ストレスチェックの項目は、国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票」の活用が考えられます。本記事では、必須3領域や、項目数が異なる4つの調査票の特徴、自社に合う選び方を解説。法令遵守と効果的な運用を両立できます。なお、調査票は国が提供するもの以外に、独自開発された項目を利用することも可能です。各形式の違いを比較し、自社の課題解決に最適な「項目数」や「調査方法」を判断するためのポイントを詳しく紹介します。
「アドバンテッジタフネス」は、法令で定められた実施義務への対応だけにとどまらず、エンゲージメントやハラスメント要因、メンタルタフネス度など、幅広い人事テーマを網羅的に調査できます。ストレスチェックを起点とし、組織課題の早期発見・解決にお役立ていただけます。

目次
ストレスチェックの調査票とは

ストレスチェックの調査票とは、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防ぐために用いられる自己記入式シートです。主に「仕事のストレス要因(量的・質的負担)」「心身のストレス反応(疲労・抑うつ)」「周囲のサポート(修飾要因)」の3領域で構成されています。
厚生労働省推奨の「職業性ストレス簡易調査票」57項目版がよく知られており、これを用いることで個人のセルフケアや高ストレス者の早期発見、さらには集団分析を通じた職場改善に役立てられます。
ストレスチェック調査票の種類

国が提供する「職業性ストレス簡易調査票」の種類についてご紹介します。
職業性ストレス簡易調査票は4種類
ストレスチェックでは、事業者が用意した選択回答式の調査票に従業員が回答し、その結果を集計・分析することで、その従業員のストレス状態を調べます。厚生労働省は、「職業性ストレス簡易調査票」として設問数の異なる4種類のフォーマットを用意しています。項目数が増えるほど、把握できるストレス要因や組織課題の範囲が広がるのです。
■23項目版
57項目版の「職業性ストレス簡易調査票」から主要項目を抜粋した簡略版。主に「心身のストレス反応」を中心に把握する構成です。仕事の負担や周囲のサポートなどの要因分析は限定的です。
■57項目版
「職業性ストレス簡易調査票」と呼ばれる標準版。「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域で構成されています。高ストレス者の判定や標準的な集団分析に適しています。
■80項目版
57項目版に新たな尺度(感情労働、役割葛藤、ハラスメントなど)を追加した拡張版。ストレス反応だけでなく、職場環境の具体的な要因まで分析しやすいです。
■120項目版
最も網羅性の高い調査票。職務特性や組織風土など多面的な尺度が含まれ、部署別・職種別など詳細な集団分析にも対応可能です。
なお、従業員数50人以上の事業場については、ストレスチェックの実施結果に関する報告書の作成と、労働基準監督署への提出が義務付けられています。質問項目には、後述する3領域を含んでいる必要があり、厚生労働省は57項目版の「職業性ストレス簡易調査票」の使用を推奨しています。
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ストレスチェックの質問項目で必須の3領域

ストレスチェックの質問項目は、法令(労働安全衛生規則第52条の9)により、以下の3領域を含めることが義務付けられています。
参考:「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト:ストレスチェック制度実施マニュアル
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①仕事のストレス要因
仕事のストレス要因とは、業務そのものや職場環境が、従業員にとってどの程度心理的な負担になっているかを把握するための項目です。
量・質・裁量:仕事が多すぎないか、難易度が適切か、自分の裁量で調整できるか。
人間関係・環境:職場の雰囲気や、照明・換気などの物理的環境。
ストレスの原因を個人に見出すのではなく、働く条件や仕組みそのものに潜むストレス要因を可視化することが目的です。
②心身のストレス反応
心身のストレス反応は、心理的な負担が心や体にどのような影響を及ぼしているかを確認する項目です。直近1か月の状態を振り返り、気分の落ち込みや不安感といった心理面の変化だけでなく、疲労感や頭痛、胃の不調など身体的な自覚症状についても問います。つらさだけでなく「活気があるか」「前向きな気持ちを保てているか」といったポジティブな感情も含めて評価することが特徴です。ストレスによる心身のサインを客観的に捉えることで、従業員本人に不調に早めに気づいてもらえます。
③周囲のサポート
周囲のサポートは、職場や私生活において、周囲の人からどのくらい支援を得られているかを問う項目です。上司が相談に乗ってくれるか、同僚と協力し合える関係にあるかといった職場内の支援に加え、家族や友人など職場外の人間関係も含めて評価します。
困ったときに頼れる人がいるかどうかは、業務に対する満足度やストレスへの耐性、回復力にも大きく影響します。サポートが不足している場合、職場のコミュニケーションのあり方や組織風土そのものの見直しが必要になることもあります。
ストレスチェックの項目数(23・57・80・120)毎の特徴

