人材育成と組織の効率性を加速させる「スキルマップ」とは?

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企業間の競争がますます厳しくなっている時代は、いかに一人ひとりの従業員の能力を最大化させるかが重要な課題になってきます。昨今は、従業員のスキルや経歴を可視化して人材育成や配置に活かすタレントマネジメントを実施する企業も増えています。

このタレントマネジメントを行うために有効なものの一つに「スキルマップ」があります。

スキルマップとは

スキルマップとは、従業員一人ひとりが業務で必要とされるスキルをどのくらい持っているかを一覧にした表のことです。

特にフォーマットに決まりはありませんが、例えば表計算ソフトで横軸に従業員の名前、縦軸に各部門に必要なスキルを一覧表示し、〇×やレベル1、レベル2などと記入して作成します。スキルマップの作成には以下のメリットがあります。

・従業員全員のスキルを把握することで、組織全体のスキルを可視化する。
・組織内で特に不足しているスキルに対して効率的に教育を行うことが可能になる。
・従業員が自分のスキルを客観的に把握できるので評価に納得し、モチベーションが向上する。

以下、具体的に説明していきます。

人材育成に効果的なスキルマップ

研修や教育などの人材育成には多くの企業が力を入れていますが、どの程度の効果があったかを正確に把握しているという企業は少ないのではないでしょうか。

スキルマップを作成すると、業務上必要があるスキルが全体でどのくらい不足しているかが明確になるため、効率的な教育や研修を行うことができます。また、教育研修によって従業員がどのくらい成長したかなど効果測定が可能になります。

スキルマップを参照しながら、より効果的な人材育成計画へ改善していくことができるのです。なにより、従業員自身がスキルマップで自分の伸ばすべきスキルが理解できるため、業務外の研修であっても受け身にならず前向きに取り組むことが期待できます。

スキルマップによって自身の成長が可視化されるため、各種教育制度の意義や目的を理解するなど、当事者意識も醸成されやすくなるでしょう。

公平かつ正確なスキル評価ができる

スキルマップは評価の段階や基準があらかじめ決められているため、管理職がそれぞれの基準で部下のスキルを評価するよりも公平で正確な評価が可能です。人事評価の際に活用することで評価の納得度を高めることができます。

2018年にアデコ・ジャパンが20代~60代に対して行った調査によると、会社の人事評価制度に「不満足」と答えた人は約6割で、不満足と答えた理由のトップは「評価規準が不明確」となっています。

一方、管理する立場の上司の約8割が自分の評価は適切と自負しているなど、上司・部下間のギャップの大きさがうかがえます。スキルマップは職場全員のスキルが一覧表示されているため、従業員が自分のスキルのレベルを客観的に理解でき、このようなギャップを解消する役割も果たしてくれます。

スキルマップに組み込むべき「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」

スキルマップは必要なスキルが言語化しやすい製造業やIT業界などの技術系職種に適しているイメージがありますが、実はバックオフィス、営業職、マネジメント職など、職種を問わず活用できます。

ハードスキル、ソフトスキルといった区分もありますが、今回は米国の経営学者ロバート・L・カッツ氏が提唱しているテクニカルスキル、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルを見ていきます。

「スキル」と聞いてまず思い浮かべるのは技術的なものではないでしょうか。IT関連の職種ならプログラミングやシステム開発、人事総務部であれば給与計算や社会保険手続きなどの労務管理、各職種の専門スキルや共通のPCスキルなどがテクニカルスキルに該当します。

2つ目のヒューマンスキルは、コミュニケーション能力、ヒアリング力、リーダーシップ(統率力、調整力)、コーチングスキルなどを指します。

こうしたスキルを可視化することはテクニカルスキルに比べると難しいものの、360度評価やエンゲージメントサーベイなどを利用することで客観性を担保することができます。

またヒューマンスキルを開発することは非常に難しいですが、たとえば“こころの知能指数”と呼ばれるEQを用いた検査では、単に数値の高低で優劣が決まるのではなく、現状に対してどのようなアクションを取っていくことが望ましいのかを自ら考えて設定するため、前向きに能力開発に取り組むことができます。

最後のコンセプチュアルスキルは日本ではあまり使われていない言葉ですが、わかりやすくいうと物事を概念化する能力、本質を見抜く能力であり、具体的には以下のような要素などで構成されています。

・ロジカルシンキング
・水平思考(固定概念にとらわれない思考)
・分析的思考
・多面的視野
・応用力
・チャレンジ精神
・先見性

ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルは、人をまとめたり、ビジネスの現場で複雑なトラブルを解決したり、新規事業を生み出したりする力につながります。管理職や経営層に特に必要なスキルですが、これからの時代はすべての従業員が持っていることが理想的だと言えるでしょう。

まとめ

スキルマップを活用すれば、個人や組織に不足しているスキルを客観的に把握できます。スキルの正確な評価によって、個人の成長意欲やモチベーションを高めることにもつながります。

スキルマップはシンプルでありながら、人材育成や組織改善に非常に役立つツールなのです。また、スキルマップにヒューマンスキルやコンセプチュアルスキルを組み込むことによって、人材育成のみならず人材開発の領域にまで到達することが期待できるでしょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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