルアップしよう!」というテーマで、この「EQ4ブランチモデル」にもとづくグループワークを行っていきました。

【①感情の識別】行動とそれに伴う感情を可視化

➀感情の識別では、「はっきり!」と「ぼんやり」、「快」と「不快」の2軸のマトリックスを用意。子どもがどんな行動を取るときにどの感情になっているかをシートに書き込み可視化しました。また、親自身も同様の作業をしたうえで、4つの象限をそれぞれ「イケイケモード」「親鳥モード」「ギャングモード」「評論家モード」と名づけ、自分がどんな時にどのモードになっているかを「自己分析」します。

s-EQ研修シート_子どもの気持ちをつかむ_アドバンテッジリスクマネジメント
▲子どもの感情を識別する
EQ研修シート_自分の気持ちをつかむ
▲親も自分自身の感情を識別する(講師・米田の感情識別シート例)

【②感情の利用】気持ちを切り替えるスイッチを探す/活用する

次に➁感情の利用では、「感情の識別」のワークで把握した感情から望ましい行動に切り替えるためにどのようなアプローチができるか、グループで話し合いました。

子どもに対し促進したい行動がある場合には、スムーズに「快」の象限に移行するような声掛けや働きかけを意識するのがポイント。

また、普段の生活において、親自身の気持ちの切り替えも大切です。例えば仕事中は冷静に分析してあらを探そうとする「評論家モード」になりがち。「評論家モード」のまま子どもに接すると「宿題やったの?」など、マイナス面にばかり目が向いた冷たい対応になってしまいます。

米田講師は、そんな「評論家モード」からの切り替えのために、自分自身が実践していることを紹介しました。
「帰宅途中に、電車の中で子どもの写真を見るんです。そのことで気持ちを『親鳥モード』に切り替えるようにしています。自宅でリモートワークをするときも、ギリギリまで仕事をしないように気をつけていますね」

EQ研修の様子 アドバンテッジリスクマネジメント

基本的には最も穏やかな「親鳥モード」であることが理想的ですが、時に子どもの背中を押す「イケイケモード」や注意を促す「評論家モード」など、どれも全て必要な感情だそう。アプローチの目的によって上手に使い分けることが大切です。

【③ 感情の理解】気持ちを言葉にするためのサポート

次の➂感情の理解は、気持ちを言葉にする(言語化する)ワーク。一つの感情をとっても、その強さや複雑さによって、さまざまな言葉で言い表すことができます。ここでは「親役」と「子ども役」でペアを組み、「子ども役」が最近あったモヤモヤしたことを話し、「親役」がそれを聞きながらその気持ちをいろんな表現で聞いてみるワークを行いました。

<気持ちを言葉にするワーク>

  • 体ではどう感じた?(熱くなった、冷たくなった、痛くなった、など)
  • 今の気持ちを100点満点でいうと何点くらい?
  • 今の気持ちを「色」で例えると?

「自分の感情に的確な言葉を当てはめることで、その感情の裏にある原因を理解することができます。また、感情が時間を経てどう変遷するかも予測できるようになります」と米田講師。

さらに、子どものモヤモヤに寄り添う時の心得として、「ネガティブな感情は“心の成長痛”なんです」と強調。「お子さんが感情を出すことで気持ちが整理されることもあります。心のモヤモヤと向き合うのはとても大事なこと。そういう時こそお母さんは『親鳥モード』全開でお子さんと接してあげてくださいね」と語りました。

【④ 感情の調整】どんな子に育てたいか。どんな親でいたいか。目的に応じた行動を

最後に、➃感情の調整です。①~③のスキルを活用して、適宜感情をマネジメントしながら目的達成を目指します。どんな子どもに育てたいか。どんな親でありたいか――何を「目的」に置くかによって、当然ながら選択する行動は変わります。子育てにおける子どもと自分の「ありたい姿」を明確にするためのグループワークを行い、“子育ての羅針盤”を作成しました。

こうして、約3時間に及ぶ研修はあっという間に終了しました。

EQ研修の様子 アドバンテッジリスクマネジメント

EQのもつ価値と、広がる可能性とは?

普段は企業向けのEQ研修プログラムを実施しているARMにとっても、初めての試みとなった、今回の「子育て×EQ出前研修」。担当した米田講師に内容を振り返ってもらいながら、EQが子育てにもたらす効果や、EQのメソッドが持つ可能性について聞いてみました。

アドバンテッジリスクマネジメントEQ研修講師 米田久美子
研修講師:米田 久美子
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 研修コンテンツ開発課 担当課長
専門:EQ(心の知能指数)ハラスメント防止

自身の体験から確信した「EQ×子育て」の効果

――研修講師お疲れ様でした。実際にやってみて、参加された皆さんの反応などはいかがでしたでしょうか?

「当初の予想以上に、受講された保護者の方々がとても前のめりに受講してくださって、正直驚きました! アンケートからも、『EQは子育てにも役立つんだ』というメッセージをしっかり受け取ってくださったのを感じました。やる前はドキドキしていましたが、やってみてよかったですね(笑)。同時に、保護者の方々との対話を通じて、皆さん、子どものことを第一に考えながらも『うまくいかない』『できない』と悩みをたくさん抱えているんだろうな……と、あらためて感じましたね。少しでも、今回学んでいただいたEQのスキルがお役に立てれば、と願っています」

<参加者の感想(アンケートより)>

  • とてもリラックスできる楽しい研修でした。学んだことをすぐに毎日の子育てに反映できるので、大変ありがたい機会でした。
  • 時間はかかるかもしれませんが、子育てでイライラする気持ちを少しでもコントロールできるかも! と嬉しい気持ちです。
  • 母親自身のEQを育むことが、子どものEQを高めることにつながるのだと理解しました。まず自分から実践してみます。
  • 米田さんの実際の子育てを例に挙げて説明してくださっているのが、とても分かりやすく、参考になりました。

――EQのメソッドは、具体的に、子育てにどう役立つのでしょうか?

