健康経営における「ストレスチェック」の活用方法と活用事例

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健康経営とは

「健康経営」とは、「従業員の健康保持・増進の取り組みが、将来的に収益性を高める投資であるという考えのもと、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践すること」です。

具体例としては、経営者の「健康宣言」の下、以下のような取り組みがなされています(一例)。

予防・健康分野
•従業員の健康状態の把握
•健康増進に向けた取り組みを推進する上での体制整備
•生活習慣病対策やメンタルヘルス対策

働き方改革の流れに絡めた労務視点も加わった施策・運営
•時間外労働削減対策
•有給取得推進
•睡眠・休養の推進
•ハラスメント防止対策

健康経営度調査票の中の「メンタルヘルス」

健康経営に取り組む優良な法人に対する顕彰制度である「健康経営銘柄」「健康経営優良法人(ホワイト500)」の認定にあたり、必須となるのが「健康経営度調査票」の提出です。
※詳しくはこちらの記事をご参照ください
健康経営優良法人の認定にも使用されている「健康経営度調査」とは?

本記事では、この調査票の中にも設問として設定されている「メンタルヘルス」問題について、「ストレスチェック」を活用しながら健康経営に取り組む方法や意義についてご紹介していきます。

●健康経営度評価上位20%の企業ほど、「ストレスチェック」を活用しながら「メンタルヘルス」対策に取り組んでいる!

平成30年度健康経営度調査結果より、Q29(「従業員の健康保持・増進における課題」について、「課題の具体的な内容」「目標の具体的な内容」「課題に対応する施策と効果」を自由記述)の回答割合から、各評価を受けている企業が、重要な課題3つまでのうち、どの課題を選んでいるかがわかります(下図)。

こちらの設問は、具体的な目標や施策と効果までを自由記述する必要があり、企業ごとのオリジナリティをアピールできるとともに、具体的な改善活動と効果検証に取り組めているかが重要になる設問です。

こちらの設問で、健康経営度評価上位20%とそれ以外の差が最も大きい課題は、「ストレス関連疾患の発生予防」です。上位20%とそれ以外の企業との大きな相違点として、「ストレス関連疾患の発生予防」を企業の重要な課題として取り上げ、具体的な改善に取り組んでいるかどうか、という点が挙げられます。

「ストレス関連疾患の発生予防」として有効な取り組みの1つが、集団分析や職場ごとの改善活動等のストレスチェックの活用です。そもそもストレスチェックはメンタルヘルス予防の1次予防(メンタルヘルス不調となる前に何らかの対策を取り、不調そのものを予防するための取り組み)を目的に義務化されています。

決してメンタルヘルス不調のリスクがある人のスクリーニングテストのみが主目的ではないのです。そのため、ストレスチェックの意義を正しく理解し、集団分析や組織ごとの改善に取り組むことで、「ストレス関連疾患の発生予防」にどれだけつなげられるかが重要になってきます。

もしも「ストレスチェックは義務だから毎年調査しているだけ」「特にその後の活用をしていない」ということであれば、非常に勿体ない状況です。集団分析をし、メンタルヘルス不調のリスクが高い属性や部署に共通の原因はないか、どうすれば改善できそうか、職場ごとに合わせた施策を検討・実施し、その結果をまた次のストレスチェックで効果検証する。

このPDCAサイクルを意識してストレスチェックを活用した組織改善に取り組むことで、「ストレス関連疾患の発生予防」につながるだけでなく、「課題の内容」「目標」「施策・効果」という、健康経営度調査票に記入しやすいデータがセットで手に入り一石二鳥です。

経済産業省 健康経営度調査結果集計データ(平成26年度~30年度)を加工して当社作成

●ストレスチェックの活用事例

では具体的に、健康経営銘柄を取得している企業が、ストレスチェックを健康経営にどのように活かしているのかを見ていきましょう。

健康経営優良銘柄2019に選出された37社中、「メンタルヘルスケア」を健康経営の指針や取り組みに明記していたのは29社でした。そのうち、ストレスチェック結果を個人・組織の状態把握・改善に活用していると明記している企業は12社でした(当社調べ)。

