従業員の健康管理を行う産業保健師とは?

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従業員の健康管理を経営指標と捉える概念は1990年代に米国で生まれ、すでに健康経営に力を入れる企業はパフォーマンスが高いという実証研究結果のデータも発表されています。

あまりこの分野に関心がなかった日本企業においても、近年のメンタル不調者の増加、高齢化による従業員の平均年齢の上昇を背景に、健康管理に対して真剣に取り組む企業が増えつつあります。

しかし、産業医の人数不足や、健康という分野の特殊性から社内にエキスパートがいないなどの課題もあります。そこで昨今、注目されているのが「産業保健師」です。この記事では産業保健師の役割、重要性、企業が産業保健師を採用するメリットについて詳しくご紹介します。

産業保健師とは?

産業保健師とは、厚生労働大臣の許可を受けて、一般の企業や企業の健康保険組合に勤務している保健師のことを言います。参考までに、保健所・保健センターなどに勤める保健師を「行政保健師」、学校に勤める保健師を「学校保健師」と称することもあります。

産業保健師は、学校の保健室にいた保健の先生の企業バージョンとイメージすると多少近いかもしれません。産業保健師とは、看護師国家試験と保健師国家試験に合格したプロフェッショナルです。企業内ではおもに従業員の疾病の予防を担当します。

実際に管轄できる役割はかなり幅広く、産業保健師の協力を得ることで、社内の健康管理、メンタルヘルス対策、職場環境改善などが、よりスムーズに進む可能性は高いと言えるでしょう。

産業保健師の仕事(役割)

産業保健師は産業医とも連携して、企業の従業員の健康管理をサポートします。主な業務は以下の通りです。

業務内容例:
・健康診断の実施、データ分析
・ストレスチェックの実施、分析
・社員の健康のサポート
・社員のメンタルカウンセリング
・企業内健康セミナーの開催
・従業員のケガなどの応急処置
・産業医とともに職場巡視
・休職者の復職支援

もっとも、企業内で産業保健師は1人というケースが多くマンパワーの問題がありすべてを担当できないこともあります。また、近年は派遣スタッフとして働く産業保健師も増えています。その場合、業務内容は基本的に契約内容に準じます。

産業保健師の仕事の重要性

企業内での産業保健師は、おもに従業員の病気の一次予防を担う役割だと言えるでしょう。季節ごとの疾病の予防方法、健康セミナーの開催などによる従業員の啓発などを行います。

また、健康診断のデータやストレスチェックのデータなどをもとに、有所見者をピックアップし産業医との面談対象者を抽出することも担当します。企業において、大きなリスクである従業員の健康面、メンタル面の予防面で力を発揮する産業保健師の役割は、非常に大きいと言えます。

産業保健師導入のメリット

企業が産業保健師を導入する、代表的な3つのメリットを紹介します。

■衛生環境づくり
産業保健師の職場巡視により、健康を害する要因を特定し、職場環境改善についてアドバイスを得ることができます。
【健康を害する要因例】
・職場の換気、温度、湿度、レイアウト
・パソコンの位置、従業員の姿勢
・風通しの悪い職場風土、コミュニケーション環境

■予防・病気のケア、健康管理体制の構築
産業医と産業保健師が協力しながら、業務を棲み分けて従業員の病気のケアや予防を行うことで、よりきめ細やかな健康管理体制が構築できます。例えば、メンタル不調者の相談、休職者の復帰支援などの領域を産業保健師がカバーすることができます。また、産業保健師に衛生委員会に参加してもらうことで、よりレベルの高い内容を話しあうことができ、衛生委員の知識が深まります。各職場の健康管理体制も向上します。

■産業医の負担軽減
産業医がそれまで担っていた業務の一部を産業保健師がカバーすることで、産業医はより重要な業務に集中できるようになります。例えば、産業保健師が事前ヒアリングをしておくことで、産業医面接がスムーズになり時間を短縮することも可能です。また、産業保健師が専門知識をベースに、従業員の調子や企業の健康管理の状況を産業医に伝えると、専門家同士ということもあり企業の担当者が伝えるよりも実態がスムーズに伝わる点もメリットです。

まとめ

産業保健師は、近年の健康経営を重視する企業経営の潮流の中で、非常に重要な職業だと言えるでしょう。

企業は、従業員に自分の健康を自分で守るよう教育をするとともに、産業保健師を導入し、専門的な視点からアドバイスをしてもらうことで従業員の健康の維持・増進、ひいては生産性向上を促進することができると言えます。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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