ヘルスリテラシー

ヘルスリテラシーとは?従業員のリテラシー向上で健康経営を推進

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企業が主体的に従業員の健康管理に取り組み、組織の活力向上、生産性アップを目指す「健康経営」。健康経営の実現に向け、取り組みを進める企業も増加していますが、より質を高めるためには、従業員のヘルスリテラシーの向上が重要です。本記事では、ヘルスリテラシーの定義や重要性、ヘルスリテラシーを高める方法などを解説します。

ヘルスリテラシーとは?

まずは、ヘルスリテラシーの意味やレベルについてチェックしていきましょう。併せて、ヘルスリテラシーが個人の健康意識・管理にどのような影響を与えるのか、その重要性をみていきます。

ヘルスリテラシーとは

ヘルスリテラシーとは、入手した健康情報を正しく理解して評価できる知識、あるいはそれらの情報をもとに、自身の健康状態改善のために活用する能力のことです。自身の健康を守るためには、世の中にあふれる健康に関する情報から、本当に必要な情報を見極め、厳選することが重要です。

ヘルスリテラシーを身につけ、ヘルスケアや疾病予防に対する正しい判断や意思決定ができるようになれば、QOL(生活の質)の維持・向上も期待できるでしょう。

【健康情報を見極めるポイント】

  • 情報源がきちんと記載されているか
  • その情報源は信頼できるか
  • いつの情報か
  • 情報が最新であるか
  • 極端に偏った情報でないか
  • 1つの情報だけで判断していないか
  • 情報が発信されている目的は何か
  • 商業目的・宣伝目的の情報でないか

ヘルスリテラシーの向上レベル(3段階)

ヘルスリテラシー向上の3step

公衆衛生研究の第一人者として知られるナットビーム氏によると、ヘルスリテラシーは3つの段階に分けることができます。

【レベル1:機能的ヘルスリテラシー】
ヘルスリテラシーの中では最も基本となる、健康リスクや保健医療の利用についての情報を理解できる能力。
例:医師や薬剤師の説明が理解できる、薬などの説明書に書かれた内容がわかる

【レベル2:相互作用的ヘルスリテラシー】
健康や医療に関する情報を自分で探す、他人に伝達するなど、情報を適切に扱い行動する能力。他とのコミュニケーションによって情報を入手し、理解するため、社会性を備えていることが前提となる。機能的ヘルスリテラシーより高度な段階に当たる。
例:友人からおすすめの病院を聞いた上で、その病院について自分で調べ、良さそうであるか納得してから受診する

【レベル3:批判的ヘルスリテラシー】
批判的ヘルスリテラシーは、健康や医療に関する情報をうのみにせず、社会的・経済的背景といった高次的な情報も、あらゆる視点から分析した上で、主体的に活用できる能力。自分自身のために情報を活用するだけでなく、集団やコミュニティにも影響を与えられる、もっとも高度な段階。
例:感染症について自分なりに調べ、分析し、最適な予防方法や対策を社内に共有する

ヘルスリテラシーが重視される背景

ヘルスリテラシーが重視される背景にはいくつかの要因があります。近年、社会は急速に情報化が進み、人々はあらゆる情報へのアクセス・入手が容易となりました。ところが、ヘルスリテラシーにおいて重要な情報の理解や評価、活用といった能力については未だ不十分なところがあり、膨大な情報を精査できない、受け身的でアンバランスな状況が生まれています。

誤った情報は、自身の健康を害することにつながりかねません。自他の健康を守るためにも、ヘルスリテラシーを身につけることが重要視されています。

ヘルスリテラシーが個人の健康に与える影響

ヘルスリテラシーが高い人は、自分自身の健康を守り、向上できる一方で、リテラシーが低い人は健康へ悪影響を及ぼすことが予想されます。ここでは、ヘルスリテラシーが健康に与える影響について、例を挙げて紹介します。

【リテラシーが低い場合】

  • 病気、治療、薬の誤った情報に振り回される
  • 病気の予防につながる健診やワクチンへの関心を持てない
  • 病気の小さな自覚症状を見逃してしまう

【リテラシーが高い場合】

  • 病気や薬に関する正しい情報を自分で調べ、治療のメリット・デメリットを理解できる
  • 病気のサインを見逃すことなく、適切なタイミングで医療機関を受診できる
  • 病気の予防・早期治療のために健診やワクチンを利用できる
  • 健康に配慮した生活ができる

ヘルスリテラシーと健康経営の関係

ヘルスリテラシーが個人に与える影響

健康経営は、心身の健康を資本の一つと捉え、従業員の健康管理や維持への投資をすることによって、企業の組織の生産性や収益性向上、イメージアップなどを図ることを指します。そのため、従業員一人ひとりのヘルスリテラシーの向上は、いわば健康経営の基礎部分であるといえます。

「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」(ホワイト500)として評価

健康経営において優れた取り組みを実施している企業は、社会的評価や企業価値向上も期待できます。

経済産業省と東証により2015年から開始された「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」(ホワイト500/ブライト500)の認定条件には、従業員のヘルスリテラシー向上に関する取り組みも含まれており、企業としてどのように従業員のヘルスリテラシーを底上げしていくかは課題の一つとなっています。

従業員への浸透に関しては、健康経営度調査票のQ17「全社方針の明文化」で問われますが、SQ1選択肢内の5~8にあたる従業員の理解度の確認や意見の募集、議論の場の用意の点でホワイト500と優良法人の差が大きく、実際のデータでも50pt以上の開きがあります。(2023年時点)

