介護が必要な家族がおり、悩む男性

ビジネスケアラーとは?企業の対策方法と取り組むべき理由を解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

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ビジネスケアラーの増加に対し、企業はどう動くべきでしょうか。企業が支援に取り組むべき理由や最新の法改正対応、具体的な仕事と介護の両立支援対策を、人事・労務担当者向けにわかりやすく解説します。介護は突然始まることも多く、介護の状況もさまざまであり、画一的な対策では不十分な場合があります。組織運営にも直結する深刻な課題に対し、実効性のあるアプローチが求められます。

介護と仕事の両立を個人任せにしないためには、企業側の支援体制整備が重要です。「Career & Kaigo(キャリア&カイゴ)」は、介護と仕事の両立に直面する従業員と、その支援に携わる上司・人事担当者を、状況や課題に応じた支援策でサポートします。

ビジネスケアラーとは

車椅子の老人を押す人

はじめに、ビジネスケアラーの定義と現状を整理します。

ビジネスケアラーとは

ビジネスケアラーとは、働きながら、親や配偶者などの介護を担う人のことです。「ワーキングケアラー」とも呼ばれます。仕事と介護の両立で悩みを抱える人は多く、心身の負担から生産性の低下や離職につながることもあり、企業活動にも大きな影響を与えうる課題として注目を集めています。

なお、経済産業省の試算では「仕事が主な者」(主にフルタイム等)をビジネスケアラーと定義していますが、パートタイム等(仕事は従な者)まで含めるとその規模はより拡大し、対象者はさらに増加していくと予測されているのです。

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ビジネスケアラーの現状

かつて、家族の介護は専業主婦を中心に家庭内で担われてきましたが、共働き世帯の増加により、仕事を持つ実子や配偶者が担い手となっているケースも少なくありません。介護は「家庭内の私的な問題」から、仕事とも密接に関係するライフイベントとなりつつあります。

また、急速な少子高齢化により、生産年齢人口が減少する一方で、65歳以上の人口は増加を続けています。人材不足が深刻化する今、ビジネスケアラーが抱える「仕事と介護の両立」問題は、組織として向き合うべきテーマへと変化しているのです。

【2026年最新情報】ビジネスケアラーの数

黄色い背景に虫眼鏡が2026の数字に置いてある

経済産業省が2026年3月に公表したデータによると、ビジネスケアラーの数は2025年で307万人でした。ビジネスケアラーが増加する背景には、高齢化の進展により要介護者そのものが増えていることが挙げられます。介護を必要とする高齢者が増える一方で、生産年齢人口は減少しており、働きながら家族を介護する人は今後さらに増えると見込まれます。

経済産業省の調査によれば、共働き世帯は1990年代以降増加が続いており、現在は専業主婦世帯を大きく上回っています。それに伴い、主な介護者の続柄も変化しています。かつては、専業主婦である「子の配偶者(主に息子の妻)」が介護を担うケースが多くみられました。しかし、共働き世帯の増加に伴い、その割合は減少しており、現在では実子や配偶者が介護を担い、仕事と両立するケースが中心です。今後は多くの従業員が介護の当事者となる可能性があります。

2030年には、家族介護者約833万人のうち、およそ4割にあたる約318万人がビジネスケアラーになると予測されています。労働力人口の約21人に1人が該当すると見込まれており、企業はビジネスケアラーの増加を前提にした備えが求められています。

参考:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」

ビジネスケアラー問題に企業が取り組むべき理由

ドミノの中にRISKの積み木を押さえる手元

少子高齢化に伴う人材不足とビジネスケアラーの増加が同時に進行する現代において、従業員が抱える介護問題は、企業にもさまざまな形で影響を及ぼすでしょう。企業では生産性低下や介護離職、人材流出といった課題が顕在化しつつあります。ここでは、企業がビジネスケアラーの支援に取り組むべき理由を解説します。

従業員の負担増による生産性低下を防ぐため

ビジネスケアラーの問題は、欠勤や離職といった目に見える形だけでなく、日常業務におけるパフォーマンス低下として静かに組織に影響を及ぼします。介護による身体的・精神的負担は、従業員の集中力や判断力を低下させ、効率が落ちたりミスを招いたりするおそれがあります。

出社しているが本来の力を発揮できない(プレゼンティーイズム)の状態で働き続けることは、従業員本人だけでなく、周囲の業務負荷やチーム全体の生産性にも影響するでしょう。特に、管理職など部署やチームの中核となる人材がビジネスケアラーとなった場合、組織に対する影響はより顕著になり、企業運営、成長にも影響を及ぼしかねません。仕事と介護の両立支援は、単なる福利厚生ではなく、従業員そして組織全体の生産性低下を防ぐための取り組みです。

