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ストレスチェックは労働安全衛生法で定められた義務!【ストレスチェック徹底活用コラム】

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労働安全衛生法の改正で「ストレスチェック」が義務化

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を確保し、快適な職場環境を整えることを目的とした法律です。

2014年、労働安全衛生法の一部が改正され、その中で、社会的に問題となっている「受動喫煙防止措置の努力義務」や「重大な労働災害を繰り返す企業への対応」などと共に、労働者に対する「ストレスチェック及び面接指導の実施」が事業者に義務付けられました。

この法改正の背景の一つとして、自殺者数の増加(ピークの2003年には34,427人。警察庁「自殺統計」より)に見られる「メンタルの問題」が挙げられます。厚生労働省が公表した「平成28年人口動態統計月報年計(概数)」では、15~39歳の死因のトップ、40代では2番目に高い死因を自殺が占めています。

また、近年の自殺者数は減少傾向にあるものの、うつ病などの精神疾患を抱える人の数は400万人に迫っており、「平成28年度 過労死等の労災補償状況」は1,586件と過去最高となっています。

これまで厚生労働省では、「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、労働者のメンタルヘルスケアについて「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」および「事業場外資源によるケア」の4つのケアを、継続的かつ計画的に行うよう指導してきましたが、労働安全衛生法の改正によって、事業者にはより積極的に労働者の心の健康を保つことが求められるようになりました。

ストレスチェックを実施しないとどうなる?

ストレスチェックの実施義務を負うのは常用労働者が50人以上の事業場と定められていて、50人未満の事業場は努力義務とされています。実施義務のある事業場は年1回以上ストレスチェックを実施し、事業場を管轄する労働基準監督署に実施報告書を提出しなければなりません(労働安全衛生法第100条)。

第1回目のストレスチェック実施期間は2015年12月1日から2016年11月30日までと決められていましたが、第2回目以降は、前回のストレスチェックから1年以内に行う必要がありますので注意しましょう。

ストレスチェックを実施しなかった(できなかった)場合の具体的な罰則規定は現在のところ明確に定められてはいません。

しかし、ストレスに起因する事故が発生した場合、事業者には安全配慮義務違反による損害賠償や労災認定などの責任が問われることになりますし、労働基準監督署が事業者名を公表することもあります。

さらに、ストレスチェックを実施していなくても、実施報告書を提出しなければなりません。報告書を提出しなかった場合は、罰則規定により50万円以下の罰金が科せられます(労働安全衛生法第120条5項)。

また、労働者の同意を得て事業者に提供されたストレスチェックの結果を5年間保存することも義務付けられており、これを怠った場合も罰則の対象となります(労働安全衛生法第120条1項)。

法律で定められた事項を遵守し適切に運用することは、事業者にとって対外的・対内的なメリットがあることですので、ストレスチェックの実施義務がある事業場はきちんと行うようにしましょう。

なお、ストレスチェックを実施することは事業者側の義務ですが、労働者側はストレスチェックを受けることが推奨されてはいるものの任意となっており、事業者が労働者に受検を強制することはできません。

労働者がストレスチェックを受けなかったとしても、事業者が労働者の安全に配慮する義務がなくなるわけではないため、ストレスチェックを実施する際は、制度に対する理解と協力を求める姿勢が大事になります。

ストレスチェックは実際にはどんなことをするのか

ストレスチェック制度の目的は、労働者のメンタルヘルス不調を未然に防止すること(一次予防)です。

ただ単にストレスチェックを行えばいいわけではなく、労働者がストレス状態を自覚することによってストレスをためこまないようにさせたり、ストレスを感じている労働者には事業者として対策を取ったり、労働者全体のストレスチェックの結果から職場環境を改善したりしなくては、ストレスチェックを実施する意味がありません。

より効果的なストレスチェックを実施するために、制度の流れを確認しましょう。

ストレスチェック制度から面談指導、全体評価までのフローチャート

まずは事業者が方針を決め、衛生委員会でストレスチェックの実施方法などの詳細を審議、決定します。それを社内規程としてまとめ、従業員に周知した上でストレスチェックを行いますが、実際に行うのは「実施者」と呼ばれる医師や保健師などです。

ストレスチェック実施後に労働者の同意を得ない限り、事業者は受検結果を知ることはできません。ストレスチェックは、厚生労働省が推奨する57項目の質問票などに基づいて行われます。

質問票の形式は指定されていないので、各事業場の業務内容や職場環境に合わせて、項目数を増減させても構いませんが、「仕事のストレス要因」「心身のストレス反応」「周囲のサポート」の3領域を含めた項目にすること、一定の科学的根拠のある項目にすること、また、性格検査や適性検査、うつ病など精神疾患がある労働者を見つけ出すような項目を入れないことが条件となります。

職業性ストレス簡易調査票(57項目) [厚生労働省・Word]

ストレスチェックを実施した結果、ストレスが高いと判定された労働者(高ストレス者)には、実施者が医師による面接指導を勧めます。希望する労働者は事業者にその旨を申し出て面接指導を受け、医師がその結果を事業者にフィードバックすることで、事業者は必要に応じて就業上の措置を取ります。

なお、ストレスチェック制度において義務付けられているのは、「体制構築」「実施」「(高ストレス者への)医師面談」「労働基準監督署への報告」の4つですが、努力義務として、ストレスチェックの結果を部署や性別、年代といった視点から集団分析することも求められています。

組織をさまざまな切り口から分析した結果、ある特定の集団に高ストレス者が多いことが分かれば、その原因を追究して職場環境の改善につなげることができるからです。

また、相談窓口の設置や、セルフケアによるストレス予防ができるような研修の実施なども推奨されています。ストレスチェックをより意義深いものとし、組織の生産性をさらに向上させるためにも、努力義務項目や推奨項目についても積極的に取り組んでみてはいかがでしょうか。

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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