「誰一人後悔しない健康経営を。」三菱食品の健康経営をインタビュー 【健康経営のカタチ】Vol.1 三菱食品株式会社

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従業員の健康維持・増進へ中長期的に投資することで、企業価値向上へつなげる「健康経営」。今や多くの企業が注力していますが、中には手探り状態で課題を抱えているという状態の企業も多いのではないでしょうか。

当社アドバンテッジリスクマネジメントは、これまで約3,000 社にサービスを提供し、さまざまな企業の健康経営推進を支援してきました。今回は当社顧客の中から、自社の健康経営推進の目的とそのプロセスを明確に定め、多角的な取り組みを推進されている三菱食品株式会社様のお取り組みをご紹介します。

同社では2017年に健康増進プロジェクトを立ち上げ、2022年には代表取締役社長がCHOを兼任する形で推進体制を強化。三菱食品ならではの「健康経営宣言」を掲げ、各種セミナー・研修の開催や情報発信などさまざまな角度から健康経営に取り組んでいます。また、データドリブンの健康経営を推し進める観点から当社の人事データマネジメントシステム「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」を導入いただいています。

その三菱食品様の健康経営の考え方や取り組みについて、人事グループ 健康推進ユニットの藤田篤史さん、中上淳也さん、菅原慶吾さんにお話を伺いました。

プロフィール

藤田 篤史様:人事グループ 健康推進ユニット リーダー
1993年入社。社員の健康維持・増進の為に産業保健体制の抜本的な見直しや、社員の行動変容を効果的に促すための体制整備を実行中。また人間関係で悩む社員を減らしたいと、様々なセミナーや講座を企画し導入している。

中上 淳也様:人事グループ 健康推進ユニット
2007年入社。障がいや傷病治療等と仕事の両立が可能な職場環境、及び企業風土構築を目指す。また、育休取得の経験を活かし、男性社員の育児参加向上に向けた取り組みに努めている。

菅原 慶吾様:人事グループ 健康推進ユニット
2009年入社。健康経営の企画推進、フィジカルヘルスを主に担当。ウェルビーイング DXPの管理者として、データドリブンな施策実行を模索中。トレーニングの実践・習慣化に関するアドバイスも得意としている。

三菱食品がたどり着いた「健康経営」の考え方

社員の目線に立って描いた、「自己効力感」を高める5つの要素

――初めに、貴社の健康経営における理念についてお聞かせください。

藤田さん:食品の卸売業を展開する当社では、最上位概念として「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」というパーパスを策定しました。そのパーパスを実現するための価値創造の基盤の一つに「健康」を位置づけており、その健康における目標として「明るく・楽しく・元気よく、 そして前向きに」という「健康経営宣言」を掲げています。

「明るい」「楽しい」「元気」「前向き」……言葉だけを見れば小学生でもわかるようなシンプルなスローガンですが、これは会社が命じてできることではないんですね。いずれも「心の状態」を表しているものですから、結果として目指す状態ではありますが、意識すれば簡単に作れるというものではないと考えています。

ですので、この健康経営宣言を実現するためにはどんな要素が必要か。私たちが議論を重ねる中でたどり着いたのが、「健康の“5つの要素”」です。

※2 会社や地域コミュニティー、家庭や交友関係において、認められ、尊重され、円滑なコミュニケーションがとれている状態
※3 自身の人生を豊かにするために積極的に学び、行動している状態
※4 多様な働き方の中で、自分の時間を自分の意思でコントロールしている実感を持てている状態

①肉体的健康
②精神的健康
③社会的健康
④主体的行動
⑤ワークとライフのコントロール

これらの5つの要素が充足されることで、どんな困難なことが目の前に起きても自分なら/仲間となら乗り越えられる、という「自己効力感」が高まる。そのことではじめて「明るく・楽しく・元気よく、 そして前向きに」なれるというのが、当社における健康経営宣言の基本的な考え方です。

これは裏返して言えば、会社にとっては「エンゲージメント」に当たるものでもあると思っています。社員のエンゲージメントが高まることは会社にとって良いことですが、それはあくまで会社の目線ですので、「社員にとって良いことは何か」という目線で考えたときに「自己効力感を高める」ことだと捉え、その実現を目指しています。

――①~③は「WHO憲章」の前文に登場する健康の定義と同じですが、そこに「主体的行動」と「ワークとライフのコントロール」を追加している点に独自性がありますね。

藤田さん:ライフステージが変化・遷移することで、私たちにはさまざまな不安が生じます。ただ、それに対して事前に準備することで対処できたり、有意義に時間を使ったりといった「自分の人生を豊かにするために自ら行動できる」ということが重要だと捉えており、これを「主体的行動」として加えています。

