近年、エンゲージメント、あるいは従業員エンゲージメントという言葉を頻繁に目にします。
2017年に日本能率協会が行った調査「日本企業の経営課題 2017」によると、「働きがい・従業員満足度・エンゲージメント向上」を重視する企業が、2012年と比較し10ポイント以上も伸びているなど、エンゲージメントにも注目する企業が増えつつあることがうかがえます。
本記事では、エンゲージメント調査の概要、企業がエンゲージメント調査を行う理由、その活用方法について解説します。
エンゲージメントとは?
エンゲージメントとは、人事領域では「従業員が自社へ愛着心を持っている状態」という定義が一般的です。ロイヤリティ、忠誠心などが従業員からの一方向の感情であるのに対し、エンゲージメントは企業と従業員がお互いに貢献し合おうとする関係性を指す言葉です。
もともとは1990年代に米国のボストン大学のカーン教授が使用し始めた概念で、その後も米国で研究が進み、近年、企業のパフォーマンスを上げるための重要な指標として世界中の多くの企業が重要視しています。
エンゲージメントを測る理由
近年は、少子化による人材不足、売り手市場による転職者の増加など、人事担当者の悩みはつきません。採用が難しいうえに、転職マーケットはこれまで以上に活発で、優秀な社員にはスカウトやヘッドハンティングの声がかかりやすい状況です。
特に若者の転職は、給与・待遇だけではなく本人の成長しようとする欲求に企業がどれだけ応えられるかなど、心情的な面も大きく左右します。優秀な社員ほどその傾向が高いため、従業員のエンゲージメント向上を高める施策は非常に重要になりつつあります。
また、従業員のエンゲージメントを高めることが生産性向上にもつながることが各種調査により明らかになっています。定期的に従業員エンゲージメント調査を行い、現状を把握し対策を立てていくことは人事戦略上大きなメリットがあります。
・優秀な人材の流出を防ぐ
・従業員の士気が高まりパフォーマンスが上昇
従業員エンゲージメントの調査方法
従業員エンゲージメント調査は、アンケート形式で行われることが一般的です。従業員の本音をリサーチする必要がある性質上、個人が特定できないシステムなどを用いて、評価には影響しない旨を周知するよう留意しましょう。
従業員エンゲージメントのスコアは、各調査会社が自社の保有データをもとに算出するケースが多く、自社の強みや弱みを相対的に把握することができるため、改善点に優先順位をつけることができます。
従業員エンゲージメント調査の指標
調査会社によって表記の方法は異なりますが、以下の例のように、総合的な指標と、会社や仕事内容の満足度、企業に対する期待度、自分の成長可能性などが指標として表されることが多いと言えます。
■総合指標
従業員が勤めている企業を総合的にどのように感じているか? 例えば、友人や家族に就職先として進められるか? 継続して勤務したいかなど、全体的な評価や愛着を示す指標
■ワーク・エンゲージメント(UWES=Utrecht Work Engagement Scale)指標
活力、熱意、没頭の3種類の尺度から現在の仕事に積極的に向かい、活力を得ている状態を評価する指標
■エンゲージメントドライバー指標
仕事への満足度、当事者意識、貢献できているという感覚、成長している実感、将来の成長予測、人間関係の良好さ、企業の価値観への共感度、企業への期待度など
活用方法
従業員エンゲージメント調査では、会社全体だけでなく部署ごとの指標も出てきます。仕事内容そのものが影響しているケースもあれば、マネージャーの能力不足によるケースなど様々ですが、いずれにせよ抱えている課題が見えやすくなるため、対策を立てることができます。
調査結果を以下のようないろいろな目的やシーンで活用できます。
・従業員の価値観、志向性の把握
・マネジメント層の研修
・人事異動による適材適所の人材配置
・従業員の裁量権の拡大検討
・従業員のキャリアデザインを支援する人事制度の構築、ほか
まとめ
米国の大手調査会社ギャラップ社が行った調査によると、日本企業の従業員エンゲージメントの順位は139 社中132位と、かなり下位にあります。そのため、従業員エンゲージメント調査を実施しても、多くの企業では想定しているよりも悪い結果となる可能性があります。
しかし、それは日本企業の全体的な傾向であるため、結果から目をそらさず、従業員のエンゲージメントを高める対策を実行していくことが大切です。