広い会議室

新入社員研修の目的とは?目標の決め方とカリキュラム事例

Facebookでシェア ツイート
「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

新入社員研修は、社会人として働いていくうえでの心構えや、ビジネスの場で求められる基本的なスキル、マナーなどを身につけるために行われる研修です。主に新卒者を対象としており、多くの企業で実施されていますが、より効果的な育成を目指すには、明確な目的を掲げて研修を進めていくことが大切です。この記事では主に新卒者を対象とした研修について、目的や目標の設定方法、具体的なカリキュラム内容について詳しく解説します。

新入社員研修の目的

新入社員研修は、一般的に入社直後から行われます。期間は数日~数ヶ月程度と企業規模や職種によって大きく異なります。新入社員研修のメインは入社時ですが、それ以降も適宜研修を実施し、フォローアップしていくことが望ましいといえます。まずは、新入社員研修を実施する目的を、以下の5つの観点から整理しておきましょう。

<新入社員研修実施の目的>

  • 学生から社会人への意識改革・企業理解
  • ビジネススキル・マナー・知識の習得
  • 社内コミュニケーションの促進・人脈形成
  • 社内ルールの遵守・コンプライアンスの徹底
  • メンタルヘルスケア対策

学生から社会人への意識改革・企業理解

新卒で入社する社員は、アルバイトやインターンなどの経験がある人が多いとはいえ、企業の一員としてフルタイムで働くのはほとんどの人が初めてです。学生時代のアルバイトとは異なり、より大きな責任が伴うほか、自分自身でスケジュールを管理したり、創意工夫をしたりして、自律的に業務を進めていく必要があります。新入社員研修では、学生と社会人の違いを認識してもらい、社会人としての自覚をもって働いていけるよう意識の改革を促すことが大切です。

併せて、研修を通して企業理念や事業についての理解をさらに深め、今の自分に求められていることや、これから自分が携わる業務が組織の中でどのような役割を果たしていくのかを把握してもらいます。組織や事業について深く知ることは、仕事のモチベーションを高めることにもつながるでしょう。

ビジネススキル・マナー・知識の習得

ビジネスの場で求められる基本的なスキルやマナー、職種に関する知識の習得も、新入社員研修の目的のひとつです。配属先にかかわらず、「この会社で働いていくうえで必要となる知識」を身につけておくことで、それぞれの配属先でも仕事に慣れるスピードが早くなることが期待できます。

職種によっては、より専門的な知識や技術を学ぶ場としての役割もあります。例えばエンジニアや開発職であれば、ネットワークやセキュリティ対策について、営業職であればアポイントメントの取り方、サービス業であれば接客マナーなどです。実務に入る前の段階で、土台となる知識を習得しておけば、配属先の負担も軽減できるかもしれません。

社内コミュニケーションの促進・人脈形成


新入社員研修は、どんな人が働いているのか、どんな人が同期で入社してきたのかなど、社内での人間関係の構築やコミュニケーション促進、人脈形成の場でもあります。新入社員同士が研修の場に集まって交流し、コミュニケーションをとることで、同期同士での結びつきが強まるとモチベーションや成長意欲が高まることも期待できます。

お互いに相談できる、フォローし合える関係性を築くことができれば、早期離職のリスクを低減できるかもしれません。また、研修で先輩や上司などとの交流機会を設けておくと、その後の業務においてもコミュニケーションがとりやすくなります。

社内ルールの遵守・コンプライアンスの徹底

会社に存在する独自のルールを学ぶことも、研修の重要な役割です。例えば、イントラネットの見方、タイムカードやチャットツールの使い方、休む場合の連絡方法や有給休暇取得の流れなどが挙げられます。

社内ルールは、社会人として必要なビジネスマナーとは異なり、あらかじめ身につけておくことができません。またルールを知らないと、コミュニケーションにズレが生じて配属先で孤立したり、新入社員が精神的な負担を感じたりする可能性もあります。研修であらかじめ就業規則や社内ルールを共有しておくことで、配属先での業務をスムーズに進めることができるでしょう。

併せて、コンプライアンス(法令遵守)についても指導します。情報の取り扱いやSNSの使用方法、あるいはハラスメント問題など、企業・組織の信用を守るための規範を知り、遵守を徹底してもらいます。

メンタルヘルスケア対策

メンタルヘルスケア対策について学びを深めることも大切です。経験が浅く、慣れない環境で働くことは戸惑いも多く、ストレスを感じるケースも少なくありません。ストレスに対して適切に対処する方法やセルフケアについての知識を身につけておくことで、ストレスと上手く付き合っていくことができるでしょう。新入社員が自分のメンタル不調に気づき、早めに対処できれば、休職や離職防止の点でもメリットがあります。

新入社員研修の目標の決め方


ご紹介したように、新入社員研修の目的はさまざまなものがあります。研修に求める役割は会社によって異なるため、研修の目標をしっかり定めておくことが大切です。次に、自社の新入社員研修の目標をどのように定めるか、そのポイントをみていきましょう。

