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組織風土とは?意味や改革のためのポイント、企業事例を解説

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「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

より良い組織、働きやすい職場を実現するにあたり、注目すべきトピックのひとつに「組織風土」があります。健全な組織風土の醸成は、従業員のエンゲージメント向上、生産性の向上など、企業が持続的な成長を目指す観点からも重視したい取り組みです。今回は、「組織風土」を構成する要素や改革が求められる背景、メリットなどについて詳しく解説します。

組織風土の意味とは?

打ち合わせをしている社員達

企業の特徴や雰囲気という文脈の中でしばしば登場するのが「組織風土」です。はじめに、「組織風土」とは何かを紐解いた上で、組織文化や社風との違いなどについて解説します。

組織風土とは

組織風土とは、組織を構成するメンバーの中で共通認識となっている独自のルールや価値観、思想を指します。いずれも、組織の仕組みや従業員の思考や行動、モチベーション、意思決定などと深く結びついていることが特徴です。

組織風土は、企業の歩みとともに長い時間をかけて自然に育まれ、根付いた規範や慣習などであり、企業のあり方を形づくるものでもあります。業界や業種、企業規模によってもさまざまで、一概に「善」「悪」と判断することは難しいでしょう。組織風土を構成する具体的な要素については後述します。

”理想的な組織風土”とは

しばしば「健全な」「良い」「理想的な」組織風土の醸成という表現が聞かれますが、具体的にどのようなことを指すのでしょうか。まず、理想の組織風土について、アメリカの経済学者チェスター・バーナード氏が提唱した「組織の三要素」に基づいて定義します。

同氏は1938年に出版した「組織の役割」において、組織が成立するためには「共通目的」「貢献意欲」「コミュニケーション」の3つの要素が不可欠だと説きました。どれか1つでも欠けている場合、組織が健全に機能しなくなるとされています。

これを踏まえると、すべての企業に共通する「理想的な組織風土」とは、以下のような状態を指します。

理想的な組織風土

  • 組織として目指すべき姿が明確で、それがすべての従業員に共有されている
  • 従業員一人ひとりが組織のあるべき姿・目標を正しく認識し、実現・達成に向けて主体的に行動できる環境が整っている
  • 立場や役職に関わらず、円滑なコミュニケーションが取れる

組織文化・社風との違い

「組織風土」と似た用語として、組織文化、社風などが挙げられます。まず、組織文化とは、現在の組織において存在する価値観・ルールを指します。企業が掲げるビジョンや時代、それに伴って変化する従業員の意識や思いによって、柔軟に変化するものです。

一方組織風土は、組織の黎明期から培われてきた価値観や思想であるため、変化がない点が特徴です。社風とは、組織風土が反映されてできる組織の雰囲気や独特の空気感であり、従業員一人ひとりで感じるものが異なることもあります。例えば、「活気がある」「明るい」「落ち着きがある」などと表現されるでしょう。

組織風土改革が必要とされる背景

ガラス越しに見える会議室

前項でも触れたように、組織風土は特定の価値基準に基づいて「良い」「悪い」と判断することは難しいものです。しかし、組織の大きな変革や新規事業の立ち上げなどを行うにあたり、従来の組織風土がそれらを阻害する壁となるケースも少なくありません。次に、組織風土改革が求められる背景について掘り下げていきます。

変化する時代への対応

現代は、VUCA※と呼ばれる不安定な時代にあります。変化のスピードが早く複雑で、かつ先の見通しが難しい時代の中で企業が持続的な成長を遂げて生き残っていくためには、社会や市場のニーズにすばやく対応していくことが必要です。課題発見力や実行力など、一人ひとりが持つ多様な力を発揮しながら柔軟に挑戦し、進化し続けていく組織を目指すには、組織風土の改革が必要となる場合があります。

※VUCA(ブーカ)…Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字を取ったもの

労働人口の減少・雇用システムの変化

少子高齢化によって労働人口が減少している中、人材不足は業界を問わず深刻な課題となっています。また、終身雇用、年功序列といった従来の日本企業にあった雇用型システムが崩壊し、成果主義へとシフトしていることも一因です。1つの会社で働き続けることにこだわらず、転職をポジティブなものとして捉える人も多いため、人が集まらない、流出していくと悩む企業も多いかもしれません。

このように、求職者が企業を「選ぶ」時代となっている今、企業は「この会社で働きたい」「働き続けたい」と感じてもらえるような組織風土に改革していく必要があります。

働き方に対する価値観の多様化

働く人の価値観がより多様化していることも、組織風土改革が求められる背景にあります。例えば、給与や賞与などの金銭面だけではなく、働く場所や時間を自由に選べるか、育児や介護と仕事の両立は可能か、自分の成長が実感できるかなど、求職者が重視するものはさまざまです。