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介護離職による人材流出を防ぐため

仕事と介護の両立が難しくなった場合、離職を余儀なくされるケースがあります。晩婚・晩産や共働き世帯の増加などにより、介護の担い手は40~50代の現役世代、とりわけ責任ある立場の人材に集中しやすくなっています。

こうした人材が離職すれば、業務の停滞だけでなく、採用・育成コストの増加、ノウハウの流出といった複合的な損失が発生するでしょう。特に代替要員の確保が難しい中小企業にとっては、介護離職が事業継続そのものを揺るがすリスクになり得ます。人材の流出と、それに伴うさまざまなリスクを防止するためにも、ビジネスケアラー問題への取り組みは不可欠です。

経済損失リスクを回避するため

経済産業省の試算によると、介護離職や、仕事と介護の両立が困難なことによって生じる経済的な損失は、2030年には約9兆円になるという試算もあります。同省の試算では、1年間で大企業1社あたり約6.2億円、中小企業1社あたり約770万円もの損失が発生するとされています。

ビジネスケアラーへの支援が不十分な場合、生産性低下による損失と人材流出という二重のコストが生じかねません。介護と仕事の両立支援は、日本社会全体が抱える課題への貢献であると同時に、企業が自らの損失を回避する点でも重要です。

参考:経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」

人的資本経営の実践による企業価値向上を目指すため

従業員が持つ知識や能力を「資本」と見なし、その価値を高めていくことで中長期的な企業価値向上を目指す「人的資本経営」の注目が高まる今、仕事と介護の両立支援も、この人的資本経営の実現において重要な施策の一つです。

家族の介護に直面しても、キャリアを続けられる環境は、健康経営やDEIの推進とも親和性が高く、多様な人材が安心して働ける組織づくりに寄与します。ビジネスケアラー支援の取り組みは、従業員エンゲージメントや定着率の向上につながり、イノベーション創出や企業価値の向上も期待できるのです。

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企業が取り組むべきビジネスケアラーへの対策

ピンクの背景にあるさまざまな向きの矢印の積み木と照明が描かれた積み木

ご紹介してきたように、ビジネスケアラーへの支援は、生産性の向上や人材の確保・定着、さらには人的資本経営の実現にも直結する経営課題です。介護は突然始まることも多く、介護者本人から申告しづらい/支援を受けるべき状態だと自覚しづらいからこそ、組織としてビジネスケアラーを支える姿勢を示すことが求められます。ここでは、企業が実践すべき具体的な支援施策をご紹介します。

社内のビジネスケアラーの実態を把握する

ビジネスケアラーに適切な支援を打ち出していくためには、実態の把握が欠かせません。ただし、介護はキャリアや人事評価への影響を懸念して、従業員が自ら申告してこない場合もあり、情報が集まりにくい可能性があります。

従業員向けのアンケートや面談を通して、現在~将来的なビジネスケアラーのリスクを把握しましょう。プライバシーに十分配慮し、介護の事実を申告しても人事評価やキャリアに影響しないことを明確に発信し、従業員が介護者となった際に安心して状況を共有できるようにします。

介護に関する基本的な情報の提供・学びの支援

介護に関する公的な制度や選択肢を知らないこと自体が、仕事と介護の両立を難しくする一因となることもあります。介護についての冊子の配布や社内イントラなどで基本的な情報を提供する他、外部の研修などを活用しましょう。介護の当事者となる従業員だけでなく、その上司にあたる管理職が正しい知識を持ち、制度を理解していることも重要です。

気軽に相談できる体制の整備

介護と仕事の両立、それに伴う悩みを相談できる体制を整備することは、ビジネスケアラー支援の土台となります。介護の状況や、必要な配慮は個人差が大きいため、画一的な制度だけでは対応しきれないことも多いです。社内相談窓口の設置や定期アンケートなどを通して、状況を把握する仕組みが求められます。

併せて、相談先や手続きの流れを明確にし、どこに相談すればよいのか従業員が迷わないような設計にしましょう。定期的に上司が個別面談を行い、状況を把握したり、介護を担う従業員同士が交流できるコミュニティを設けたりすることも、孤立を防ぐために有効です。

制度を利用しやすい環境づくり・周知

利用できる制度があることを知らずに、有給休暇を使って介護を行っているケースもあります。介護休暇や介護休業などの公的な制度の他、社内独自の両立支援制度がある場合は、これらが使えることを日ごろから積極的に周知しましょう。中には、「使われていない=必要ない」のではなく、「知られていない」「使える雰囲気ではない」状態になっていることもあります。公的な制度を補うような、企業独自の支援制度を設けることも有効です。

