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復職支援(リワーク)とは?職場復帰支援との違いや取り組み内容を解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

休職期間を経た従業員のスムーズな復帰と、その後の働き方を支援していくことは、休職者本人にとっても企業にも大きなメリットがあります。しかし、中には復帰後に再休職してしまうケースもあり、慎重かつ適切な対応が必要です。今回は、復職支援(リワーク)の基本から具体的な取り組み内容、復職支援の流れなどを詳しく解説します。

ADVANTAGE HARMONY(アドバンテッジ ハーモニー)は、休職中の従業員の職場復帰を支援するオンラインプログラムを提供。お休みの状況に合わせたコンテンツとワークやアンケートで、チームと従業員をサポートします。

復職支援とは

女性と会話をするカウンセラー

はじめに、復職支援の概要と種類をチェックしていきましょう。

復職支援とは

復職支援とは、病気やケガ、メンタルヘルス不調などで休職した従業員が、職場に戻り、再び働くことを支援するプログラムのことです。リワークは、「return to work」を略した言葉です。

精神障害による労災支給決定件数が増加傾向にある中、メンタル不調による休職者の約半数が5年以内に再休職するという研究結果もあります。これは、回復過程に個人差があること、経済的理由や孤立感から「早く復帰しなければ」と復帰を早めてしまうこと、復帰後のストレス環境が再発の引き金になることなどが理由です。そのため、単に職場へ戻すだけでなく、「復職後も健康を維持しながら働ける状態」を目指した計画的な支援の重要性が高まっています。

参考:平成28年度「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」
参考:厚生労働省「令和6年度「過労死の労災補償状況」を公表します」

企業における復職/復職支援の課題

厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス不調による休職・退職者がいる企業が約12.8%存在する一方で、復職支援プログラムを実施している企業はわずか23.1%にとどまり、体制整備が遅れています。

最大の課題は、症状や回復が一人ひとり異なるため、専門性の高い個別対応が求められる点です。しかし、多くの企業でノウハウが不足しているため、対応は現場任せになりがちです。不適切な支援は再発・再休職を招きかねません。休職者の約5割が5年以内に再発するというデータもあり、企業・従業員双方に大きな損失を与えます。

参考:厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)」
参考:平成28年度「主治医と産業医の連携に関する有効な手法の提案に関する研究」

復職支援の種類

復職支援は、大きく「企業が主体となって実施するもの」と「外部機関を活用したもの」の2つに分けられます。

1. 企業主体による支援(職場リワーク)
従業員が所属する企業が主体となって実施する、休職から復職までの一連の取り組みです。

<目的>
 職場環境や業務ペースに慣れること、安定した就業が可能かを見極めること。

<主な具体的な取り組み>

  • 試し出勤制度:本格的な職場復帰の前に、出勤時間や業務量を段階的に増やしていく制度。
  • 模擬出勤:試し出勤の前段階として、図書館で過ごすなど、一定時間活動する練習。
  • 通勤訓練:自宅から職場までの通勤を練習する訓練。
  • 復職支援カウンセリング:専門のカウンセラーによるサポート。

★注意点
 職場リワークの実施は法的義務ではなく、費用は企業負担となる。

大手企業を中心にサポート体制がつくられつつありますが、制度のある企業は一部に限られており、すべての企業が実施できているわけではありません。

2. 外部機関による復職支援(外部リワーク)
メンタルクリニックや専門の支援施設などが提供するリワークプログラムの活用を指します。詳細については、後続の解説を参照してください。

復職支援と職場復帰支援/復職制度との違い

タブレットやメモ帳を並べ、空間にあるチョック項目に書こうとする人

「復職支援」と「職場復帰支援」は、実質的に同じ意味で使われます。どちらも、メンタルヘルス不調などで休職した従業員が、安全かつスムーズに職場に戻り、安定して働き続けられるように企業や外部機関が行う一連のサポートプロセス全体を指す言葉です。

「職場復帰支援」は、厚生労働省のガイドラインなど公的文書で用いられることが多く、「職場復帰支援プログラム」「職場復帰支援プラン」などがあります。一方、「復職支援」は、医療機関や民間のリワーク施設など専門的な現場で使われ、リハビリテーション的な要素も含めた取り組みも含む、より広範な概念といえるでしょう。

