「エンゲージメント対策は二刀流のアプローチが大事という話、まとめました。」アドバンテッジJOURNAL

エンゲージメント対策に「とりあえずタレントマネジメント」は不十分?成果を出すための“二刀流”のアプローチとは

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離職防止や生産性向上などを目的とした従業員のエンゲージメント向上は、人事課題の中でも優先度が高まっています。近年では従業員の能力やスキルにフォーカスし、人材配置などに活用する「タレントマネジメント」が手法として注目されています。
しかし、タレントマネジメントを導入すれば、簡単に従業員のエンゲージメントが向上し、人事課題が解決するというわけではありません。大事なのは、個人の能力や強みを「引き上げる」だけでなく、パフォーマンスを低下させるネガティブな要因を取り除き、下から「支える」こと。その「支える×引き上げる」の“二刀流”のアプローチについて解説します。

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タレントマネジメントってそもそもどういうもの?

タレントマネジメント=人事戦略

「タレントマネジメント」とは、従業員一人ひとりが持つ能力やスキル、経験といった情報を経営資源として捉え、それらの情報を採用や人材育成、人材配置などに活用する人事戦略を指します。各従業員の強みを引き出すことで、彼らの働きがいやパフォーマンス向上を期待するという考えをもとにしています。もともとは雇用の流動性の高いアメリカにおいて、優秀な人材の定着率を高めるために発展した手法ですが、近年では日本においてもタレントマネジメントに注目が集まっており、導入する企業が増えています。

タレントマネジメントが求められる背景

今日において、なぜタレントマネジメントが注目されているのでしょうか。そこにはいくつかの背景があります。

一つの大きな要因としては少子高齢化に伴う労働力人口の減少が挙げられます。人材の確保・維持がますます困難さを増す中で、人事戦略も「多くの人材を採用して成果を挙げる」から「現在在籍している人材のパフォーマンスを最大化し、成果を挙げる」方向へとシフトしており、従業員の持つ能力やポテンシャルを最大限発揮し活用することへの要請が高まっています。

加えて、働くことやキャリアに対する価値観の変化、ワークライフバランスの考え方が浸透してきていることも影響を与えているでしょう。自身の強みや適性に合った仕事をすることや、私生活まで踏まえた柔軟な働き方を希望する従業員も増えてきています。

企業・投資家目線としては「人的資本経営」推進の観点でも、従業員のパフォーマンス向上は重要な目標となっています。従業員を自社の重要な資本と捉え、投資していく動きはますます加速しています。人事戦略として、従業員のスキルや強みを引き出すためにタレントマネジメントを上手く取り入れようとする企業も少なくありません。

 あなたの会社、本当にタレントマネジメントが必要でしょうか

このように、従業員のエンゲージメントを高めるための施策としてタレントマネジメントを導入する企業は増えています。私たちアドバンテッジリスクマネジメントのもとにも、エンゲージメント対策に関してのご相談が多く寄せられています。これから始めていきたいという段階でご相談いただくケースが多いですが、すでにタレントマネジメントをはじめとしたエンゲージメント対策を進めているものの、なかなか上手くいかないというご相談をいただくことも増えてきました。

さらには、「とりあえずタレントマネジメントでエンゲージメント対策をすれば組織改善ができるだろう」「健康経営にエンゲージメント対策は必要だから」というような理由で、自社の状態に照らし合わせる前に、「対策をすること」が目的になってしまっている企業も少なくはありません。

もちろん、エンゲージメント対策の手法として、タレントマネジメントは有効なアプローチ方法の一つではあります。それにもかかわらず、うまくいかない企業が多いのはなぜでしょうか。タレントマネジメントの導入、ひいてはエンゲージメント対策全般にいえることですが、そこには次の2つの「落とし穴」があるからです。

【落とし穴①】 人材課題の解決は「引き上げる」だけでは足りない

まず前提として、人事施策には、大きく2つのアプローチがあります。

・ポジティブな要素をさらに引き上げる(ポジティブ→ポジティブ)
・ネガティブな状況を改善し、ポジティブに転化していく(ネガティブ→ポジティブ)

