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組織課題の見つけ方とは?具体例から解決手順、役立つフレームワークを解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

企業運営のあらゆるシーンで直面する「組織課題」。企業の持続的な成長・発展を目指すには、組織が抱える課題を適切に把握し、改善に向けた取り組みを進めていく必要があります。しかし、組織課題の中には、「表面化していない」「言語化できない」あるいは「将来起こり得る」潜在的な要素もあり、これらをすくい上げていかなければ、本質的な解決にはつながりません。今回は、ありがちな組織課題の例の他、顕在的、潜在的な組織課題を見つける方法、解決に役立つフレームワークなどについて詳しく解説します。

組織課題のタイプ「顕在課題」と「潜在課題」

組織課題には「顕在課題」と「潜在課題」が存在します。はじめに、それぞれの特徴と問題点について解説していきます。

組織課題とは?

「組織課題」とは、組織が目指すべき「理想」と「現実」にギャップがあり、「理想の状態」の維持・実現を妨げるあらゆる要因のことを指します。時代や市場ニーズの変化などにより、業界の状況、トレンド、競合は常に変動しています。企業が抱える組織課題も、その時々によって変化するものです。組織課題の改善・解決は、企業のあるべき姿に近づくために不可欠な取り組みといえます。

「顕在課題」と「潜在課題」

組織課題は、大きく「顕在課題」と「潜在課題」に分けられます。顕在課題とは、従業員や組織が「課題」と認識しているもので、定例の会議などで挙げられるような、既に言語化されている課題です。ただし、すべての従業員が把握している場合もあれば、一部の従業員のみに認識されているものもあります。

一方、潜在課題とは、組織が課題としてまだ認識できていない、表面化していないものです。また、何らかの問題があることには気づいていても言語化しづらい課題、あるいは将来的に起こり得る課題なども含まれます。潜在課題は、その性質上能動的に課題を見つけようと行動しなければ、発見が難しいという特徴があります。顕在課題に比べて、解決が難しいといえるでしょう。

よくある組織課題の具体例

次に、よくある組織課題の一例をご紹介します。ただし、これらの課題は独立して生じるものではなく、複数の要因が絡み合って起きています。

【業務の遂行に関する課題】

  • 残業が多い
  • 生産性が上がらない
  • イノベーションが起こらない
  • 従業員のモチベーションが下がっている
  • 業務に無理・無駄・ムラがある

【コミュニケーションに関する課題】

  • 報告・連絡・相談がしづらい
  • ミスが報告されない
  • 同じミスが繰り返される
  • 積極的に提案や意見を出す従業員がいない
  • 人材が定着しない
  • ハラスメントが起きている

【組織の制度・仕組みの課題】

  • 研修や教育の効果が出ていない
  • 企業の将来を担えるリーダーが育たない
  • 責任の所在がわからない
  • 制度が現場の実情に即しておらず使えない
  • 人事評価制度が適切に運用できていない

【組織風土に関する課題】

  • 企業理念やビジョンの浸透が不十分である
  • ノウハウの共有がなされていない
  • 従業員が受動的で”指示待ち”の状態になっている
  • 挑戦できる環境がない
  • 部署間の連携が取れず諦め感がある

組織課題の見つけ方

組織課題は、そもそも経営層やマネジメント層に認識されていないものも少なくありません。また顕在的な課題の中には個々で認識が違う場合もあるため、課題を洗い出して共有し、認識をすり合わせておくことが必要です。大小さまざまな組織課題を把握するためには、幅広く従業員の意見をピックアップすることが求められます。ここでは、組織課題の見つけ方として4つの方法をご紹介します。

社内アンケートを実施する

従業員に組織内アンケートを実施し、現場で働く人から意見や要望を集めましょう。今、社内でどんな問題が起きているのかをほぼリアルタイムで把握することができる他、経営層やマネジメント層が把握できていなかった思いがけない課題が浮かび上がってくることもあります。

組織内アンケートは、匿名で行うことによって会議などの話し合いの場では伝えにくいような意見なども集めやすくなります。内容をよく分析した上で、適切に対応していくことが必要です。

1on1を実施する

上司と部下が1対1で面談する1on1の場で、個々が課題と感じていることを聞き取る方法も有効です。課題そのものは共通して認識していても、従業員の職位や立場によっては異なる見方で捉えている場合もあります。

仕事に取り組む中で悩んでいることや不満に感じていること、組織への要望などを、相手自身の言葉で引き出すことができれば、課題に対する解像度が上がり、改善・解決がスムーズになる可能性もあるでしょう。1on1における発言で、その従業員が不利になってしまうことがないよう、人事評価に影響がないことを伝え、匿名性を確保することが求められます。

1on1の実施手順やポイントについては、以下の記事で詳しく解説しています。

社内会議・意見交換を行う

社内会議など、従業員同士が意見交換できる場を設けることも一つの方法です。例えば、月次の会議の場で各部署・部門の課題を共有し、ブレインストーミングの形で自由に意見交換を行うことなどが考えられます。潜在的な課題を顕在化させる意味でも有効です。

自分の考えや気持ちを否定されず、安心して発言できる「心理的安全性」の高い環境の醸成は、生産性向上やコミュニケーションの活発化など、組織課題として挙げられがちな事柄の改善にもつながります。

職場の「心理的安全性」については、以下の記事でも詳しく解説しています。

分析ツールを活用する

潜在課題を見つけるには、ITツールを導入することも効果的です。経験や感覚に頼らずとも、客観的かつ定量的なデータから根拠を持って課題をピックアップできるため、改善・解決に向けた取り組みをスピーディーかつ具体的に進めることができます。データを活用することで、取り組みの効果の検証や目標の設定もスムーズになるでしょう。

