企業価値を高めるウェルビーイング推進に不可欠な 「従業員の安心感」を支えるGLTD制度

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※本記事は、「日本の人事部」特別取材によるインタビュー記事(2021年9月22日掲載)になります。

いま「ウェルビーイング」が注目されています。従業員が幸せで満ち足りていると感じられる職場環境をつくることが、離職率の低下や優秀な人材の採用を実現し、さらには生産性向上やイノベーションなど、企業価値を高めることにつながると考えられているからです。

一方で、何から取り組んでいいのか迷っている、という企業も多いのではないでしょうか。どうすれば、ウェルビーイングを実現できるのでしょうか。メンタルヘルス・ウェルビーイングの分野におけるリーディングカンパニーである株式会社アドバンテッジリスクマネジメントの方々に、ウェルビーイングな状態を目指すうえでの基本的な考え方、経営や人事がまず取り組むべき施策についてうかがいました。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント 代表取締役社長 鳥越慎二
●プロフィール●
東京大学経済学部経済学科卒業。ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院修了、MBA取得。米コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーを経て、アドバンテッジパートナーズのパートナーに就任。翌年、アドバンテッジインシュアランスサービス設立、同社代表取締役社長に就任。団体長期障害所得補償保険(GLTD)のマーケティング事業を開始。1999年、同社をアドバンテッジリスクマネジメントとし、GLTDおよびメンタルヘルスケア分野におけるリーダー企業に成長させ現在に至る。

同社 LTD営業本部副本部長 兼 LTD業務推進室副室長 金刺大介
●プロフィール●
2013年4月入社。全国の新規営業開拓に加え、既存先担当に従事。大企業を中心に豊富な導入実績を誇り、福利厚生や人事規定など人事企画労政関連に精通。2017年~2018年、大阪LTD営業部長、2019年~2020年、パートナー推進部長の歴任を経て現職に至る。現在は新規営業関連の管掌責任者として営業戦略の立案からマーケット開発の指揮を執る。

同社 経営管理本部人事部部長 兼 健康管理室室長 小山美佳
●プロフィール●
リクルートのグループ企業で人事マネジャーに従事後、ITコンサルティング企業で人事責任者を務め、2015年より現職。「自社の従業員のウェルビーイング向上を通じ、日本のウェルビーイング向上にも貢献したい」という使命感のもと、健康経営やエンゲージメント向上、ダイバーシティ等を推進。健康経営優良法人(ホワイト500)4年連続認定をはじめ、プラチナくるみんやえるぼし(認定段階3)の認定などを受けている。

経済成長だけでなく、ウェルビーイング推進が企業の存在意義に

――ウェルビーイングへの関心が高まっていますが、どういった背景があるのでしょうか。言葉の定義とあわせてお教えいただけますか。

鳥越:ウェルビーイングという言葉自体は昔からあるものですが、経営や人事の領域で重視されるようになったのは比較的最近です。代表的なものとしては2010年代のイギリスで、企業というよりも社会全般についての議論でクローズアップされました。

ウェルビーイングは、「満ち足りているかどうか」という主観的な要素を「精神的」「身体的」「社会的」という三つの側面から総合的に見ていきます。イギリスではGDWe(Gross Domestic Well-being)として、さまざまな項目を通してウェルビーイングの指標を取りまとめています。

――日本ではどのような経緯でウェルビーイングが意識されるようになっていったのでしょうか。

鳥越:主要国は定期的に国民の主観的なウェルビーイング度を測定していますが、日本はG7の中でずっと下位に甘んじてきました。ところが、同じように低かったドイツはこの数年で急速に改善され、2020年には首位となりました。この状況に危機感を持ち、日本も国としてウェルビーイングを重視するさまざまな戦略を打ち出すようになりました。例としてイギリスを参考に「GDW(国内総充実)」の指標化を進めるなどしています。

こうした動きは産業界にも波及。以前から健康経営という考え方はありましたが、より広い領域をカバーできる概念として、ウェルビーイングへの注目度は確実に高まっています。

働く人たちが日々健康的に過ごし、仕事を楽しいと感じられ、周囲に認められたり、自分でも成長を実感できたりする「満ち足りた」状態は、いわゆるエンゲージメントが高いと言い換えることができます。これまで健康経営やエンゲージメントに取り組んできた企業が、もっと本質的なものとしてウェルビーイングに着目しはじめたところだと思います。

