従業員エンゲージメントを高めるエンプロイー・エクスペリエンスとは

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米ギャラップ社が2018年に実施した世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、「対象139ヵ国中、日本は132位と最下位レベルであることがわかりました。

これによれば、日本は「熱意あふれる社員」がわずか6%と米国の32%と比べて大きな差があり、逆に「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」が24%、「やる気のない社員」は70%にまで達していると公表されています。

生産労働人口が減少していく日本企業にとって、人材確保は重要な経営課題となっており、いかに従業員のエンゲージメントを高めるかが重要となります。そうした従業員満足度向上の一つとして注目されている考えが「エンプロイー・エクスペリエンス」で、直訳すると「従業員体験」となります。

このエンプロイー・エクスペリエンスはどのような効果をもたらすのか、定義・概念や具体的な取り組みについて紹介します。

企業と従業員の幸福度を高める「エンプロイー・エクスペリエンス」とは

「エンプロイー・エクスペリエンス」とは、従業員が組織や会社の中で体験する経験価値、すなわちスキルアップややりがいだけでなく、健康状態や会社組織、キャリア形成など会社生活の中で経験するすべての印象や影響を包括した考え方です。

AIやテクノロジーの発展によって、どの業界、市場においても変化を余儀なくされている現代。

デロイトトーマツコンサルティングが公表した「グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2017~デジタル時代の新たなルール~」でも、今後のテクノロジー社会を見据えて企業が取り組むべき課題のひとつとして「エンプロイー・エクスペリエンス」を掲げています。

そんなめまぐるしい変化の時代において、どんな状況にも適応できる組織風土や企業文化を育てていくことが企業には求められています。

「エンプロイー・エクスペリエンス」で期待できるのは、働く環境や健康面、キャリアが向上することで従業員の満足感や会社に対する帰属意識、愛着心が高まって生産性や離職率の改善に繋げられること。

国内の労働生産人口の減少により、人材確保は非常に難しくなってきました。さらに人材の流動化が加速している現在では、自社に優秀な人材を繋ぎ止めることも至難の業。

そのためには人事担当者だけでなく、人材をマネジメントする管理職にも「エンプロイー・エクスペリエンス」という概念への理解を深め、向上させていくことが重要だといえます。

「エンプロイー・エクスペリエンス」が注目される背景

「エンプロイー・エクスペリエンス」が注目されてきた背景には、1980年代序盤から1990年代中盤に生まれた「ミレニアル世代」の存在があります。彼らは、幼少期や青年期にインターネットやデジタル機器に触れてきたデジタルネイティブであり、今や組織の中核を担う世代です。

ミレニアル世代は、インターネットサービスが既に発達している環境の中で育った最初の世代のため、サービスの受け手としての経験価値が高いのが特徴です。そのため、同様の要求や価値観を自身が働く企業に対しても求める傾向があります。

「自分に合う仕事や働き方がしたい」「リアルタイムなフィードバックは当然」「どのような状況でも情報に触れることが可能な環境が欲しい」といった、これらの要求を満たすような経験価値の提供が企業には必要といえるでしょう。

また、転職に対しても後ろ向きのイメージはなく、自身をステップアップさせる、あくまでも手段の一つとして企業に縛られない生き方を実践しています。そんな彼らの価値観に見合い、能力を最大限に発揮してもらうためには、「エンプロイー・エクスペリエンス」は欠かせない要素なのです。

「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める3つの取り組み

それでは、どうすれば「エンプロイー・エクスペリエンス」を高めることができるのでしょうか。ここでは、優先的に取り組むべき3つの例を紹介します。

■エンプロイー・ジャーニー・マップの作成

「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める施策を考える上で注目されているのが「エンプロイー・ジャーニー・マップ」です。具体的には、企業との出会いから、選択して入社、従業員として働き、退社に至るまでの一連の流れを設計し、各フェーズに応じた施策・取り組みを計画実行していきます。

この流れの中で、従業員がどのような経験を期待し、どのような感情を抱くのかを体系立てて整理します。つまり従業員目線で従業員のキャリアデザインを組み立てるのです。

従業員が自社と関わる一連の流れを一つの「旅」として捉えて、従業員が何を求めて、どう成長してもらうのかをイメージし、「エンプロイー・ジャーニー・マップ」を作成します。

なお、「エンプロイー・ジャーニー・マップ」を作成する上で、重要となるのがゴールとペルソナの設定です。従業員それぞれにバックグラウンドが異なるのと同様、企業に期待する内容も個人によって様々です。

そのため、企業側としては、例えば「デジタルスキルを持つ若手従業員を自社に定着させる」など、誰の経験価値を高めて、どのような効果を狙うのかを予め明確に設定する必要があるといえます。

■人事部門を中心とした部門連携、組織形成

「エンプロイー・エクスペリエンス」を高める施策は、人事部門だけで完結するわけではありません。「採用」や「社員教育」だけでなく、組織風土の見直しや他部署との連携など、全社横断的に対応していく必要もあります。

そのためには、企業のこれまでの縦割り組織を大きく変革し、人事部門が中心となり各部署のリーダーを巻き込んで展開していかなければなりません。前述したエンプロイー・ジャーニー・マップも現場の声を取り入れながら精緻化していくことが大切です。

■健康経営の取り組み

いくら仕事のやりがいで満たされていても、長時間労働が常態化するなどして従業員の健康が脅かされるような状況では、いずれ何らかの支障をきたしてしまいます。

企業によっては「チャージ休暇」などの制度設計や、「禁煙手当」「ジム手当」などで従業員の健康をサポートするような取り組みを行っている企業もあります。

企業には、従業員が心身ともに健康な状態で働くことが持続的に可能な環境の整備が求められます。こうした基盤のなかで、従業員のモチベーションを刺激すること、働きがいを創出すること、それらを通じてエンゲージメントが高まり、仕事の生産性や企業への定着率が向上するというプロセスを理解することが大切です。

まとめ

良質な「エンプロイー・エクスペリエンス」を提供することは、親が我が子に対して惜しみない愛情を与えるようなものだといえます。企業が従業員の経験価値と真摯に向き合い環境を整えていくことで、従業員は自身の成長に欠かせない存在として企業に愛着心を抱き、貢献したいと感じるようになっていくのです。

従業員の価値観が多様化することで、人事労務部門や総務部門には今後ますます変革が求められるでしょう。従業員と企業の幸せの両立、究極の目標はここが焦点になるのではないでしょうか。

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