理想的な「上司と部下の関係」とは?よい関係を築くためのコツや施策

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上司と部下の良好な関係性は、仕事を円滑に進める上で大きな影響をもたらします。部下とのコミュニケーションのとり方がわからない、価値観の違いから指導や育成がうまくいかない、と悩む方も少なくないでしょう。

また、近年は働き方改革などの流れを受け、これまでの「当たり前」を見直す必要も生じています。本記事では、上司と部下の間に生まれるギャップや、コミュニケーションのポイント、よりよい関係性を築くために企業ができる施策などについて解説します。

上司と部下がよい関係性を築くべき理由

握手を交わす男性の手

上司と部下が信頼関係にあることは、企業・組織にとっても大きなメリットになり得ます。信頼関係の構築された組織では、業務効率・モチベーションが向上し、円滑な企業運営が可能となります。まずは、上司と部下が良好な関係を築くべき理由と、そのメリットについて解説します。

組織の成功に重要な「関係の質」

ダニエル・キム氏により提唱されたモデル「成功の循環」とは、“組織を構成するメンバーの関係性の質が高まると、組織の質が高まり、業績が上がる”、“業績が上がることでさらに組織が良くなる”という循環のことです。

同氏はまた、持続的に成果を上げ、成長していく好循環を続けるためには、相互理解や尊重を深め、コミュニケーションを促進し、「関係の質」を高めることが大切である、とも説いています。すなわち、上司と部下が良好な関係を築くことは、組織の持続的な発展・成功に寄与するといえます。

業務効率・生産性アップ

成長を示唆する右上向きの矢印が描かれた複数の積み木

上司と部下の関係が良好だと、互いに密なコミュニケーションが取りやすくなります。報告・連絡・相談、といった業務の基本が支障なく、適切なタイミングで行えるため、ミスの防止、問題の早期解決、円滑な業務遂行が期待できます。これにより、業務効率や生産性アップにつながります。

部下のモチベーション向上・離職防止

部下のことを深く理解することで、フォローの必要性を把握しやすくなります。部下からも相談を持ちかけられるような関係であれば、問題の早期発見・解決を図ることも可能でしょう。適切なサポートを受けることで、部下の満足度やモチベーションが向上すると、離職防止にもつながります。

近年の「上司と部下」を取り巻く課題

キーボードやカードケースの上に置かれた初心者マーク

ワークライフバランスの多様化やテレワーク(リモートワーク)の導入など、これまでとは異なる働き方も浸透してきた今、働く人の価値観や、上司と部下の関係性も変容しつつあります。本項では、近年の「上司と部下」あるいは「管理職と若手社員」を取り巻くコミュニケーションの課題について解説します。

コミュニケーション不足

上司が部下に無関心である、部下へのマネジメントに時間をかけていられない、リモートワークに切り替えたなどの理由で、コミュニケーションが不足していると、よい関係を築くことはできません。

指示さえ出していればいい、部下の考えを聞かずに業務を進める、といった状態では、部下は意見が出せなかったり、サポートを依頼しづらかったりするでしょう。

叱る・褒めるがうまくいかない

GOOD・BADの積み木の間に座る人形

叱る・褒めるコミュニケーションがうまくいかない悩みも多いのではないでしょうか。部下を叱責する時、感情的に怒鳴ったり、過度に本人を否定したりすると、部下は萎縮して自信を失ってしまいます。上司と部下の関係性が悪化するだけでなく、離職につながるおそれもありますので、ただ「怒る」だけにならないよう注意が必要です。

一方で、褒めるばかりでも部下は育ちません。事実、「優しくされすぎて成長している実感が得られない」という若手の声もあります。一方で、ハラスメントに対して敏感な時代背景もあり、パワハラと捉えられることを恐れて叱れない上司もいるかもしれません。叱り方がわからない、加減が難しいと悩む管理職もいるでしょう。

世代間のギャップが埋まらない

世代間の価値観のギャップは、いつの時代でもなくならないものです。現在Z世代と呼ばれる若者は、「会社のために働く」といった目的が薄く、やりがいや充実感、自己の能力アップのために働く意識が強い傾向があると言われています。また、個々が違う価値観を持っていることを認識・尊重し、自分らしさを大切にする人が多いのもZ世代の特徴の一つです。

そのため、「私の時代はこうだった」と上司から考えを押し付けられたり、最近の若者は、と一括りにされたりすることを嫌う傾向があります。最近の若者の考えがよくわからない、自分の世代とは価値観が違うからと決めつけてしまうと、よい関係性を築くことは難しいでしょう。

上司と部下の理想的な関係とは?

アドバンテッジリスクマネジメントが実施しているEQI(行動特性検査)では、「行動」「コミュニケーション」「言動」の3つのテーマにおいて、それぞれ4類型のスタイルに分類しています。

例えば、部下の自主性を育てたいという目標がある上司が極端に「調整型」の場合、多少部下に任せても良いところをなんでも自分でやってしまうことで、結果的に部下の成長機会を失ってしまうパターンがあります。

ただ、それぞれのスタイルに該当するなかでも、その傾向が極端な人もいれば中間的に位置する人もいて、個人差はあります。そのため、理想的な上司と部下の関係は一概にどんな型が良いとは言えません。重要なのは部下や組織の特性に沿うスタイルか、かつその程度が適切かどうかになります。