――貴社は創業時から一貫してメンタルヘルス・ウェルビーイング分野の課題解決に取り組まれているリーディングカンパニーです。ウェルビーイングが注目を集める前から、この分野に取り組まれてきた理由とは何でしょうか。

鳥越:きっかけは25年前にGLTD制度(団体長期障害所得補償保険)に出会ったことです。GLTD制度は、何らかの事情で働けなくなった人を企業と従業員が一緒になって支援する仕組みで、当時のアメリカでは、従業員100名以上の企業の95%がすでに導入していました。しかし日本企業ではまだほとんど普及してないことを知り、ぜひ多くの人が利用できるようにしたいと考え、当社を設立しました。

事業を進めるうちに、そもそも働けなくなる原因を減らすにはどうしたらいいか、健康に問題のない人もより良い状態で働けるようにするには何が必要か、といった方向にも関心を持つようになりました。当時はまだウェルビーイングという言葉は注目されておらず、私たちは「企業に未来基準の元気を!」という理念を掲げ、メンタリティマネジメント事業や就業障がい者支援事業、リスクファイナンス事業など、さまざまな事業を展開してきました。当社がこれまで取り組んできていたことは、実はすべてウェルビーイング、従業員のハピネスにつながる領域全般を支援することにつながっていたんです。

働く人が元気でエンゲージメントが高い会社は生産性も高く、優秀な人材が集まってきます。業績が上がり、企業価値が高まれば、さらなる従業員のハッピーにつながる好循環が生まれるでしょう。こうした「元気に働く人と元気な企業をつくり出したい」という当社の原点を一言で表現できるのがウェルビーイングという言葉なのです。

・アドバンテッジリスクマネジメントの事業概要

ウェルビーイングな状態が生む職場の好循環

――貴社は「健康経営優良法人ホワイト500」に2018年から4年連続で認定されるなど、自社のウェルビーイング増進にも積極的に取り組まれていますね。

小山:ウェルビーイング向上施策に取り組むことで、職場に好循環が生まれることを実感しています。従業員のエンゲージメントが向上して生産性が高くなり、人材の成長が加速されることで戦力化までのリードタイムも短くなりました。離職率の低下、採用時の応募者増加はデータからも明らかです。内定辞退も減りました。

ただ、ウェルビーイングな状態を達成すればそれでいいというものではなく、良い循環を維持し、向上させていく努力が欠かせません。油断してはいけないと、肝に銘じています。

鳥越:ウェルビーイングにゴールはありません。常に崩れるものと考えておくべきです。企業間競争はますます厳しく、周囲の環境も日々変化しています。リモートワークが増えることで、職場の一体感が阻害され、ウェルビーイングが低下するといったことはどこでも起こりえます。大切なのはいち早くそれを察知し、修正すること。従業員と課題を共有し、そのためにどういう対策をとるのかをしっかりとにぎりあっていれば、従業員も協力してくれます。

安心して働ける職場の土台は「働けなくなるリスク」の補償

――具体的には、どのような取り組みを行われているのでしょうか。

小山:取り組みは、大きく四つに分けられます。一つ目は、心身あわせた健康支援です。多くの企業を支援する立場ではありますが、我々自身も意識して行動に移さないと健康状態は変わりません。現在は習慣をどう変えるかに重点を置いて取り組んでいます。

二つ目は、エンプロイーエンゲージメントの向上。働くうえでは職場での人間関係が非常に重要です。多様性を認めあい、尊重・信頼できる関係性の構築を支援しています。特に重要なのはコミュニケーションです。有志による「ミライ☆元気プロジェクト」といった公式プロジェクトなどを通じて、コミュニケーションの強化・活性化を進めています。

三つ目は、ワークエンゲージメントの向上で、仕事でのやりがい、達成感、成長実感などの獲得を支援しています。最終的に自主的にキャリア開発に取り組んでもらうことを核に、他部署の業務を経験できる研修、厚生労働省推奨のセルフ・キャリアドック、クロスメンター制度として自部門以外のキャリアの可能性を知る機会の提供などのサポートを行っています。

