健康経営銘柄2022にみる選定企業のポイントとは?

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健康経営銘柄とは?

経済産業省が東京証券取引所と共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定し、公表するものです。

企業の健康経営の取り組みが、株式市場等において適切に評価される仕組みをつくるべく、2015年より開始した顕彰制度です。本制度は日本再興戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つとして始まったことが開始の経緯です。

2022年に3月にも「健康経営銘柄2022」として32業種50社が選定されています。

健康経営とは?

「健康経営」とは、従業員等の健康管理を単なる人事・労務管理と捉えるのではなく、利益をもたらす経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。

健康経営を実践した企業が得られる効果としては、従業員個人の活力向上だけでなく、組織の生産性の向上、コミュニケーション活性化などからのエンゲージメントやロイヤリティ醸成など、個人・組織双方への効果があり、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されています。

経済産業省が奨励していることや、実際に健康経営を実践する企業の良い事例が増えてきたこともあり、近年は企業理念に健康経営を明文化して、積極的に取り組む企業が増えつつあります。

健康経営銘柄の選定基準は?

選定のポイントは以下3点です。

① 上場企業で「健康経営度調査」に回答し上位20%以内に入っており、かつ選定要件を満たしていること
② ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上または直近3年連続で下降していないこと
③ 重大な法令違反がないこと

選定方法

まず、毎年上場企業へ配布している「健康経営度調査」に回答することが必須となります。その回答内容を元に、健康経営度調査が回答企業の上位20%に入ること、かつ必須項目をすべて満たすことが条件です。ただし、重大な法令違反等があれば選定対象から除外されます。

次に、東証における財務指標スクリーニングが実施されます。その条件は以下です。

◎ROE(自己資本利益率)の直近3年間平均が0%以上または直近3年連続で下降していない
◎ROEが高い企業には一定の加点を行う
◎前年度回答企業に対しても一定の加点を行う
◎社外への情報開示の状況についても評価を行う
◎33業種毎原則1社の選定を予定(該当企業がない場合、その業種からは非選定)
◎各業種最高順位企業の平均より優れている企業についても銘柄選定候補とし選定

1業種1社の制限はあくまで原則であり、近年は同業種から複数企業が認定されることもあります。

健康経営銘柄2022に選ばれた企業

2022年3月に健康経営銘柄に選定された企業は以下のとおりです。今回は32業種50社と多くの企業が選定されました。

企業一覧

健康経営銘柄選定企業の施策・事例を紹介

ここで、健康経営銘柄2022選定企業の取組事例を4社紹介します。

<オウンドメディアで社員にスポーツの楽しさを発信。グループウェアのログ情報解析、有給休暇取得の月ごと確認などで、有給取得率を向上>
スポーツウェアメーカーG社では、経営トップが「仕事と遊びに境界を引かない暮らしを営む」という強いメッセージを発信。社員のスポーツ参加を多面的にサポートしています。オウンドメディアではスポーツする社員の豊かなライフスタイルを発信し、スポーツの魅力を継続して伝えています。

勤怠管理面ではグループウェアのログ情報解析による労働時間のチェック体制を構築。有給休暇取得も月ごとに確認し取得を促した結果、年次有給消化率75%以上の目標を達成しました。

また、カウンセラーや産業医とのオンライン面接環境の整備、キャリア相談室、キャリアワークショップを導入したところ、コロナ禍の社員の不調・不安の受け皿として機能したことから、今後はコミュニケーションプラットフォームに発展させる方針です。

<禁煙チャレンジやウォーキングキャンペーン導入で着実にステップアップ中。喫煙率は16%も低下>
製薬メーカーのK社では、健康経営を実現するためには一人ひとりがワクワク感をもって行動変容を行うことが重要だと考え「Wellness Action 2025」を発表し、具体的な施策に取り組んでいます。2019年から「禁煙チャレンジ」「ウォーキングキャンペーン」を導入。

非喫煙者の採用促進と、喫煙者が自ら禁煙開始日を宣言する禁煙チャレンジによって、喫煙率が開始前より16%低下し、労働生産性の観点から投資額に対し60倍の効果が得られたとしています。また、コロナ禍で外出制限があるなか、身体活動の機会をつくるため取り組みやすいアクションプランを設定。

全社的なウォーキングキャンペーンにおいて「2025年:平均歩数5,000歩かつ参加率80%以上」という明確な目標を掲げたことで、従業員の7割を超える3,000人が参加するようになり、キャンペーン後の1日平均歩数は期間中と比べ約1.2倍になりました。

<オンラインフィットネス、社内スポーツジム、スマートミールの導入などで適性体重維持者が増加>
機械メーカーA社では、CHOを務める経営トップのもと全社一丸で健康維持・増進活動に取り組んでいます。従業員の十分な休息の取得が生産性やモチベーション向上につながるという考えから、有給休暇を「スマイルホリデー」と名付けて重視し、積極的な取得を奨励。

健康アンケートの結果、40歳以上の肥満者割合(BMI25以上)が多かったため、生活習慣改善のアプローチとして「オンラインフィットネスのトライアル」「ウォーキングイベント」などの運動機会を提供。「社内スポーツジムの開設」「スマートミール導入」なども進めました。

このような取り組みによって、適性体重維持者率は前年度対比1.7ポイントに上昇。従業員全体の健康意識向上につながりました。また、コロナ禍におけるコミュニケ―ション方法として「オンラインランチプロジェクト」を立ち上げ、部門を超えたコミュニケーション活性化を推進しています。

<メンタルヘルス対策を一律対応から個別対応に転換、メンタル不調者割合を低減>
海運会社S社では、人事部門・専門職・職場の三者連携で主体的な健康づくりを加速させ、一体感のある組織風土づくりを進めています。

重点課題として取り組んでいるメンタルヘルス対策では、一律的なサポートではメンタル不調者の復職が難しい傾向があったため、個別対応と各個人のマネジメント力向上に注力する方針に転換。医務室メンタル部門と連携し「継続的なセミナーの実施」と「個別支援」を充実させています。

また、約200人の海外勤務者に個別ケアを行うなど、コロナ禍における個人の状況に向き合った対応により、2020年5月に5%だったメンタル不調者の割合が同年度末は2%に改善。プレゼンティーズム(何らかの健康の問題があり生産性が低下している状態)割合も7.3ポイント減少しています。

参考・引用:健康経営銘柄2022選定企業紹介レポート

まとめ

いかがでしたでしょうか。上場企業であれば、健康経営銘柄の取得対象となります。健康経営銘柄、健康経営優良法人の上位「ホワイト500」などに認定されると、企業の看板や名刺などにロゴマークをつけることができます。

健康経営を行っていることをアピールすることにより、企業のイメージ向上や人材採用力の向上につながり、他社との取引が有利になる等の効果が期待されます。またそれが株価の上昇にも影響を及ぼしうるので、真に従業員の健康への投資が企業価値の向上・業績向上にも繋がりやすい顕彰制度ともいえます。

すでに「健康経営優良法人」を取得された上場企業の皆様、次なるステップとして、歴代の健康経営銘柄取得企業の事例を参考に、自社に合った取り組みで「健康経営銘柄」の取得を目指してみてはいかがでしょうか。

健康経営は長期的な取り組みであり、成果が見えづらい面があります。数値や取り組みの経過が客観的に判断される健康経営銘柄に選定されれば、その後の取り組みへの自信と確証を深められるでしょう。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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