研修を経て「どうなってほしいか」を考える

研修後、新入社員に「どうなっていてほしいか」をイメージし、目標に落とし込みましょう。社会人としての基礎を学ぶ場において、どの程度の知識・スキルを身につけておいてほしいのか、どんなマインドを持っていてほしいのか、どういった方法で「必要な知識・スキルが身についた」と判断するのかなどを明確にします。

さらにどのような内容を教えるのか、それぞれの研修時間はどのくらいかなど、具体的な内容を詰めていきましょう。スキルマップを作成するのもおすすめです。1年目で習得してほしいスキルのほか、2年目、3年目といった中長期的な視点でも作成することで、目標がより明確になるほか、新入社員のモチベーション向上にもつながります。

「今」実施すべき内容かを見極める

「今すぐに」身につける必要がある内容なのかを見極めることも大切です。新卒社員は社会人としての経験が浅いため、短期間に膨大な知識やスキルを習得することは非常に難しいものがあります。

早く成長して現場で活躍してほしいからと、学んでほしい内容を詰め込みすぎると、新入社員にとってはプレッシャーとなり、研修の効果が高まりにくくなります。特に必要な知識・スキルを厳選したうえで、優先順位をつけ、優先度が低いものについては徐々に覚えてもらうようにカリキュラムを調整するなど、研修のハードルを高くしすぎないように注意しましょう。

現場にヒアリングし、すり合わせる

いち早く現場で活躍する新入社員を育成するためには、配属先の部署の状況や、求められるスキルを把握しておくことが重要です。なかには、研修で教えた内容が配属先で役に立たなかったというケースもみられます。新入社員と現場双方の負担になりかねないため、可能であれば、配属先の管理職に事前にヒアリングしましょう。

新入社員研修で指導すべきこと、配属後のOJTで受け持つ内容を明確にできれば、重複や過不足が起こりにくく配属後の教育もスムーズに行える可能性があります。また、アンケートやインタビューを実施し、管理職以外の現場の社員から意見を得ることも効果的です。

新入社員研修におすすめのカリキュラム内容

続いては、一般的に新入社員研修で行われる研修を5つの目的別に紹介します。

学生から社会人への意識改革研修

社会人としての意識を持ってもらうための研修は、講義とグループワークを組み合わせて実施することが一般的です。例えば、以下のような内容について学習します。

<新入社員の意識改革を目的とした研修の内容例>

  • 学生と社会人の違いについて
  • ビジネスの基本的なマインド
  • 組織における自分(新入社員)の役割
  • 仕事に対するスタンス

ビジネスマナー研修

ビジネスマナー研修では、単にマナーを指導するだけではなく、「なぜマナーを守ることが必要か」を伝えることが大切です。

<ビジネスマナーを身につける研修の内容例>

  • 名刺交換
  • 電話応対
  • 来客応対、訪問時のマナー
  • 席次マナー
  • メールの送り方
  • 文書の書き方
  • ビジネスにふさわしい言葉遣い(敬語)

コミュニケーションに関する研修

多くの人々と関わり、協力しながら仕事を進めていくことが求められるなかで、上司や先輩、同僚、あるいは取引先や顧客などと円滑にやり取りができるよう、コミュニケーションスキルを身につけます。

<仕事上のコミュニケーションについて学ぶ研修の内容例>

  • 報連相のポイント
  • 上手な話の聴き方、質問の方法
  • プレゼンテーションのやり方(構成・伝え方)
  • アサーティブ・コミュニケーションの方法

また、近年注目されるEQ(感情マネジメント力)を高める研修もおすすめです。EQの重要性を理解したり、EQ行動特性検査(EQI)を実施したりして、自身のコミュニケーションのクセや他社との違いを知り、必要なコミュニケーションの具体方法を学びます。

組織や社内ルールの理解促進研修

会社独自のルールや組織について理解を深める研修です。

<会社組織への理解を深める研修の内容例>

  • 業界の歴史や将来の展望
  • 企業理念、経営理念の理解
  • 組織構造、企業活動の流れ
  • 社内のルール・就業規則・コンプライアンス
  • 市場の動向、自社製品の特徴
  • 配属予定の部署の業務内容

メンタルヘルス対策研修

メンタルヘルス対策研修では、以下のようなことについて学びます。

<メンタルヘルス対策研修の内容例>

  • メンタルヘルスケアの重要性
  • ストレスの原因と効果的な対処法
  • セルフケアの重要性、実践方法
  • メンタル不調に関する相談窓口や、外部のカウンセリングサービスなどの利用方法

アドバンテッジリスクマネジメントでは、新入・若手社員に向けた各種研修プログラムをご用意しています。

新入社員研修を成功させるポイント

新入社員研修を成功に導くためのポイントは以下の4つです。

<新入社員研修成功のポイント>

  • 研修形式を使い分ける
  • アウトプットを重視する
  • 研修後のフォロー体制を整える
  • 効果検証と改善のPDCAを回す

研修形式を使い分ける

テーマに合わせてさまざまな研修形式を使い分けたり、組み合わせたりすることがおすすめです。新入社員研修で取り入れやすい形式は以下の通りです。

・講義形式
新入社員が一同に会し、講師が前で講義を行う座学型のスタイルです。新入社員研修では、最もスタンダードな方法でもあります。大勢に対して多くの情報を伝えられますが、参加者は受動的になりがちです。理解度にばらつきが生じることもあります。