四つ目は、安心・安全な環境づくりです。この部分がしっかりしていないと、ほかの三つの取り組みをいくら頑張っても、ウェルビーイングは成立しません。全ての施策の土台となる、とても重要な取り組みです。

具体的には、過重労働の削減によるストレス軽減、病気休暇の導入や休職制度の整備、産業医や保健師が適切にサポートする復職プランなどを推進しています。その中心となっているのがGLTD制度です。

勤労世代では「亡くなる人」よりも「働けなくなる人」の方が圧倒的に多いのですが、そのリスクはほとんど意識されていません。大きな病気や持病の悪化、メンタル不調のほか、直近では新型コロナウイルス感染症の後遺症も心配です。GLTD制度はそうした現実的なリスクに備える金銭的なセーフティーネットとして、働く人に安心感を与えています。経済的な懸念が解消でき、従業員は復職を焦ることなく、じっくり療養することが可能です。

――GLTD制度による経済的な安心感が、ウェルビーイング施策を効果的に進めるための土台として大きな意味を持っているのですね。GLTD制度の仕組みについて、あらためてお教えいただけますか。

金刺:GLTD制度は病気やけがで働けなくなったとき、最長で定年年齢まで給与の一部を補償する団体保険です。つまり、有給休暇や会社の制度が終了した後も所得が補償されます。企業が何割か、個人が何割かを負担する二階建てをはじめ、それぞれの事情にあわせた柔軟な設計が可能です。商品認可は損害保険会社が持っており、当社はその販売代理店として、導入支援や実際に保険金が支払われる際の受給者管理・支援などの役割も担っています。

従業員を大切にする姿勢がエンゲージメントに直結する

――GLTD制度を導入した企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

鳥越:企業のメリットは、従業員に「人を大事にする良い会社だ」と思ってもらえることに尽きます。小山の話にもあったように、誰もが病気やケガのリスクを抱えています。自分、あるいは仲間が倒れたとき、救う仕組みがある会社なのかどうなのか。これは従業員から見たら大きいでしょう。現在GLTD制度を導入しているのは、大手企業の5社に1社以上。これはエンプロイーエンゲージメントにも直結するはずです。私はこれこそがGLTD制度という保険のコアバリューだと考えています。

またGLTD制度は、個人ではカバーできないリスクに企業のお金で備えることができます。これは他の福利厚生にはない大きな特色です。個人で生命保険や入院保険に入っている人はたくさんいますが、何年にもわたって備えている人はどれだけいるでしょうか。多くの人はこのリスクを認識できていません。仮に認識できても、個人保険でGLTD制度並の補償を得ることはまず不可能です。GLTD制度を導入している企業では、従業員から人事に「よくやってくれた」「これで安心して働ける」という声が数多く寄せられると聞いています。

――どのような企業がGLTD制度を活用されているのでしょうか。

金刺:創業当初は社会環境を背景になかなか思うように導入が進まなかったと聞いています。それでも外資系企業や労働組合や共済会、互助会などでの導入が始まり、2000年代以降はうつ病をはじめとするメンタルヘルスの問題が注目されるようになったことを受け、さまざまな業界で導入が進みました。直近5年くらいは健康経営意識の高まり、さらに同一労働同一賃金の観点から、これまであまり例がなかった運輸や飲食、サービス、小売といった非正規従業員の多い業界でも導入が広がっています。

GLTD制度は「長期間休んでいる人や、すでに退職した人に経済的な補償をする」仕組みです。現在は企業活動に寄与してない人にお金を渡すことを、受け入れがたいと考える企業もあるでしょう。それでも導入を決めた企業では、今まで一緒に働いていた仲間が窮地に陥っているときに見捨ててもいいのか、誰でもそうなるリスクがあるならみんなで支えることが本当に人を大切にするということではないか、と考えているのではないかと思います。こうした考え方が背景にあること自体が、GLTD制度がウェルビーイングを実現する重要な施策の一つであることを示していると言えます。

――GLTD制度の専門代理店として1,000社以上の導入実績をお持ちとうかがいました。導入にあたっての留意点や、代理店を選ぶ際に参考になる事例があればお聞かせください。

