聴診器とデータが記された資料

2019年4月に義務化「健康情報取扱規程」とは

Facebookでシェア ツイート

健康情報取扱規程とは

2019年4月から、働き方改革関連法の施行に伴い労働安全衛生法が改正されました。改正104条「心身の状態に関する情報の取扱い」という規程が新設されたことにより、企業には、社員の健康を管理するために「健康情報等の取扱規程」を策定することが義務づけされました。

「健康情報(労働者の心身の状態に関する情報)」とは、以下の情報等が該当します。

• 健康診断の結果
• がん検診の結果
• 健康診断後の面接指導の結果、就業上の措置
• ストレスチェックの結果
• ストレスチェックに基づく医師の意見及び面接指導の結果、事後措置の内容
• 産業保健業務従事者が労働者の健康管理等を通じて得た情報
• 労働者から任意に提供された本人の病歴、健康に関する情報
• 通院状況等疾病管理のための情報、他

これらの健康情報は、個人情報のなかでも「要配慮個人情報」に該当するため、当人に不当な差別、偏見その他の不利益 が生じないように、取扱いにより留意する必要があります。ちなみに「取扱い」とは、具体的には以下のように企業内で健康情報を収集、保管、使用、加工、消去する行為を指します。さまざまな業務が該当することに注意しましょう。

健康情報取扱規定表
(出典:厚生労働省

「健康情報取扱規程」の作成手順

従業員の健康情報の取扱規程は、企業が一方的に決めるのではなく、労使でしっかり協議して健康情報の範囲、管理体制、本人同意の取得方法などのルールを決める必要があります。具体的な作成手順は、「衛生委員会」の設置の有無によって少し異なります。

1)「衛生委員会」がある会社の作成手順
従業員が50人以上の会社は、「衛生委員会」の設置が義務づけられているので、衛生委員会を「労使の協議の場」として活用し、原案を作成した上で衛生委員会の議題に挙げ、委員と審議して策定を進めることが求められています。

また、取扱規程は事業場の労働者全員に適用されるルールなので、労働者への周知を図るために、就業規則等に記載することが望ましいとされています。

(ステップ)
1.総務人事部門等で原案作成
2.衛生委員会で健康情報取扱について労使で協議
3.衛生委員会で承認された規程案の採用を社内で決定
4.就業規則等に明記
5.社内へ広く周知

2)「衛生委員会」がない会社の作成手順
従業員が50人未満の会社あるいは事業場においては、衛生委員会の設置義務がありません。しかし、健康情報の取扱規程については、従業員の意見を直接聴取した上で策定することが求められているため、労働者の常会、職場懇談会等の何らかの「関係労働者の意見を聴くための機会」を設けて協議する必要があります。

他のステップは衛生委員会がある場合と同じで、会社の総務人事部門等で原案を作成し、設定した集会で従業員から意見を直接収集するだけでなく内容も協議した上で規程を策定します。従業員側の承認を得て社内で最終決定したのちに就業規則等へ明記し社内に周知します。

策定すべき「健康情報取扱規程」の内容とは?

では、具体的にどのような内容を記載すればよいのか、以下に記載します。

①健康情報の活用についての「目的」「健康情報の種類」
②「取扱いの工程に関する定義(収集、保管、使用、加工、消去)」
③健康情報を取り扱う者及びその権限、取り扱う健康情報の範囲
  -取り扱いの責任者、使用者、各々の権利や義務について明記
④健康情報と取り扱う目的等の通知方法及び本人同意の取得方法
⑤健康情報の適正管理の方法について

 -適正管理とは、ⅰ)個人データを必要な範囲において正確・最新に保ち、ⅱ)漏えい・減失・改ざん等がされないよう、権限を有しない者による当該データへのアクセスを防止する等の取扱いに関する組織的な体制等の適切な安全管理措置を講じ、ⅲ)保管の必要がなくなった情報を適切に消去すること等を指します。

上記に加えて、以下の取扱い等についての記載が必要です。

⑥健康情報等の開示・訂正等の方法
⑦健康情報等の第三者提供の方法
⑧事業継承、組織変更に伴う健康情報等の引継ぎに関する事項
⑨健康情報等の取扱いに関する苦情処理
⑩取扱規程の労働者への周知の方法

「健康情報取扱規程」は周知が必要

策定した「健康情報取扱規程」は、就業規則や社内規程等に定めるとともに、その内容を従業員へ広く周知し、関係者が適正に運用できるようにする必要があります。規程は作って終わりでは意味がありません。全員がアクセスできる場所(掲示板や社内メールやイントラネットに掲載、パンフレットや冊子にして従業員へ配布、社内研修を通じて周知など)に公開し、従業員が常に閲覧できる状態にしましょう。

まとめ

労働安全衛生法の改正により、企業には「従業員の健康情報の取扱い規程」の策定が義務づけられました。目的は、従業員の健康確保、事業者の安全配慮義務の履行、従業員や顧客の安全確保です。「働き方改革」の一環であり長時間労働の是正とともに、労働者の労働環境の改善が重点ポイントです。

昨今は、コロナウイルス感染症の感染拡大により、職場における従業員の健康リスクが高まっています。安心して従業員が健康情報を提供できる体制を整えることが、生産性や事業の存続に影響する可能性もあります。

今一度、従業員が健康であることの重要性を認識して、衛生委員会もしくは従業員と協議できる集会等で積極的に意見交換し、健康情報の取扱規程を見直していきましょう。

紙の健診結果や散在しているデータを一元管理、ストレスチェック結果とのクロス分析サービスも提供(予定)し、従業員の健康状態を”見える化”「アドバンテッジ健診結果管理システム」

(Visited 17,562 times, 3 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>