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リモートワーク におけるEQの重要性とは?

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コロナ禍でリモートワークの導入が進み、職場におけるコミュニケーションの在り方も大きく変わってきています。果たしてどのような変化が起こっているのか、そして私たちはどのように向き合っていけばいいのでしょうか?

そこで今回は、筑波大学大学院の教授であり、社会心理学者として“感情”にまつわる多くの著書がある相川充氏に取材をし、コロナ禍におけるコミュニケーションの変化やその鍵ともいえるEQ、つまり感情の知能指数、感情マネジメント能力の重要性についてお話を伺いました。

筑波大学 大学院 人間総合科学研究科 心理学専攻 教授 博士(心理学)  相川 充氏
筑波大学 大学院 人間総合科学研究科 心理学専攻 教授 博士(心理学) 相川充氏

――コロナ禍でリモートワークの導入が加速し、働き方が大きく変わりつつある中、生産性の低下を懸念する声も広がっています。相川先生は、リモートワークが増えている現状において、どのような変化が起きているとお感じになりますか?

相川 リモートワークがもたらす影響について、量と質に分けて考えてみたいと思います。まず量について。例えばWeb会議を開くときにツールの設定といった事前の準備が必要になるなど、単純に仕事の量が増えているように感じます。

ただ、その点は慣れだと思いますので、大きな問題ではありません。深刻なのは、もう一方の質の変化です。リモートワークは質の部分、特に職場のコミュニケーションにおいて多大な影響をもたらします。

私たちは普段、相手と対面でコミュニケーションをとるときは、身振り手振りを織り交ぜたり、感情を顔に出したり、実は無意識に言葉以外のもので言葉を補填しているのです。

しかし、Web会議サービスを活用してリモートでコミュニケーションをとる場合は、画面に顔だけしか映らないなど、手掛かりが非常に限定されてしまいます。

そして手掛かりが限定されたままコミュニケーションをとっていると、誤解が生じやすくなり、その誤解が相手の不満や不興に繋がってしまいます。そしてそれを解消するための時間、仕事など物理的な量が増えてしまうのです。実際こうした問題は今、職場のあちらこちらで起こっているように感じます。

――では、リモートでコミュニケーションをとる際は、どのようなことを意識する必要があるのでしょうか?

相川 限定された条件の中でコミュニケーションを実行するためには、今まで以上に高いコミュニケーション能力が問われることになります。

コミュニケーション能力を鍛えるためには、相手の思いや意図をきちんと汲み取るように質問したり、自分の考えを文字や言葉でわかりやすく伝えたり、うまく段取りをつけたりする能力が必要になります。

同時に従業員一人ひとりにかかる重荷も大きくなってきていますので、心への深刻な影響が懸念されます。特に4月に入社したばかりの新入社員や、もともと人とコミュニケーションをとるのが苦手な人にとっては、大きなストレスになるでしょう。

本来、私たちは実際に職場に足を運んで、対面で人とやり取りをして、それを毎日繰り返すことで徐々に職場や仕事に慣れていきます。そしてその中で自分の立ち位置や居場所をはっきりさせていくものです。

ところがリモートワークによって直接会う機会が減ったり、あるいは出社してもお互いにマスクをして距離を取ったりしていては、スムーズにコミュニケーションを図ることなどできません。それどころか帰属意識やモチベーションの面に悪影響がおよび、心の問題にも繋がりかねません。

人間の心を左右するのは感情であり、感情の状態が悪くなればなるほど鬱なども引き起こしやすくなります。したがってコロナ禍においては、従業員一人ひとりが“感情”といかに上手に向き合っていくかが、切実なテーマとなっていくでしょう。

――従業員一人ひとりが感情とうまく向き合うために、企業や人事がすべきことはありますか?

