夕日を背景にスーツの人のハートを支える手元のイメージ

心理的安全性の高い職場とは?心理的安全性の高い職場の特徴や高める方法

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

ビジネスの分野でも「心理的安全性」という言葉が広く知られるようになりました。心理的安全性の高い職場は、前向きな雰囲気に満ちており、従業員と企業双方にさまざまなメリットをもたらします。本記事では、心理的安全性の高い職場の特徴や、高める方法などについて詳しくご紹介します。

心理的安全性の高い職場を実現するためには、組織が抱える課題の本質を見極めることが重要です。「アドバンテッジ タフネス」は、業界トップクラスの実績とデータ解析を駆使した独自ストレスチェックで、個人・組織の課題を特定。課題に応じたソリューション提供から、施策がやりっぱなしにならないようPDCAサイクルでの効果検証までワンストップで支援します。

心理的安全性の高い職場とは

グレーの背景にハートのついた赤いサイコロと笑顔の白いサイコロ

はじめに、「心理的安全性」の意味を押さえ、職場における定義を整理しておきましょう。

心理的安全性とは

心理的安全性とは、対立する意見やネガティブな考えを表明しても、人間関係が悪化する不安を抱かずに、誰もが安心して意見交換や仕事ができる状態のことです。1965年、エドガー・シャイン氏とウォーレン・ベニス氏が提唱した概念です。

心理的安全性の確保には、単に「居心地が良い」「仲良し」「和を乱さない」状態を目指すという意味ではなく、率直な議論を可能にするための土台をつくることを意味します。

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心理的安全性の高い職場の定義

心理的安全性の高い職場とは、役職や年齢に関係なく率直に意見や疑問を伝えられる環境です。例えば「疑問を素直に上司に聞ける」「ミスを指摘しても関係が損なわれない」状態が該当します。

心理的安全性は、仕事の基準とともに職場の質の高低に影響を及ぼします。下図の分類では、心理的安全性と仕事の基準がともに高い場合「学習する職場」となり、健全な衝突を通じて成長し、生産性も高まります。一方、どちらかが低い場合は「ぬるい職場」や「不安な職場」など、課題が生じやすいことが示されました。

心理的安全性と仕事の基準から見た職場の分類 (1)

年代別に見る「心理的安全性」の実態

理想の職場像とは裏腹に、当社アドバンテッジリスクマネジメントの調査では、キャリア後期にあたる40~50代の従業員の心理的安全性が相対的に低いという結果が出ています。この年代はマネジメント層も多く、責任の重さから「ミスが許されない」「挑戦にリスクを感じる」状況に置かれやすいのが特徴です。先に紹介した図の分類に照らすと「不安な職場」と同様、罰や評価への懸念から目立たないよう過ごす傾向が強まり、率直な意見交換が難しくなる場合があります。

「心理的安全性」年代別(偏差値)
※『アドバンテッジ タフネス白書』は当社顧客へのみ提供している情報資料

心理的安全性が重要視される理由

水色の背景に虫眼鏡で除く的

次に、ビジネスの領域で心理的安全性が重要視される理由を紐解きます。

組織の生産性を高める最大要因とされるため

Google社(米国)が行った調査によると、成功し続けるチームの最大の要因は、「誰がチームにいるか」ではなく「チームがどのように協力しあっているか」だということがわかりました。この研究は、心理的安全性が「チームの生産性を高める最も大きな要因」であることを示しています。安定的な事業成長を目指す多くの企業にとって、心理的安全性の向上は、非常に重要な経営課題となっています。

参考:Google re:work「効果的なチームとは何か」を知る

BANI時代を生き抜く、しなやかな組織づくりの要となるため

さまざまなリスクや脆弱性に脅かされ、不安定なビジネス環境にある今は、従来の成功モデルが通用しない時代と言わざるを得ません。このようなBANI(※)の環境では、リーダーの指示や答えを待つのではなく、主体的に挑戦と学びを繰り返すことが生き残りのカギとなります。

心理的安全性の高い環境では、メンバーは失敗を恐れることなく試行錯誤し、たとえ失敗してもそこから学びを得られます。心理的安全性は、予測不能な変化への俊敏な対応、未知の状況へ果敢な挑戦を支え、競争優位性を保つためのしなやかな組織づくりの土台となるのです。

※BANI(バニ)…Brittle(脆弱性)、Anxious(不安)、Non-Linear(非線形性)、Incomprehensible(不可解さ)の頭文字を取った言葉