より良い関係を築くためのコミュニケーション

笑顔で会話するビジネスウーマン

上司と部下がよい関係を築いていくためには、綿密なコミュニケーションが不可欠です。一方通行ではなく、相互にコミュニケーションがとれるような環境を整えることが大切です。ここでは、コミュニケーションにおいて特に意識しておきたいポイントを解説します。

相手を認めて話に耳を傾ける

コミュニケーションの基本は、話を聞くことです。まずは、一人の人間として相手を認め、きちんと話に耳を傾けましょう。困ったことがないか自分から声をかける、あるいは部下が声をかけやすい雰囲気をつくるなどして、コミュニケーションがとれる環境を整えます。話している時は口を挟んだり、仕事の片手間に聞いたりせず、最後まで聞く姿勢をつくりましょう。

ワンポイント
“心理的安全性の高い”コミュニケーションやチームワークをつくることが大切です。心理的安全性とは、リスクのある言動を取ったとしても、安全性が担保されているチームであることが共有されている状態を表します。心理的安全性が高い状態であれば、会社や上司の指示に対する疑問などを抱え込まずに素直に質問できたり、困難な状況にぶつかったとしても周囲に相談できるため、次のステップへ進みやすくなったりします。

1on1ミーティングを実施する

1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う面談のことです。上司と部下が話す場を意図的に設けることで、日頃の業務のコミュニケーションでは解消しきれない問題の解決や、情報共有ができる機会を増やします。短時間でも構いませんが、定期的に1on1ミーティングなどを実施できるよう働きかけましょう。

ワンポイント
対面での実施が難しい場合には、オンラインでもお互いにカメラをオンにして話してもらうように伝えましょう。「元気そうな表情を見られて安心しました」と前向きなメッセージも合わせると緊張がほぐれます。

目標・目的を共有する

ビジョンの共有を示すアイコンと男性の手

近年は、テレワーク(リモートワーク)などの新しい働き方や雇用制度の浸透によって、一緒に働く人たちの環境や状況はますます多様化しています。目標・目的のすり合わせと共有はその都度行い、メンバー内の認識にズレが生じないよう心がけましょう。

組織や上司の目標を一方的に示すのではなく、「組織への影響や利益」を具体的に提示・共有して、部下のモチベーションを上げることが重要です。

一人ひとりに合わせた伝え方を意識する

画一的なコミュニケーションではなく、一人ひとりの正確に合わせた接し方を心がけましょう。お互いの性格や価値観をよく知り、その人に合わせた叱り方・褒め方を意識します。どんなコミュニケーションがよいのかを、すぐに把握することは難しいですが、工夫を重ね、お互いが気持ちよく仕事できるようにしましょう。また、EQの考え方を意識したコミュニケーションも有効です。(EQについては、次章で詳述します)

採用時に適性検査を行っている場合は、その人材の特性や性格の情報を知ることで育成にも活用できるでしょう。

アドバンテッジインサイト

当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供する適性検査「アドバンテッジ インサイト」では入社前に潜在的なストレス耐性を測ることができ、入社後のメンタルヘルス対策にも活用することができます。

企業が取り組みたい人事施策

研修の様子を表す積み木

一人ひとりの努力だけで、コミュニケーションに関する問題を解決できるとは言い難いでしょう。企業側が主導して「関係の質」の向上を図っていくことが求められます。ここからは、企業が取り組みたい施策についてご紹介します。

管理職研修の実施

管理職向けに、部下とのコミュニケーションの方法や、モチベーションを向上させる方法を学ぶ研修を実施します。コミュニケーションの基本である「聞く」「伝える」力を学んだ上で、「叱る」「褒める」などマネジメントに求められるコミュニケーションスキルを身につけることができます。

アドバンテッジリスクマネジメントの社員研修プログラム

当社アドバンテッジリスクマネジメントが提供する管理職向け研修プログラムはこちら

若手社員向け研修の実施

管理職が新入社員への関わり方を変えると同時に、新入社員自身に「柔軟な物事の捉え方や考え方」を持ってもらう必要があります。
人にはそれぞれ捉え方や考え方の癖があり、陥りやすい思考パターンがあります。それ自体は悪いことではないものの、例えば上司が取る行動や言動を、自身だけの解釈でネガティブに決めつけてしまうこともあるでしょう。偏った捉え方や解釈が自分を辛くし、目標達成の阻害要因になるようであれば、別の捉え方・考え方を選択する必要性も、丁寧に指導しておくことが大切です。

EQへの理解と能力開発

従業員が自分自身のEQを理解し、さらなる能力向上を目指すことも重要です。EQとは、感情をうまく扱う能力のことです。EQが高い人は、柔軟な思考を持ち、ストレス耐性が高いなどの特徴があります。EQは、トレーニングにより後天的に向上させることができます。
EQI検査は、従業員本人が自身の強み・弱みを把握するためだけでなく、上司が部下のコミュニケーションスタイルを理解することにも役立ちます。さらには、部下の行動特性に適したコミュニケーションのヒントを得ることにもつながります。

人と人との関係性が組織力を高める

上司と部下が良好な関係を築くことは、個々のモチベーション向上だけでなく、組織全体にもよい影響を与えます。お互いを認め、違いを認識した上で、コミュニケーションを密にとり、信頼関係を構築していきましょう。

また、上司や管理職の考え・価値観をアップデートするためには、外部の研修を受講するなどの方法も有効です。会社全体で、組織の好循環を生み出す取り組みを進めていくことが重要です。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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