金刺:まず自社の人事課題がどんなもので、それを解決するためにGLTD制度がどう使えるのかということをしっかりシナリオ化することが大切だと考えます。GLTD制度を導入するためには当然コストが発生します。コンセプトや導入意義といったベーシックな部分を丁寧に提案してもらえる代理店を選ぶことが重要でしょう。

――そのあたりは豊富な導入実績、提案ノウハウをお持ちの貴社の強みですね。

金刺:当社は創業時から人事部向けにGLTD制度の提案に特化し、以後も人事部の痒いところに手が届くソリューションを開発・販売してきました。そのため、保険商品の販売や福利厚生のみの単独的な提案ではなく、各社の人事課題とひもづけた提案を得意としています。1,000社以上の豊富なケーススタディーやノウハウがありますので、他社の課題や事例を参考にしたいという声にもお応えできます。

――最近はどのような相談が多いのでしょうか。

金刺:たとえば大企業を中心に、働けなくなった場合に約3年間程度は健康保険や共済会などから給与を保障する仕組みを持った会社がありますが、社会の変化とともにこれを見直す動きが徐々に広がっています。

加えて、ここ数年は同一労働同一賃金による待遇差の改善が、就業規則自体を見直すきっかけになっています。改廃のみですと不利益変更と従業員側が捉えてしまうため、代替施策としてGLTD制度を活用する会社が増えています。今年に入ってからは、SDGsや健康経営のさらなる取り組み強化に向けて、幸福や平等性の観点から、GLTD制度を社外PRに活用する事例なども増えています。

GLTD制度をすでに導入されている会社や、導入を検討している会社からの相談として多いのは、受給する従業員への対応です。GLTD制度は長期間にわたって保険金が従業員個人に継続的且つ直接支払われるため、保険自体の運用はもとより受給する従業員の把握・管理・フォローが非常に重要なのです。

当社では保険金手続きをご支援し、従業員が元気になって復職できるようサポートします。これまでに延べ4万3000件以上、事例を扱っています。これだけの経験があるのは、数多い保険代理店の中でも当社だけでしょう。従業員本人やその家族から感謝の手紙をいただくことも多く、フォロー体制が企業からの信頼につながっていることを実感しています。

また、企業側も費用対効果の観点からも定期的に給付状態が可視化できる体制を持つことは非常に重要であると考えます。

――GLTD制度を導入し、ウェルビーイング推進の土台ができた企業は、次にどのようなことをすべきでしょうか。

鳥越:ウェルビーイングを増進させ、企業価値を高めるための取り組みは、GLTD制度以外にもいろいろとあります。エンゲージメントを定期的に計測・把握すること。福利厚生を充実させること。ストレスチェックやパルス調査を行うこと。また、身体の健康支援や休職・復職者のサポート。不備があれば、適切なアドバイスも必要です。こうしたウェルビーイング関連のさまざまなサポートも、当社はワンストップで提供できる体制を整えています。

――最後に、従業員のウェルビーイング実現に日々取り組んでいらっしゃる人事担当者のみなさんにメッセージをお願いします。

鳥越:これからの日本の大きなトレンドは、人口減少・高齢化による人手不足です。企業にとっては人的資産をいかに確保するか、そして十分に能力を発揮してもらうかが最大の課題となります。しかも、労働市場の流動性は高まり、従業員が企業を選ぶ時代です。働きがいがあり、成長できる環境があることを明確に提示できない企業は、やがて存続すら危うくなるでしょう。多くの企業がこのことに気づいていますが、打っている対策はかなり場当たり的といわざるをえないのが現状です。しかも、効果検証も十分なされていません。本来はデジタル化されたプラットホームで従業員のデータを一元管理し、そのデータをもとに施策を決め、PDCAを回していくべきです。当社はそういったお手伝いもしていますし、数あるソリューションの中でもいち早く取り組むべきなのがGLTD制度であると提案してきました。

GLTD制度による補償は企業にしかできないものです。逆にいえば企業が導入しなければ、不測の事態による長期休職や退職といった個人のリスクは放置されたままになってしまいます。日本では今ようやく大企業の5社に1社というレベルですが、今後は急速に導入企業が増え、やがて「常識」となっていくでしょう。その流れは私たちも肌で感じています。ウェルビーイングにつながる最初の一歩として、より多くの企業でGLTD制度という仕組みを活用してほしいですね。

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