私共は当社ストレスチェック利用顧客の結果データを『アドバンテッジタフネス白書』として毎年まとめ、顧客へ向けてベンチマーク情報として提供しております。 白書データの結果から、30代以降は「高エンゲージメント割合」が悪化している、つまりエンゲージメントが高い状態の人の割合が低下しているということが分かりました。(『アドバンテッジタフネス白書2023』データを参照:『アドバンテッジタフネス白書』は当社顧客へのみ提供している情報資料となります)
ここで言う高エンゲージメントとは、「ワークエンゲージメント=仕事に対する熱意、活力、ポジティブさ」を意味しています。
ある程度仕事にも組織にも慣れ、自分なりのキャリアビジョンを考えられる、加えて自分のことだけではなくメンバーや組織全体を視野に入れて働く年齢層です。
そういった年齢層の人々は一見するとエンゲージメントが高いと思われるのですが、白書データを見ると悪化傾向にありました。
今回はカウンセラーから、エンゲージメントが低下してしまう背景や人物像、改善のポイントなどカウンセリングの具体的な事例とともにご紹介していきます。
目次
こんな人たちは要注意!?エンゲージメント低下の人物像や背景
エンゲージメントが低下してしまう年齢層にはどんなことが起こっているのか、想定される背景や人物像を考えてみると下記のようなケースが挙げられます。
- 職場では最前線に立ち、業務の負担が大きい
- 組織を牽引する立場であり、責任感を求められる
- その割に自身の役割に対して納得のいく評価が得られない
「自分の役割はどこまで求められているのか?」、「どんなに頑張っても報われない…」そんな弱音を言いたくなる状況で仕事に対しての熱意が薄れ、会社に対しての信頼感が揺らいだり、先行きについて不安を感じてしまうこともイメージできるのではないでしょうか。また、うまくいかない状況が続くことで、自分の能力を疑ったり、環境に対して不満を募らせたり、悪循環に陥りストレスが増大していくということもあり得ます。
エンゲージメント低下事例~中堅社員のAさんの場合~
ここからは、前述のような背景によってエンゲージメントが低下してしまい、当社カウンセラーにご相談いただいた方の具体的な事例を紹介させていただきます。
今回のご相談者はAさん、勤続10年の30代男性です。
Aさんは自身の業務評価について、納得いかない気持ちを抱えていました。ここ数年間は、新しい業務にもチャレンジし、スキルアップをしてきたつもりではありましたが、評価は減点方式のため思っているような評価をもらえませんでした。
そのうえ、上司からは改善すべき点や至らない点を課題として挙げられ、努力しても次から次へと「ここがダメだよね」と言われているような気持になって、もやもやしてしまいます。
そんな時に、今の業務に加えてメンバーのフォローもしてほしいと依頼が来てしまいました。「自分のことだけでもやるべきことは多く評価もされないのに、人の面倒まで見る余裕が自分にあるのだろうか?」と悩みながら新たな役割を引き受けるAさん、忙しさと納得行かない気持ちがイライラを募らせていきます。ストレスがピークに達したとき、Aさんは「こんなに頑張ってもうまくいかないのは、自分の能力不足のせいだ…」と考えるようになり、仕事に対しての意欲を失ってしまうのでした。
エンゲージメントが低下してしまった方へのカウンセリングでの介入とは
上記のAさんのようなケースはカウンセリングの場でよく語られるご相談です。今回のご相談者に対して、カウンセラーはどのように介入したのかについてご紹介します。
まずは頑張ったのに評価されなかったこと、努力が報われなかったこと、自身の能力不足など、Aさんから語られる悔しさや虚しさ、残念だったという気持ちに対して、カウンセラーは相談者の立場や感情を想像しながら共感的にお話を伺います。
努力しても評価されないこと=能力不足であるという思考に陥っているAさん、否定的なイメージを自分に当てはめてしまう『レッテル貼り』という受け止め方になっている可能性があることをカウンセラーから語りかけます。
そしてAさんとカウンセラーはこれまでの経過を一緒に振り返っていきます。
『自分には能力がない…』と思いこむAさんですが、よくよく話を伺っていくとフォローしてきたメンバーは、Aさんが常に気を配り細やかにサポートしてきたこともあり、それぞれが成長して、次のステップに進むことが出来たと言います。
そもそもメンバーのフォローという役割を頼まれたのは、Aさんには指導する能力、責任感があり、対応できると上司が判断したからこそ任せられたのではないか?とカウンセラーから問いかけをすることでAさんも気がつき始めます。
また、こういったメンバーのフォロー役はAさんにとって今回が初めての経験でした。それを考えてみると、Aさん自身も成長しており、出来る業務の幅も広がっていると言えます。
努力した結果、会社に評価されなかったということは残念ではありますが、うまく役割をこなせた、自己成長しているという点は素晴らしいポイントであることをカウンセラーからAさんにフィードバックします。
Aさん自身の成長という考えを取り入れてみることで、Aさんは『自分には能力がない』という思考から、『出来ていることは結構あるかも!』と別の視点を見つけることにつながりました。
カウンセラーとの対話の中で、Aさん自身の振り返りも進み、この業務にはこういった意味があった、こんなことが出来るようになった、など経験で得られたことをしっかりと実感できるようになりました。また、評価されなかったかもしれないが、新しい業務に挑戦したこと、他者を教育する上での準備や計画・企画力の成長つながったことにも気がつくこともできました。
今後も思った通りの評価が得られないことがあるかもしれない、そういった際には感情が揺れることもあるが、自分で自分の評価をしてみる、振り返りをしてみることをカウンセラーから提案しました。
まとめ
エンゲージメントが低下している相談者に対してカウンセリングの介入事例をご紹介させていただきました。
まずは自身の納得いかない気持ちを話していただき、これまでの振り返りを行いながら、
カウンセラーからの客観的な意見や問いかけによって、相談者も今一度フラットに自身の価値や状況を整理することにつなげていきます。
また、これまでの物事の捉え方が変化し、新たな視点を獲得することで、相談者は個人における成長の度合いやキャリアの棚卸をすることができました。
仕事に対しての前向きな気持ちを取り戻していき、エンゲージメントの改善が期待できる事例と言えます。
今回のケースのような、エンゲージメント課題へのアプローチとしても有効なカウンセリングに関して、ご関心のある方はお気軽にこちらからお問い合わせください。
皆様のご相談をお待ちしております。