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部下を潰す「アンコンシャス・バイアス上司」がテレワークで増えている理由(後編)

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前編はこちら

部下の評価に対するアンコンシャス・バイアスに注意する

部下の評価に対するアンコンシャス・バイアスが優秀な部下を潰すことがあります。ここで危険なアンコンシャス・バイアスの例をいくつか挙げてみます。

(1)「部下は上司が管理しないとサボるものだ」
これは一部の部下、たとえば消燃タイプのマネジメントには有効かもしれません。しかし、このようにものの見方が偏りすぎると、テレワーク勤務下で自分が部下に送ったメールに返信がないと電話で「サボるんじゃない!」と叱責したり、自分が送ったメールが返信されるまでの時間によって部下を評価したりしがちです。極端な例としては「メールの返信が遅いことを理由として、部下に職場への出勤を強要する」などということも起こっています。

(2)「テレワーク勤務よりオフィス勤務をする部下を評価すべき」
自分の気に入った部下にオフィス勤務を命令して自分のテレワークの補助をさせた上、その部下に対してテレワーク勤務を選択する部下よりも高い評価をしたり、オフィス勤務を選択する回数で部下を評価したりして、本当に優秀な部下(たとえばテレワーク勤務で成果を上げている自燃タイプの部下)を潰すことが考えられます。

(3)「成果・結果だけでなく、部下の態度や業務プロセスも評価すべき」
テレワーク勤務での部下の評価は、ある程度は成果で判断せざるを得ないことになります。ところが、今までオフィス勤務で部下の態度や業務プロセスを評価してきた上司の中には「テレワーク勤務でも態度や業務プロセスの評価が大切」と考え、不必要なオンライン会議や電話によって部下の仕事状況を必要以上に管理してしまうことがあります。

極端な例としては「気に入らない部下のWebカメラを一日中オンにさせて過度に監視する」などにより、上司が自然タイプや可燃タイプの部下のやる気と自信を奪い、その部下を潰して不燃タイプや消燃タイプに追い込むことがあります。

今後、企業としては評価対象となる意欲や勤務態度面と行動面の具体的な項目や評価の方法をあらかじめ人事評価制度で定めておき、評価者にはリモート勤務の働き方において適正な評価を実施できるよう評価者訓練の機会を設けることが必要になるでしょう。

職場のコミュニケーションのアンコンシャス・バイアスに注意する

話し合いをしているビジネスパーソンたち

「ホウ・レン・ソウは部下からするものだ」というアンコンシャス・バイアスには注意が必要です。オフィス勤務では上司がすぐそばにいるため、部下からの報告・連絡・相談もしやすい状況にあります。ところが、テレワーク勤務ではリアルタイムでの報告・連絡・相談が難しく、どうしてもタイムラグが発生しやすくなります。

もしかしたら、報告・連絡・相談の遅れから業務上のトラブルが発生し、上司が部下に対して「何をやっていたんだ!」と叱責する場面も増えるかもしれません。そして部下にも、「上司は忙しくても部下への返信はすぐにするものだ。返信がないのでこちらから急いで連絡しなくても良いだろう」とか、「上司は部下の状況を気に掛けるものだ。声を掛けられないから気にされていないんだ」などといったアンコンシャス・バイアスが潜んでいることも考えられます。

上司はそんな状況を前もって理解し、自分から積極的に部下に対して報告・連絡・相談を働き掛けていくことが重要です。「オンライン会議などでは冒頭に自らの業務状況を報告して、部下からの報告を促す」「自分が取得した重要な情報をできるだけ早くメールやチャットで部下に連絡する」「自分が相談を受けやすい時間帯を部下に提示しておく」など、できるだけオフィス勤務に近い「報告・連絡・相談がしやすい職場環境」をつくるよう努めましょう。

部下の健康管理に対するアンコンシャス・バイアスに注意する

「自分の健康は自分で守るものだ」というアンコンシャス・バイアスにも注意が必要です。健康を崩す原因が個人に起因する不摂生(飲み過ぎや食べ過ぎなど)や運動不足などと考え、「部下の健康は本人の責任」という偏った物の見方をする上司は自分のアンコンシャス・バイアスを意識することが必要です。

現代の企業では、「従業員の健康管理を経営的な視点で考えて、従業員への健康投資を行うことが従業員の活力向上をもたらし、結果的に業績向上につながる」という「健康経営」という考え方が必須となっています。これからの時代には、「企業の業績アップのために、上司がいかに部下の健康管理を行っていくか」という視点で部下のマネジメントを進めていくことが重要なようです。

なぜ本人が不摂生するに至ったのか、その原因を探ると職場環境や人間関係にあった、といったケースも多いのです。仕事による過度なストレスによって飲み過ぎや食べ過ぎ、あるいは食欲不振を引き起こしている可能性もあります。また、長時間労働で疲れてしまい、運動をする気力が起きないといったこともあるでしょう。

特に、新入社員や中途採用の部下、および異動直後の部下はテレワーク勤務の実施に当たって健康管理やコミュニケーションの円滑化に特段の配慮をする必要があります。

新しい働き方の中で部下の成長につながるマネジメントを

アフターコロナ時代の新しい働き方としてテレワークが拡大していく中で、企業として不必要な押印や署名の廃止、書類のペーパーレス化、決裁の電子化などにより仕事の進め方を見直す動きが加速します。また、オフィス勤務と同様に円滑なコミュニケーションができるソフトウエアの導入も進むでしょう。

先ほど記述したように、テレワーク勤務での新しい人事評価制度も必要になります。さらに、時間外のメール禁止やシステムへのアクセス制限時間の設定などの長時間労働対策も進んできます。

そのような中で、上司は「部下にネガティブな影響を与えるアンコンシャス・バイアスを自分が持っていないか」を自問自答し、自分の持っているアンコンシャス・バイアスに早めに気づくことが必要です。仕事で部下のやる気と自信を奪うことがないよう自ら意識と行動を変革して、部下の成長につながる新たな部下のマネジメント手法を身につけていきましょう。

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【筆者プロフィール】

キティこうぞう(本名:鬼頭 幸三)
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント シニアコンサルタント
1987年株式会社名鉄百貨店入社。労働組合の役員を10年以上、また、2000年からの6年間は、名鉄百貨店労働組合執行委員長を務め、社員のカウンセリングにも関わる。その後、同社人事部で、採用および社員の人材教育・キャリア開発に従事。 アドバンテッジリスクマネジメント入社後は、労働組合や人事部での経験をもとにした、コミュニケーションやメンタルヘルスに関する研修や講演を行っている。

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