また、出産や育児、介護など多くのイベントと仕事を両立していく現代の多様な働き方において、何かを犠牲にしているという感覚ではなく、「自分の人生が自分のコントロール下にある」という感覚を持てることも非常に大切だと考えています。それによって今後何かが起こっても、うろたえることなく対処できますし、つまり、この「ワークとライフのコントロール」も自己効力感に繋がっています。

昨今ではワークライフバランスとよく言いますが、誤解を恐れずにいうと、場合によっては「ワーク」と「ライフ」のバランスが崩れる時があってもいいと個人的には思っています。仕事が充実していて、やりたいことを自分自身で選択し、自らコントロールしている実感を持てるのであれば、結果として仕事のボリュームが多くなる日があってもいいのです。

――この健康経営宣言と健康の“5つの要素”にもとづき、健康経営の取り組みをどのように進めているのでしょうか。

藤田さん:当社では、健康経営のロードマップとして次の3つのステップを意識しています。

①自分ごと化
②環境整備・制度化(健康のための体制づくり)
③感化(ステークホルダーや生活者への発信)

先ほどお話しした「健康の“5つの要素”」は、仕事だけでなくプライベートにも及ぶため、会社が一方的に社員に命じたところで改善できるものではなく、非常に難しいところで、他社さんも苦労しているところではないかと思います。

したがって、まずは社員一人ひとりが自身の健康課題に気づき、自覚することが大事です。それに対して、先ほどもご説明したような健康に対する「主体的行動」が現れる。その一連の流れが実現できるようになるのが「①自分ごと化」のステップです。

そして、健康を「自分ごと」として意識した社員に対して、会社には社員が健康課題を改善するための体制を構築し、社員の健康への取り組みを支援する必要があります。これが「②環境整備・制度化」のステップです。

最後に、健康経営の取り組みが進んでいき、「明るく・楽しく・元気よく、 そして前向きに」日々を過ごす社員が増えていけば、ご家族や取引先、株主などステークホルダーの皆さまにもいい影響が波及していくと考えています。これを最後の「③感化」のステップとして位置づけています。

以上の3つのステップに沿って、健康経営施策を展開しています。そのような健康経営を推進して社員の風土が変わっていくことを期待しており、現時点では2030年頃までを目標に、世の中に対していい影響を与えられる存在になることを目指しています。

トップとボトムの両面から風土改革に取り組む

――貴社では、代表取締役社長がCHOを兼任しています。このCHOをトップとした、健康経営の推進体制構築の背景と現在の動きについて教えてください。

中上さん:2017年に健康増進プロジェクトが発足し、当初は営業統括部門が中心となってプロジェクトを推進していました。その後、2021年に健康経営の主体が営業統括部門から私たち人事部門に移管され、翌年には企業トップ自らが健康経営をリードするCHO兼任という体制へと変化していきました。

現場においては、健康経営を推進する体制として、本部・支社ごとに「健康増進担当者」を任命しており、また、各事業所の衛生委員会事務局同士でもつながり、さまざまな組織が連携する構成となっています。

――この健康経営の推進体制によって、社員に対する健康への働きかけをどのように進めているのでしょうか。

中上さん:私たちが心掛けている考え方として、「健康経営とは、風土改革である。」というものがあります。健康経営は身体の状態に限らず、社会的側面もカギとなりますし、それこそ自己効力感は強制されて生まれるものではないため、トップダウンで統制できる制度的なアプローチでは簡単にいかないと感じています。

そこでまず重要なのは、「明確なトップメッセージ」です。全社員に対して健康についてビデオメッセージを配信しました。健康に対する考え方を社長自らの声で発信することで、会社として健康経営に取り組む姿勢を打ち出しています。

加えて必要なのが「徹底的な情報発信」です。変えようとしている風土、つまり健康に関する情報をいかに触れさせるかという観点で、徹底して発信をしています。その一例としては、社内のイントラネットで年間52週にわたり毎週健康にまつわる情報やTipsを発信する「健康カレンダー」という取り組みを実施しています。イントラネットのトップ画面の目立つところに常に新着情報が掲載され、イントラネットをほぼ“ジャック”しているので、中には「健康のネタ、ちょっと目立ちすぎじゃない?」と苦笑いする社員もいます(笑)。でも、会社の健康経営に対する本気度を示すためにも、社員の記憶に残るくらいのインパクトと露出が必要と思いながら取り組んでいます。