心理的安全性の高い職場の特徴

オフィスで会議をする従業員

心理的安全性の高い職場には、共通の特徴があります。その要素を1つずつみていきましょう。

職場に活気がある

心理的安全性の高い職場は、明るく活気があります。年齢や役職にかかわらずオープンに交流でき、挨拶や雑談などで自然に声をかけ合える環境です。わからないことや困ったことがあっても相談しやすいでしょう。これらは「風通しの良さ」とも言い換えられ、従業員が気持ちよく働けます。

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建設的な意見交換ができる

職場の心理的安全性が確保されていると、他の人の顔色をうかがったり、遠慮したりすることなく、自分の考えを率直に伝えられます。意見が対立しても人間関係が壊れる心配がなく、前向きに議論を交わせる環境が整っているためです。

立場や年齢に関係なく、多様な視点から意見交換ができると、新しい発想や改善の提案が生まれることもあります。意見を述べられる場があると、従業員は組織の中で自分の役割や存在意義をより実感しやすくなります。

チームワークがある

心理的安全性が高い職場では、自分の弱みや苦手、未熟な部分を打ち明けることを「悪いこと」「恥ずかしいこと」と捉えないため、「困っている」「手を貸してほしい」と素直に伝えられます。助け合いの文化が根付いており、トラブルが起きた場合には、チーム全体で解決策を見出そうとするのが特徴です。

主体的に仕事に取り組んでいる

心理的安全性が高い環境では、失敗を過度に恐れる必要がなくなります。従業員の中で「もっと良い方法はないか」「次はこんなアプローチを試してみよう」という前向きな意識が生まれ、主体的に仕事に取り組むようになります。

企業が職場の心理的安全性を高めるメリット

オレンジ色の背景に輪になったビジネスマンの絵がプリントされたサイコロ

職場の心理的安全性を高める取り組みは、従業員と企業双方に多くのメリットをもたらします。

従業員のモチベーション向上

心理的安全性が高まると、従業員は「自分の意見や行動が受け入れられる」という安心感を抱きます。「自分はここで必要とされている」「役に立てている」と、組織における自分の存在意義や役割を実感できると、組織への貢献意欲や愛着が高まります。このように、仕事にやりがいを感じている状態では、モチベーションも向上するため、自ら課題を見つけ改善に取り組む主体性も育まれるのです。

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情報共有の円滑化、ミスの減少

従業員同士の意見交換や情報共有が活発になることもメリットです。例えば、成功事例を共有して活用したり、失敗体験を改善につなげたりすることで、業務効率の向上が期待できます。

上司やチームメンバーと気軽に相談できる雰囲気は、「言わずに抱え込むリスク」を減らすことにも結びつきます。小さな不安や疑問が放置されず、速やかに解決できるため、結果的に大きなトラブルやミスの防止につながるでしょう。

組織の生産性向上、成長の加速

心理的安全性が高い職場では、従業員は余計な不安や緊張にとらわれることなく業務に集中できるため、個人のパフォーマンスを最大限に発揮できます。これは、組織全体の生産性向上に直結する大きなメリットです。

周囲と協力して仕事に取り組む中でシナジーが生まれたり、学び合いの機会が増えたりすると、それぞれの成長スピードが加速し、成果の向上やイノベーションの創出が期待できます。

離職率の低下

自分の意見が尊重され、努力や挑戦が認められる環境では「ここで働き続けたい」という意識が自然と芽生えます。離職による人材流出を防げるだけでなく、離職によって新たに発生する採用・育成コストの削減にもつながります。「離職率が低い」という点は、採用戦略においてもアピールポイントとなるでしょう。

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ダイバーシティの推進

心理的安全性は、DEI(多様性・公平性・包括性)を推進するうえでも不可欠です。心理的安全性が確保された職場では、異なるバックグラウンドを持つメンバーが互いにそれぞれの強みを認め合い、補い合いながら仕事に取り組んでいます。DEIの取り組みは、外部からの評価、ひいてはビジネスの競争力にもかかわるため、多様な人材が活躍できる風土醸成が重要です。

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心理的安全性を高める方法

水色の背景にハート型のパズルを乗せる手

職場の心理的安全性は、従業員の意識・行動の変容によって高められていきます。最後に、心理的安全性の高い職場をつくるために、企業に求められる取り組みをご紹介します。

サーベイを通じた職場の課題把握

まずは、従業員向けにサーベイを実施し、現状を正しく把握します。職場の働きやすさやコミュニケーションの満足度、改善が必要な点などについて、率直な意見を集めましょう。

結果を分析し、組織の強みと課題の可視化が、より精度の高い取り組みを可能とします。サーベイの結果は必ず従業員にも共有し、課題解決に向けた道筋を具体的に示していくことで、信頼と協力を得やすくなります。

