くるみん認定とは、子育てサポートを積極的に行う優良企業を厚生労働大臣が認定する制度です。さまざまな社会的課題の解決を目的として設立されたくるみん認定は、企業が抱える課題の解決にも役立ちます。くるみん認定の設立背景や取得メリット、取得のためのステップ、認定基準などを紹介します。
目次
くるみん認定とは?
人事担当者であれば、これからの時代に押さえておくべき言葉でしょう。まずはくるみん認定とはどのような制度なのか、基本的な内容について説明します。
厚生労働大臣に認定された「子育てサポート企業」
くるみん認定とは、厚生労働大臣が子育てサポートを積極的に行う優良企業を「子育てサポート企業」として認定する制度です。
くるみん認定は満たす要件の種類や数によって、認定されるマークの種類が異なります。赤ちゃんを包む「おくるみ」と「会社ぐるみ・職場ぐるみ」で子育てサポートを行う意味をかけて、このような名称が付けられています。
くるみんマークにはいくつか種類がある
くるみんマークにはいくつか種類があります。
くるみん
制度開始の2007年から使用されているマーク。育児休業・休暇取得の割合や育児に伴う時短勤務制度の設置など、10の要件を満たした認定企業に付与されます。2022年4月に認定基準の一部引き上げが行われました。
取得企業:4056社(2022年12月時点)
プラチナくるみん
2015年に新設されたくるみんマークです。くるみん認定を既に受けているなかで、高水準な取り組みを継続している企業が認定されます。12項目の認定基準をクリアしていなければいけません。
取得企業:535社(2022年12月時点)
トライくるみん
2022年にくるみんの認定基準が引き上げられたことにより、2022年4月に新設されました。認定基準は2021年度までのくるみんと同じです。トライくるみん認定を受けていれば、その後基準を満たすことで直接プラチナくるみんへの申請ができます。
取得企業:1社(2022年12月時点)
参照:厚生労働省 くるみん認定、プラチナくるみん認定及びトライくるみん認定企業名都道府県一覧
※「取得企業数」は、認定決定をした企業のうち、公表することに了解した企業数です。
それぞれ認定されれば、公式サイトや商品、広告など幅広い媒体にマークの使用が可能となります。出産後も女性が働く環境が整っているかの1つの指標として有効です。
くるみん認定が設立された背景
くるみん認定は2007年からスタートし、現在まで継続されています。ここでは、くるみん認定を設立した背景について触れます。
次世代育成支援対策推進法の施行
くるみん認定スタートの背景の1つに挙げられるのが、2005年に施行された次世代育成支援対策推進法です。この法律は少子高齢化問題を解消し、次世代を担う子ども達が健全に育成されることを目指してつくられたものであり、この中で企業に対し、仕事と子育てを両立できる環境の整備計画の策定を求めています。
ただし義務規定はあるものの、怠った場合の罰則はありません。そこで、この整備計画を一定の基準でクリアした企業にくるみん認定を行い、計画の策定を促していくためにくるみん認定が設立されました。
女性が長く活躍できる環境を整えるため
くるみん認定の設立により、企業が子育てに関するサポート体制を整えることで、女性は出産後も仕事を続けやすい環境になります。このように女性が仕事を諦めることなく、長く働けるような社会を目指せるという目的も設立背景の1つです。
現在の日本社会は、必ずしも女性が長く働きやすい状態であるとは言えません。子どもを産み育てるというライフステージを迎えるに際し、仕事と子育ての両立が難しくなり、なかにはキャリアを諦める女性もいるのです。
参照:内閣府男女共同参画局府男女共同参画局 第2節 女性の労働力率(M字カーブ)の形状の背景
少子高齢化による人口減少
日本は少子高齢化が進み、働き手も減っています。このような状況下で、仕事と子育ての両立が叶わなければ、ますます働き手はいなくなるでしょう。くるみん認定を設立し、仕事と子育ての両立がしやすい企業を増やすことで、人口減少による働き手不足の問題対策にもつながります。
くるみん認定によって得られるメリット
くるみん認定は上記のような背景の元に設立された制度ですが、認定に向けて支援施策に取り組むことや、その結果くるみん認定を受けられることは、企業にとって多くのメリットがあります。主には次のようなものです。
従業員エンゲージメントが高まり、優秀な人材を確保できる
認定に向けて企業が積極的に子育て支援施策に取り組むことは、従業員へのサポートの充実や、従業員エンゲージメント向上につながります。結婚や出産による従業員の離職率も抑えられ、経験豊富な人材を確保できるでしょう。
また仕事に集中しやすくなり、生産性の向上も見込めます。さらにくるみん認定を受けることで、自社の取り組みが対外的にも評価されうるものであることを認識し、仕事に対するモチベーションアップも期待できます。
企業のイメージアップにつながる
くるみん認定を受けることで、企業のイメージアップも狙えます。子育て支援に力を注力している企業は、従業員を大切にしているイメージが持たれやすいでしょう。子育て支援が充実している良い企業と知られることで、長く働きたいと考える優秀な人材も集まってきやすくなります。
また近年推進されている「人的資本の情報開示」においても、従業員の育児休業取得数などは開示項目のひとつとして挙げられており、企業価値を高める上でも重要な取り組みとなり得ます。
低利融資を受けられる
くるみん認定を受けている企業は、日本政策金融公庫の低利融資を利用できます。低利融資とは、設備資金や運転資金を低金利で融資してもらえる制度であり、企業は金利を抑えながら事業資金を確保できるのです。
また他にも公共事業の入札などをする場合は、国の指針においてくるみん認定などが加点評価するよう定められており、取引で有利になるというメリットもあります。
