マスクを着け話をしている産業医

コロナ禍での衛生委員会や健康診断の対応 労働安全衛生法をわかりやすく解説

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労働安全衛生法は、職場での労働者の安全や健康を守り、快適な労働環境を作るために定められている法律です。労働安全衛生法の中では衛生委員会の開催や健康診断の実施などが定められていますが、いわゆる「3密」を避けることとされるコロナ禍の今日においてはどのように対応すべきなのでしょうか。

この記事では、労働安全衛生法で定められた衛生委員会や健康診断に対するコロナ禍での対応について解説していきます。

労働安全衛生法の概要

労働安全衛生法とは、1972年に制定された労働者の安全と健康を確保するための法律です。労働者が安心して働ける労働環境を整備するために、企業には適切な安全衛生管理が求められています。

安全衛生管理を徹底することで、企業全体の生産性向上、従業員のモチベーション向上、人材不足の解消といったさまざまなメリットがあります。

事業者は労働安全衛生法に従って安全管理や衛生管理を推進しなければならず、衛生委員会や健康診断、ストレスチェックの実施などが義務付けられています。

2019年4月に施行された働き方改革関連法では、産業医・産業保健機能の強化、長時間労働者の面接要件の見直しといった変更点がありました。健康リスクの高い従業員を見逃さないために、適宜法改正が行われています。

コロナ禍での衛生委員会の開催

新型コロナウイルス感染拡大防止策として、いわゆる「3密」(密閉・密集・密接)の回避が推奨される中、衛生委員会の開催においてはどのような点に気を付けるべきなのでしょうか。コロナ禍での衛生委員会の開催について、委員会設置の目的や条件とあわせて解説します。

・衛生委員会について定められていること

衛生委員会設置の目的は、労使が一体となって労働災害を防ぐことです。そのためには、労働災害防止の基本となる対策や重要事項について、労働者の意見を反映させながら十分に調査審議しなければなりません。

衛生委員会では、労働者の健康障害を防止するための対策、労働者の健康の保持促進を図るメンタルヘルス対策、職場でのパワーハラスメント(パワハラ)防止対策といったさまざまな事項が調査審議されています。

衛生委員会は毎月1回以上開催し、その都度委員会における議事録を労働者に周知する必要があります。

衛生委員会および安全委員会の設置が義務付けられる条件は次のとおりです。

衛生委員会および安全委員会の設置が義務付けられる条件に関する表

衛生委員会および安全委員会の委員構成に関する要件は次のとおりです。

衛生委員会および安全委員会の委員構成に関する要件についての表

衛生委員会の目的や役割に関しては以下のページも参考になさってください。
『衛生委員会の目的、設置基準や役割とは?』

・コロナ禍での衛生委員会開催で気を付けるべきこと

コロナ禍であっても、月に1回の開催が義務付けられている衛生委員会は実施しなければなりません。委員会の開催にあたっては、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「3密」を避けることや換気・消毒など、十分な感染防止対策を講じる必要があります。

また、衛生委員会は情報通信機器を用いたオンラインでの開催も認められています。オンラインにおいても、安全衛生に係る問題が十分に調査審議されるようにしなければなりません。

そのためには、映像や音声の送受信が常時安定していること、円滑な意見交換が即時に行われること、各委員の資料の共有方法や意見の表明方法が周知徹底されていることなど、さまざまな点に留意する必要があります。

コロナ禍での健康診断の実施

健康診断の実施は会社の義務であり、労働安全衛生法でも明確に定められています。たとえ従業員が1人であっても実施する必要があり、50人以上の場合は健康診断の結果を労働基準監督署へ報告しなければなりません。それはコロナ禍であっても変わりなく、十分な感染防止対策を講じたうえでの実施が求められています。

・コロナ禍でも健康診断を実施すべき理由

新型コロナウイルス感染拡大のリスクがある現在の状況では、健康診断に行くことを躊躇する人もいるでしょう。しかし、従業員の健康を守るために健康診断は適切に行われるべきであり、過度に受診を控えることは健康上のリスクをもたらす危険があります。

健康診断の会場や医療機関では、換気や消毒といった感染防止対策が十分に行なわれています。コロナ禍であっても労働安全衛生法等に基づく健康診断を実施し、従業員の健康を保持促進しなければなりません。

感染リスクから受診を控えようとする社員には、健康診断を実施すべき理由をしっかりと説明し、理解してもらう必要があります。

・コロナ禍での健康診断で求められる対策

コロナ禍での健康診断は、新型コロナウイルス感染拡大のリスクを減らすこと、そのための対策を行なっていることを従業員に伝え、安心感を持って受診してもらう必要があります。

3密の回避やマスク着用、換気・消毒など、感染防止対策を十分に行なっている健康診断会場や医療機関で実施することが大切です。

健康診断の実施にあたっては、予約や結果のデータ化をシステム化することで利便性を向上できます。未予約者や未受診者をまとめて確認でき、受診率を上げるための対応が容易です。従業員側としても自ら健診予約ができ、インターネット上でいつでも自分の結果を確認できるメリットがあります。

まとめ

労働安全衛生法は、労働者の安全や健康を守るために定められた法律です。法律の中では衛生委員会の開催や健康診断の実施が義務付けられていますが、コロナ禍においてはどう対応すべきか判断に迷うこともあるでしょう。

しかし、衛生委員会はオンラインでの開催も可能であり、健康診断会場や医療機関では十分な感染防止対策がとられています。コロナ禍の現状にうまく対応しながら、今後も労働者が安心して働ける環境を整備していく必要があるでしょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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