「企業向けのEQ研修ではよく『自分の気持ちをつかむ習慣を持ってください』とお伝えしているのですが、これはそのまま子育てにおいても大切な習慣として当てはまります。

私たち人間は、目の前のことに追われていると、自分の『今の気持ち』に気づきにくくなり、無自覚にネガティブな感情を抱いてしまっている、ということが起きます。そのネガティブな感情は、時に自分よりも弱い立場の人に対して、問題行動として出てきてしまう性質があります。

ということは、大人の庇護のもとで生活している子どもは、どうしても親のネガティブな感情のはけ口になってしまいやすいのです。だから、無自覚に余裕がなくイライラしていると、そこまで言う必要がないことを言ってしまう。そして、後で後悔して自分のことを責めてしまい、ますますネガティブな感情に陥ってしまいます。

でも、『今の気持ち』をつかめれば、『あ、今こういう気持ちだから振る舞いに気を付けよう』とブレーキをかけることができるし、違うモードに気持ちを切り替えるスイッチを押すこともできます。このように、普段、企業研修でお伝えしているEQのメソッドは、そのまま子育てにおける子どもや自分の気持ちをつかみ、最適な行動を促す習慣に活かすことができるのです」

――米田さん自身も、子育てにEQのメソッドを実践していたそうですね。

「私自身、まさにネガティブな感情を子どもにぶつけてしまう親でした。仕事でうまくいかないことがあった時に子どもから話しかけられると、つい強い口調で返してしまい、後から「しまった!」と後悔したり……。そんなこともあって、最初は『まっさらな子どもにEQの知識をふまえて関わってみたらどうなるだろう?』という個人的な興味から、自分の子どもで試してみました。すると、本来なら否定したり、必要以上に叱ってしまったであろうシチュエーションでも、EQのメソッドを活用することで、落ち着いて対応できるようになった。また、子育てを通して自分のEQも育むことができることにも気づいたんです。
このことから『EQと子育てにはとても強い関係性がある』と身をもって確信しました。さらに、この日の研修でのママさんからの反応で、その確信をいっそう深めることができましたね」

EQ研修 アドバンテッジリスクマネジメント 講師の米田久美子

EQは、人が生きていく上での「根源的な能力」

――今回の研修では「子育て」にフォーカスを当てましたが、改めて、EQの持つ価値とはどのようなところにあると感じていますか?

「人と人とが関わり、良好な関係を築きながら生きていこうとする以上、人との『コミュニケーション』は永遠に避けて通れません。そのコミュニケーションの際に、人間が必ず働かせる根源的な能力がEQであり、その普遍性に大きな価値と魅力があると感じています。
しかも、EQは先天的な要素が少なく、後天的に高められる能力とされています。だから、いつからでも学ぶことができ、自己成長できるのも魅力の一つです。加えて、オン・オフ問わず活用できる汎用性の高さもEQの大きな価値ですね」

――そのEQは、今後どのような可能性を秘めていると考えていますか?

「日本では、EQは主にビジネスシーンにおいて広く導入されてきました。企業内の研修としてのご利用が多いですが、企業の人事担当者様が当社が発行しているプロファイラーやトレーナーの資格取得を進められるケースも増えてきています。
これからはEQの持つ普遍的かつ汎用的な価値が認知され、より多くの分野や属性の方々に関心を持っていただけるものになることを期待しています。私たちとしても、今回のような子育てやパートナーシップ、さらには教育現場や、恋愛まで、EQを知っていただくきっかけを増やしていけたらと思っています」

コロナ渦を受けてさらに高まるEQの重要性

「コロナ禍を受けてリモートでのコミュニケーションが増えたことも、EQの知識や技法がいっそう求められる背景としてあると考えています。画面越しのやりとりでは感情情報が察知しにくく、意思疎通が難しくなっています。リアルで人と会っても、マスクを付けていると相手がどんな気持ちなのかを表情から読み取りにくいですよね。

コミュニケーションで相手から察知できる情報量、そして自分から伝えられる情報量が少なくなっているからこそ、より丁寧に自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちをつかむことが円滑なコミュニケーションのためには必要です。そういった観点で、EQの重要性はこれまで以上に高まっていると感じています」

――最後に、EQを高めるために、私たちがすぐにでも実践できることを教えてください。

『自分の気持ちに気づく』。それが、EQ能力向上の第一歩です。自分の気持ちが適切につかめると、その場にそぐわない感情を自分が持っていたとしたら、すぐに切り替えるためにEQ能力を始動させることができます。1日1回、1分程度で大丈夫なので、『今、自分はどんな気持ちだろう?』と振り返る習慣を持ってください。それが、個々のEQを高めるスタートですね」

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
363万人以上へのサービス提供実績と、健康経営銘柄2022に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「個と組織の未来基準の元気を創る」トピックスをお届けします。

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