従業員の関心や、健康経営の方針への理解を促進する取り組みの有無が、ホワイト500とそれ以外を分ける要因と捉えることもできます。

当社アドバンテッジリスクマネジメントは、上記のようなマネジメントスキルを育む管理職向けの社員研修プログラムを多数提供しています。

ヘルスリテラシー向上のメリット

ヘルスリテラシー向上のメリット

従業員のヘルスリテラシーを高めることで、企業にとってどのようなメリットがあるのかみていきましょう。

「健康経営」への理解・取り組み意識の醸成

健康経営実現に向けたステップとして、第一に「健康について知る、予防や増進の大切さを理解する」ことが挙げられます。ヘルスリテラシーはその基礎であり、健康経営を進めていく上でもっとも重要な意識です。

従業員のリテラシーを高めることで、企業の取り組みへの理解が深まり、自発的な参加姿勢が生まれれば、健康経営を成功に導くことができるでしょう。

従業員のヘルスリテラシーを高める方法

ヘルスリテラシーを高める方法

では、企業が主導して従業員のヘルスリテラシーを高めるためには、どのような施策を行えばよいのでしょうか。ここからは、ヘルスリテラシー向上のためのポイントをご紹介します。

【事前準備】従業員のヘルスリテラシーの把握

健康経営を推進するにあたり、まずはアンケート等を用いて従業員のヘルスリテラシーや健康への関心度合いを調べましょう。全従業員に回答してもらうストレスチェックなどの追加質問として設けることで、スムーズに回答を集めることもできます。

現状把握は、従業員に対する適切な取り組みの企画・案内や、その後の効果を検証する意味でも重要です。結果をもとに、どのような施策を打つべきなのかを考えましょう。

リテラシーレベルは、以下のようなイメージで分類することができます。これをもとに、リテラシー向上への取り組みにつなげます。

【例】

  • A:健康についてほとんど知識がない、興味もない →基本的な情報を自身の健康診断情報と合わせて教える
  • B:健康の基本知識は知っているが、どう高めるか、取り組むべきか知らない →健康維持増進のための知識や取り組みを伝える
  • C:健康に関心があり、もっと高レベルな行動習慣をつけたい →より専門的な情報を与える、セミナーを案内する

【方法①】自らの健康状態に向き合うきっかけ作り

従業員が自身の健康に向き合うきっかけを用意しましょう。健康診断の結果を見て、自身の健康に向き合って終わりではなく、気になることや問題点を自分事化した上で、改善や維持向上を目指します。

産業医、保健師などによるアドバイスや指導機会の提供、あるいは自発的に健康について学べる仕組みづくりなど、具体的なコンテンツとセットであることが望ましいでしょう。健診の結果を収集・分析した上で、運動や栄養、メンタルヘルスケアに関する助言ができれば理想的です。

【例】

  • 健康診断結果に紐づく健康指導・保健師面談
  • ストレスチェックの結果に応じた学習コンテンツの提供

【方法②】健康知識を深める情報提供

社内報や掲示物、社員研修の場を活用し、従業員に対して健康に関する情報の提供を行いましょう。ポイントは、従業員のヘルスリテラシーや関心度合いに適した粒度の情報を選んで案内することです。専門家による研修やセミナーを実施し、従業員に適切な情報をわかりやすく伝えるのもよいでしょう。

【例】

  • 健康に良い食材やレシピの紹介
  • 肩こりや腰痛対策のための運動を動画コンテンツで提供
  • 産業医の衛生講和の共有
  • 禁煙を奨励するポスターの掲示
  • 生活習慣改善を意識した講座の開催

アドバンテッジリスクマネジメントが提供する「オンライン健康セミナー」は、幅広い健康課題にカスタマイズが可能です。さらに、従業員の自発的参加を促す集客サポート支援もあわせて行います。

社員研修セミナー

従業員のヘルスリテラシー向上を目的とした、健康経営推進のための研修プログラムも各種ご用意。「生活習慣予防セミナー」や「女性の健康づくりセミナー」「卒煙セミナー」などさまざまございます。

【方法③】専門機関とつながる相談窓口の設置

産業医や産業保健師などといった、健康に関する相談先を用意しておきましょう。産業医は、個人面談や健康診断結果、ストレスチェックなどを通じ、従業員の健康状態について把握しています。そのため、各従業員に対し、「どのような行動をとれば健康につながるのか」という具体的な助言が見込めます。

また、「健康管理の重要性はわかっているけど改善できない」「理屈は知っているけど上手くできない」などといった悩みが生じる可能性もあります。そのようなケースに備え、相談窓口としてカウンセラーを配置してもよいかもしれません。カウンセリングを受けることにより、改善行動へのヒントを得られたり、マインドの問題を解決できたりする可能性もあります。

ヘルスリテラシー向上で健康経営を推進!

ヘルスリテラシーは、個人の健康リスクに直結する重要な尺度です。従業員の健康管理は、「健康経営」の視点から見ても大きな意義があり、ヘルスリテラシー向上のための積極的な施策推進が求められます。まずは自社の従業員のヘルスリテラシーを把握し、現状に応じた対策を講じる必要があるでしょう。また、研修やセミナーを活用し、従業員に健康知識を提供することも大切です。組織の活性化や価値向上のためにも、企業一丸となって「健康経営」を始めてみませんか。

アドバンテッジリスクマネジメントでは、健康的で働きやすい職場づくりをサポートする「アドバンテッジ健康経営支援サービス」を提供しています。専門のコンサルタントが、健康経営度調査の作成にあたりカギとなる「推進計画」の土台づくりを支援しており、従業員のヘルスリテラシー向上を目指す施策の策定、推進にもご活用いただけます。
また、各種ソリューションプログラムの実行やパルス調査による効果検証にいたるまで、計画・実行・確認・改善までのPDCAサイクル全体をサポートします。



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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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