次に、4種類の調査票それぞれの特徴をみていきましょう。
23項目版の特徴
23項目版は、厚生労働省が基本形として推奨している57項目版(職業性ストレス簡易調査票)から項目を抜粋し、簡略化した調査票です。回答時間の目安は5分程度と、従業員の負担も軽いです。法令で定められた3領域を満たしていれば、23項目版であっても法令上は使用可能です。
<懸念点>
従業員個人のストレス要因を問う項目が少ないため、ストレス要因や背景を詳細に捉えることは難しいです。そのため、職場環境改善や具体的な施策検討に活用する場面で情報量が不足する可能性があります。特に高ストレス者の選定や結果報告書の作成、集団分析への活用を考慮すると、厚生労働省は57項目版の使用を推奨しています。
<向いている企業>
ストレスチェックの試験的な実施や、短い期間で簡易的に変化を確認したい企業。従業員の負担をなるべく抑えたい場合などにおすすめです。
参考:職業性ストレス簡易調査票 (簡略版23項目)
57項目版の特徴
57項目版は、厚生労働省が使用を推奨している標準的な調査票で、「職業性ストレス簡易調査票」として広く利用されています。「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3つで構成されており、従業員個人のストレス状態を幅広い観点で把握でき、高ストレス者の判定や標準的な集団分析に適しています。回答時間の目安は10分程度と比較的短く、従業員の回答を得やすいことも特徴です。
<懸念点>
設問は汎用的に設計されているため、事業場や職種の特性を考慮した具体的な職場課題まで踏み込んだ分析は難しいです。より実効性のある職場改善を目指す場合は、57項目版をベースに独自の設問を追加することが望ましいです。
<向いている企業> 初めてストレスチェックを実施する企業や、従業員の負担を抑えつつ、実施義務への対応を確実に行いたい場合におすすめです。
参考:職業性ストレス簡易調査票(57項目)
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80項目版の特徴
80項目版は、厚生労働省が推奨する57項目版に「新職業性ストレス簡易調査票(推奨尺度セット短縮版・23項目)」を加えた調査票です。仕事における感情面での負担や周囲との協力関係、ハラスメントの有無など、職場環境をより具体的に評価でき、職場に潜むストレス要因や背景まで含めた分析が可能となります。
<懸念点>
回答時間は10~15分程度とやや長くなります。
<向いている企業>
ストレスチェックの実施義務に対応するだけでなく、精度の高い集団分析を通して、本質を捉えた職場環境改善を目指す企業におすすめです。
参考:職業性ストレス簡易調査票(80項目版)
120項目版の特徴
120項目版は、厚生労働省が推奨する57項目版に「新職業性ストレス簡易調査票(推奨尺度セット標準版・63項目)」を加えた調査票です。最も網羅性が高く、80項目よりもさらに詳しくストレス要因を把握でき、職場環境の分析を深く行えます。
<懸念点>
回答時間は15~20分と長く、従業員の受検負担が大きいです。
<向いている企業>
部署や職種など、細かな軸で集団分析を行いたい場合や、組織全体の心理傾向を詳細に捉え本格的な組織開発に取り組みたい企業向きです。
参考:新職業性ストレス簡易調査票について
参考:「厚生労働省版ストレスチェック実施プログラム」ダウンロードサイト:ストレスチェック制度実施マニュアル
ストレスチェックの23・57・80・120項目毎のメリット・デメリット

23・57・80・120項目版のメリットとデメリットを整理します。
| 項目数 | 主なメリット | 主なデメリット | 向いている企業・目的 |
| 23項目 | 短時間で回答でき受検率が高まりやすい 従業員の負担を最小限に抑えられる | ストレス要因の特定が難しい 集団分析には不向き | 小規模事業場での試験的な導入 |
| 57項目 | 厚生労働省推奨の標準版 制度対応と個人のストレス把握が可能 | 職場改善に使える情報は限定的 | 初めての導入 実施義務対応 |
| 80項目 | 職場環境のポジティブな面 エンゲージメントも把握可能 集団分析に活用しやすい | 回答時間がやや長い 57項目からの移行の場合経年比較が難しい | 職場環境改善を進めたい企業 |
| 120項目 | 組織課題を詳細に分析できる 集団分析の精度が高い | 回答の負担が大きい 運用設計が重要 | 本格的な組織改革 研究目的 |
ストレスチェック調査票の選び方

