なぜ日本企業の従業員エンゲージメントは低いのか?

Facebookでシェア ツイート

2017年に公表された、米国の調査会社ギャラップ社が実施した従業員エンゲージメント調査によると、日本企業は「熱意あふれる社員」の割合がわずか6%であり、139カ国中132位と最低ランクに近い順位であることがわかりました。

本記事では、日本企業の従業員エンゲージメントが、なぜここまで低くなっているのかということについて考察していきます。

日本企業の「従業員エンゲージメント」は、世界で最低レベル

ギャラップ社の調査によると、日本企業は「熱意あふれる社員」が少ないだけではありません。「やる気のない社員」は約70%に上ります。

また、「周囲に不満をまき散らしている無気力な社員」が24%も存在するという調査結果が出ています。企業業績と因果関係のある従業員エンゲージメントの数値がここまで低いという現状は、企業経営者や人事部門の担当者にとってゆゆしき事態だと言えるでしょう。

一方で以前の日本企業は従業員のロイヤリティ(忠誠心)が高いというのが定説でした。かつて「企業戦士」として24時間戦っていた時代と、何が変わったのでしょうか。

従業員エンゲージメントの低い理由

もちろん、日本の企業でも従業員エンゲージメントが高い企業は存在します。従業員エンゲージメントが低い理由も、各企業によってさまざまです。しかし、一般には日本企業の従業員エンゲージメントが低い理由として、以下の内容が指摘されています。

・時間と賃金がリンクしている
日本の企業は、一部の管理監督者を除けば、実際には成果主義ではなく、9時から17時または18時まで会社にいることが重要視され、いなければ賃金を控除されてしまう仕組みです。働き方改革が推進されて短時間勤務が可能になっても、ただの賃金低下になってしまう可能性すらあります。成長意欲が高く、成果を上げたいと考える意識の高い従業員にとって、達成感を得にくい構造になっていると言えます。

・オーバー・コンプライアンス
近年は社内外で何か起こるたびに新しいルールが作られ、手続きが複雑になっています。不用意にルールを増やすと、監視されている、減点主義といったネガティブイメージを従業員に与える可能性があります。また、失敗を恐れずにチャレンジすることができない文化が醸成されてしまいます。

・複雑な組織形態によるストレスの多さ
日本企業の部署や役職者の多さは、ときにコミュニケーションを複雑にします。関係者が増えると会議も増え、人間関係もより複雑になります。社外に向けてのエネルギーと同等かそれ以上のエネルギーを社内調整に費やさなければならない組織では、従業員はあまり意味を感じない仕事に時間を奪われてしまいます。

・職能型の処遇が、それぞれの強みや使命をあいまいにする
組織に多少の不満があっても、仕事で自分の強みが活かされていると、エンゲージメントはそれほど低くならないものです。しかし、日本の職能型の処遇システムでは、専門職よりゼネラリストであることが重視されがちです。多くの企業では「ジョブ・ディスクリプション」という概念すらありません。もちろん、職能型のシステムにもメリットはありますが、個人のスキル、個人の成長を志向する従業員にとっては、成長できない組織と映ってしまう可能性があります。

・人事評価制度の問題
バブル崩壊以降、成果主義人事にシフトし、MBO(目標管理制度)を導入した日本企業は約8割にも上ります。MBOの問題については多くの識者がこれまでも指摘していますが、セクショナリズムの発生、相対評価によるチームワークの低下などの問題点があります。近年は日本でもノーレイティングを検討する企業が出ています。また、社内の軋轢を防ぐために一律同じ給与に設定するというベンチャー企業も登場しています。人事制度については、米国で実績があった制度を導入するというスタンスではなく、自社の規模や社風、自社のビジョンに沿った制度を検討していく姿勢が大切だと言えます。

・同調圧力の強い組織風土
「空気を読む」という言葉があるように、同調圧力が強い職場風土の日本企業は未だに少なくありません。そのような組織では、上司や同僚が仕事をしている中では帰りづらい、有給が取りにくい、目立つとバッシングされるなど、本当にしたいことや言いたいことなどを表に出すと浮いてしまう可能性があると感じて、従業員に不要な負担がかかります。ビジネスにおいては事実にもとづく合理的な判断が重要です。ロジカルな思考を持つ問題意識の高い社員にとって、同調圧力で物事が決まるような組織はストレスフルだと言えるでしょう。

まとめ

近年は企業と社員の価値観が噛み合っていない時代だと言えます。従業員エンゲージメントを高めるには、上司のリーダーシップや職場環境の改善、仕事の振り出し方や福利厚生制度の改定といったアプローチも必要になるでしょう。

まずは社員が誇りを持てる組織になるよう、小さなことでもできるところから改善していくことが、結果的に従業員エンゲージメントの向上につながると言えるでしょう。

いま人事領域で話題のエンゲージメントを高める研修からハラスメント防止研修、若手向けのゲーム型研修、非集合型研修など課題や階層別に最適なプログラムをご提供。

(Visited 3,870 times, 1 visits today)

【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

Facebookでシェア ツイート

関連記事RELATED POSTSすべて見る>>