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優秀な人ほど辞めるのはなぜ?退職の前兆や離職防止対策を解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

チームや組織にとって良い影響を与える人材は、できる限り長く自社で活躍してもらいたいものです。しかし、「優秀な人ほど辞めていく」「期待されていた従業員がすぐに辞めてしまった」という悩みを抱える企業も少なくありません。今回は、優秀な人が辞めてしまう理由や退職のサイン、離職を防ぐための対策などについて詳しく解説します。

優秀な人が辞める職場の特徴

優秀な人が辞めていく職場には、以下のような特徴がみられることがあります。

優秀な人が辞めていく職場の特徴

  • 職場環境や労働条件に問題がある
  • 主体的に働く従業員が少ない 
  • 評価体制が整っていない

これらの要因と、優秀な人が退職してしまうことの関連性をみていきましょう。

職場環境や労働条件に問題がある

従業員の能力や立場にかかわらず、離職の主な要因として挙げられるのが、職場環境や労働条件に問題があるケースです。例えば給与が低い、残業や休日出勤が多い、業務量が多いなどが挙げられます。また、上司が残業をしていて帰りにくい、横一線で仕事をしなければならないといった環境が原因となっている場合もあります。

主体的に働く従業員が少ない

主体的に、熱意を持って働く従業員が少ないことも一つの要因です。高い成果を出せる、コミュニケーションが円滑にできるなど、チームや組織に良い影響を与える優秀な人は、周囲との熱量やモチベーションの差があると、ストレスを感じてしまうことがあります。

また、昔からのやり方やルール通りに遂行することを求められるような仕事の自由度が低い環境に、働きづらさを感じている可能性もあります。受け身的な従業員が多く、創意工夫やチャレンジが認められにくい、また現状維持を好み変化を嫌う組織風土も、優秀な人が辞めていく職場の特徴といえるかもしれません。

評価体制が整っていない

適切な評価体制が整っていない点も挙げられます。明確な評価基準がない、あるいはあいまいで、上司の気分や主観で評価が決まってしまうような公平性に欠ける状態では、ベストを尽くして仕事に取り組むことができないばかりか、組織への不信感をつのらせてしまいます。不明瞭な人事制度では、キャリアプランの形成も難しく、企業からどのようなスキルや成果を求められているのかが見えないため、成長意欲の高い人材は離職してしまうでしょう。

優秀な人が辞める理由とは

次に、優秀な人が「会社を辞めよう」という決意に至る理由を6つご紹介します。

「会社を辞めよう」という決意に至る理由

  • 適切な給与・待遇でないと感じる
  • ふさわしい評価を得られていないと感じる
  • 優秀な人に仕事が集中している
  • やりがい、成長を感じられない
  • コミュニケーションが取れない
  • 会社の将来性に期待できない

適切な給与・待遇でないと感じる

働きぶりや成果に見合った給与・待遇が得られていないと感じた場合、優秀な人は離職を決意する可能性があります。給与をはじめとする待遇は労働の対価であり、従業員のモチベーションに直結するものです。限られた時間で効率良く計画的に業務をこなしているにもかかわらず、時間外労働をしている人の方が評価されていたり、他の従業員よりも多く仕事をして高い成果を出しているのに、そうでない従業員と給与が同じであったりすると納得できず、”見合わない”と判断します。昇進してもそれ以前と給与がほとんど変わらないケースでも、不満をつのらせて離職に至ってしまうかもしれません。

また、効率性を重視するあまり、優秀な人だけに仕事が集中し、業務量や負担が多くなってしまうことも一因です。極度の負担がかかると、ワークとライフのバランスが取れなくなるだけではなく、心身の健康も損ないかねません。すると、無理なく働ける環境を求めて職場を去ってしまいます。

ふさわしい評価を得られていないと感じる

自分の仕事について、「正当な評価がなされていない」と感じる場合も、離職を選択する可能性が高いといえます。優秀な人は、自分の成果や能力に見合った評価を得られていないことに気づきやすいものです。例えば、年功序列制度が残る企業では、勤続年数が長いという理由だけで高い評価をつけられている従業員がいるケースもあります。

評価制度の基準が見える化されていない状態では、上司の好き嫌いや感覚などによって恣意的な判断・評価がなされているのではと感じても不思議ではありません。このような職場では、いくら自分が成果を上げたとしても評価を得られないことが目に見えており、不信感を抱いてしまいます。「ちゃんと自分を評価してくれる会社で働きたい」と考え、退職へつながってしまうでしょう。