就業を継続できる柔軟な働き方の整備

介護は期間や負担の見通しがつきづらいものです。リモートワークやフレックスタイム制、時間単位での休暇取得など、柔軟に働ける制度を介護事由にも適用し、本人と話し合いながら調整していくことで、就業継続を支援しましょう。

一時的にキャリアを中断する選択も尊重しつつ、状況が変われば復帰できる支援体制を整えることが、長期的な人材確保につながります。地域の支援機関や専門職とも連携し、業務以外の負担軽減も視野に入れながら、包括的な支援を行いましょう。

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企業がビジネスケアラー対策を行う際のポイント

KEY POINTSの文字が書かれたカードを持つ手元

ビジネスケアラーへの支援は、制度を用意して終わりではありません。企業が取り組みを進めるうえで押さえておきたいコツをご紹介します。

経営層などトップが支援の必要性を理解する

経営層など組織のトップが、介護を「個人の事情」ではなく、組織運営に影響を及ぼしうる重要な事象として認識し、両立支援の必要性について理解しておくことが大切です。介護は、育児と異なり、準備期間がほとんどないまま始まるケースが多く、欠勤やパフォーマンスの低下という形で事情が表面化することもあります。仕事と介護の両立支援に積極的に取り組むというメッセージを経営層から明確に発信することで、「介護のことを1人で悩まず相談できる、支援を受けられる」環境を醸成します。

支援策の効果検証・改善を継続する

介護に関する研修の実施率や相談件数、施策後のパフォーマンス変化など、測定可能な指標を設定して効果を検証し、両立支援の取り組みのPDCAを回していくことが大切です。

ビジネスケアラー問題に関連する法制度/企業の義務

自宅での介護が必要な人のイラストが描かれた積み木

法律でも、企業が実施すべき両立支援が明文化されています。ここでは、ビジネスケアラーに関して企業が押さえておくべき法制度と、実務上のポイントを解説します。

介護休業・介護休暇制度

「育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)」において、企業はビジネスケアラーに対して以下の制度の提供が義務付けられています。

【介護休業・介護休暇の取得】
企業は従業員から申し出があった場合、介護休業/介護休暇を取得させる必要があります。
介護休業:対象となる家族1人につき、通算93日まで/最大3回の分割取得可能
介護休暇:対象となる家族1人につき、年5日(2人以上の場合年10日)まで/時間単位の取得可能

【勤務・労働時間の措置】
従業員の希望があった場合は、短時間勤務を認める他、残業や深夜業の制限、転勤の配慮が求められます。

【個別周知と意向確認】
従業員から介護を担う旨の申し出があった場合、企業は介護休業制度等の両立支援制度について個別に説明し、利用の意向を必ず確認しなければなりません。

参考:育児・介護休業法

2025年の育児・介護休業法改正ポイント

2025年の法改正により、企業はビジネスケアラーへの支援のための新たな仕組みづくりが義務付けられました。

➀雇用環境の整備
以下4つのうちのいずれかの実施

  • 研修の実施
  • 相談窓口の設置
  • 社内事例の収集・提供
  • 利用促進に関する方針の周知

②個別の説明と利用意向確認の強化
介護に直面した従業員に対して、企業は制度内容や申出先、給付金に関する情報を個別に伝え、利用意向を確認すること、および40歳前後の段階で、介護休業や両立支援制度について事前に情報提供する

③※努力義務※ テレワーク選択の措置
努力義務として、介護を担う従業員がテレワークを選択できるような措置を講じる

参考:厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」

ビジネスケアラー問題に対する補助金

バインダーの上に置かれた豚の貯金箱

ビジネスケアラー支援には、制度整備や業務体制の見直し、人員補充などで一定のコストが伴います。こうした企業負担を軽減する仕組みとして、国は仕事と介護の両立を後押しする助成制度を用意しています。

「両立支援等助成金(介護離職防止支援コース)」は、中小企業において、介護休業や両立支援制度の導入・利用、業務代替への対応などを行った場合、実際の取り組みに応じて助成金が支給されるものです。制度設計と運用を一体で進める中小企業にとって有効な支援策となります。

助成金の詳細については、以下の記事で詳しく紹介しています。

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ビジネスケアラーを支える体制づくりを

車椅子の女性に話しかける男女

少子高齢化が進む日本において、ビジネスケアラーの増加は避けられない社会課題です。企業にとっても生産性低下や介護離職など、経営に及ぼす影響は小さくありません。仕事と介護の両立支援は、当事者であるビジネスケアラーの就業継続を支えると同時に、組織のパフォーマンス維持や人的資本経営の実現にもつながる重要な取り組みです。まずはトップが両立支援の重要性を理解し、実態の把握と必要な支援を行っていくことが求められます。

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【筆者プロフィール】

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