このうち、従業員の能力を生かし、適切な配置を行うタレントマネジメントは、前者の「ポジティブ→ポジティブ」のアプローチに該当します。しかし、現実の会社組織においては長時間労働、健康状態、プレゼンティーイズム、アブセンティーイズム、ハラスメント、社内外の関係性など、個人や組織のパフォーマンスを低下させるネガティブな要因が数多く存在します。これらのネガティブな要因は、「ポジティブ→ポジティブ」のタレントマネジメントのアプローチでは取り除くことができません。

そこで、後者の「ネガティブ→ポジティブ」のアプローチが必須となります。その考えを重視しているのが「健康経営」ではないでしょうか。様々な人事領域において多角的に取り組むことで、従業員が「健康でいきいきと」働けるようになることを目指すのが健康経営です。この「健康でいきいきと」した状態はエンゲージメント対策だけで実現するのは難しいでしょう。健康経営的なアプローチによって、前述のようなマイナスな状況の改善に取り組みつつ、ポジティブな状況を創りだしていくことが重要なのです。

タレントマネジメント従業員のポジティブな要素(タレント)を引き上げる 好事例を他の従業員にも展開し、再現していく (ポジティブ→ポジティブ)
健康経営健康上のマイナスな状況を改善しながら、ポジティブな状況を創り出していく (ネガティブ→ポジティブ)
「タレントマネジメント」と「健康経営」のアプローチの違い

【落とし穴②】 「へとへと状態」は従業員のバーンアウトのリスク大

タレントマネジメントの施策が幸いにして奏功し、従業員のエンゲージメントが高められたとしましょう。しかし、実は「エンゲージメントだけが高まっている状態」にはリスクが潜んでいます。

下の図は、縦軸に「エンゲージメント(ワークエンゲージメント)」、横軸に「メンタルヘルス(ストレス反応)」の指標を配して、従業員の状態を4つの象限で表した図です。このうち、エンゲージメントが高く、メンタルヘルスが悪い状態は「燃え尽き注意状態」で、急にバーンアウト(燃え尽き症候群)に陥るリスクが潜んでいます。これは、エンゲージメントだけに着目していては気づきにくい「落とし穴」です。

どんなにエンゲージメントが高まったとしても、そこに心身の状態が追い付いていかなければ、仕事のパフォーマンスが改善しづらいことは想像に難くないでしょう。また、エンゲージメントとメンタルヘルスの状態がアンバランスな状態で頑張ろうと無理をしてしまうことは、その後の休職・退職リスクにつながってしまうかもしれません。

タレントマネジメントを否定している訳ではありません

誤解のないように言うと、従業員の能力やスキルを引き出すことで従業員と企業のパフォーマンス向上を目的とするタレントマネジメントは不必要ということではなく、適切なシーンで活用すれば効果を発揮する手法です。しかし、「ポジティブ→ポジティブ」のアプローチでエンゲージメントを高めようと注力するだけでは、先ほどのバーンアウトの前兆となる原因を見落としてしまいやすくなったり、そもそも従業員のパフォーマンスが引き上がってこない可能性が高く、結果としてタレントマネジメントの効果も発揮されにくくなるのです。

昨今の組織における課題は、「エンゲージメントの向上」という一面的なアプローチだけでは改善することはできないほど、多くの要因が存在し、影響をおよぼしています。まずは、その人事課題を引き起こす要因を特定し、あらゆる視点から必要なアプローチを見定めることが必要です。

「メンタルヘルス」×「エンゲージメント」が成功の鍵

「メンタリティマネジメント」とは?

私たちアドバンテッジリスクマネジメントが独自に提唱しているのが「メンタリティマネジメント」という考え方です。 メンタリティマネジメントとは、次のように定義されます。

メンタリティマネジメント
「支える力:メンタルヘルス」と「引き上げる力:エンゲージメント」の相互作用によってマイナスの要因を解消し、プラスに変える力をサポートする従業員のマネジメント手法

わかりやすい例えとして、大きな重りの入ったビニール袋を持ち上げるイメージを思い浮かべてみてください。下から支える(=メンタルヘルス)だけでは、重いビニール袋を高く持ち上げるには十分ではありません。一方、上に引き上げる(=エンゲージメント)だけでも、重りの負荷が大きく、ビニール袋が破けてしまいます。従業員のパフォーマンス向上のためには、「支える×引き上げる」の“二刀流”のアプローチが必要となります。その2つのアプローチを満たしているのが、メンタリティマネジメントです。

”二刀流”のアプローチが、従業員の状態を映し出す

二刀流のアプローチ手法である「メンタリティマネジメント」は従業員の状態を正しく捉えることができます。ストレスチェックを起点にした当社の組織改善サービス「アドバンテッジ タフネス」ではメンタルヘルスとエンゲージメントの両軸で測ることで従業員がどういった状態か、理想的な「いきいき状態」に何が必要かを見つけることができます。

このように、従業員の状態はエンゲージメントとメンタルヘルスを掛け合わせて捉えることがまずは重要だと考えています。

従業員を「支えて、引き上げる」、できていますか?

