企業の健康経営の先進的な取り組み事例をご紹介

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健康経営の目的

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を単なる人事・労務管理と捉えるのではなく、利益をもたらす経営的な視点で考え、戦略的に実践し、生産性向上や企業価値向上を実践することです。

健康経営を実践した企業が得られる効果としては、従業員個人の活力向上だけでなく、組織の生産性の向上、コミュニケーション活性化などからのエンゲージメントやロイヤリティ醸成などと、個人・組織への双方へ効果があり、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。

実際、健康経営を実践する企業からは、そのような報告がたくさん挙げられています。

健康経営が注目されている背景

近年、健康経営の注目度が高まっている背景には、さまざまな日本の構造的な課題と関連があります。

周知のとおり、超高齢化社会により社会保障費が拡大する一方、若年層の減少や介護離職による働き手の減少が予測されており、「一億総活躍社会」を目指し、『働き方改革』を国も推進し、関連法も2019年4月1日より順次改正されています。

また、メンタルヘルス疾患の増加や高止まりする過労死・過労自殺は、依然として大きな社会問題です。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。

そのような背景から、経済産業省は健康経営に係る各種顕彰制度として、2015年から「健康経営銘柄」の選定を行っており、2017年には「健康経営優良法人認定制度」を創設しました。

健康経営に取り組む企業の増加をねらい政府も後押しをしている状況です。「健康経営企業(大規模法人部門)[通称ホワイト500]」の認定を希望する企業数は年々増加しており、健康経営の盛り上がりは止まない状況といえます。

健康経営の企業取組事例

では、ここで先進的に健康経営に取り組む企業の実際の取り組み事例をご紹介します。

◇健康リスクに応じた施策を実践/大手コンビニエンスストアチェーン(A社)

―2012年から本格的に開始した「健康宣言プロジェクト」において、各個人の健康リスクを分析し、階層別の健康支援プランを実践。結果、2014年の健康リスク改善率は23.3%で、非対象者の改善率を10ポイント上回る成果となっています。

ほか、スマートフォンアプリでの健康アクションプランや禁煙デー、宿泊型保健指導、健康大運動会を実施するなど、親会社だけでなくグループ会社にも展開拡大を図り、グループ全体で健康経営を実践されています。

◇健康づくりからヘルスリテラシー向上へ/大手化学製品メーカー(B社)

-健康経営銘柄開始後、5年連続健康経営銘柄を取得しているB社。2008年のグループ健康宣言の開始のもと、専門家を配属した盤石の組織体制で健康経営に取り組んでいます。

2017年には、2020年度に向けた新たな健康づくりプロジェクトで、社員とその家族の健康維持を推進しています。「ヘルスリテラシーの高い社員を増やす」ことを新たに目標に掲げ、PDCAサイクルで本人の健康度を上げていく取り組みを実践しています。

具体的には、生活習慣病、メンタルヘルス、禁煙、がん、女性の健康を取り組みの柱とし、ポピュレーションアプローチと個別アプローチを組み合わせ、健康経営のさらなる進化を推進されています。

◇自ら取組むきっかけづくりから習慣化へ/大手製薬会社(C社)

―心身の健康を基盤として、情熱(働き甲斐・生きがい)をもって日々の仕事に取り組むことをスローガンに掲げる「真の健康」として、健康人財を育成しています。

社員が自ら前向きに健康であり続ける「きっかけ」を会社が与えることで、社員自身が考え、行動に移していくことが必要と考えられています。

取り組みとしては、福利厚生施設での健康づくりの仕掛けを企画したり、全社員参加型イベントの「健康増進100日プロジェクト」を実施したり、社員が考案した「朝のオリジナル体操」を制作したり、とバラエティに富んだ健康経営の取り組みを実践されています。

◇三者一体で生活習慣病を予防/大手証券会社(D社)

―5年連続健康経営銘柄取得をされている大手証券グループD社は、2008年度より、「人事部・総合健康開発センター・健保組合」の三者一体の体制を構築し、健康経営を推進されています。

CHO主催の「健康経営推進会議」には、グループ各社の人事担当役員、人事部や健康開発センター、健保組合などの役職者クラスが参加し、従業員の健康状態の把握、健康経営における各種施策の検討や効果検証、取り組み改善を実践されています。

役職クラスが会議で従業員の健康について戦略的に取り組まれている姿勢は、健康経営の実践そのものといえるでしょう。

◇働き方改善と健康づくりを並行して行う/大手ITサービス業(E社)

-5年連続健康経営銘柄取得されている大手ITサービス業のE社。
健康経営の理念を終業規則に明記することで、健康づくりが仕事のやりがいやパフォーマンス発揮に繋がる、と全社を挙げて、社員への浸透を図られています。

健康経営の実践のための産業医・保健師などの専門部署に加えて、『働き方改革』を目指した「働きやすい職場づくり委員会」が存在し、健康で安全な職場の維持・向上なども含めた、社員間のコミュニケーション活性化や福利厚生の充実などにも取り組まれ、健康づくりと働きやすい職場づくりを実践されています。

健康経営を実現させるステップ

健康経営を実現させるステップとしては、以下の通りです。

・経営陣が健康経営の重要性を理解
経営陣が自社の健康状態や様々な課題を実感しやすいような統計データや分析コメント、訴えが明らかな資料をもって、経営者へ訴えることが必要です。
        ↓
・健康経営の取り組みを社内外に向けて発信
経営トップの「健康宣言」をCSRやニュースリリースなどで発表します。
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・組織内の体制を見直す
健康経営は部署横断であることが望ましいので、適切な部署と部員を各所から集約し、担当チームを組織化することから始めることが多いです。
        ↓
・従業員の健康状態を把握
定期健診などのデータを集計分析し、全国や同業他社と比較し、自社のポジショニングを把握することで健康課題を把握します。
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・取り組みを実施
自社の健康課題のうち、取り組みやすいものから開始します。例えば、喫煙率が高ければ禁煙イベントの実施、運動不足の社員が多ければ「ウォーキング週間」をつくり、「グループごとの対戦」で歩くことを習慣とするきっかけを提供する、などがあります。
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・定期的に取り組みの効果を測定
取り組んで終了、ではなく、その取り組みの結果、健康診断などのデータにどう反映されたか、などで効果検証を図ります。
        ↓
・改善
効果測定後、改善できたかどうかを評価し、課題を積み上げから次年度の取り組みを検討します。これが、いわゆるPDCAの実践となるわけです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。紹介した健康経営の取り組みに先進的な会社は、取り組みから効果検証、というPDCAサイクルが回せている会社だと思います。また経営層や役職者クラスが健康経営会議にて本格的に戦略的に健康経営に取り組んでいる事例が多かったように思います。

健康経営の取り組みには、やはり経営層のコミットメントが重要ともいえるでしょう。ご担当者様の皆様、自社の健康課題を経営層へ理解してもらうことが、健康経営のはじめの一歩といえるかもしれませんね。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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