用語

心理的安全性

心理的安全性とは

心理的安全性(psychological safety)にはいくつかの定義がありますが、最も有名なものは、ハーバード大学のエイミー・エドモンソンによる以下の説明です1)。

「人間関係においてリスクのある行動をとっても安全なチームだという信念が共有されていること」

「人間関係においてリスクのある行動」には、思ったことを言い合う、懸念を口にする、高度なフィードバックを依頼するといったものがあります。
また、「安全なチームだという信念」を形成するためには、メンバーの発言に対する反応として、恥ずかしい思いをさせず、拒否せず、罰を与えることをしないことが重要になります。

メンバーが遠慮なく意見を出せると誰もが感じられるようなチームの風土づくりが心理的安全性には必要です。
このような心理的安全性のあるチームは、エンゲージメントやパフォーマンスなどが高くなることが想定され、多くの研究をまとめた分析においても一定の相関が示されています2)

心理的安全性が注目された理由

米Google社で2012年に発足した「プロジェクトアリストテレス」が、4年もの歳月をかけ従業員や組織に関するデータを詳細に分析し、導き出した組織の生産性に関わる5因子(下記参照)のうち、最も重要な要素としてあげられたのが心理的安全性です。

1. 心理的安全性:「自分の弱みと周囲に思われそうなことでも、周囲に表現できるか?」
2. 相互信頼:「チームメンバーが、時間内に質の高い仕事をしてくれると感じられるか?」
3.  構造と明確さ:「仕事で求められていることと、それを達成するためのプロセスは明確か?」
4.  仕事の意味:「今の仕事が、自分にとって意味があると感じられているか?」
5. インパクト:「今の仕事が、意義があり良い変化に繋がる仕事であると感じられているか?」

参考 : https://rework.withgoogle.com/jp/guides/understanding-team-effectiveness/steps/identify-dynamics-of-effective-teams/

もちろん、心理的安全性だけを高めても組織の生産性は上がりにくいでしょう。チーム内の安全性を高めながらも、業務遂行がしやすい業務プロセスを再設計する、顧客へ価値提供ができているか精査する等、組織開発には多角的なアプローチが必要であることは、念頭に置きたいところです。

心理的安全性の維持・向上

心理的安全性の高い組織の作り方、また維持・向上のためには、下記の点などを押さえた取り組みが重要です。

・組織長が、職場の心理的安全性を向上させようと努めること(管理職の行動変容)
・組織内のメンバーで、相互理解が促進されるような取り組みをすること(メンバーの相互理解)
・組織内で、共通課題を議論し、改善していく仕組みを導入すること(議論・改善サイクルの駆動)
・会社・人事・外部機関等、職場外 からの支援体制を用意すること(サポート体制の構築)

特に重要な点は「管理職の行動変容」です。例えば、会議中にある若手社員が、自職場を良くしたい思いで、本音の課題提起をしたとしましょう。

それに対し、管理職がしっかり向き合う、もしくは検討外れな意見でも発言自体を承認するなどの対話があれば、「上司は、部下の意見を取り合ってくれる」「自分も今度、発言しようかな」という認識が形成され、自由な発言がしやすくなります。

もちろん管理職が全てではなく、メンバー間でも互いの性格・仕事の仕方・仕事で大切にしていることなどが共有されていなければ、相手の意見の真意がわからずに、上手く対話ができません。互いの特徴が理解されていれば、感情的な対立に繋がりにくく、建設的な議論ができます。

この2点を補完する意味でも、組織の共通課題を議論し 業務に反映するPDCAサイクルを回すことが重要です。

文献
1) Edmondson, A. (1999). Psychological safety and learning behavior in work teams. Administrative science quarterly, 44(2), 350-383.
2) Frazier, M. L., Fainshmidt, S., Klinger, R. L., Pezeshkan, A., & Vracheva, V. (2017). Psychological safety: A meta‐analytic review and extension. Personnel Psychology, 70(1), 113-165.

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参考記事