「キャリア支援って本当に必要?」企業がキャリア開発を推進すべき理由とは

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新年度が始まり、異動や昇進、転職等、新たなキャリアがスタートする時期になりましたが、皆さんは「キャリア」に対して、どんなイメージをお持ちでしょうか?本稿では、「キャリア」とは何か、企業や従業員にとってどんな意味を持つのかについてご紹介したいと思います。

皆様の会社では、次のような困りごとはございませんか?
・職場環境や仕事そのものに関してネガティブな要因はみられないのに、特に若手層が定着しない
・事前相談なしに辞めていく社員がいる
・離職が続くことによって部署や上司が教育に対してあきらめ感を感じている 

上記は、日頃、コンサルタントとして様々な企業のストレスチェック結果を分析している中でみられる、いくつかの企業で共通した困りごとのパターンのうちの一つです。また、そのような組織では、ストレスに問題はない一方でエンゲージメント(仕事熱意度)が低い状態になっていることが多いです。

具体的には「心身の不調は少ないものの、与えられた仕事を淡々とこなしている状態」「不活性人材が多く、仕事に対する自発的な工夫や取り組み、熱意が少ない状態」となっている組織が多く、そのような状態を改善して会社として生産性を高めていきたいが、どのようにしたら従業員のエンゲージメントが上がるのかわからない、といった状況もよくお聞きします。

そのような企業では、従業員が「意欲を引き出したり、キャリアに役立つ教育が行われている」「若いうちから将来の進路を考えて人事管理が行われている」との認識を持てず、「今の会社の方針(経営・事業内容等)は、自分の方向性(どうありたいか、どうしていきたいか)と一致している」「今の会社にいれば、自分の今後の見通し(スキルアップ、キャリアアップ等)が立てられる」との思いを抱けない状況が良くみられます。

その結果、従業員が自分の今後の方向性が見えなくなり、日々の業務に意味を見出せなくなったり、従業員が目指すべき像がはっきりせず目標や方向性を見失ってしまったり、会社として求める人材像やビジョンが浸透せず人材育成・確保が難しくなったり、といったリスクにつながる恐れがあります。

「キャリア支援」について、どんなイメージを持っていますか?

その場合、企業に対して改善策として提案することが多いのは、「従業員へのキャリア支援の強化」です。

しかし、それに対して「従業員に“キャリア”について考えさせても、本人の希望通りに昇進や異動をさせてあげられるわけでもないし意味がないのでは…」「“キャリア”なんて会社から支援するものではなく、個人で自ら考えるものだと思っていますが…」といった意見を頂戴することがあります。

複数の企業とこのようなやりとりをさせていただいたことから、「キャリア」というものが非常に狭い意味でとらえられており、従業員のキャリア開発の重要性が十分に知られていないのではということに気づき、非常にもったいない、と感じました。

このことから、本稿では誤解されがちな「キャリア」について定義を明確にし、企業がキャリア開発を支援することによってどんないいことがあるのかについてもお伝えできればと思います。

誤解されがちな「キャリア」の定義 「出世」「昇進」だけではない?

実は、キャリアとは社内での「出世」「昇進」のみをさす概念ではありません。「キャリア」(career)という言葉は、中世ラテン語の「車道」を起源とし、英語で、競馬場や競技場におけるコースやそのトラック(行路、足跡)を意味していました。

そこから、人がたどる行路やその足跡、経歴、遍歴なども意味するようになり、このほか、特別な訓練を要する職業や生涯の仕事、職業上の出世や成功をも表すようになりました。

つまり、「キャリア」という言葉は、本来は人の人生全体を含むものであり、広義の「キャリアプラン」を描くことは、従業員にとって人生において目指したい方向性についての自己理解を深め、その中で重要な役割の一つとしての「仕事」に取り組む目的や意味、働きがいについて検討することです。

