アンガーマネジメントとは何か?怒りをコントロールするために実践したい考え方のポイント

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本記事では、イライラや怒りをうまくコントロールしてストレスを軽減する「アンガーマネジメント」についてお話ししていこうと思います。

アンガーマネジメントとは

アンガーマネジメントとは、「怒りをうまくコントロールしていくこと」です。もともとは1970年代にアメリカで心理教育として取り入れられたのが始まりです。現在のアメリカでは教育現場だけでなく、企業が社員の生産性向上のために研修に取り入れています。

また、スポーツ界では選手がカッとして暴力をふるって、選手生命を奪われることがないよう教育プログラムに取り入れたり、刑務所では受刑者の更生プログラムとして利用するなど、さまざまな場面で活用されています。

企業では、特に「金融業界」で普及しているようです。株や為替などの金融商品を扱う人は「損」が出たときに怒りで頭に血がのぼってしまい、冷静な判断ができなくなって、より多額の損失を出してしまうことがあるそうです。それを防止するためにアンガーマネジメントを身につけるといいます。

この他にも、多忙な仕事の中で冷静な判断が必要な医師や弁護士、怒っていても人前で醜態をさらすことができない政治家など、ストレスが多く、怒りをマネジメントできないことが致命的になる職業の人たちが積極的に取り組んでいるようです。

日本では2008年に日本アンガーマネジメントセンター(現 一般社団法人 日本アンガーマネジメント協会)が設立され、「怒りの連鎖を断ち切ろう」 を理念に、企業や学校、病院、介護施設向けの研修などを行い、アンガーマネジメントの普及に努めています。

私も現在は日本アンガーマネジメント協会の「公認ファシリテーター」として、多くの研修を実施しています。
(同協会の資格制度についてはHPをご参照ください)

いつもイライラしている人や怒りっぽい人というのは、言い換えると怒りをうまく管理できない人です。怒りをうまく管理できない人とは怒りに振り回されている人です。では、怒りに振り回されないためにはどうしたらいいのでしょう。ここでヒントとなるのがタイムマネジメント(時間の管理)です。

アンガーマネジメントはタイムマネジメントと考え方は一緒です。つまり、時間をうまく管理できない人とは時間に振り回されている人なので、時間に振り回されないためには、まずは時間のことをきちんと理解することが重要なのです。

アンガーマネジメントも同じ考え方です。怒りに振り回されないためには、まずは怒りのことをきちんと理解することが重要なのです。それでは、まずは「怒り」について勉強しましょう。

怒りとは

「怒り」という感情は人間以外の他の動物も持っている感情です。イヌもネコもサルも怒ります。実は、怒りは動物にとっては自分や自分の子どもの身を守るための本能的な感情で、身の危険性を感じたときに「威嚇」や「警戒」 のために怒りという感情を表すのです。同様に、人間も自分や自分の子どもの身の危険性を感じたら怒りを表します。

たとえば、自分の子どもが動物に襲われたとしたら、怒りを表して子どもの身を守ろうとするでしょう。ちなみに、人間は自分の子どもだけでなく、親でも身を守ろうと怒りを表すかもしれませんが、親の身を守ろうとするのは動物では人間だけのようです。人間以外の動物は「親の介護」などしませんよね。

このように、動物は本能的に身を守るために怒りという感情を表すのですが、人間だけは別の目的で怒りを表すことがあります。人間は「相手に何かを伝える」という目的で、コミュニケーションの手段として怒りを使うことがあるのです。

人はなぜ怒りの連鎖に囚われてしまうのか

ある人が仕事で思う通りにいかなくて、職場でイライラします。そして、その怒りの感情を家庭に持ち帰ります。そしてパートナーへ怒りの矛先を向けます。パートナーに怒りをぶつけられた人は自分の子どもに矛先を向けます。

親に怒られた子どもは学校に行って、自分より弱い子どもをいじめます。いじめられた子どもは怒りを家庭に持ち帰って、親にぶつけます。そして、親は会社に行き同僚や部下や取引先に怒りをぶつけます。あるいは、店に行って店員にぶつけたり、病院に行って看護師にぶつけます。

このように、怒りは連鎖します。多くの人は誰かに怒りをぶつけられたら、 誰かにぶつけないと気がすまないと思っているからです。「その人のせいじゃないのに、つい文句を言ってしまった」、「なんとなく虫の居所が悪くて怒ってしまった」、「相手が悪くないことがわかっているのに怒鳴ってしまった」などの経験はありませんか。

私たちは知らず知らずのうちに怒りの連鎖の中に囚われているのです。

アンガーマネジメント=怒らない ではない!?