社内のイントラネットで発信している情報の一例

社内のイントラネットで発信している情報の一例

ただ、どうしてもこの情報発信は一方通行になりがちです。なので、その情報を社員にしっかり届けるために「現場でのムーブメント」が必要です。そこに関しては、各本部・支社の健康増進担当者がそれぞれの方法で健康情報を社員に届け、現場でのムーブメントを醸成する“情報のラストワンマイル”の役割を担います。その取り組みは基本的に各本部・支社の自主性に委ねており、担当者の可能な範囲内でよいとしていますが、これまで多様なアイデアが生まれ、独自のアクションプランが策定されています。各本部・支社の健康増進担当者は、社内のチャットツールで日々コミュニケーションをとっており、好事例などを各支社に展開するなど、横の連携も図りながら健康経営を推進しています。

そういった活動を通じて、社員に対して健康経営への会社の本気度と「皆さんの健康が大事なんだ」というメッセージをしっかり届けることを大切にしています。

「社会的健康」にフォーカスした取り組みを重視

――貴社における健康経営の取り組みについて、全体のテーマや重視していることは何でしょうか。

藤田さん:現在の取り組みのテーマは、社員が自ら自身の健康状態に向き合って、健康になりたいと思うにはどうすればよいのか、ということが起点になっています。

当初は「ホワイト500を取りたい」という動機から、健康経営度調査の調査項目を参考に、良さそうなものはとにかくやってみようと取り組んでいましたが、健康経営の主体が人事に移り、改めて健康の定義から考えていった中で、あることに気づきました。

フィジカル面の健康は「マズローの欲求5段階説」でいうと、一見すると底辺の「生理的欲求」や「安全の欲求」に当てはまるように思えます。しかし、医療が発達した現代においてはむしろ、より高次の「自己実現欲求」に近いのではないか、と感じたのです。そう考えると、その手前の「社会的欲求」や「承認欲求」が満たされていなければ健康は意識されにくく、放置されやすい。したがって、まず優先されるべき課題は、職場や家庭の人間関係、つまり「健康の“5つの要素”」でいう「社会的健康」ではないか、という結論に至りました。

その考えのもと、肉体的健康や精神的健康は、健康診断結果やストレスチェックなどの結果をもとに基準値を超えた社員へのハイリスクアプローチで対応する。一方、社会的健康については全社員を対象としたポピュレーションアプローチで底上げしていく。この2つのアプローチによって高次の欲求が満たされるのではないかと考え、メンタルやフィジカル領域は勿論のこと、社会的健康に当社は特に力を入れています。ここの部分はアドバンテッジリスクマネジメント(以下「ARM」)さんの力を非常に借りているところでもありますね。

――後者の社会的健康を高めるアプローチとして、これまで実施してきた取り組みの内容について教えてください。

藤田さん:2023年にはARMさんをはじめとする各企業・団体に講師を依頼し、次のようなセミナーや研修を計画しており、既に実施しているものもいくつかあります。

・認知のメカニズム
・アンコンシャスバイアス
・レジリエンスセミナー
・感情マネジメント
・アサーション

――人間の感情や認知にフォーカスしたセミナーや研修が並んでいますね。

藤田さん:私たちの人間関係は、さまざまな「感情」によって構築され、かつその手前には物事に対する「認知」が存在しますよね。つまりこの「認知」によって「感情」が引き起こされ、その感情によって出てくる言動が人間関係に影響してきます。

ですので、まずはその根底にある「認知」に関して、その仕組みやアンコンシャスバイアスについて知ってもらうセミナーを実施しています。その先の「感情」においては感情マネジメントやEQについて、それにより表出してくる「言動」に関してはアサーションをテーマに…というイメージで内容を考えています。これらのプロセスが社会的健康につながると考え、こういった研修やセミナーを企画・実施しています。

健康経営の目的を考え抜いた先で、根気強く進める

――ここまでお話しいただいた内容を振り返ると、三菱食品様は自社の健康経営に対して根本から丁寧に考え、実直に推進されている印象を強く抱きます。ここまで中長期の視点で取り組んでいる会社はあまり見かけません。

藤田さん:健康経営宣言の「明るく・楽しく・元気よく、 そして前向きに」というのは、前からあった会社のスローガンなんですね。初めてそれが出たときに、本当にいいスローガンだと思うと同時に、額縁の中の世界かも…という印象もありました。そして、私たち人事部門に健康経営の主体が移ったときに、この健康経営宣言のもとで健康経営を推進できるということが、とてもありがたく、いいチャンスをもらったなと感じたんです。ですので、この三人で真剣に議論を重ね、何が必要なのか、そのためにどういう取り組みが重要なのかとよく考えました