ストレスチェック調査票を選定する際のポイントをチェックしましょう。
職場の規模や運用体制・活用目的に応じて選ぶ
職場の規模や産業保健の運用体制によっては、ストレスチェックの実施が大きな負担になることもあります。まずは自社のリソースでどこまで対応できるかを確認しましょう。
制度対応が優先なら:標準的な57項目版
職場改善も狙うなら:詳細な分析ができる80項目版
本格的な組織改革なら:最も網羅的な120項目版
初年度は項目数の少ない調査票で実施し、体制が整ってから項目数を増やすなど、段階的に選択していく方法もあります。「まずは実施する」のか「集団分析まで深く行う」のか、目的に合わせた選定が大切です。
回答が負担にならない設問数にする
調査票の項目数が多くなるほど、従業員の回答負担も大きくなります。負担が大きすぎると、未回答や回答の質の低下につながり、正確な分析が難しくなるおそれもあるでしょう。
一方で、設問を減らしすぎると、ストレス要因やその背景、職場の課題を十分に把握できません。繁忙期を避けるなど実施時期も考慮し、無理なく回答できる設問数を設定することで、信頼性の高い結果を得やすくなります。
ストレスチェックの質問項目を決める際の注意点

質問項目の設計を誤ると、ストレスチェックの意義が損なわれるおそれがあります。ここでは、独自の項目を設計する際の注意点をご紹介します。
目的から逸脱する設問を入れない
ストレスチェックは、あくまでも仕事や職場環境によって生じている心理的負担を把握することが目的です。「ストレスに強いと感じるか」「ストレスへの対処法を持っているか」などといったような、従業員の性格や適性、ストレス耐性を評価するような項目を追加することは不適当です。労働安全衛生法に基づく制度として、目的に沿った設問設計が求められます。
プライバシーに踏み込む設問を避ける
希死念慮や自傷行為、うつ病など、精神疾患のスクリーニングにつながるような内容は、ストレスチェックの設問として不適切です。これらは専門的かつ迅速な対応が求められる領域であり、体制が整っていない企業が把握しても、適切な支援につなげられないおそれがあります。また、プライバシーへの配慮がなされていない場合、従業員の協力が得られにくく、回答率が下がる場合もあります。病気を含め、プライベートの事情に深く立ち入る、あるいは個人が特定できうる設問は扱わないようにしましょう。
設問の信頼性・妥当性を確認する
根拠が曖昧な独自設問を用いると、正確なデータが得られにくかったり、他のデータとの比較が難しくなったりする可能性があります。ストレスチェックは、結果の経年変化や集団分析を通じて職場環境改善につなげていくものです。設問の質と客観性を保つことを意識しましょう。
まずはサンプルを確認! 基本となる調査票は57項目

ストレスチェックの「標準」を知るために、国が推奨する「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」の内訳を確認しましょう。
<調査票サンプル>
職業性ストレス簡易調査票(57項目)
ストレスチェックで使用することを国が推奨している「職業性ストレス簡易調査票」には、57項目の調査票とその中から主要な質問項目を抜き出した23項目の調査票の2種類があります。簡易版である23項目と比較すると、その網羅性の違いが明確です。
| <職業性ストレス簡易調査票の内訳比較> | ||
| 質問領域 | 57項目版(標準) | 23項目版(簡易) |
| A 仕事のストレス要因 | 17項目 | 6項目 |
| B 心身のストレス反応 | 29項目 | 11項目 |
| C 周囲のサポート | 9項目 | 6項目 |
| D 満足度について | 2項目 | なし |
23項目版は短時間で回答できますが、特に「仕事のストレス要因」が大幅に削られています。より深く掘り下げて労働者のストレスの背景にある要因を探り、メンタルヘルス対策や職場環境改善に取り組むためには、57項目以上の調査票を使用することが望ましいとされています。
企業独自の質問を設定することは可能?

ストレスチェックの質問項目は、国が推奨する3領域を含み、かつ科学的根拠に基づいた要件を満たしていれば、各事業場の特性に合わせて独自に設定することが可能です。具体的には、標準的な「職業性ストレス簡易調査票」をベースに、項目の増減や自由記述欄の追加が認められています。例えば、独自のストレス対処法や「エンゲージメント(仕事への熱意度)」に関する設問などを加えることで、より実効性の高い組織分析が可能になります。
ただし、ストレスチェック実施後は事業場を管轄する労働基準監督署へ実施報告書を提出する義務があるため、項目の変更には専門的な知見が必要です。実施者の意見を聞き、衛生委員会での審議を経て、自社の課題解決に真に有用な調査票を設計しましょう。
自社に適した調査票を選び、活用しましょう

調査票の項目数は、多ければ多いほどよいものではなく、それぞれメリット・デメリットがあります。質問項目の設計を誤ると、回答率の低下を招き、本質的な職場環境の改善につながりにくくなる可能性があります。「どこまで把握したいのか」「結果をどう使うのか」を明確にして、自社に合った調査票を選び、継続可能な形でストレスチェックを進めていきましょう。