ここまでお読みいただき、タレントマネジメントなどのエンゲージメント施策を行うだけでは、人事課題の解決には十分でないということがおわかりいただけましたでしょうか。まずは、自社の人事課題は何であり、それは何が原因となって発生しているのかを、施策を考える前に整理してみることをお勧めします。そのうえで、「ポジティブ→ポジティブ」のアプローチだけでなく、「ネガティブ→ポジティブ」のアプローチもあわせた「支える×引き上げる」の“二刀流”のアプローチが鍵を握ります。

「やるべきことを、正しい順序で。」人材課題解決の基本をおさえよう!

その「支える×引き上げる」のメンタリティマネジメントについて、具体的な進め方を3つのステップに沿ってくわしく解説します。

まずはメンタルヘルス対策で、健康に働くための環境づくりから

最初に着手すべきは、「支える力」であるメンタルヘルスです。ストレスチェックの実施はもちろんのこと、その活用や、カウンセリング窓口の整備・運用など、従業員のメンタルヘルスを支える環境を整えましょう。

ストレスチェック
従業員のストレス状況について定期的に調査を行うストレスチェック。導入している企業は多いのですが、実は「定期的に実施しているけど、結果をうまく活用できていない」という企業からの声は多く聞かれます。事実、ストレスチェックの集団分析結果は出したものの、担当者間で「見た」だけになっていたり、経営や現場に情報展開をしたものの「報告した」だけになっているケースが散見されます。

アドバンテッジタフネス

当社が提供する「アドバンテッジ タフネス」では、前述したように独自メソッドによるストレスチェック指標でストレス状態を可視化し、リスク要因を特定。さらに、そのストレスチェックの結果をふまえ、詳細レポートから個と組織それぞれの課題にあった解決策をご提案します。

カウンセリング
ストレスチェックの実施・活用とあわせて、メンタルヘルス向上のために企業内にカウンセリング環境を整備することも重要です。社内で気軽にカウンセリングを受けられる体制を整えることで、職場における人間関係や仕事の悩み、メンタルヘルス不調を抱えている従業員が自分の力を発揮して生き生きと働けるようになり、仕事の生産性が上がったり職場環境が改善したりする効果が期待できます。
企業内カウンセラーは、自社で直接雇用するだけでなく、EAP企業(従業員支援プログラム、メンタルヘルスケアなど従業員を支援するためのサービスを提供する企業)に依頼する方法もあります。

アドバンテッジタフネスカウンセリング

当社アドバンテッジリスクマネジメントでは、企業のカウンセリング機能をサポートするサービス「アドバンテッジ タフネス カウンセリング」を展開しています。アドバンテッジ相談センターは、24時間対応で土日祝日も利用可能。いつでも心理専門家がお答えします。また、全国47都道府県に直営および提携のカウンセリングルームをご用意しています。

効果的なエンゲージメント対策は、「要因」を測るサーベイから

これらのメンタルヘルス施策を行ったうえで、もう一つの「引き上げる」アプローチであるエンゲージメント対策を講じていきます。エンゲージメントは、内発的動機づけによって生じる、やることそのものにやりがい・意味・価値を感じる自発的な「やる気」のことです。エンゲージメントが向上すると、仕事や組織に対して心の内面から前向きに向き合えるようになります。
エンゲージメントは一口に「やる気」という意味ではなく、下記のように分類され、その状態も異なります。

ワークエンゲージメント仕事において自発的行動を行っている状態
ポジティブな感情を持って仕事に従事している状態
エンプロイーエンゲージメント所属組織に対する一体感によって貢献意欲が高い状態

