全国に拠点を持ち、多数の従業員を抱える日産自動車では、私傷病休職者情報の一元化・平準化を目指している。2023年から休職者管理・支援システムのADVANTAGE HARMONY(「アドバンテッジ ハーモニー」以降、HARMONY)を導入。これまで拠点ごとの基準で管理されてきた情報を全社的に統括、把握すべく、本社から段階的に導入を進めている。
「本社から各拠点へと一方的に指示するかたちではなく、一緒にシステム化を進めていくことが、普及や定着につながる」と語る同社担当者に、導入の経緯や活用状況、今後の展望を伺った。

目次
休職者情報の一元化にデジタル化は不可欠
Q.導入前、休職者管理にどんな課題を感じていましたか?
当社は全国に多くの工場、事業所を持っておりますが、これまでは私傷病における休職者管理は各拠点に一任していたため、全社的に管理を標準化していくことは大きな課題の一つだと感じていました。
但し、工場の製造現場と工場以外のスタッフ部署では、しやすい管理が異なるため、すべての管理を一律標準化に向かうことが従業員や管理者側にとって使いやすいとは限らない点が悩ましいところです。
もう一つの課題は、人事担当者や上司が替わるたびに過去の経緯が断絶してしまう点です。
復職の進捗、対応履歴を把握しようにも、紙ベースでの申請・管理を行っていたため、過去の書類や各担当者のメールをさかのぼって確認するしかありません。休職者とのやりとりや必要書類を、病院のカルテのようにファイリングするようにしましたが、管理スペースの限界や検索性の低さといった課題は残りました。
また、休職者にとっては、すでに会社に共有した事項が伝わっていないように感じてしまいます。
様々な職場の状況を踏まえた上で、企業として休職者の実態を把握するためにも、休職者の精神的な負担や復職までのサポートのためにも、情報の一元化は欠かせないと感じていました。

自社にマッチした機能で内製ツールから脱却
Q.どのような経緯でHARMONY導入に至りましたか?
全社的に私傷病の休職者管理の一元化が進むなか、やはり従来の方法では事務負担の観点などから課題が残っており、適切な外部ツールを導入しようとの意見が強くなりました。そこで候補を探しているなかで、HARMONYを知りました。
HARMONY導入の決め手は「自社規定に合わせられる柔軟性」です。書類や対応記録を電子化できたり、人事や上司、産業医と共有できたりする点にも期待していましたが、当社の特徴に合わせて作業設定を行える等、柔軟に利用できる点は大きなメリットでした。
また、HARMONYではメッセージ機能により、休職者と組織との円滑なコミュニケーションが可能な点も評価ポイントでした。とくに私傷病での休職者にとっては、休職期間中にご自身が今どういう状況で、今後どういう手続きが必要なのか、わかりづらいこと自体も不安になってしまいます。HARMONYは対応履歴も残り、かつタスクも把握しやすい、そしてスムーズに会社とやり取りできるという点は大きな安心感につながると考えた点も、導入に至った大きな理由でした。休職者によっては早く職場復帰したいと考える人もいるなかで、「どうして教えてくれなかったのか」と不満を抱くのではなく、「復帰に向けてこういう手続きが必要なんだな」とご自身で情報を整理しやすいことは、安心して復帰するための準備として非常に重要だと思います。

