在宅勤務の部下を襲う「コロナうつ」上司が取るべき4つのサポート

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新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、従業員へ在宅勤務や自宅待機を指示する企業が増えています。オフィスへの出社が制限されることで、働き方が変わりストレスを感じている人も多いのではないでしょうか。

一方で、医療従事者や自治体の担当者、生活必需品の販売従事者などで、「外出を控えたいけど、自宅で仕事をすることはできない」ために、感染への不安やストレスを抱えながら働いている人も増えています。

ここでは、このようなストレスを「コロナストレス」と呼ぶことにしましょう。人間はコロナストレスがたまると、気分の落ち込みや意欲減退や眠れないなどの症状が体に現れ、「コロナ疲れ」に陥ります。そして、コロナ疲れの対策を講じないと「コロナうつ」になる可能性があります。

そこで今回は、「なぜコロナうつになってしまうのか」「働く人がコロナうつにならないためにどんな対策をとったらいいか」についてお話しします。

人間は脅威に遭遇すると「闘争・逃走反応」が起きる

ストレスの原因を「ストレッサー」といいます。人間の脳はストレッサーを認識すると「闘争・逃走反応」が起こります。

たとえば、あなたが森の中を歩いていたときにクマに遭遇したら、どうするでしょうか。「クマに遭遇する」という日常生活では考えられない厳しい状況に置かれると、人間は脅威を感じます。

人間はこうした脅威に遭遇すると、自分の身を守るために(ロールプレイングゲームの世界と同様に)「たたかう」か「にげる」を選択しようとします。つまり、その脅威は脳から自律神経に伝えられ、すぐに動けるよう体が緊張して心臓の鼓動は速くなり、血圧が上がります。

また、相手をよく見るために瞳孔は拡大し、呼吸は激しくなります。さらに、手足の発汗や体の震えが止まらなくなります。これが闘争・逃走反応です。

「たたかう」を選択した場合、クマに勝てば闘争・逃走反応は解消されます。「にげる」を選択した場合、クマから逃げ切ることができれば闘争・逃走反応は解消されます。

「闘争・逃走反応」を我慢し続けると「うつ」状態に陥ってしまう

職場で「ストレッサー」に出会った時は、何が起こるでしょうか。職場では、「たたかう」や「にげる」を選択するのは現実的ではありません。上司から厳しいことを言われたときに上司と「たたかう」、つまりケンカをするわけにはいきません。

また、「にげる」ためにその場で辞表を出して仕事を辞めることも少ないでしょう。多くの人は、上司に厳しいことを言われても、「じっと我慢する」のではないでしょうか。

つまり、闘争・逃走反応を解消せずに我慢し続けるという選択を取ります。これがストレスを生み、ストレス状態が続くことで職場に来られなくなり、ついにはうつ病などのこころの病で休むことになるのです。

それでは、今世界中で大流行している新型コロナウイルスに対しては、どのように反応している人が多いのでしょうか。

「コロナうつ」の原因はコロナ疲れの長期化

新型コロナウイルスというストレッサー(脅威)に対しては、多くの人が「にげる」を選択し、外出の自粛や自治体からの要請による休業などを実行しています。また、企業は従業員へ在宅勤務や自宅待機を指示し、感染拡大を防止しようとしています。

しかし、「にげる」を選択してもストレッサーから完全に逃げ切るまでは闘争・逃走反応が続きます。すると、次第に従業員の間には次のようなネガティブな感情が増幅してきます。

・「この状況はいつまで続くのだろう」という不安感
・「自分ではどうしようもない(解決できない)」という無力感
・「在宅勤務はいつもとやり方が違って難しい」という負担感
・「自分は自宅で仕事をサボっている」という罪悪感

これらの感情がコロナストレスを生み、長期化することでコロナ疲れに陥るのです。そして、コロナ疲れを放置していると、コロナうつにまで発展してしまいます。

在宅勤務が「コロナうつ」の社員を生み出しやすい理由

このような非常事態の中、部長や課長などいわゆるマネジメント層と呼ばれる組織の管理監督者に求められているのは、部下のケアです。在宅勤務や自宅待機では、会議や「ホウレンソウ」などの情報共有を対面では行えません。多くの方は、メールや電話、オンラインミーティングで代用するでしょう。

こうした非対面のコミュニケーションには、デメリットがあります。今まで直接部下の顔を見たり、リアルな声を聞いたりすることで、「いつもと違うな」と部下の不調に気づくことができた人も、部下の不調を見落としてしまうケースが増えてしまうのです。

そこで、在宅勤務中でも部下の心身の健康状態を確認する具体的方法を紹介します。

部下のコロナうつを防ぐため上司は「心身の健康状態」をチェック

まずは、部下へ次の3点を伝えましょう。「部下のプライベートを侵害するつもりはない」ということを理解してもらうことがポイントです。

・ 仕事環境の変化が心身の健康に影響を与えること、「今、あなたのことを心配している」ことを伝える
・ 「あなたの健康状態を確認したい」ことを伝え、本人の了承を得る
・ プライベートの事情や家族の内情など「話したくないことは話さなくていい」ことを伝える