従業員のエンゲージメントには、職場の環境や個人の状況によって生じる様々な要因が影響を与えるため、その向上のためには「エンゲージメントが高いかどうか」だけでなく、その要因を測定した上で、的確な改善策を実施することが重要です。ですので、まずはその「要因」を測定することのできるエンゲージメントサーベイの導入をお勧めしています。

エンゲージメント対策の基本をまとめた無料のホワイトペーパーを提供しています。ダウンロードはこちらから。

アドバンテッジタフネス×pdca(ピディカ)


当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「アドバンテッジタフネス」×「アドバンテッジpdCa」は、年に1回の大規模調査(センサス)と月1回など短スパンでの定点調査(パルスサーベイ)の組み合わせで、エンゲージメントを含めた個と組織の課題に「見える変化」を与えるサーベイ起点のワンストップサービスです。詳細はこちらから。

人事データは「掛け合わせる」ことで、本質的な原因が見えてく

最後のステップとして、ここまでご紹介した「支える力」のメンタルヘルスと、「引き上げる力」のエンゲージメントの両施策を通じて得られた双方のデータは、掛け合わせることで本質的な課題や関連する指標を特定することができます。

一例として以下の分析をご紹介します。2020年11月~2021年12月において、アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「アドバンテッジ タフネス」でWHO-HPQを測定している企業(272社・288,388人)を対象にストレス判定とプレゼンティーイズムの損失割合を比較したところ、高ストレス者は非高ストレス者に比べて1.3倍のプレゼンティーイズムが発生。ストレスの状態はプレゼンティーイズムに極めて強く影響していることがわかりました。
さらに「ストレス反応×ワークエンゲージメント」の4つの象限ごとにプレゼンティーイズムの損失割合を比較したところ、「へとへと」層は「いきいき」層に比べて2倍近くのプレゼンティーイズムが発生していることがわかりました。

ストレス反応×ワークエンゲージメント別プレゼンティーイズム損失割合/ARM顧客平均

「支える力」のメンタルヘルスと、「引き上げる力」のエンゲージメントという異なるアプローチによって得られたデータをクロス分析することで、指標の相関やつながりを客観的なデータで理解することができます。そもそも従業員のパフォーマンスや生産性が上がらない要因は何か、エンゲージメントとの関連性はあるのかというように、より高度な分析による改善のためのPDCAを回すことができ、本質的な健康課題の解決、ひいては経営課題の解消につながります。

「言うは易し、行うも易し」を可能にするデータマネジメントツールをご紹介!

ここまで説明したプロセスを効果的かつ効率的に実施するための支援ツールとして、当社アドバンテッジリスクマネジメントでは「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」を提供しています。

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アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」では、テーマごとに分散しがちな各種データ(ストレスチェック、エンゲージメントサーベイ、健診結果、勤怠情報など)を一元管理し、ダッシュボードで可視化。クロス集計などの分析を可能にし、課題の特定と的確なソリューションの実施までのPDCAサイクルを支援します。

任意の条件で従業員を絞り込み、分析できる「カスタムリスト」機能、DXP内の属性に因子を自由に掛け合わせて分析し、レポーティングできる「カスタムレポート」機能によって、より本質的な健康経営課題の分析と改善をサポートします。 例えば「ストレス状態×エンゲージメント」「エンゲージメント×自社の評価指標」などのように、エンゲージメント関連のさまざまな因子を掛け合わせて分析することで、従業員のパフォーマンス向上を図るうえでの本質的な原因がどこにあって、どう対処していけばよいかが明らかになります。

サービスの概要を知りたい方は、こちらの資料請求フォームからお気軽にお問い合わせください。

“二刀流”のアプローチが、個人と組織のパフォーマンスを高める

従業員のエンゲージメント向上施策として注目されるタレントマネジメントですが、その「ポジティブ→ポジティブ」の施策の前に着手すべきは、職場環境のネガティブな要因を改善し、従業員のパフォーマンスが低下しないよう下支えする「ネガティブ→ポジティブ」の施策、つまり健康経営的なアプローチです。個々の従業員のコンディションが充実してこそ、エンゲージメント向上施策の効果も高まり、「いきいき状態」の従業員が増えて、組織のパフォーマンスが向上していきます。

その“二刀流”のアプローチのためにも、人事データを普段から活用し、効果的にPDCAを回すことが不可欠。アドバンテッジリスクマネジメントは、そのためのさまざまな支援をご提供しております。是非お気軽にお声がけください。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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