Q.直近の利用状況を教えてください。
2023年11月から導入し、約2年利用を続けています。現在は私傷病休職者は全てHARMONY内での一元管理を実現しておりますが、上司のシステムログインや、休業者向けのマイページ発行については工場以外を統括する本社から利用を進めています。主に利用しているのが診断書の期日管理です。次の取り付け日に改めて作業通知を受け取れるため、対応漏れを防ぐのに役立っています。
工場への展開は、まずは各拠点の人事担当者が一部の機能を利用するところまで進めています。休職者からの書類は紙で受け取り、拠点の担当者がHARMONY上にデータを入力するようなかたちです。工場勤務の休職者本人、上司の利用は段階的に広げていく予定です。
工数削減、情報共有は休職者の不安解消にもつながる
Q.HARMONYの導入によって変化したことは何ですか?
一番変化があったのは、手続きのスピードです。従来は、上司に書類を送付し、上司から本人へ渡してもらう。そして記入してもらった書類を再び上司経由で返送してもらう、という申請フローが必要でした。そうなると、上司の手が空くまで手続きが止まり、「待ち」が発生してしまう。その間に期限が迫ってしまったり、休職者が不安を感じたりといった状況もありました。
セキュリティの面では、データファイルの手続書類をeメールに添付することに制約があったために、郵送回帰してしまった書類についても、HARMONYなら休職者本人に直接必要書類を送付できます。往復の時間が削減された分、上司の負担も減り、手続きもスピーディーに終えられるようになりました。
Q.休職者本人にはどのようなメリットがありますか?
先ほどの話と少し重複しますが、休業中は社会や会社とのつながりが薄くなってしまいがちです。休養に専念したいと考えていても、「何かしなくては」と不安になってしまう人も少なくありません。そのため、「自分は今どの段階で、次に何をすればよいのか」が見えているだけでも、安心感が得られます。
HARMONYでは、必要書類などを格納しておくライブラリ機能があります。そこで、休業から復職に必要な手続きなどをまとめたハンドブックを格納し、いつでも休職者自身で読み返せるようにしています。
メッセージ機能で不明点や疑問点を尋ねられる点もメリットの一つです。タイムリーにやりとりができるため不安を抱えている期間を短くできますし、HARMONYを通じて各種情報の取得がいつでもできることから、会社とのつながりを維持できる安心感も得られると考えています。
また、HARMONYは2025年4月から英語表示に切り替えられるようになりました。当社は日本語を母国語としない従業員が一定数おり、社内文書は日英併記が当たり前となっています。以前は「英語表示はないのですか?」という問い合わせについて個別に対応していたところ、英語対応が可能になったことで、より多くの従業員にとって使いやすくなったと思います。

Q.人事担当者にとってメリットになった部分は何でしょうか?
スケジュールやタスクの自動立ち上げ機能、通知機能により、期日設定や書類受け渡しの抜け漏れを防げるようになった点は、人事担当者にとってメリットだと感じています。
日付も書類もコミュニケーションの履歴も残るので、担当者に変更があっても「どこに何があるか」で迷いません。属人的な管理ではなくHARMONYを通じて関係者間が連携することで、書類やメールの紛失といった情報の断絶が構造的に起こりにくくなったと思います。
以前は、リマインドや連絡が滞り、休職者本人から「書類の手続きはどうなっていますか」「期日は過ぎていませんか」といった連絡もあったのですが、導入してからはトラブルにつながるような問い合わせはきていません。
全員が利用できるように納得感のある定着を目指す
Q.工場への展開はどのように進めていますか?
まずは工場の人事担当レベルでHARMONYに情報を集約し、その運用の足腰を固めています。スムーズに利用が進みそうな部署から段階的に導入することを考えています。
利用の義務化はしていないので機能を使っている方と使っていない方が生まれてしまうのは事実ですが、休職者本人の環境に合わせてHARMONY利用を選択してもらっています。
段階的に導入を進めていくことで、安定した利用促進につながると考えています。

Q.今後の活用や展望についてお聞かせ下さい。
休職者にとっては、健康状態が安定してくるとともに、休職期間中に会社とのつながりを求める方もいると思います。そこでHARMONYを通じて直接人事担当者とやり取りできることは、コミュニケーションの円滑化に大いに役立つと考えております。今後も会社と休職者の関係維持や構築の軸となるツールとして活用していくつもりです。
また、これまで会社全体の休職者率の計算は各種データから抽出して入力するアナログな作業が必要でしたが、今後はHARMONYを通じて情報管理を一元化することで、より効率的に組織の状態を把握してくことを期待しています。HARMONYで取得した定量的なデータから、会社の状態を効率的に見える化できることは、その後の施策にスムーズにつなげていくうえで大きな役割を果たすと思います。
※文中の内容および記載の法人名・組織名・所属・肩書きは、すべて取材時点(2025 年 11月)での情報です。