その結果、「昇進」「出世」に限定されない人生の目標や活躍の選択肢に気づき、より人生や仕事に対して主体的に取り組めるようになるのです。

キャリア開発を企業が支援すべき理由 その1:法的な根拠

企業が従業員のキャリア開発を支援するメリットの前に、まずは法的なところについて押さえておきましょう。2016年4月、職業能力開発促進法の改正により、キャリア開発支援の考え方に大きな変化があったことを、皆さんはご存じでしょうか。具体的には次の2点です。

①労働者は自発的に自らのキャリアデザインを行い、キャリア開発していく立場にあること  
②事業主は、労働者が取り組むキャリア開発の設計・目標設定、そのための能力開発の支援を行うことが(努力)義務であること 

つまり、キャリア開発の主体が従業員側にあること、そして企業はそのための支援をすることが求められるということは、法律上明文化されているのです。

キャリア開発を企業が支援すべき理由 その2:従業員と企業側双方のメリット

この法改正の背景には、キャリア支援は従業員側、そして企業側両方にメリットがあるという考えがあります。従業員一人一人のキャリア開発が進むことは、従業員の仕事に限らない人生の目的を明確にしたり、豊かにしたりすることにつながります。

つまり、自分で自分の人生の舵をとり、やらされ感ではなく自分の意志で主体的に仕事や人生に向かう従業員が増えるということです。その結果、人材の定着や従業員の意識向上を通じた組織活性化、生産性の向上につながり、それは企業にとってもメリットになるのです。

なかには、「従業員にキャリアを考えさせると離職につながるのでは」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、個人のキャリアがすぐには叶わないからといって、離職に直結するわけではありません。

キャリア支援の中では、いかに個人のやりたいことと、会社の方針や求めることをすり合わせていくかという観点も重要になります。

個人の思い通りになるならないは別として、すり合わせのための対話を真摯に重ねること自体が、「会社は一人一人を大事にし、キャリアに配慮してくれている」という経験になり、会社への帰属意識や貢献意欲につながるのです。

そのようなメッセージを伝えるためにも、まずは企業側が率先して、キャリア開発を支援する制度を準備することが重要です。

「キャリア支援」の難しさ、負担感

とはいえ、どのような形で従業員のキャリア支援を行っていけばいいのか、急に支援制度を求められてもイメージできない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。一つの手段として、部下のキャリア開発のための面談を管理職の役割として規定する場合もあります。

しかしどんなに必要性を理解していたとしても、「ご自身が上司にやってもらった経験がないことでも、今の世の中では必要なので、部下にやってください」と急に求められる管理職の方のご負担は非常に大きいと思います。

「業務上のアドバイスならまだしも、部下の人生全体の目標や目的に関わるなんて荷が重い…」「自分は出世や昇進を目指すことに迷いはなかったが、そういったことに興味がない部下に対してはどうすればいいんだろう…」と不安やお悩みを抱えられる方もいらっしゃるかもしれません。

厚労省が推奨するキャリア開発制度「セルフ・キャリアドック」とは

そんなときはぜひ、キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーといった専門職を活用してください。専門職を活用しながら行うキャリア開発制度で、厚生労働省が推奨しているものに「セルフ・キャリアドック」というものがあります。

セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組み、また、そのための企業内の「仕組み」のことです。

詳細や具体的な導入事例については、厚生労働省「セルフ・キャリアドック 普及拡大加速化事業 好事例集 」をご覧ください。

ただ、このセルフ・キャリアドック、特に「(2)キャリアコンサルティング」の『一対一の面談』のなかで、一体どんなやりとりがなされるのか、イメージしづらい方も多いのではないでしょうか。そこで、次稿では、具体的な事例をもとに、キャリア支援についてさらに理解を深めていきたいと思います。

・参考資料・サイト
渡辺三枝子編著 「新版 キャリアの心理学 キャリア支援への発達的アプローチ」, ナカニシヤ出版, 2018年7月27日
キャリア形成サポートセンター
https://carisapo.mhlw.go.jp/
キャリア形成支援政策と企業内キャリアコンサルティング
https://www.jil.go.jp/event/ro_forum/20180216/resume/02-seisaku-matsuse.pdf

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 コンサルタント

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