菅原さん:スローガンを体現していくために、私たちの健康経営は「風土改革」である、というのも要素として大きいですね。命じられてできるものではない健康経営宣言や健康の“5つの要素”に対して、どのように変えていくかと言えば社内の風土を変えていくしかない。その風土改革に必要なのは人とのつながりや社内の雰囲気づくりだと考えているので、そのために社員に対して会社からしっかりメッセージを伝え続け、長期的に設計された施策を丁寧に展開していくことに注力しています。

中上さん:もちろん「ホワイト500」を取れるに越したことはないのですが、それ自体が健康経営の目的ではありません。繰り返しになりますが、当社では健康経営の実践は、「食のビジネスを通じて持続可能な社会の実現に貢献する」というパーパスの実現に向けた価値創造の基盤形成と位置づけています。その基盤は一朝一夕には形成できないので、即効性を求めすぎず、幅広く、根気強く進めていく必要を感じています。

データの力で実現する「誰一人後悔しない・させない、健康指導」

不調の真因特定へ 「アドバンテッジウェルビーイング DXP」がもたらす価値

――ここまで三菱食品様の健康経営の方針や取り組みを伺ってきましたが、ARMにはどのような理由・経緯でご相談いただいたのでしょうか。

藤田さん:さまざまな健康経営支援サービスの中にあって、ARMのサービスは認知行動療法をベースにしているのが強みで、まずそこに興味を持ちました。事実、これまでストレスチェックや、認知行動療法にもとづいた各種セミナー、カウンセリングサービスなど、幅広い支援をいただいています。毎回調査のニーズにあったコンテンツを用意いただき、非常に満足いく内容となっていますね。

今後はカウンセリングをより身近に、普段使いできるようなものにしていきたいと考えているんです。カウンセリングは不調に陥ったときの治療、という認識のされ方が強いですが、カウンセリングの肝は自身の状況に対してカウンセラーさんから違う問いかけをしてもらうことで、別の視点を得られることだと思っています。それによって変えることが難しい「認知」に対して効果的にアプローチすることができると考えていますし、ARMさんにはそこに共感いただいて一緒に取り組んでいけることは強みの部分だと感じています。

加えて、健康管理システムやストレスチェック、カウンセリングといった、これまで別々の業者のサービスを使用していたものを全て一本化し、データの一元管理をしたいという背景もありました。それらの統合に合わせて、今後データ活用に力を入れていきたいということもあり、ARMさんに相談して導入させていただいたのが人事データ管理・分析システム「アドバンテッジ ウェルビーイング DXP」(以下「ウェルビーイング DXP」)です。

――その「ウェルビーイング DXP」を導入した決め手や、導入時の期待感について教えてください。

菅原さん:「ウェルビーイング DXP」の最大の魅力は、健康管理システムのデータをはじめ、ストレスチェック、産休・育休・傷病などによる休業データ、勤怠データ、さらには自社独自のアンケートデータなどと連携ができ、一つのプラットフォーム上でデータを一元管理できる点にあります。それらのデータを複合的に分析することで、健康診断だけでは見えてこなかったリスクや、学術研究とは異なる当社独自の傾向を見つけることができるのでは、との期待から導入を決定しました。

中上さん:人事から社員に対してアプローチしていますが、「あなたの健康に問題があります」と言われてすぐに納得できるかというと、難しい点もありますよね。拒絶される方もいると思います。その点、「ウェルビーイング DXP」があらゆるデータ分析によって傾向を導き出しリスク予測をしてくれると説得力も高まりますし、我々が話すよりも聞き入れやすくなると感じます。とてもセンシティブな部分ですので、「ウェルビーイング DXP」の力を借りて、健康リスクへの理解を深めていけたらと思います。

全員が後悔しない・させない健康指導をミッションに、データドリブンな取り組みを

――「ウェルビーイング DXP」を活用して、どういったことを実現したいのでしょうか。

菅原さん:当社では、この「ウェルビーイング DXP」を活用することで実現したい姿を、「ミッション・ビジョン・バリュー」で整理しています。

まず「ミッション」として「誰一人後悔しない・させない健康指導」を目指しています。健康状態を理由に働けなくなってしまうケースも少なくありません。会社側として「もっと受診勧告をしていれば」、従業員側からは「あの時健診を受けていればよかった」と、全員が後悔をする結末にはさせたくないという想いが前提にあるんです。

健康を害してしまってから健康の大切さに気づくのでは遅いし、社員が傷病で休んでしまったり、会社を辞めざるを得なくなってしまうのはあまりにも大きな損失です。この「誰一人後悔しない・させない健康指導」を実現するために、データの力によって健康リスクを察知し、保健師や産業医と連携しながら未然に救える体制とデータドリブンな施策の実行を「ウェルビーイング DXP」によって実現していきたいと考えています。これが「ビジョン」です。