相川 コロナの影響でコミュニケーションをとることが難しくなり、職場環境が悪化したから、働く人たちの感情の状態も無条件に悪くなるのかというと、実はそうではなく、その間にワンステップが入ります。

人間の感情は、その状況をどう捉えるかで、良いほうにも悪いほうにも転がります。

コロナ禍で不安だと思えば思うほど、感情は落ち込みますが、「コロナはむしろ新しいことに挑戦するチャンスかもしれない!」、「通勤電車に乗らなくても済む!」、「リモートなら気楽だ!」といった具合に現状をポジティブに捉えることができれば、その人の感情状態が落ち込むことはありません。

つまり、企業や人事が何かをしなければならない、という前に、まずは一人ひとりが置かれた状況をどう捉えるかが重要なのです。

感情というものは、能力の一部として自分で調整したり、コントロールしたりすることができます。そしてその際、鍵となるのが、感情の知能指数と呼ばれる“EQ”です。

そのときどきの感情を自然の流れに任せるのではなく、“EQ”という発想のもと、自分で感情状態を把握し、ポジティブな方向にコントロールできるようになることが理想でしょう。「自分はすぐに落ち込むタイプだからダメなんだ」などと悲観する必要はありません。

EQは運動能力と同じように、トレーニングを積むことでどんどん高めることが可能です。

コロナ禍で社会状況が変わり、職場の環境や働き方は今後さらに変わっていくことが予想されますが、このような時代だからこそ、自分の感情を自分自身でコントロールする力、すなわちEQというものに改めて注目する必要があると思います。

――弊社の、あるIT企業様におけるストレスチェックの結果(約600名の従業員対象)についてご紹介させてください。このお客様は通常のストレスチェックに加えて、本人が物事をマイナスに捉えやすいかどうかなどを質問する弊社独自の「メンタルタフネス度」ならびに自由設問として「リモートワークにおける影響」を追加で調査されました。今回ご紹介する調査結果は、この「メンタルタフネス度」とコロナにおける生産性の低下にどのような関係があるのかをまとめたものです。

生産性、ストレス、対処の各指標における回答ごとのタフネス度偏差値の違いに関する図

■「生産性」について

「在宅勤務により仕事の生産性はどのように変化したか?」という質問に対し、「大きく低下した」と回答した人は、平均的にメンタルタフネス度が低い傾向にあった。コロナ禍でのリモートワークをマイナスに捉えた結果、生産性が下がってしまったことが要因と考えられる。

■「ストレス」について

「コロナの感染拡大に伴う生活・仕事の環境変化により、心身的な不安やストレスはどのように変化したか?」という質問に対し、「大きく不安が増えた」と回答した人たちは「生産性」と同じく平均的にメンタルタフネス度が低い傾向にあった。

■「対処」について

「在宅勤務時における生産性の維持・向上のために、ご自身で何か対策をしていますか?」という質問に対し、「対策している」、もしくは「課題を感じていない」と答えた人たちはメンタルタフネス度が高い傾向にあった。

この結果から、弊社ではメンタルタフネス度が高いほど生産性やストレスの影響が低く、また在宅勤務への対処力も高い傾向にあると捉えています。この結果に関して、相川先生はどのようなご感想を持たれましたか?

相川 さきほどもお話したように、社会的な環境・状況の良し悪しは当人の捉え方次第で、それが感情にも影響を与えるのですが、示していただいたデータを見る限り、まさにそのことを如実に表していると感じました。

単純にコロナだから生産性が下がった、あるいはコロナ禍だからストレスが高まったということではなく、やはりその状況をどう捉えるか、または捉える力があるかどうか、または捉え方を自分の力で変えられるかどうかによって、生産性やストレスの大きさに違いが出るということでしょう。

このコロナ禍で社会状況が変わり、職場の環境も変わりました。だからこそ私たちは自分の感情というものを、自分自身でコントロールする力=EQというものにもう一度注目する必要があると思います。

YouTubeで本インタビュー動画を公開しています。

『リモートにおけるコミュニケーションのカギは「感情能力(EQ)」』へのリンク付き画像
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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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