やりがい、成長を感じられない

優秀な人は、向上心が高く、現状に満足することなく成長したいという意欲を持っています。自らのスキルや能力を十分に発揮することができない、チャレンジができない環境では、やりがいや自分自身の成長を感じにくいでしょう。「期待していたスキルや経験が身につかない」「この会社で学ぶことはもうない」と判断すると、社外に成長の場を求めて去ってしまいます。

コミュニケーションが取れない

人間関係やコミュニケーションの問題は、優秀な人に限らず、従業員の離職理由としてよく挙げられることの一つです。職場の心理的安全性が低く雰囲気が悪い、基本的なコミュニケーションが取れない、自由に意見や提案ができない環境では、自らの能力を発揮できないばかりか、安心して働くことができません。日常的にハラスメントがある環境も、当然ながら離職の原因となります。

会社の将来性に期待できない

優秀な人材は、自らの将来のビジョンを具体的に描き、そのために行動しています。会社のビジョンがあいまいで、提示された将来像と自らが理想とするキャリア像が一致しない、特に自社にお手本となるようなロールモデルがいない場合は、将来性がないと判断し、離職を選択するかもしれません。業績や売上といった数値面だけではなく、人を育てる仕組みが確立されているか、といった点にもシビアな目を向けています。

優秀な人が辞めることのデメリット

優秀な人が辞めてしまうことは、さまざまな面で組織にネガティブな影響を与えます。

業務の質・生産性の低下

効率良く仕事を進めることができる優秀な人材は、他の従業員より多くの仕事を請け負っている可能性があります。単に、残る従業員の負担が増えて効率が落ちるだけではなく、その人材が業務の正確性やスピードを維持する役割を担っていたケースも多いため、抜けることによって生じる業務の質や生産性の低下が懸念されるでしょう。

従業員のモチベーション低下

主体的に業務に取り組む従業員の姿勢は、周囲にも良い影響を与えることが期待されます。チーム全体のモチベーションを維持していた人が辞めると、残された従業員の士気が下がってしまかもしれません。

また、従業員が抜けたことによって業務量が増え、「仕事がつらい」と心身に負担を感じてモチベーションが低下する恐れもあります。

連鎖退職の発生

優秀な人が辞めると、チームの同僚や部下など、他の従業員にも退職が連鎖してしまう可能性があります。「あの人がいるから頑張っていたのに、退職したならこの会社にいる必要はないかもしれない」と感じたり、退職の理由が明確でない場合は、「この会社は将来性がないのかもしれない」のような憶測が生まれたりして、残る従業員が不安や不信感を抱き、次々と退職してしまいます。連鎖退職によって深刻な人手不足に陥ってしまった場合、企業運営や業績にも大きな影響を及ぼしかねません。

優秀な人が辞めるサイン(前兆)

優秀な人が退職を検討、あるいは決断した場合、どのような兆候がみられるのでしょうか。退職のサインとされる3つの変化をご紹介します。

新しい仕事や案件を積極的に受けたがらない

まず挙げられるのは、仕事に対する積極的な姿勢が減少することです。すでに離職を決意している状況であれば、責任感のある従業員は、「自分は退職するのにその後の責任が持てない」「退職するため引継ぎの手間が発生してしまう」ことを考え、新しい仕事や案件を避けたがる傾向があるでしょう。

また、会議や面談での発言が減ることもあります。既存の仕事はこなしつつも、新たな提案をしなくなるといった様子には要注意です。ただ、明らかなモチベーション低下は、退職ではなく何か悩みを抱えている可能性も考えられます。

コミュニケーションが減る

離職を決意すると、従業員はチームやメンバーとの関わりをなるべく減らそうと、コミュニケーションを避けがちになります。特に優秀な人材は、在籍中に転職先を決めて退職していくケースが多いため、転職活動やその準備を進めていることを悟られないよう、上司とのコミュニケーションを避ける、ランチや飲み会への参加を断るようなこともあります。

残業をしない、有給休暇を取ることが増える

残業をしなくなったり、半休や有給休暇を取得することが増えてきたりした場合は、面接や試験といった本格的な転職活動が始まり、転職先が決まりつつある状態かもしれません。一方で、勤怠状況の急激な悪化は心身の不調をきたしている場合もあるので、注意が必要です。