くるみんマーク認定を受けるための基準
くるみんマークの認定を受けるためには、次のような基準をクリアする必要があります。
1 | 雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らし適切な一般事業主行動計画を策定したこと。 |
2 | 行動計画の計画期間が、2年以上5年以下であること。 |
3 | 行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成したこと。 |
4 | 平成21年4月1日以降に策定・変更した行動計画を公表し、労働者への周知を適切に行っていること。 |
5 | 男性の育児休業等取得について、次の①又は②を満たすこと。 ① 計画期間において、男性労働者のうち、配偶者が出産した男性労働者に対する育児休業等を取得した者の割合が7%以上であること。 ② 計画期間において、男性労働者のうち、配偶者が出産した男性労働者に対する育児休業等を取得した者及び育児休業等に類似した企業独自の休暇制度を利用した者の割合が15%以上であり、かつ、育児休業等をした者の数が1人以上いること。 |
6 | 計画期間において、女性の育児休暇などの取得率が75%以上であること。 |
7 | 3歳から小学校就学前の子を育てる労働者について、「育児休業に関する制度、所定外労働の制限に関する制度、 所定労働時間の短縮措置又は始業時刻変更等の措置に準ずる制度」を講じていること。 |
8 | 労働時間数について、次の①及び②を満たすこと。 ① フルタイムの労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が各月45時間未満であること。 ② 月平均の法定時間外労働60時間以上の労働者がいないこと。 |
9 | 次の①~③のいずれかを具体的な成果に係る目標を定めて実施していること。 ①所定外労働の削減のための措置。 ②年次有給休暇の取得の促進のための措置。 ③短時間正社員制度、在宅勤務、テレワークその他の働き方の見直しに資する多様な労働条件の整備のための措置。 |
10 | 法および法に基づく命令その他関係法令に違反する重大な事実がないこと。 |
なおプラチナくるみんの認定は、さらに他の基準もあります。プラチナくるみんの認定基準については、こちらに記載されています。
引用:厚生労働省 くるみん認定・プラチナ認定
くるみん認定取得のためのステップ
くるみん認定を取得するためのステップを紹介します。くるみん認定を受けるためには、各ステップを機械的にこなすのではなく、自社にとってプラスに作用するよう意識しながら進めていくことが大切です。
1.自社の現状や従業員のニーズを把握し、行動計画を策定する
行動計画を策定するため、まずは自社の現在の状況や従業員のニーズの把握から始めます。自社が今どのような状態なのか、従業員が本当に求めている支援は何なのか、しっかり掴んでおかなければ自社にとって意味のある計画は作れません。
自社の課題が確認できたら、優先度の高いものを中心に課題解決のための計画期間や、行動計画の策定を行います。行動計画策定指針の「六 一般事業主行動計画の内容に関する事項」を参考に、行動計画の目標を設定します。
<行動計画の事項例>
- 妊娠中および出産後の労働者の健康管理や相談窓口の設置
- 配偶者出産休暇制度など、子育てを目的とした企業独自の休暇制度の創設
- 子育てサービス費用の助成、貸し付け
- 保護者の働いているところを子どもが見ることができる「子ども参観日」の実施
2.行動計画を周知し、各都道府県の担当部署に届けを出す
行動計画を策定したら、従業員への周知を行いましょう。また行動計画の策定からおおむね3ヵ月以内に、各都道府県の担当部署(労働局雇用環境均等部・室)へ、「一般事業主行動計画策定・変更届」を届け出ます。
3.行動計画を実施し、くるみん認定の申請を行う
行動計画の内容を実際に行います。その際、計画で設定した目標などを意識しながら実施することが重要です。行動期間が終わったら、行動計画策定を届け出た担当部署へくるみん認定の申請を行います。認定されれば、くるみんマークの使用を開始できます。
厚生労働省が提示する行動計画の例
厚生労働省のホームページでは、企業の状況に応じた多様なモデル行動計画を掲載しています。ぜひ参考にしてみましょう。
<モデルケース1> 出産をきっかけに退職する女性従業員が多いため、出産前後の支援を強化したい
目標① 育児休業を取得予定の従業員および育児休業から復職した従業員に対するメンター制度を導入する。
目標② 子育て費用の助成制度を導入する。
目標③ 年次有給休暇の取得日数を1人当たり平均年間○日以上とする。
詳しい行動計画表はこちら
<モデルケース2> 認定を目指し、両立支援対策の充実を目指す
目標① 計画期間内に、育児休業の取得率を次の水準以上にする。
男性従業員・・・取得率を50%以上にすること
女性従業員・・・取得率を80%以上にすること
目標② 小学校入学前までの子を持つ従業員の短時間勤務制度を導入する。
目標③ ○年○月までに所定外労働を削減するため、ノー残業デーを設定、実施する。
詳しい行動計画表はこちら
その他のモデル行動計画はこちらから
くるみん認定でエンゲージメント向上や自社の成長を目指そう
くるみん認定は子育て支援の行動計画を策定・実施することで、従業員により働きやすい環境を提供できるとともに、自社のイメージアップなども叶えられる、メリットの多い制度です。くるみん認定を目指すステップのなかで自社の課題を明確にすることも、企業の成長につなげられるでしょう。ぜひくるみん認定を目指し、具体的に動いてみてください。
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