そのうえで、部下の心身の健康状態を確認してください。ちなみに、労働契約法第5条で事業者には労働者に対する「安全配慮義務」が課されています。

部下の健康状態を確認せずに、部下が不調になった場合に「債務不履行」や「不法行為」で訴えられるケースがあります。

部下の心身の健康状態は以下の3点に絞って確認します。具体的に話を聞くことが大切です。

・生活習慣(睡眠の状況、食事の状況や食欲、運動の状況)
・体の症状(頭痛や肩こりがないか、消化器系の症状、疲れの状況)
・困っていることや悩み(仕事や家庭・プライベート)

もし部下の不調につながるような気づきがあった場合は、まずは部下自身からの相談を受けましょう。

普段の職場で相談を受ける場合は、上司が声をかければ、すぐに部下からの相談されることが多いかもしれませんが、在宅勤務の場合は家族の問題や家計の問題などプライベートの事情も絡んでいるので、部下から相談しにくいとも考えられます。そこで次の3点に注意して相談を受けてください。

・あらためて「今、あなたのことを心配している」ことを伝え、仕事上で困っていることがないか確認する
・併せて「仕事上でサポートできることがないか」を確認し、のちほど説明する「4つのサポート」を的確に与えるよう心掛ける
・プライベ-トの相談を受ける場合は、(ケースバイケースですが)「問題解決につながらないかもしれない」「聞くだけになるかもしれない」ことを前提に聞き、入り込みすぎないように注意する

相談を受けたうえで、自分では対応できないと判断した場合は、上長に相談してサポートを受ける、または組織内の産業保健スタッフにつなげます。なお、「部下の物理的な職場環境や情報リテラシーは個人によって違う」ことを理解し、特に部下が仕事におけるハード面で困っていることを詳しく聞き取るようにしましょう。

在宅勤務中、上司が部下にするべき4つのサポート

部下から仕事で困っていることや悩みを聞き取りしたときは、「4つのサポート」で部下のコロナストレスを緩和しましょう。4つのサポートとは、「情緒的サポート」「情報的サポート」「道具的サポート」「評価的サポート」です。

具体的に説明していきましょう。「がんばってるね」「お疲れ様」などと声かけをしたり、「大変だよね」「感染拡大が終わるまでの辛抱だよ」などと慰めをしたり、その人の愚痴を聴いてあげるなど、本人の情緒を安定させることを目的にしたサポートが「情緒的サポート」です。

そして、本人の普段の仕事のことで効率的な仕事の進め方についてアドバイスをしたり、「この仕事は○○さんが詳しいから聞いてみたら」と本人が必要とする専門家を紹介したりするなど、問題解決に役立つ情報を与えるのが「情報的サポート」です。

また、本人の仕事を職場のメンバーで手伝うなど、問題解決のために直接本人に物質的な手助けをするのが「道具的サポート」です。

さらに、「よくがんばったね」「いつも助かっているよ」と本人の努力をほめたり、仕事の結果を適切な人事考課で評価したりするなど、仕事の良い点や適切さを本人にフィードバックするのが「評価的サポート」です。

この4つのサポートを効果的に部下に与えることで、在宅勤務や自宅待機で部下が抱えているコロナストレスを緩和していくことが重要です。

部下とのリモートコミュニケーションで注意すべき3つのポイント

最後に、在宅勤務や自宅待機をしている部下とのコミュニケーションで注意すべきポイントを3つ紹介します。

1つ目は、「在宅勤務や自宅待機をすることの意義について理解させる」ことです。在宅勤務や自宅待機が感染拡大の防止につながること、組織としてのリスク対策として長期的な利益になることをしっかり伝え、「自宅にいることに意味がある」と自覚させてください。

2つ目は、「リアルなストレスとバーチャルなストレスがあることを理解させる」ことです。

慣れないリモートの仕事が難しい、お金に困っている、家族の人間関係がうまくいかないなどのストレスは、仕事に慣れる、お金を借りる、家族との関わり方を変えるなど、自分の行動を変えることで軽減できます。これがリアルなストレスです。

ところが、「自分も感染して病気になるのではないか」「外出の自粛はいつまで続くのだろう」「これから日本の経済はどうなるのだろう」などの不安は、行動ではなく「自分の考え方」を変えないと軽減できません。

このようなバーチャルなストレスについては、「連日状況が悪化しているようなネガティブな情報を刷り込むようなニュースや報道番組を見すぎない」ことをアドバイスすることも必要です。

3つ目は、勤務が元に戻ったときのために「出勤していたときと同じ規則正しい生活を送るのが大切だと理解させる」ことです。

「外出の自粛はいつまで続くのだろう」などというバーチャルなストレスに結びつくネガティブな考え方は、規則正しい生活を送ることを阻害する要因になります。

「出口のないトンネルはない」「春の来ない冬はない」「いつかは元の生活に戻れるだろう」というポジティブなつぶやきを自分で言い聞かせせるようアドバイスし、少しでも早く職場に戻る準備を促すことが部下に対して上司が今やるべきことでしょう。

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【筆者プロフィール】

キティこうぞう(本名:鬼頭 幸三)
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント シニアコンサルタント
1987年株式会社名鉄百貨店入社。労働組合の役員を10年以上、また、2000年からの6年間は、名鉄百貨店労働組合執行委員長を務め、社員のカウンセリングにも関わる。その後、同社人事部で、採用および社員の人材教育・キャリア開発に従事。
アドバンテッジリスクマネジメント入社後は、労働組合や人事部での経験をもとにした、コミュニケーションやメンタルヘルスに関する研修や講演を行っている。

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