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健康経営銘柄に選定された企業の取り組みとは~明電舎の事例~【前編】

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ここ数年で「健康経営」という言葉が浸透し、従来の従業員の健康管理から経営の枠組みの中で積極的に取り組みを進める企業が急速に増えています。その取り組みの外部評価制度として、「健康経営銘柄」や「健康経営優良法人」などの顕彰制度があり、その評価取得を一つの目標に掲げている企業も多いのではないでしょうか。

一方で、今年から本格的に取り組む、また初めて推進することになったというご担当者もいらっしゃるかもしれません。「なぜ健康経営に取り組む必要があるのか?」「自社にどんな価値をもたらすのか?どんな成果を出したいのか?」…。推進体制のつくり方や健康施策の進め方など、何を重点的に取り組むかは各企業の状況により様々です。

本記事では、「健康経営銘柄2021」に選定された株式会社明電舎様が登壇された当社のセミナー(7月27日開催)内容を編集し、同社のお取り組み事例についてご紹介します。
(株式会社明電舎 生産統括本部 安全衛生管理部 安全衛生統括課 酒井様にご登壇いただきました)

後編はこちら

「健康経営銘柄2021」に選定された明電舎

株式会社明電舎は、電力・エネルギーシステムや水処理システムなど、社会インフラを支える重電機器の製造やメンテナンス事業を手がけており、従業員数は連結で9,500名を超える大企業です。同社は、2019 年に健康経営宣言を行い、社員とその家族の健康を組織で支える活動を推進してきました。取り組みを強化した結果、「ホワイト500・健康経営優良法人2021(大規模法人部門)」の取得および「健康経営銘柄2021」に選定されています。健康経営銘柄においては初選定となりました。

同社の歴史をさかのぼると、健康保険組合の設立は大正15年、さらには昭和30年代より当時の品川工場に相談室を設置するなど、日本において極めて先駆的な取り組みを行っていました。当時の資料には、相談室設置の理由として、「不適応状態にあるものに解決への自主的援助を与えること」は「生産性への道に通ずる」とされています。そのためには「トップクラスの深い理解と援助が特に必要」であり、「職場の明朗化」に繋がると記載※があり、まさに健康経営の考え方がこの頃から根付いていたという事実には非常に興味深いものがあります。

そのような歴史もありながら、改めて同社は「健康経営」の取り組みを推進し、2019年度より、健康経営度調査のエントリーを開始しました。
※竹井英夫編(1961) 産業カウンセリング読本 社団法人 日本産業訓練協会

明電舎が健康経営に取り組む目的・背景とは

健康経営に取り組むにあたり、まず同社は会社の方針として、健康経営がどのように位置づけられるのか整理しました。「豊かで住みよい未来社会の実現に貢献する」ことを使命とする同社は、社会的課題の解決に積極的に寄与することを掲げています。

その「社会的課題」には、製造業としては欠かせない環境問題はもちろんのこと、間接的には健康問題も結び付くと考えたのです。明電舎の健康経営は「企業の持続的な成長」に寄与するためであり、それを実現するために「挑戦」をすることがあるべき姿であると考え、社内に発信しました。

また、健康経営に取り組むにあたり、どのような経営課題が解決されるかについても整理を行いました。健康経営を実施する意義として上位に掲げたのは、やはり「企業の持続的な成長」です。また「企業ブランドイメージの向上」、「組織の活性化」も実現していくことで、ひいては企業業績の向上、顧客満足度の向上、人材の採用・定着にも繋がっていきます。

これらは独立するものではなく、相互に作用しあっていくものだと同社は捉え、取り組みを進めることにしました。

明電舎の健康経営の実施による流れ

こうした整理を行ったうえで、明電舎は、自社の理念と、健康経営で問われる健康課題を照らし合わせ、以下の「5本柱」を設定しました。(参考:明電舎HP「労働安全衛生及び健康経営」

①「ワーク・ライフ・バランス」の実現に向けた、働き方改革の推進
②従業員一人ひとりの健康に対する意識とヘルスリテラシーの向上
③メンタルヘルス体制の強化とメンタル疾患を生み出さない職場づくりの推進
④タバコによる健康被害の防止
⑤健康問題の予防・対処のための健康診断・保健指導・予防支援の推進

その柱からさらに解決・改善すべき自社の課題を分類して、注力すべき項目を挙げ、優先順位を付けていきました。

推進部門のミッション設定と体制づくり

続いて、推進体制づくりについてご紹介します。明電舎は、健康経営がどういう意味を持つか、推進部門のミッションとしてどう位置づけられるのか、そのうえでどのような部門と連携して推進していくべきかを整理し、体制づくりを行いました。

同社は、安全衛生部門・人事部門に加え、労働組合、健康保険組合でコラボヘルス委員会を組織化するとともに、卒煙プログラムや保健指導、がん対策、心の健康づくりに関する各分科会も構成しました。活動の母体が決まったところで、実効性を高めるためにどうすれば良いのかを考えた同社は、労働安全衛生に関わるISOのプロセスに埋め込む方針を掲げました。

安全と健康を結び付け、既存のプロセスと関連づけることで、活動の効率化を目指したのです。その際、ISOになじみのない産業保健スタッフに対して、教育も行っています。普段接点が無い医療職の方々と理解し合えるよう、専門知識を学んで共通の話題をつくるなど、関係部門協力のための努力は惜しみませんでした。

このように、健康経営に取り組み、体制づくりを進めていった明電舎ですが、その後どのように推進していったのでしょうか。後日公開する後編にて、明電舎の具体的なお取り組み内容についてご紹介します。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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