アンガーマネジメントは怒らなくなることを目的としていません。怒りの感情は人にとってごくごく自然な感情です。怒ること自体はまったく問題ありません。怒ることと怒らないことの区別ができていないこと、適切に怒れていないことが問題なだけです。

アンガーマネジメントができると、自分の怒りや人の怒りと上手に付き合えるようになります。怒る必要があることは適切に怒ることができ、怒る必要がないと思えることは怒らなくても済むようになります。

多くの人は、自分がイライラしたり怒ったりするのは「誰かのせいだ」「何かのせいだ」と信じていますが、それは間違っています。アンガーマネジメントができれば、自分が怒るか怒らないかを自分で決められるようになり、誰かに怒りをぶつけられても誰かにぶつけかえす必要がないことがわかります。

そうなれば、自分のところで怒りの連鎖を断ち切ることができます。そして、アンガーマネジメントができる人が増えると、社会のところどころで、怒りの連鎖が断ち切られるのです。

それでは、より具体的にアンガーマネジメントを学んでいただきましょう。怒りに振り回されない人になり、ムダな怒りを減らしたら、仕事や生活でストレスを感じない自分に変身できるかもしれません。

「イライラ」を少なくするためのポイント

みなさんは仕事や生活の中で、自分の思い通りにいかないことに対してイライラすることはないでしょうか。そして、それが重なることでストレスを感じていないでしょうか。イライラすることは誰にもあるでしょうが、それが多くなると、仕事や生活が楽しくなくなったり、つらく思えるようになってきます。

でも、ちょっとした考え方を変えることで、この「イライラ」を少なくすることができます。たとえば、あなたが朝の通勤時に駅の通路で前に歩いている人が歩きながら携帯電話を操作している「歩きスマホ」をしていたらどう思うでしょうか。

「あぶないだろう」「もっと早く歩けよ」「常識のない奴だな」などと思ってイライラするかもしれません。もしかしたら、その人に「歩きスマホはやめなさいよ」と言ってしまうかもしれません。でも、ここで少し考えてください。もしもあなたが歩きスマホにイライラするので「もう二度と見たくない」と思っても、それを実現するためには日本にいる歩きスマホをしている人全員に注意をするか、全国の駅で「歩きスマホを止めましょう」と街宣活動をし続けない限りは無理でしょう。

この世の中には変えられることと変えられないことがあります。変えられることにイライラするのは、その状況が改善されればイライラは減るのでしょうが、この「歩きスマホ」のような変えられないことにイライラしても、そのイライラは減りません。だから、変えられないことにイライラしても無駄なのです。

イライラしやすい人は、変えられないことを「もしかしたら変えられるんじゃないか」と考えるクセを持っています。そのようなクセから、イライラしやすい人は変えられることに加えて、変えられないことにもイライラしているのでイライラがなかなか減らないのです。

「変えられないもの」に向き合う考え方のヒント

人は天候にはあまりイライラしません。なぜかというと、「天候は変えられない」ということがわかっているからです。だから、台風が来たら「台風をいかにしのぐか」を考えます。気温が35℃ぐらいの暑さのときは「少しでも涼しく感じるためにはどうするか」を考えます。

つまり、変えられないことはイライラしても無駄なので、「その状況をいかに少しでも快適にしのいでいくか」と考えることがイライラを少なくするコツなのです。変えられないことに対して、うまく対処をしてイライラを解消した例を紹介します。

あるビルの管理会社が新しく完成したオフィスビルの管理をすることになりました。オープンしてからすぐにビルのテナントに入っている会社から、その管理会社に複数の苦情が来ました。そのビルにはエレベーターが二基あるのですが、苦情は「エレベーターが全然来ない」というもので、その苦情が毎日のように届きました。