優秀な人の離職を防ぐ方法

優秀な人の離職を防ぐためには、職場の働きやすさはもちろん、従業員一人ひとりがやりがいや成長を実感できる仕組みづくりも大切です。ここからは、従業員の離職防止対策(リテンションマネジメント)をご紹介します。

業務量や内容、裁量権の見直し

必要以上に仕事が集中して負担に感じている場合は、業務の割り振りや作業工程を見直し、負担を軽減しましょう。また、裁量権の拡大を含めて任せる業務内容を再検討し、優秀な人材が持つスキルや能力を発揮できるようにすることも重要です。すると、従業員は今まで以上にやりがいを感じやすくなり、さらなる成長が期待できる他、その企業で働く意味を見いだすことができます。年齢やキャリアにかかわらず、優秀な人が活躍できる土壌をつくることが大切です。

成果を適切に評価する仕組みづくり

評価制度や報酬体系を見直し、透明性の高い人事制度に刷新することも有効です。報酬の高さだけがやりがいではありませんが、成果に見合う報酬が得られない、昇進の基準が明確でないような状態では、モチベーションが低下するだけではなく、エンゲージメントにも影響する可能性があります。具体的な評価方法や基準を定めることで評価の納得度が上がり、従業員の成長意欲が高まるでしょう。

コミュニケーションの活性化

仕事をバリバリこなしているから大丈夫だろうと任せきりにするのではなく、定期的に1on1ミーティングを行うなどきちんと状況を把握し、優秀な人が何を目指しているのか、業務にどのように向き合っているのかを確認する機会を持つことが大切です。

その上で、上司やチームメンバーとの社内コミュニケーションを活性化させましょう。相互理解ができるようになるとお互いに信頼関係が生まれ、業務連携がしやすくなったり、協力体制が構築されたりして、チームワークの強化にもつながります。

社内コミュニケーションを活発にする取り組みについては、以下の記事で詳しくご紹介しています。

キャリアアップ支援・キャリアパスの提示

優秀な人がさらにスキルや能力を向上していくことができるよう、キャリアアップやキャリア形成の支援を行いましょう。併せて、今後のキャリアをイメージできるような研修の実施や、新しい挑戦ができる環境を提供するなどして、モチベーションや働きがいの向上を目指します。

研修や支援の例

  • キャリアデザイン研修
  • スキルアップ支援
  • 階層別研修

従業員アンケート・サーベイの実施

「業務への取り組み姿勢」や「部署やチーム内で生じている潜在的な問題」などを定量的、定性的に把握するため、従業員アンケートやサーベイ、ヒアリングを実施することもおすすめです。現状を可視化し、傾向を分析することで、組織が抱える課題の早期発見・解決につなげます。

優秀な人から退職の申し出があったときの対応方法

退職の意志を固めた従業員に離職を思いとどまってもらうことは、容易なことではありません。民法上、雇用期間の定めがない従業員には、退職の自由が認められています。(民法第627条第1項)企業は、退職の意志を無視し、従業員を強制的に雇用し続けることはできないと解釈してよいでしょう。

従業員から退職の申し出があった場合には、従業員の話にしっかりと耳を傾け、否定や反論をしないよう心がけながら退職の理由を聞き出します。働く中での不満や問題点がある場合は、状況を確認した上で対策を提案したり、改善に向けて取り組んでいく意思・姿勢を示したりすることが大切です。併せて、会社にとって必要な人材であること、期待している点などを真摯に伝えることで、離職を考え直してもらえる可能性もあります。

制度や環境を整え”働き続けたい”と思われる組織へ

優秀な人であるほど成長意欲が高く、学びや挑戦によって自らの能力やスキル向上に積極的に取り組んでいます。モチベーションの高い従業員がいることは、部署やチームだけではなく、組織にとっても大きなメリットです。しかし、評価制度が不十分であったり、将来的なキャリア像が見えづらかったりする状態では、優秀な人材はやりがいや目標を見いだせず、離職に至ってしまう可能性があります。業務の進め方や人事制度の見直しなど、離職防止のため幅広く取り組みを進め、「働きやすい」「働き続けたい」と感じてもらえる組織を目指しましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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