活用例①:ストレスチェックの指標を組織改善の目標数値に設定
(高ストレス者割合、その他独自の指標「メンタルタフネス度」等)

活用例②:ストレスチェック結果を集団分析し、高リスクと判断された部門に、課題に応じて必要な研修・セミナーを実施。またストレスチェックとあわせてストレス対処力の測定を行い、その結果をもとにメンタルヘルスケアの集合研修を実施。

活用例③:ストレスチェックの集団分析に基づき、厚生労働省が提案している『職場環境改善のためのヒント集』を活用し、部署ごとに改善目標を策定して改善活動を実践。

活用例④:ストレスチェックの結果と、社員や組織の活性度を測る社員の意識調査を掛け合わせて職場単位で見える化し、ストレス面だけでなくやりがい向上や活性化につなげる。

共通点は、どの企業も、ストレスチェックを個人のセルフチェックとしてだけ活用するのではなく、集団分析(属性ごと、組織ごとの見える化)を実施することで組織改善活動の材料としても活用していることです。このような取り組みのうち、1つでも実践できることがあれば、取り組んでみることをお勧めします。

従業員ひとりひとりの「健康」を目指すのであれば、「こころ」の状態と「からだ」の状態、両方の視点を持つことが重要!

「健康」と言うと、一般的にイメージしやすく、個人や企業が取り組みやすいのは「からだの健康」の方ではないでしょうか。先ほどのグラフでも、「メンタルヘルス関連疾患」よりも「生活習慣病等」のフィジカル面の発生予防・重症化予防の取り組みの方が、多くなされている現状があります。

その理由が、「取り組みやすいフィジカル面からやっていく」「メンタル面に喫緊の課題が見られない」であればまだよいのですが、中には「メンタル面の施策を企業としてどうやったらいいかわからない」「こころの問題は個人の問題だから、企業がやる意味があるのかわからない」といった理由で、対応が後回しになっているかもしれません。

しかし、「からだの健康」と「こころの健康」は切っても切り離せないものである、ということはどの程度認識されているでしょうか。

●「心身相関」から見た「健康」

人間の「こころ」と「からだ」、いわゆるメンタルの側面とフィジカルの側面は、密接に関連しています。このことを専門用語では「心身相関」といい、「こころ」と「からだ」は相互に影響を及ぼし合うため、どちらか一方が変化すると、もう一方もそれに伴ってしばしば変化すると言われています。

私たちの実際の生活でも、「緊張すると汗をかく」や「運動すると気持ちがスッキリする」等、心身相関が起こっている場面は極めて多く、「病は気から」という言葉もあることから、私たちにとって身近な考え方とも言えます。

このように「こころ」と「からだ」は影響し合っているため、人間には、「こころ」起因の「からだ」の症状も、「からだ」起因の「こころ」の症状も両方起こります。

どちらか一方のみが健康になっても、片方が不健康であれば、その影響を受ける可能性があります。そのため大事なのは、「こころ」と「からだ」は影響し合うことを認識し、双方のトータルバランスが「健康」であることを目指すことです。

健康経営の取り組みも、顕彰制度への認定そのものが目的なのではなく、その取り組みを通して真に従業員ひとりひとりの健康を目指すことが、本来の目的です。気づけば取り組みやすいフィジカル面の施策ばかりになっていないか、今一度現状を振り返っていただければと思います。

従業員の「こころ」と「からだ」、両方の視点から「健康」をとらえ、真の「健康」を実現する意識付けや仕組み作りにつなげていきましょう。

【筆者】株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
組織ソリューション部 コンサルタント

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「個と組織の未来基準の元気を創る」トピックスをお届けします。

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