また「復職制度」は、育児や介護、病気、配偶者の転勤などで退職した人を、本人の希望により再雇用することです。復職支援とは異なる制度であるため注意しましょう。

復職支援が重要な理由

コンクリート調の背景にスタートからゴールまでの階段を登る人をサポートする手元

労働契約法において、企業は従業員の心身の健康に配慮する「安全配慮義務」を負っています。個々の回復状況に合わせたプランを設け、復職支援に真摯に取り組むことは、この義務を果たすうえでも不可欠です。続いては、企業が復職支援を行う重要性をご紹介します。

従業員が安心して療養に専念できるから

復職支援を行えば、休職者は「今、自分はどうすればよいのか」「いつ、どのように復帰できるのか」を明確に理解できます。復職までのステップや判断基準が示されることで、安心して療養に専念できるのです。また、復職をゴールとするのではなく、引き続き伴走していく姿勢を示すことで復帰への不安が軽減されます。

労務トラブルの防止につながるから

復職支援の仕組みを明文化しておくと、企業と従業員の間に生じうる誤解やすれ違いを防げます。特に、復帰を判断するタイミングでは、「本人の希望も踏まえ主治医が復職可能と判断したが、企業側はまだ復帰を認めない」というケースもみられます。社内に明確なルールがない場合、これらが労務トラブルに発展する可能性もあるでしょう。また、社内の人事担当者らが対応に迷う場面でも、手順や判断基準などの仕組みが整っていることで、適切な対応が可能となります。

再休職や離職リスクを減らせるから

復職支援は、単に「職場に戻ってもらう」ものではなく、「再び健康に働き続けてもらう」ための取り組みです。復職後のフォロー体制が不十分な場合、再休職に至るおそれもあります。

企業が休職中の従業員の健康状態を把握し、社内の状況や実情に応じた切れ目ないサポートを提供することで、再休職やそれに伴う離職のリスクを下げられます。「従業員を大切にする企業」というイメージは、企業価値や競争力の面でもプラスにはたらくでしょう。

復職支援として企業が取り組むべきこと

スーツの人や心の病院のようなマークが描かれたサイコロを並べる手元

企業が仕組みを整えて復職支援を行うことで、従業員と企業双方にとってよりよい形での復職・就業の継続が可能となります。ここでは、企業が具体的に取り組むべき内容について詳しくご紹介します。

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メンタルヘルス不調による休職者がスムーズに復職するために必要なこと

職場復帰支援プログラムの策定

職場復帰支援プログラムとは、職場復帰について、あらかじめ企業全体で定めた基本方針やプロセスのことです。企業は、厚生労働省が公表している「心の健康問題により休業した従業員の職場復帰支援の手引き」を参考にしながら、衛生委員会などで調査および審議を行い、復職支援に関する体制を整えましょう。

具体的には、休業~復職の標準的な流れや支援の内容、関係者の役割などについて定めます。産業医などのアドバイスを受けながら、それぞれの企業や事業所の実態に合わせて策定することが大切です。企業は、この全体方針をもとに、従業員一人ひとりの状況に応じた「職場復帰支援プラン」を作成します。

休職者/関係者との情報共有

休職中の従業員に必要な情報の提供も、復職支援の重要な取り組みの一つです。経済的な不安や将来の見通しが立てづらいと、回復を妨げる要因となる場合もあるため、企業側は必要な情報を整理し、休職者にわかりやすく伝えることが求められます。

また、人事・産業医・上司・外部機関など、復職支援に関わる側にも必要かつ適切な情報を共有し、連携を取れる状態を整えます。

【共有する情報の例】

  • 傷病手当金などの経済的支援の制度
  • 相談窓口やカウンセリングサービスの案内
  • 社外の復職支援サービスの情報
  • 休職の期限や延長手続きの方法

段階的な勤務再開の仕組みづくり

復職にあたっては、いきなり通常勤務に戻すのではなく、段階的な復職支援が重要です。生活リズムの再構築や体力回復のため、軽作業をする模擬出勤、通勤訓練、そして職場での試し出勤などを活用し、徐々に復帰の準備を進める仕組みが求められます。

