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部下を潰す「アンコンシャス・バイアス上司」がテレワークで増えている理由(前編)

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後編はこちら

部下を潰す上司のアンコンシャス・バイアスとは

アンコンシャス・バイアスとは直訳すると無意識の偏見、つまり自分自身が気づいていない偏ったものの見方のことです。「~するべき」や「~するものだ」という思い込みや決めつけです。最近では、著名人がこのような自分自身が気づいていない偏ったものの見方に基づいた発言をすることで批判されるケースも目立ちます。

「若い女性はおしとやかであるべき」という考え方で、スポーツ解説者がボクシングの女性オリンピック選手に対して発した言葉が批判を受けたり、「会議に女性が入ると長くなる」という考え方で、組織のトップが自組織のメンバーの女性比率アップについて発言したことが問題視され、退任することになったりした例など、みなさんも人が持っているアンコンシャス・バイアスが組織や個人にネガティブな影響を与えることについて身をもって感じていると思います。

たとえば、みなさんの周りにはこのように部下をマネジメントしている上司はいませんか。もしくは、自分自身がこのように部下をマネジメントしていませんか。

・ 部下に緊急の残業を依頼するときに、まずは男性に声を掛ける
・ プライベートを重視する部下を昇進対象から外す
・ 子どもがいる女性の宿泊を伴う出張は、本人に確認せずに日帰りに変更する


私たちは誰でも何らかのアンコンシャス・バイアスを持っています。これは決してすべてが悪いものではありません。たとえば、ビジネスマンが物事を判断するときに多くの情報の中から無意識のうちに最適な情報を選択できるのは、今までの自分の育った環境や過去の経験をもとにできあがったアンコンシャス・バイアスがあるからで、ビジネスに必要なスピーディーな判断には欠かせません。

ただ、対人関係においては自分の持っているアンコンシャス・バイアスが相手に対する決めつけや押しつけになり、それに基づいた何気ない行動や発言が気づかないうちに相手を傷つけたり、相手を苦しめたりするなどのネガティブな影響を与えることがあります。

自分が良かれと思って対応していたことが、実は本人にとってそうではなかった、ということもあるかもしれません。大切なのは「自分にはアンコンシャス・バイアスがある」ということを意識し行動することです。そして、「テレワーク勤務では部下にどんなメリット・デメリットがあるのか」を常に考えながら、自ら意識と行動を変革することにより、部下のやる気と自信を奪うことなく、かつ成長につながる新たなマネジメント手法を模索していくことが重要です。

部下には「自燃」「可燃」「不燃」「消燃」の4タイプがいる

みなさんは「部下は~すべき」、「部下は~するものだ」というアンコンシャス・バイアスを持っていませんか。いまや部下の価値観は多様化しており、すべての部下を一つのマネジメント手法で管理していくことはできなくなっています。

まずは、このアンコンシャス・バイアスに気づいて、部下のタイプに合わせたマネジメント手法に修正していきましょう。これはテレワーク勤務が進んでいる令和の時代に限ったことではなく、昭和の時代からそうだと思いますが、部下には「自燃」「可燃」「不燃」「消燃」の4つのタイプがいます。

自燃の部下は「自分で火をつけて燃える人」で、上司がある程度は本人に任せるマネジメントをすることでパフォーマンスを上げることができます。ただ、働きすぎによる「燃え尽き」には注意が必要です。

可燃の部下は「火をつけてあげれば燃える人」で、上司が必要に応じてしっかりマネジメントすることでパフォーマンス向上と成長が見込めます。

不燃の部下は「火をつけても燃えない人」、つまりまずは乾かすことが必要な人で、上司の優しい声掛けとケア、そして職場環境の調整や休養させることなどによって、「可燃」の状態まで引き上げるマネジメントが必要です。

消燃は「周りの火がついている人に水を掛けて消す人」で、いわゆる職場の問題児です。消燃の部下は上司一人のマネジメントでは対応が難しいため、職場全体での対応、または人事労務担当や場合によっては産業保健スタッフとの連携が必要となります。

オフィス勤務でもそうですが、特にテレワーク勤務において、上司は部下にはこの4つのタイプがいることを理解し、自燃や可燃の部下が仕事のやる気と自信を失い不燃や消燃に陥ることがないように、部下のタイプに合わせたマネジメントをしていくことが重要です。

上司はテレワークのメリットとデメリットを正しく理解する 

天秤にかけられたmeritとdemerit

オフィス勤務からテレワーク勤務に移行が進む中で、「仕事は~すべき」、「仕事は~するものだ」という上司が持っているアンコンシャス・バイアスが部下の仕事のやる気と自信を奪う場合があります。テレワーク勤務が進む中で部下をマネジメントしていくためには、上司がテレワークのメリットとデメリットを正しく理解することが重要です。

まず、従業員のメリットとしては「通勤時間の短縮により心身の負担が軽減される」「仕事に集中できる環境により業務効率化や時間外労働の削減を図ることができる」「育児や介護と仕事の両立や仕事と生活の調和につながる」などが挙げられます。

また、企業のメリットとしては「業務効率化や経費削減により生産性が向上する」「育児や介護等を理由とした労働者の離職の防止につながる」「遠隔地の優秀な人材を確保することができる」などが挙げられます。

従業員のデメリットとしては「公私の区別がつきづらく、長時間労働に陥ってしまう可能性がある」「作業環境が千差万別になり、身体的不調のリスクが増加する」「組織内の雑談やちょっとした質問をする機会が少なくなる」などが挙げられます。

また、企業のデメリットとしては「個々人の役割や業務内容の把握・共有がしづらくなる」「組織間のコミュニケーションやサポートが希薄になる」「組織の一体感や情報が欠如しやすい」などが挙げられます。上司はこれらのメリットとデメリットを理解して、「部下がイキイキと楽しく働くことができる職場環境をいかにつくっていくか」を考えながら、部下のマネジメントを行っていくことが重要です。

次回は、上司が注意すべきアンコンシャス・バイアスについて、より詳しく触れていきます。

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【筆者プロフィール】

キティこうぞう(本名:鬼頭 幸三)
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント シニアコンサルタント
1987年株式会社名鉄百貨店入社。労働組合の役員を10年以上、また、2000年からの6年間は、名鉄百貨店労働組合執行委員長を務め、社員のカウンセリングにも関わる。その後、同社人事部で、採用および社員の人材教育・キャリア開発に従事。 アドバンテッジリスクマネジメント入社後は、労働組合や人事部での経験をもとにした、コミュニケーションやメンタルヘルスに関する研修や講演を行っている。

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