従業員の多様な価値観を受け入れ、ダイバーシティを実現するには、従来の考え方にとらわれない新しい組織風土を築いていくことが必要といえます。

組織風土改革に向けておさえたい3つの要素

12数字が書かれた木のブロック

組織風土は大きく3つの要素から構成されています。組織風土改革を進める前に、これらの要素と特徴をおさえておきましょう。

ハード要素

ハード要素とは、組織において明文化された制度やルールのことです。これに基づいて、適切な意思決定を行っていくことで組織に変化をもたらすことができます。組織風土を変革する際にも、比較的取り組みを進めやすい要素です。

具体的には、以下のようなものが該当します。

  • 経営理念
  • ミッション・ビジョン・バリュー
  • 人事制度・人材配置
  • 組織体制
  • 経営計画
  • 事業内容
  • 業務プロセス
  • 就業規則
  • 社訓
  • 評価制度

ソフト要素

ソフト要素とは、組織風土として表面化しているものの、明文化、視覚化されていないものです。抽象的でイメージしづらいですが、従業員一人ひとりの行動や心構え、価値観などによって作られます。明文化されていない分変革をもたらすのが難しく、従業員の中に根付いた意識や価値観を根底から変えることが必要です。

具体的には以下のようなものが挙げられます。

  • 経営層の影響力
  • 組織におけるローカルルール
  • 上下関係や勢力関係といった人間関係
  • 従業員同士のコミュニケーション
  • モチベーション
  • チームワーク
  • 判断基準
  • 個人の価値観や行動様式

メンタル要素

メンタル要素とは、ソフト要素の中でも特に従業員の精神面、心理面に影響する要素です。感情が関わるため、3つの要素の中でも特に現状把握と改革が難しいでしょう。しかし、良い方向に改革できれば、従業員が心理的に働きやすいと感じられる職場を実現できます。チーム、あるいは上司と部下の間に信頼関係が築かれていれば、報告や連絡といったコミュニケーションがスムーズになるだけでなく、心理的安全性が高いことで従業員は” 安心して”働くことができます。

さらに、信頼する上司や先輩からポジティブなアドバイスやサポートを受けられると、モチベーションを高く持って働けるでしょう。

具体的には、以下の要素が挙げられます。

  • 自発的、主体的な行動が取れるか
  • 変化を柔軟に受け入れられるか
  • 新たなことにも積極的に挑戦しようとする姿勢があるか
  • 周囲が挑戦を認める雰囲気であるか
  • 一人ひとりの意見が尊重され、率直に伝えられる環境であるか
  • コミュニケーションが円滑になされているか
  • 従業員同士が協力し合い、助け合う姿勢があるか
  • 何らかの圧力やしがらみがないか

組織風土が良いことのメリット

まとが描かれた電球とアイコン

良い組織風土が醸成されることは、企業にさまざまなメリットをもたらします。

ビジョンや方向性の深い理解・共有

「ミッション・ビジョン・バリュー」や経営計画が明確に提示されている”良い組織風土”が醸成されていれば、従業員は企業の目指す方向性やあるべき姿を深く理解することができ、価値観を一致させた状態で適切な行動を取れるようになります。企業と従業員が一丸となって同じ方向に進んでいくことができれば、目標達成も目指しやすくなるでしょう。

エンゲージメント向上

良い組織風土が築かれていると従業員は組織に対して愛着を持ち、誇りを持って働くことができます。ビジョンや方向性を理解できていると、自分が「やるべきこと」と、会社としての「目指すべきもの」のベクトルを一致させることができるため、「組織の役に立ちたい」「この会社で成長したい」「働き続けたい」と、高い意欲を持って主体的に働けるでしょう。

また、従業員同士でコミュニケーションが取れる、困った時に助け合えるという環境も、エンゲージメントを向上させる要因です。従業員のエンゲージメントが高まると、人材の定着、離職率の低下も期待できます。

生産性の向上

組織風土が良い企業では、従業員一人ひとりが主体的に業務に取り組もうとする姿勢が見られるため、「より高い成果を出すためにはどうすればいいか」と、業務効率化や生産性向上に向けた改善を進んで行う傾向が見られます。また、コミュニケーションが円滑に取れる、心理的安全性の高い状態は、否定されたり、責められたりすることなく率直に自分の意見を伝えられる環境が整っているといえます。これにより、新しいアイディアやイノベーションの創出も期待できるでしょう。