メンタルヘルス支援と相談体制の強化

再休職を防ぐため、職場全体のメンタルヘルス支援と相談体制を強化しましょう。カウンセリングや相談窓口を活用して復職者の不安に寄り添いつつ、ラインケア研修などで受け入れ側も含めた職場全体の理解を深めることが重要です。

職場環境の調整と業務負荷の見直し

復職後は、再発を防ぐため業務量の調整が不可欠です。原則は元の部署へ復帰ですが、必要に応じて配置転換も検討します。短時間勤務や残業・出張の制限など、心身の負担を抑える配慮を行い、安心して無理なく働ける環境づくりを継続しましょう。

復職後のフォローアップと定期面談

復帰直後は不安や無理から体調を崩しやすいため、上司や人事が日常的なコミュニケーションと定期面談を実施しましょう。業務状況や悩みを確認し、必要に応じて業務内容や勤務条件を調整するきめ細かいフォローアップが、安定した職場定着につながります。

取り組みを進めるうえでのポイント

復職を支えるうえでは、従業員本人だけでなく、チームの受け入れ体制づくりも重要です。復職直後の従業員は、短時間勤務や負担の軽い業務に携わることが多いです。このような対応は優遇ではなく、必要な配慮であるという認識を浸透させましょう。受け入れる側の不公平感を防ぎつつ、健全な支援体制を整えます。

また、復職した従業員への声のかけ方を共有したり、悪化・再発を防ぐコミュニケーション設計、相談体制を構築したりして、安心して職場に戻れるような環境づくりを行いましょう。ITツールを活用し、復職支援をより効率化することもおすすめです。進捗管理だけでなく、復帰前の自己学習や面談もオンライン上で実施可能です。これらは、メンタルヘルス不調に限らず、出産・介護など、働くうえでの一時的な離脱に対応できる“柔軟な復職文化”の醸成につながります。

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外部支援サービスの種類と特徴

付箋やペンと並ぶメモ帳に書かれたREWORKの文字

社内の復職支援だけでは専門的な対応が難しい場合には、外部の専門機関が提供する復職支援サービス(リワーク)を利用する方法もあります。外部リワークの費用は従業員負担が基本ですが、企業が費用の一部を補助したり、福利厚生や休職制度で補助制度を設けたりすることで、従業員が利用しやすくなります。利用促進のためには、経済的な負担軽減への配慮が不可欠です。

実施機関によって目的や支援の内容が異なるため、状況に応じて活用しましょう。

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医療リワーク

医療リワークは、医療機関が実施するリワークプログラムです。主治医の指導のもと、心身の回復と安定を保ち、再発を防ぐ目的で実施されます。服薬管理やストレスコントロール、体調のモニタリングなどを通して、働ける状態へ整えていきます。ただし、復職直前の「働くための準備」をするうえでは、別の支援との併用が望ましい場合もあるでしょう。

職リハリワーク

職リハリワーク(職業リハビリテーション・リワーク)は、各都道府県の「地域障害者職業センター」が提供する公的支援サービスです。センターの専門スタッフが、本人・主治医・企業の三者をつなぐ調整役となり、復職に向けた段階的な訓練や面談を行います。

治療は行わず、職場への適応支援に重きが置かれているため、体調の自己管理や作業課題への参加、職場を想定したロールプレイなど、職場復帰を見据えたプログラムが組まれています。

福祉リワーク

福祉リワークは、就労移行支援事業所などが提供する復職支援プログラムです。2024年の法改正により、退職者に加え、要件を満たした休職中の従業員も利用可能となりました。施設ごとにプログラムは異なりますが、障害を持つ方の就労支援がメインの事業所も多いため、リワークサービスを提供している事業所は限られます。

参考:厚生労働省「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」

その他外部機関のリワーク

近年は、医療機関や公的機関以外にも、民間の事業者による復職支援サービスも増加しています。中にはオンライン形式のリワークプログラムもあり、在宅で段階的に復職準備を進められます。事業者ごとに内容や支援方針が大きく異なるため、あらかじめ内容や支援体制を確認し、企業の復職支援方針と合致しているかを見極めましょう。