チームの成果と心理的安全性の関係について論じたエイミー・エドモンドソン教授による「心理的安全性を測るための7つの質問」を参考に、職場の心理的安全性について問う設問を盛り込みましょう。否定的な意見が多く寄せられた場合、心理的安全性が十分でないかもしれません。

【心理的安全性を測る質問例】

    ① チーム内でミスをすると、多くの場合責められたり批判されたりする
    ② チーム内では、問題点や課題を遠慮なく指摘し合える
    ③ チームの中に、考え方が異なることを理由に他のメンバーを排除しようとする人がいる
    ④ 雰囲気や人間関係が悪くなりそうな言動をとっても安全だと認識している
    ⑤ チームメンバーにサポートや協力を依頼しづらい
    ⑥ 誰一人として、他の人に対して悪意を持った行動をしない
    ⑦ チームの中で、自分のスキルや能力が尊重・評価され、仕事に役立っていると実感できる

職場の心理的安全性を高めるためには、現状を適切に把握する設問の設計から分析、改善施策の実行まで、一連のプロセスを正確に行っていく必要があります。

建設的なコミュニケーション

心理的安全性を左右する大きな要因の一つが、日常的なコミュニケーションの質です。言葉選びや表現が適切でなかったために、意図しない形で伝わり、誤解や摩擦を生む場合もあります。お互いに気持ちよく、建設的な意見交換をするためには、自分と相手の気持ちを尊重しつつ、自分の意見も正直に伝える「アサーティブ・コミュニケーション(アサーション)」のスキルを高めることがカギとなります。

研修を通してアサーションスキルを身につけていくことのほか、ミーティングの冒頭にちょっとしたアイスブレイクを取り入れるなど、ポジティブな雰囲気づくりの習慣化もおすすめです。

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多様性を尊重する組織風土の醸成

多様な価値観を受け入れ、相互理解を深めるためのチームビルディングも効果的です。無意識の偏見(アンコンシャス・バイアス)に気づき、なくしていくためのトレーニングを行うことのほか、役職などにかかわらず広くアイディアや意見を求めるなど、実際に多様性を活かせる風土、仕組みづくりが大切です。

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挑戦や工夫が認められる評価制度づくり

評価制度を見直すことも一つの方法です。評価基準が不透明で、結果だけが重視されている状況では、従業員は失敗しないようにと挑戦を避けてしまうため、新しいアイディアや改善が生まれにくくなります。

評価の基準を明確にしたうえで、業務プロセスの工夫や、チャレンジした部分についても評価できるようにしましょう。挑戦を認めても、失敗した場合に強く責めると、逆効果となってしまうため注意が必要です。

新人や若手従業員へのサポート体制の構築

気軽に質問や相談ができる環境は、慣れない職場で働く新入社員や若手従業員、中途で入社した従業員の不安を和らげます。メンター制度やOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は、新人が早期に職場に定着し、活躍していくためにも重要です。

いつでも相談に乗ってもらえる、不安や悩みを気軽に話せる相手がいる環境は、「受け入れられている」という安心感につながります。また、後輩や部下をサポートすることは、先輩従業員の「教える力」や「傾聴力」などのコミュニケーションスキルを養うことにもつながり、リーダーシップの育成という点でも効果的です。

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管理職の積極的な部下への関わり

心理的安全性を高めるうえで、管理職の役割は極めて大きいです。管理職が「話しかけやすい雰囲気」を意識的につくり、誠実に部下の声を受け止めることが、安心感を醸成します。

1on1ミーティングでは、部下の考えや悩みに真摯に耳を傾けたり、自分の失敗や弱みを共有し、「失敗しても良い」と示したりしましょう。会議では全員に発言機会が回るよう話題を振るなど、管理職ならではの立場から心理的安全性の向上を心がけます。

ただし、「心理的安全性を高める=叱らない」ではないことに注意しましょう。必要な時にはきちんと叱りつつ、成長の支援と捉え、前向きな声かけを意識します。

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心理的安全性を高め、前向きで活気に満ちた職場へ

パズルピースを持って輪になる手元

心理的安全性の高い職場では、一人ひとりの意見が尊重され、前向きなコミュニケーションが交わされています。立場に関係なく、否定されることを恐れず発言できる環境では、従業員が業務により主体的に関われるようになり、働きがいを感じられます。企業が持続的な成長を遂げていくためにも、心理的安全性を高め、多様な人材の持つパフォーマンスを引き出せる環境をつくりましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
アドバンテッジJOURNALは、働くすべての人へ「ウェルビーイングな働き方と組織づくり」のヒントを発信するメディアです。導入企業数3,200社/利用者数600万人を超えるサービス提供実績と、健康経営銘柄に4年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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