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リモートワークにおける従業員の健康管理の重要性

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新型コロナウイルス感染拡大によりリモートワークを導入する企業が増えている昨今、従業員の健康状態の把握やリスク検知ができず、健康経営に関して不安や課題感を抱えている企業も少なくないでしょう。

果たしてコロナ禍において、従業員の健康維持・増進はどのように行っていけばいいのでしょうか。そこで、「健康経営の推進に向けた従業員の健康管理」をテーマに、健康経営の定義や評価ポイント、健康経営を推進する上での課題等についてご紹介します。

※本記事は、8月26日に当社が実施した「Withコロナ時代、従業員の心と体の健康管理セミナー(Web)」の内容を編集して配信しています。

※ 前編「コロナ禍における健康管理と従業員ケアのポイントとは」の記事はこちらからご覧ください。

健康経営とは

健康経営とは、従業員の健康保持・増進の取り組みが将来的に収益性等を高める投資であるとの考えの下、健康管理を経営的視点から考え、戦略的に実践することです。

つまり従業員が健康であること自体も大切ですが、それを最終的には企業として生産性向上に繋げていく必要があるということです。

そしてもう一点、企業が経営理念に基づき、従業員の健康保持・増進に取り組むことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や組織としての価値向上へ繋がることが期待されます。

ちなみに経済産業省では、健康経営に戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定しています。(1業種につき原則1社、合計33業種。6回目となる「健康経営銘柄2020」では30業種40法人を選定)

また、健康経営に取り組む企業等の「見える化」をさらに進めるため、上場企業に限らず、未上場の企業や、医療法人等の法人を「健康経営優良法人」として認定する制度もあり、経済産業省が制度設計を行い、日本健康会議が認定しています。

4回目となる「健康経営優良法人2020」では、大規模法人部門に1476法人が、中小規模法人部門に4815法人が認定されています。さらに大規模法人部門における上位500社に対しては「健康経営優良法人(ホワイト500)」として認定がなされています。

参照:https://www.armg.jp/journal/1005-2/

メンタル・フィジカル両方の視点で考える健康経営

メンタルの領域とフィジカルの領域は、非常に密接に結びついています。例えば、生活習慣の改善をするためには、単に食事や運動を工夫するだけでは足りず、何かしらを制限したり、新たなことを始めたりする必要があり、一定のストレスがかかります。

生活習慣改善のためにはストレス対策が不可欠なのです。メンタル・フィジカルの領域をきっちり2分化するのではなく、双方が密接に関わっているという視点で健康管理に取り組んでいくことが大切です。

健康経営度調査票(大規模法人)における健康管理の評価ポイント例

企業の健康経営への取り組みは、「健康経営度調査票」によって評価されていきます。昨年度の「健康経営度調査票」では、具体的に次のような項目で健康管理の評価ポイントが決められました。

評価の一例として、例えば、「食生活の改善に向けた具体的な支援を行っていますか?」という質問では、「社員食堂など給食施設において、法定を超える管理栄養士・栄養士の配置を行い、栄養管理された食事の提供を実施」、「栄養バランスに配慮した仕出弁当や食事を提供できる環境の整備」、「食生活改善に向けたアプリ提供、カロリー記録等のサポートの実施」…などの項目から、重点的に取り組んでいるものを選択します。

さらに対象人数、参加・実施人数、施策を評価・改善するために確認している内容なども評価ポイントになります。

要するに単に「会社として〇〇セミナーを実施しました」ということだけでなく、その施策に対してどれくらいの従業員が参加しているのか、さらに効果検証のプロセスなども重要になります。このように食生活改善だけでなく、運動やメンタルヘルスケアなども同様の形で評価されていきます。

ちなみに今年は新型コロナウイルスによって健康施策を中止された企業も多かったと思いますが、「健康経営度調査票」も2月以降に実施予定だったものに関しては考慮されることになっています。

健康経営を推進する上での課題

では、健康経営の視点で従業員の健康管理をしていく上で、どのような課題があるのでしょうか。例えば、従業員にアンケートを取ったところ、健康管理のセミナーをやってほしいという声が多かったので、とりあえず健康関連のセミナーを行ったとします。

もちろん何らかの施策を行うことは重要ですので、やらないよりはやったほうがいいでしょう。しかし、その前に考えなければいけないことがあります。それは、自社の健康課題をどのように位置付けて、整理しているか。そしてその健康課題に対する施策と効果検証ができる体制を構築しているか、ということです。

健康経営を進めていくうえでは、こうした位置づけの整理や体制づくりが重要になります。場当たり的な施策とならないための対策ポイントとして、図のような健康投資管理会計ガイドラインの一例をご紹介します。

健康投資管理会計ガイドラインの一例に関する図

左側に「健康投資」と書かれていますが、これは「食事セミナーを実施したか」、「禁煙プログラムを実施したか」、「運動会を実施したか」など、実際に健康投資として何をしたかの項目です。

そして真ん中の「健康投資効果」では、「セミナー参加率向上」などのような健康投資施策の取組状況に関する指標、「健全な食生活を送る従業員等の割合の向上」などのような従業員等の意識変容・行動変容に関する指標、「アブセンティーイズムやプレゼンティーイズム低減」、「ワークエンゲージメント向上」などのような健康関連の最終的な目標指標を見ていきます。

そしてこれらを、右側の「健康経営で解決したい経営課題」と紐づけて施策を整理していくことが重要です。例えば自社で実際にデータを取った中で、食事よりも禁煙に課題があることがわかったのならば、禁煙セミナーに重点的に取り組むなど、自社の課題に紐づけて優先順位をつけていくことが求められます。

まとめ

健康経営を推進するためには、各種施策を「やるかやらないか」を考えるよりも先に、自社においてどのような健康課題を解決していきたいか、ゴールを定める必要があります。

そして施策のPDCA を回していくための事前設計として、健康課題、期待する効果、具体的な取組のつながりを整理することが重要といえます。

株式会社アドバンテッジリスクマネジメント
産業保健推進部 保健師

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【筆者プロフィール】

「アドバンテッジJOURNAL」編集部

「アドバンテッジJOURNAL」編集部
導入企業数2,950社/利用者数417万人のサービス提供実績と、健康経営銘柄2023に選定されたアドバンテッジリスクマネジメントの知見から、人事領域で関心が高いテーマを取り上げ、押さえるべきポイントやつまずきやすい課題を整理。人事担当者や産業保健スタッフの“欲しい”情報から、心身のヘルスケアや組織開発、自己啓発など従業員向けの情報まで、幅広くラインアップ。「ウェルビーイングに働く」ためのトピックスをお届けします。

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