「エレベーターを増やしてほしい」「エレベーターの速度を上げてほしい」という要望が多かったのですが、それは物理的に変えられません。そこで、そのビル管理会社は苦情を言ってくる人のイライラを減らすためにあることをしました。そうしたら、苦情はどんどん減っていったのです。何をしたのか。

各階のエレベーターホールの壁に姿見の鏡を設置したのです。それ以来、エレベーターを待つ人がその鏡で身だしなみを整えたり、化粧を確認したりし始めました。まさに、変えられないことに対して、その状況をいかにしのぐかという対処をしてイライラを減らした好事例です。

みなさんも車で渋滞したときや電車が止まってしまったときにイライラするのではなく、「これは変えられないことだ」と認識して、それをしのぐために「ゆっくり音楽を聴く」「体操をしてリラックスをする」などの対処法をやってみて、イライラを少なくしてみましょう。

アンガーマネジメントの第一歩を学ぼう

ここでアンガーマネジメントの手法を一つ学んでいただきます。人間は怒りを表すことで「相手に何かを伝える」といいましたが、具体的には「怒りとは違う感情」を伝えようとしているのです。

実は、怒りの感情は単独では発生しない感情で、「怒りの感情は第二次感情」といわれ、怒りという感情の前に必ず「第一次感情」が発生しているのです。人間は、この第一次感情を相手に伝えるために、怒りという第二次感情を相手に表しているということをまずは理解してください。

たとえば、夜遅くに家に帰ってきた自分の娘に対して、親が「こんなに遅くまで何やっていたの!」と怒りを表したとしたら、それは「あなたが帰ってこないから心配だった」という感情を伝えようとしているのです。それが第一次感情です。もし、帰ってきたのが夜10時であれば、怒りの程度は低いかもしれませんが、それが夜12時であれば怒りの程度はかなり高くなるでしょう。

つまり、第一次感情が大きければ、それだけ怒りの程度も高くなる のです。ここで考えてください。もし、この場合に怒りを伝えずに「心配だった」という第一次感情を伝えたらどうなるでしょう。恐らく、この娘はイヤな気持ちにはならず、逆に「自分が悪かった」という謝罪の気持ちや喜びの気持ちが生まれてくるかもしれません。

こうなれば、お互いに怒りを表さずに済むようになり、「怒りの連鎖」もここで断ち切ることができます。

同様に、車を運転していたら、急に隣の車線から自分の車の前に別の車が割り込んで来たらどうでしょう。クラクションを鳴らして怒りを表すかもしれません。でも、それは「急に割り込んできたのでヒヤッとした」という不安な感情を伝えようとしているのです。

この場合は、相手に「ヒヤッとした」という第一次感情を伝えられないかもしれませんが、「怒りの感情は第二次感情」ということを理解していれば、友達に「こんなことがあってヒヤッとした」と伝えたり、自分の中で「ヒヤッとした」という感情を理解して納得したりすることで、第二次感情の怒りを表さなくても済むことになるのです。

アンガーマネジメントの第一歩は「怒りの感情の前には第一次感情という別の感情が存在し、怒りはそれを伝えるための手段として使われている」ことを理解し、第一次感情を表すことで「怒らなくていいことは怒らない」を実践することです。

このように、怒ることと怒らないことを区別できる自分を作ることができれば、怒りの連鎖を断ち切ることができるようになるでしょう。

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【筆者プロフィール】

キティこうぞう(本名:鬼頭 幸三)
株式会社アドバンテッジリスクマネジメント シニアコンサルタント
1987年株式会社名鉄百貨店入社。労働組合の役員を10年以上、また、2000年からの6年間は、名鉄百貨店労働組合執行委員長を務め、社員のカウンセリングにも関わる。その後、同社人事部で、採用および社員の人材教育・キャリア開発に従事。 アドバンテッジリスクマネジメント入社後は、労働組合や人事部での経験をもとにした、コミュニケーションやメンタルヘルスに関する研修や講演を行っている。

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