組織課題の解決手順とポイント

続いては、組織課題を解決する手順とポイントについて解説します。限られた時間・コストの中で、課題解決によって大きな効果を得るためには、十分な分析と検討が必要です。

手順①課題を把握し、社内で共有する

まずは、前項で紹介したような方法を用いて組織課題の洗い出しと把握を行いましょう。組織課題の改善・解決には、部署や立場を超え、従業員が一丸となって取り組む必要があります。ただし、中には対人関係に関するものなど少しセンシティブな課題も存在します。組織内で展開する上では、その課題の属性に応じて適切な順序をたどり、かつ、慎重に進めるべき課題の見極めも大切です。

手順②取り組むべき課題に優先順位をつける

次に、洗い出した組織課題に優先順位をつけます。一気に取り組みを進めたいところですが、並行して進めていくと効率的な解決につながらないこともあります。最も事業に影響している課題は何か、組織の成長の妨げとなっている課題は何かなど、緊急度や重要度を考慮して、取り組むべき課題を絞り込んでいきましょう。優先すべき課題に集中することで、大きな改善効果を得られる可能性があります。

手順③原因を分析し、解決策を検討する

着手すべき課題が決まったら、その原因や理由を分析します。表面的に原因を把握しているだけでは、一時的な改善効果は得られても、本質的な解決にはつながりません。解決策を検討するプロセスでは、その案によって「原因を取り除くことができるか」を注意深く確認した上で、具体的な行動計画を立てることが大切です。

手順④施策の実行・検証・振り返りを行う

手順③で策定した解決策を実行します。効果を把握しやすいよう、施策は一つずつ試しましょう。ただし、行動をしてもすぐに結果が表れないことや、一度で解決しないケースも多いため、根気強く取り組みを進めることが大切です。その後、サーベイや定性的なアンケートを取り、効果の検証と振り返りを行います。どのような変化が見られたか、他の問題は生じていないかなどを確認します。

施策効果の測定においては、解決策の実施によって改善が見込めるテーマや指標が存在するので、それらを見定め、特定の改善指標における定量的・定性的な評価を集める手段を持っておきましょう。

【ポイント】小さな目標を設定する

組織課題によっては、最終的な解決までに相当の時間を要するケースもあります。なかなか成果が見られない、効果を感じられない状態が続くと、取り組みに対するモチベーションが下がってしまうことが考えられます。このような場合は、最終的なゴールまでに複数の目標を設定し、小さな達成感や自信を得られるよう工夫しましょう。ポジティブな状態を維持しながら、取り組みを続けていくことが大切です。

【ポイント】従業員を巻き込む

経営層、マネジメント層だけでなく、プレイヤーである従業員とも課題を共有しましょう。対策意義についても説明し、ときに対話を重ねながら、従業員自身に「組織課題が取り組むことがプラスになるんだ」という理解を得ていくことが重要です。理解してもらうことで従業員の主体的な行動につながり、組織全体を巻き込みながら課題解決の推進を目指すことができるでしょう。また、組織課題が解決していく実感に伴ってポジティブな感情が生まれるようになると、組織への貢献意欲(エンプロイーエンゲージメント)の高まりにも寄与します。

組織課題の解決に役立つフレームワーク

最後に、組織課題の解決に役立つフレームワークを4つご紹介します。

7S

7Sは、「戦略(Strategy)」「構造(Structure)」「仕組み(System)」「人材(Staff)」「スキル(Skill)」「社風(Style)」「価値観(Shared value)」の7つの頭文字を取ったものです。組織の現状を客観的に分析、把握し、課題や改善点を洗い出す際に有用なフレームワークです。組織のマネジメントにおいて重要な7つの要素を、ハード面(戦略・構造・仕組み)とソフト面(人材、スキル、社風、価値観)に分け、それぞれをバランスよく改善していくことで、企業の成長につながるとされます。

SWOT分析

SWOT(スウォット)分析とは、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の頭文字を取ったもので、組織の強みと弱みを、企業を取り巻く外部環境と内部環境に分けて分析するフレームワークです。それぞれの要因を分析し、評価することで、具体的な戦略や行動計画の策定を行う際に役立ちます。

KPI

KPIは「重要業績評価指標(Key Performance Indicator)」を指します。最終目標である「重要目標達成指標(Key Goal Indicator)」の要素を分解し、マイルストーンとして設定する中間目標です。組織課題の解決に向けた取り組みがどの程度進んでいるか、具体的な数値によって示されるため、進捗の把握に役立ちます。

MECE分析

MECE(ミーシー)分析とは、お互いに(Mutually)、重複せず(Exclusive)、全体に(Collectively)、漏れがない(Exhaustive)の頭文字を取ったもので、論理的に問題解決を図るためのフレームワークです。組織課題という複雑で大きなテーマを、細かい要素に切り分けて分解することで、漏れや重複を生じさせずに、施策の検討を進めることができます。また、分析の過程で現状を整理できるため、潜在的な課題が見つかることもあります。

組織課題を解決し、企業のあるべき姿を目指す

組織課題は、目に見えている顕在課題と、表面化していない潜在課題が存在します。特に潜在課題は、能動的な働きかけがなければ発見しにくいため、意識的に課題把握につとめる必要があるでしょう。常に変化する組織と外部環境に適応しながら企業が生き残っていくためには、その時々における組織課題に向き合い、改善・解決を図ることが求められます。企業としてのあるべき姿を見据えながら、着実に歩みを進めていきましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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