組織風土が良くないと起こりうるデメリット

話し合う男性社員

良好な組織風土が醸成されていない場合、組織のビジョンやあるべき姿が従業員に浸透せず、正しい意思決定ができなかったり、組織の中での自分の役割が見いだせなくなったりします。

また、人間関係が悪く適切なコミュニケーションが取れない状態では、対立や衝突が起きやすく、従業員は不安を感じたまま働くことになるでしょう。従業員のモチベーションやエンゲージメントにも悪影響を及ぼし、人材の流出、業績の低下といった悪循環に陥るおそれもあります。

組織風土改革を進める上での注意点/ポイント

虫眼鏡で拡大されたひらめきマーク

ご紹介してきたように、良好な組織風土を醸成することにはさまざまなメリットがあります。しかし、組織風土は企業の根幹に関わる要素であるため、改革には慎重な姿勢も必要です。既存の組織風土を” 悪しきもの” として扱い、無理やり変えていくのではなく、自社の組織風土がどのようにして形成されてきたのか、その歴史や背景を深く理解した上で、どのような点が課題であるのか、どこを改善すべきかを整理していくことが必要です。ここからは、組織風土の改革を進める上での注意点をご紹介します。

改革には時間がかかる可能性がある

組織風土は、その組織の歴史とともにあり、長い時間をかけて形成されてきたものです。特に、可視化されていないソフト要素とメンタル要素の洗い出しにはかなりの時間を要する可能性があります。改革にはある程度の時間がかかることを理解し、粘り強く取り組みを進めていくことが求められます。

課題を正しく把握し、企業の主導のもと進める

従業員にアンケートを取るなどして意見を吸い上げ、現状生じている問題や課題にきちんと目を向け、企業側の主導のもと改革を進めていくことが重要です。現状の問題点の洗い出しと改革によって目指すべき方向性を明確にしたら、組織の全員に対して共有します。

経営層などのトップが率先して改革に取り組む姿勢を見せることで、従業員一人ひとりの意識改革につなげます。組織体制の再構築や制度の改善など、可視化されているハード要素から実施していくと良いでしょう。

改革の必要性について従業員から理解を得る

特に年功序列の傾向が強い、若手従業員が少ない企業などにおいては、組織風土を変えることそのものに抵抗を持つ人も少なくありません。業務体制を大きく変化させたり、短期間で改革を進めようとしたりすると、従業員の反感や反発が生じてしまい、組織がうまく機能しなくなるなど逆効果にはたらくおそれもあります。改革の内容や必要性を丁寧に従業員に周知し、理解・納得を得た状態で慎重に行うことが大切です。

改革のための行動を明文化する

ソフト要素、メンタル要素といった抽象的で曖昧な感覚を変えていくためには、具体的な行動基準を明確に設定することが大切です。組織の中でどう行動すべきかという指針を示すことで、従業員の理解を促します。実行的な取り組みにするには、その行動基準を人事評価などの制度に反映させることも有効です。

「組織風土改革」の企業事例

大産業工場棟の外観

最後に、組織風土改革に取り組み、組織の成長につなげた企業の事例をご紹介します。

大森機械工業株式会社

大森機械工業株式会社は、従来はカリスマ性の高い創業者が強いリーダーシップを発揮する、トップダウン型の体制の組織風土でした。ところがストレスチェックを実施したところ、経営層の持つ「風通しの良い会社」という印象とは大きく乖離しており、決して良いとは言えない結果となりました。

自社の業務内容を踏まえ、スムーズに意思疎通できる組織風土の醸成に取り組む必要があると考えた同社ではEQ(感情マネジメント力)向上研修を導入。研修実施後は経営層の意識が変わり、ボトムアップの組織風土への改革が加速します。ストレスチェックの結果も受検回数を重ねるにつれて大幅に改善し、メンタル不調者の減少、業績の向上など、企業の成長につながる大きな効果が得られました。

※同社はアドバンテッジリスクマネジメントのEQ(感情マネジメント力)向上研修を実施していただきました。詳しい導入事例のご紹介はこちらの記事よりご覧いただけます。

まとめ組織風土の改革でさらなる成長へ

少しずつ成長している新芽

良い組織風土が醸成できると、従業員のエンゲージメントや生産性が向上し、企業のさらなる成長が見込めるようになります。改革を進める際は、時間がかかる可能性を理解し、慎重かつ粘り強く取り組んでいくことが大切です。自社の現状と課題をしっかりと把握した上で、ハード・ソフト・メンタルそれぞれの要素を意識しながら、一歩一歩改革を行っていきましょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数3,140社/利用者数483万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄に3年連続で選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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