そして、「ウェルビーイング DXP」が提供できる「バリュー」としては、大きく次の4つがあると考えています。

・健康維持へのモチベーション【動機】
・説得力のあるリコメンド【対処】
・気づかぬ兆候の発見【予見】
・真因へのアプローチ【解決】

とりわけ重視しているのが、「真因へのアプローチ」です。健康面の不調は、表面には出てこない真因を特定し、アプローチしないと本質的な改善はできません。その真因の特定に、「ウェルビーイング DXP」を活用して、データドリブンな健康指導を推し進めていきたいと考えています。そのように説得力をもって進めていける点を魅力的に感じていますね。

――「ウェルビーイング DXP」を活用し、さらに今後はどんなことに取り組んでいきたいですか。

中上さん:連携させたいデータはたくさんあります。ウォーキングイベントの歩数データや、社員が身につけているスマートウォッチの歩数や心拍数などのバイタルデータも今後「ウェルビーイング DXP」に取り込み、さまざまなデータと掛け合わせれば、個々の社員へより最適なサジェストができると考えています。あとは、あくまでアイデアとしてお話ししますが、コンビニなど各店舗での購買履歴データと紐づける、普段の食生活や嗜好性と健康との関係がより詳しく見えてくるのではないでしょうか。

菅原さん:健康経営においては、社員一人ひとりの行動変容を促すのが最も難しいのですが、この「ウェルビーイング DXP」のプラットフォームを通じて個々の健康課題が可視化され、主体的に行動を促すようなフィードバックを社員に提供できるといいですね。例えば、「健康の“5つの要素”」をレーダーチャート化して、社員ごとに要素ごとの傾向が可視化できるのが理想です。そうすれば、私たちが一生懸命旗を振らなくても、社員一人ひとりが健康課題を「自分ごと化」して、自分の健康状態をいろんな角度から見つめ直し、自ら改善のアプローチをとれるようになります。そのような仕組みを構築していきたいですね。

向かい合うより、隣で一緒にゴールを目指してくれる存在

――ARMに対して、今後どのような支援を期待していますか。

藤田さん:ARMさんとは、月例のミーティングで「ウェルビーイング DXP」の活用について意見交換をしたり、各種セミナーやカウンセリングなどのサービスにおいても日ごろから相談させていただいています。

ARMさんの担当の方からは、テーブルを挟んで向かい合っているというより、隣で同じ方向を向きながら一緒にゴールを目指している、そんな姿勢を感じています。健康経営が長期的視点で取り組むものと考えると、当社はまだスタートを切ったばかり。ARMさんにはこれからも引き続き、伴走支援していただけると心強いですね。

三菱食品が描く、今後の健康経営のあり方

――三菱食品様の健康経営における、今後の展望をお聞かせください。

藤田さん:私たちは人事部門として採用活動も行っていますが、最近の学生の皆さまと説明会や面接で話をしていると、「この会社で働くことは、自分にとってどんなメリットがあるんだろう」ということを重視している学生が増えている印象を受けます。これはいい、悪いの話ではなく、会社側が社員の成長やウェルビーイングに何を提供できるか、という姿勢が重視されているのは、まぎれもない事実だということです。その採用競争力の文脈でも、健康経営の重要性が高まっていますし、ゆえにいっそう力を入れて取り組まなければならないと、自戒を込めて意識しています。

中上さん:これまでは私たち人事部門が主体で風土改革など社内への働きかけをしてきたのですが、それだけでは頭打ちになることが目に見えています。AIなどのデジタル技術を取り入れながら、そこに人間ならではの知見と感性を組み合わせたハイブリッド型の健康経営の推進体制を築いていきたいと、想像をふくらませています。そのためにも、まずは「ウェルビーイング DXP」を活用したデータドリブンの健康経営で成果を示していきたいですね。

菅原さん:健康経営の実現において、社員一人ひとりの自己効力感が高まることによって、困難を自ら克服していける社員が増えていくことは、会社が持続的に成長していくうえでの基盤強化につながると考えています。そして、その基盤づくりに寄与していくのが私たち健康経営を推進する部署のミッションだと認識しています。ただし、その健康の基盤づくり、風土づくりは、どこかに「遊び心」がないと長続きしませんし、社員も「やってみよう」と思ってくれません。まずは、私たち自身が楽しみながら健康経営のムーブメントを醸成し、自然に社内を巻き込んでいきたいと思っています。

三菱食品様の「健康経営の取り組み」については、こちらから詳しくお読みいただけます。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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