復職支援の流れ

8時にセットされた目覚ましで気持ちよく起きる人

最後に、復職支援の一般的な流れを押さえておきましょう。

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①治療・休養に専念してもらう

従業員から休職に必要な書類が提出されたら、まずは本人が治療に専念できるよう環境を整えましょう。休職中は孤立感を抱きやすいため、企業側から適度な距離感で継続的なつながりを保つことが非常に大切です。

事前に、本人にとって負担にならない連絡手段や頻度(メール、チャット、電話など)を取り決めておきましょう。休職中に社内の情報や近況を定期的に共有するだけでも、「自分は忘れられていない」という安心感を与えられます。

②回復した従業員から復職の希望が伝えられる

従業員から「職場に戻りたい」という意思が伝えられたら、復職支援は本格的な段階に入ります。企業は、主治医による「職場復帰可能」と記された診断書の提出を求めます。この際、業務上の配慮事項(勤務時間、形態、仕事内容など)を具体的に記載してもらうことが重要です。

しかし、主治医の判断基準は「日常生活」が中心であり、実際の業務遂行能力とは「ずれ」が生じる可能性があります。そのため、企業側は本人の同意を得たうえで、職場で求められる業務負荷を主治医に伝え、就業可能なレベルまで回復しているかを明確に確認することが望ましいです。

③職場復帰の可否を判断する

診断書の受領後、企業は産業医に意見を求めます。産業医は職場の実情を踏まえながら、「現在の状態で職場環境に適応し、安全に働けるか」を判断します。従業員本人との面談では、通勤の可否や勤務時間の調整など具体的な要素を確認し、復職の可否を検討しましょう。主な判断基準の例は以下の通りです。

  • 一人で安全に通勤できるか
  • 決まった勤務時間に継続的に出勤できるか
  • 業務に必要な集中力・注意力が保てているか
  • 翌日の業務までに十分に回復できているか
  • 睡眠リズムが安定しているか

④職場復帰支援プランを作成する

復職可能と判断されたら、産業医、人事担当者、上司らが連携して、本人の意向も確認しながら「職場復帰支援プラン」を作成します。職場復帰支援プランとは、個々の従業員の体調・職務・職場環境に合わせて個別かつ具体的な復職支援内容を定めたものです。プランを作成する際は、以下のポイントを押さえましょう。

  • 復職日や勤務時間、残業の有無など、就業上の配慮を明確化する
  • 休職前と同様の負荷を避けるため、段階的な業務調整を行う
  • 面談頻度や健康状態の情報共有ルールを明示する
  • 本人の意見や希望をヒアリングし、双方が納得できるプロセスを検討する
  • 復職後のフォローアップ方法を事前に組み込んでおく

これらのプランが整い次第、企業は最終決定し、休職者本人に通知します。

ワンポイント
主治医が「日常生活には支障なし」と判断しても、職場で以前と同様のパフォーマンスを発揮できるとは限りません。主治医の意見を参考にしながらも、現実的に可能かどうかを見極め、支援プランを検討することが大切です。

⑤復職後もフォローアップを行う

復職直後は心身のバランスを崩しやすいため、継続的なフォローアップが不可欠です。上司や人事担当者、産業医が定期的に面談を実施し、勤務状況や健康状態などを確認します。また、作成した「職場復帰支援プラン」が現場で適切に機能しているかを評価し、必要に応じて内容を柔軟に見直すことが重要です。

一人ひとりに寄り添う復職支援を

人型の積み木が崩れないようにレンガのように土台を組み立て支える手元

治療に専念する休職期間から、職場復帰後の定着支援まで、復職支援のプロセスは長期にわたります。従業員が職場に復帰するその日は、一連の支援プロセスの終わりではなく、再び活躍していくためのスタートラインです。復職する従業員は、期待と同時に大きな不安を抱えています。関係者と綿密に連携を取りながら、本人の回復段階に合わせて無理のないペースで職場へ戻れるよう計画を立て、継続的にサポートしていきましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
アドバンテッジJOURNALは、働くすべての人へ「ウェルビーイングな働き方と組織づくり」のヒントを発信するメディアです。導入企業数3,200社/利用者数600万人を超えるサービス提供実績と、健康経営銘柄に4年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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