・グループワーク
少人数のグループに分けて、課題に取り組んでもらう形式です。新入社員間でコミュニケーションを図ることでチームワークが生まれやすいほか、問題解決能力の強化にもつながります。

・社内インターン
実際に社内の業務を体験し、自分が働くイメージを掴みます。例えば営業職の商談に同席する、事務職・企画職の業務を体験するなどが挙げられます。

・ケーススタディ
実際の事例などを参考に、「この時どうすべきだったのか」「自分ならどうするか」を、学んだ知識を活かして考え、問題解決や意思決定につなげます。現場での応用力を身につけることができる研修です。

・プレゼンテーション
自社の事業領域や抱える課題に関するテーマで企画立案・プレゼンテーションを行ってもらう研修です。自社や業界についてのリサーチをする実施の過程で、知識の定着が見込めます。また、新入社員だけでは難しい内容については先輩社員に協力を仰ぐことで、社内での連携の仕方を学び、関係性の構築につなげます。

・レクリエーション
簡単なゲームをして参加者同士が活発にコミュニケーションをとれる環境をつくり、交流を深めます。

アウトプットの機会を設け学びを定着させる

研修で得た学びを実務に活かしていくためには、アウトプットを重視した研修を実施することが大切です。先に紹介したようなグループワークやロールプレイングを行うほか、研修後に振り返りの時間を設ける、レポート提出や理解度テストの実施なども有効です。

アウトプットの機会があることで、新入社員は受け身的に情報をインプットしていくだけではなく、良い緊張感をもって積極的に研修に参加できます。

研修後のフォロー体制を整える

新入社員研修を経て現場に配属され、しばらく経験を重ねると、入社直後とは異なる問題や悩みが生じることも少なくありません。入社3ヵ月後、半年後、1年後などをひとつの区切りとして、社会人としての自らの姿勢を振り返るほか、新入社員研修で学んだことを実践できているかなどをフォローアップ研修で確認し、不安や悩みを解決したうえで、さらなる成長を目指します。

効果測定と改善のPDCAを回す

研修の効果測定と改善のプロセスを重ね、ブラッシュアップしていくことも大切です。しかし、「学習内容を実務や行動に移すこと」が目的である新入社員研修は、定性的な要素が多く、効果測定が難しい面もあります。

研修や教育の効果を 「反応」「学習」「行動」「結果」の4つの段階で評価する「カークパトリックの4段階評価モデル」を活用するのも有効です。研修の実施直後のタイミングで参加者にアンケートをとる、一定期間後に配属先の先輩社員にヒアリングをするなど、振り返りと検証を行い、研修を”やりっぱなし”で終えてしまわないよう注意しましょう。

研修効果を高めるポイントについては、下記の記事で詳しく紹介しています。

新入社員研修を社内実施と外部委託どちらがおすすめ?

新入社員研修を内製する場合、時期的に翌年の新卒採用活動と重なることもあり、人事業務のなかでも特に負担が大きいことが想定されます。研修内容の設計や準備はもちろん、研修に登壇してもらう講師役社員の調整やすり合わせなどにも時間がかかります。講師役の社員もまた、通常の業務にプラスして事前準備を行い、当日は時間拘束もあり、負担は決して少なくありません。内製は、自社の社風や方針を伝えることには長けていますが、担当社員の力量によって講義の質や習熟度に差が出ることも考えられるでしょう。

こうした理由から、新入社員研修を外部に委託する企業も増加しています。特定の研修において外部講師を招聘することはもちろん、研修の設計から実施、フォローアップまで一貫して委託できる場合もあります。研修のプロが担当するため、講義の質が一定に保たれる点もメリットです。社内で実施するよりもコストは高くなる傾向にありますが、助成金が出るものもあります。

ビジネススキルやマナー、コミュニケーションスキル、メンタルヘルスケアなど、外部に任せられる内容の研修は委託し、自社で行うべき内容は内製で実施するなど、上手く使い分けるようにしましょう。

適切に学びを設計し新入社員を育成

新入社員研修は、新卒社員に社会人としての自覚・意識を高めてもらうことのほか、ビジネスの基本となる知識やスキルの習得、会社や事業への理解促進など、さまざまな目的を持って行われます。新卒社員がスムーズに部署やチームに溶け込み、周囲とコミュニケーションをとりながら、組織の一員として与えられた役割を果たしていくためにも、目標と求めるレベルを明確にしたうえで研修内容を設計していくことが大切です。人事担当者の負担軽減や研修の質向上のためには、外部に研修を委託することもひとつの方法です。自社で働くにあたって必要な学びは何かを見極め、新入社員の早期戦力化をサポートしましょう。

(Visited 35 times, 1 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

この著者の記事一覧

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>